ほぼ日刊資料保存

必也正名乎

図書館やアーカイブ等の資料保存に関する世界のニュースを伝える、ほぼ日刊のページです。 土日・祝日は休刊します。 リンクも引用も自由です。

2005 年 5 月 のアーカイブ

2005年5月31日(火)

『文化財の保存と修復7– 伝統ってなに?』が刊行

昨年(2004年)10月に京都テルサホールで開催されたシンポジウム「文化財の保存と修復–伝統ってなに?」の記録が出版された。基調講演:文化財と伝統(文化財保存修復学会会長/三輪嘉六)、文化財としての絵画の修理と「伝統」(文化庁/鬼原俊枝)、装こう技術で直す–海外に根付いた日本の伝統(オランダ国立民族学博物館/フィリップ・メレディス)ほか。


ISBN 4-87805-058-6
107pp, 1400円


版元は(株)クバプロ
http://www.kuba.co.jp

2005年5月30日(月)

イラクおよび中東地区図書館の資料保存のための自習ホームページ

image

 

コーネル大学図書館はアメリカ人文科学基金(NEH)の支援を受け、イラクおよび中東地区図書館の資料保存チュートリアルのホームページを立ち上げた。調査や保存計画の立案、その管理運営から、個々の資料別のコンサベーションまでを中東地区の図書館員が自習できる。アラビア語とともに英語のページもある。


Library Preservation and Conservation Tutorial, Iraq and Middle East.
http://www.librarypreservation.org/arabic/index.html


英語版は
http://www.librarypreservation.org/mee/index.html

2005年5月30日(月)

NPSの定評ある『博物館ハンドブック』が全てPDFに

アメリカ国立公園管理局(NationalPark Service)の定評ある博物館ハンドブックMuseum Handbook が全文PDF 化され、ダウンロードできるようになった。このハンドブックは、博物館のあらゆる収蔵物の管理、保存、記録化、アクセス、そして活用の総合的な手引き。原本は大部な印刷物だが、次の三つの章別にダウンロードできる。


Part I, Museum Collections
Part II, Museum Records
Part III, Museum Collections Use

Museum Handbook


http://www.cr.nps.gov/museum/publications/handbook.html

2005年5月27日(金)

カナダ国立図書館・公文書館–20世紀前半の貴重な記録映画をWebで

image

 

カナダ国立図書館・公文書館(Libraries and Archives of Canada)は、同館だけが所蔵する20世紀前半の貴重な記録映画をインターネット上の「仮想映画館」で見ることができる新しいサイトVirtual Silver Screen を立ち上げた。第一世界大戦への参戦、産業の発展、カナダの風景と人々の生活–等々、全部で25本で、総上映時間257分にもなる。


http://www.collectionscanada.ca/silverscreen/index.html

2005年5月26日(木)

国語国文学会五十周年記念大会–書写・印刷・電子テクストで

全国大学国語国文学会は五十周年記念大会「書写・印刷・電子テクスト–日本からメディアの世界的変革を考える」を6月4日(土)に日本女子大学目白キャンパスで開催する。講演:和紙と日本の書物文化として「古典籍の装幀形式とその料紙」(宮内庁書陵部・吉野武敏)が、またシンポジウム:写本から印刷へとして「グーテンベルグからキャクストンへ–HUMIプロジェクトの貴重書デジタル化」(慶應義塾大学・高宮利行)ほかが予定されている。


http://www.humi.keio.ac.jp/jp/news/news050604.html

2005年5月26日(木)

慶應大HUMIプロジェクト公開研究会–グーテンベルク聖書復刻活字で

慶應義塾大学HUMIプロジェクトは、6月5日(日)にミズノプリンティングミュージアム(東京都中央区)で「グーテンベルク聖書復刻活字(Dale Guild B42Black Letter)の研究利用-中間報告&意見交換会」を開く。HUMIプロジェクトが2004年3月に購入し、ミズノプリンティングミュージアムの協力のもとに研究利用を進めている、Dale Guild Type Foundryによるグーテンベルク聖書復刻活字のこれまでの組版・印刷実験の状況を確認し、今後の研究利用に向けて意見を募る。また、活字印刷の簡単な実験をあわせて行う。


http://www.humi.keio.ac.jp/jp/news/news050605.html

2005年5月26日(木)

米議会図書館と人文科学基金– 新聞デジタル化の国家プロジェクトで新サイト

アメリカ議会図書館と人文科学金(NEH)が協力して進めてきたThe National Digital Newspaper Program (NDNP)のための新しいサイトがこのほどスタートした。米国内の歴史的に重要と思われるあらゆる新聞のデジタル化とデータベース化を推進し、インターネットを通じての恒久的なアクセスを可能にするという大型プロジェクトになる。


http://www.loc.gov/ndnp/index.html

2005年5月25日(水)

ICCROM– ブランディの『修復の理論』の英訳を刊行

image

 

