ホームコンサベーション>考え方と技術:水性クリーニング  1

紙媒体記録資料のコンサベーション

考え方と技術

水性クリーニング  1
aqueous cleaning

水で洗うことの意味

「洗浄と脱酸性化は、紙媒体のコンサベーションにおけるもっとも基本的で重要な処置である。ほかの処置が必要であってもこの二つの処置が行われなければ、その他は単なる “お化粧“ にすぎない」(Hey 1979)。紙の「洗濯」は紙をきれいにするばかりでなく、紙の劣化にかかわるもっと根本的な問題への対処です。濡らしで「水のための高速道路」が通った紙には、繊維の奥深くまですぐに水が達しますが、その水は再び流れ出してきます。このときに、経時老化した紙の中で生まれた発色団(chromophores)と酸のうち、水溶性のもの(酸ならば硫酸、シュウ酸、ギ酸、乳酸)を水がとりこみ、洗い出してくれます。クリーニングに使用するのは弱アルカリ水溶液で、普通は飽和した水酸化カルシウム水溶液を希釈し、pH で8.0 ぐらいにします。私たちは水性処置に耐えるものは必ず洗うことにしています。洗浄水に汚れが出なくなり透明になるまでを目安にしています。

■ Hey, M. (1979)  The Washing and Aqueous Deacidification of Paper, The Paper Conservator, 4, 66-80. ( 大澤・坂東ほか試訳「紙の洗浄と水性脱酸性化処置」、社内資料)

■ Bogaard, J. et al. (2001)  Effect of Dilute Calcium Washing Treatment on Paper. JAIC 40, 105-123.

上: 大型水槽でのクリーニング
中: 洗浄水の色の変化
下: 水性クリーニングの効果

● 年代の異なる書籍の本紙を、洗浄なし、洗浄のみ、濡らし→洗浄の処置の後に、90℃、50%RH で3日間強制老化。

ページトップへ