濡らし
wetting
濡れない紙、濡らさない水
ちり紙のようにすぐに水に濡れる紙があれば、撥水剤でもあるサイズが効いていて、なかなか濡れない紙もあります。一方、水は決して相手をすぐに濡らしてくれる液体ではありません。コンサベーションで使う各種の液状の薬剤の表面張力と比べれば、水はいかに相手を濡らすことの不得手な液体かがわかります。
■ Aspler, J.S. et al. (1984) The Dynamic Wettability of Paper. Part I: The effect of surfactants, alum, and pH on self-sizing. Tappi, 67:9,128-131
なぜ濡らすのか
水性処置に耐えられることが確認されたものは水性クリーニングを行います。要するに「洗濯」ですが、その前に「濡らし」 wetting という工程を別に行います。繊維の奥深くまで、時間をかけずに洗濯用の水が達するように「水のための高速道路」を作ってやることが wetting の目的です。質量のある水が質量のある紙に浸透するときには、紙にできるだけ負担をかけずに速やかに行われたほうが良く、またしっかりと濡らした紙とそうではない紙との「洗濯」の仕上がりも、酸性紙の脱酸性化効果も全く違います。
高速道路の作り方と使い方
その資料が水にもアルコールにも耐えられることを確認できたら、水とアルコール(エタノールやイソプロピル・アルコール)との混合溶液に資料を浸します。水よりもずっと表面張力が下がった溶液はすみやかに資料を濡らし、繊維の奥深くまで高速道路を一気に通します。内部まで充分に濡れたことを見計らって資料を引き上げ、すぐに弱アルカリ水の槽に資料を浸し、水性クリーニングを開始します。
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