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考え方と技術

水性クリーニング  3
aqueous cleaning

水性クリーニングが不徹底だと

充分な水性クリーニングを行わず、次の工程のために濾紙などに挟んですぐに乾かすことが普通に行われています。濾紙に「汚れ」が移るので一見、きれいになっているように思い、「アクが出た」なとど説明されることもあります。しかし、この程度のクリーニングでは水溶性の発色団はもちろん、水溶性の酸が紙中に残されることになります。脱酸性化処置をしても、少量のアルカリしか付与できないときは、たちまち酸がアルカリを消費してしまい、効果がないことになります。また、マグネシウムをアルカリとして用いた場合には、酸化劣化と複合したアルカリ劣化を招く可能性があります。

■ Johansson, A. et. al. (2000) Uptake of Air Pollutants by Paper. Restaurator 21, 117-137.

■ Malesic, J. et.al. (2002) Effect of pH and Carbonyls on the Degradation of Alkaline Paper. Restaurator 23, 145-153.

膨潤による「劣化」

水が紙に浸透したときは、拡散によってセルロースの細胞壁にも水が入り込み、結果的に壁の体積が大きくなります。膨潤と呼ばれる現象です。膨潤は水の拡散に伴って生じる繊維の形態変化ですが、並行してパルプ繊維間の結合が一部切断されるため、紙全体の構造にも大きな変化をもたらします。経時老化している乾いた紙へ水を与える場合には、この構造変化がさらに拡大され、一種の物理的な「劣化」が生じることになります。また、基材である紙の変化に伴い、紙の上に載っているイメージ材料にも亀裂が起こることもあります。水を使う限り、こうした「劣化」は不可避です。速やかな「濡らし」が必要な理由がここにもあります。

■ Vitale, T.( 1992) Effects of Water on the Mechanical Properties of Paper and Their Relationship to the Treatment of Paper. Materials Research Society Symposium Proceedings 267, 397-427.

■ Moropoulou, A. et al. (2003) The immediate impact of aqueous treatments on the strength of paper. Restaurator: 24, 160-177.

● 発色団と酸が溶けた洗浄水
● 膨潤による繊維間結合の破断
● アルブミンの亀裂

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