ICCROM(International Centre for the Study of Preservation and Restoration of Cultural Property=文化財保存及び修復の研究のための国際センター) はこのほど、現在の文化財のコンサベーションの理論的な基礎を据えたCesareBrandiの主著の英訳Theory of Restoration を刊行した。著者は処置の可逆性、欠損部の補填と整合、オリジナリティの保全–等々の原則を「修復」に導入し、長くローマのIstituto Centrale per il Restauroを指導してきた。


http://www.iccrom.org/eng/news/2005_en/announce_en/05_24PubBrandi_en.htm

2005年5月25日(水)

英国立公文書館–青焼きのコンサベーションのケーススタディ

image

 

英国の国立公文書館(National Archives)の保存修復部門はウエッブで、同部門が進めている歴史資料の保存手当てを紹介しているが、今回は青焼き(ジアゾ)の設計図面。1889年に作成されたドーバーの桟橋その他の建築物の設計図で、傷みがひどくバラバラになっているものをつなぎ合わせ、加湿・フラットニングから、ポリプロピレン・フィルムによるエンキャプシュレーションまでの工程を簡潔に。


http://www.nationalarchives.gov.uk/preservation/studio/projects.htm

2005年5月23日(月)

公文書館会議(ICA) – 初の「評価・選別マニュアル」をPDFで刊行へ

国際公文書館会議(International Council on Archives)はこのほど、アーカイブ資料の評価と選別のための初めてのマニュアルThe Manual on Appraisalのドラフトを発表し、PDFとRTFで公開した。このマニュアルは、アーキビストにとって最も日常的でありながら、最も困難な仕事といわれる資料の評価と選別を、現場で具体的にどのように行うかを示す。今回のドラフトは、一般的な原則(Part one)のみだが、6月末を締め切りにさまざまな意見を集約し、Parttwo の各国での実例を盛り込んで、正式なマニュアルとして刊行する。


予定されている全体の目次は次の通り。


Introduction
Definitions
History
Legal Environment


Part one. General Principles
II.1 Differents approaches
II.2 Selection criteria
II.3 Sampling
II.4.Processes
II.5 Appraisal in the electronic environment


Part two. Case studies
– Related records of elections in France
– Documentation strategy in the State of New-York
– Appraisal as part of the design of a new system for
Fisheries in Australia
– Appraisal in Spain
– Prisoner files in Finland
– An example from the UK


ICA/CAPa??s Manual on Appraisal is online for feedback
http://www.ica.org/news.php?pnewsid=279&plangue=eng

2005年5月23日(月)

ICA第一副会長に菊池光興国立公文書館長が就任

以下を—


http://www.archives.go.jp/news/050517.html

2005年5月20日(金)

カナダAV記録保存トラスト–今年は「赤毛のアン」など12作品を遺産に選定

image

 

カナダ音響・画像記録保存トラスト(Audio-Visual Preservation Trust of Canada)は、国内で製作された過去の映画、テレビ放映、ラジオ放送等のなかから毎年12作品を、後世に残すべきカナダの記録遺産(Masterworks)として選定しているが、今年(2005年)は、1985年にテレビ放映された「赤毛のアン」等が選ばれた。どの作品も一部を、下記の同トラストのサイトから、ストリーミングで聞いたり、見たりできる。


http://www.avtrust.ca/mw/mw.php?display&en&75


またPDFでのニューズレターPreserVison 最新号もダウンロードできる。
http://www.avtrust.ca/preservision/e_index.php

2005年5月19日(木)

【新着文献紹介】                                                                RESTAURATOR : ドイツでの脱酸性化技術評価、インク焼け抗酸化等で好論文

図書館・文書館資料の保存と修復のための唯一の専門誌Retaurator :International Journal for the Preservation of Library and Archival Material の最新号(Vol 26, No 1, 2005) は、水性処置の際の水溶性インクへの滲み止めと脱酸性化の効果と影響、インク焼け熱湯浸漬処置の影響、インク焼け抗酸化化のためのフィチン酸キレート処置の影響、そしてドイツで実用化されている各種の脱酸性化技術の評価など、以下の5つの論文を掲載している。概要を紹介する。(文責:木部徹)


Restaurator
http://www.saur.de/index.cfm?content=kurzanzeige.cfm?show=0000006512&menu=catalog1

 


■B. HAVLINOVA, J. MINARIKOVA, L. ?VORCOVA, J. HANUS, & V.BREZOVA : Influence of Fixatives and Deacidification on the Stability of Arylmethane Dyes onPaper during the Course of Accelerated Aging.

滲み止めは一種類だけで全てまかなえない
水性の脱酸性化処置等を行う場合には、水に滲んだり流れたりする色剤に耐水性を持たせる処置が必要になる。なかでも緑や紫のインクの染料であるアリルメタンは滲み止め、流れ止めが必須である。著者らは酸性の紙基材をアリルメタン染料8種で染め、耐水性付与はSandfix WE とチクロドデカンで、脱酸性化は炭酸水素マグネシウムと同カルシウムの水溶液で行い、それらを加速老化させて効果を見た。それぞれ長所と欠点があり、1種類の耐水性付与の方法で全てをまかなうのは無理なことが分かった。


この論文の関連Web
J. Hanus, J. Minarikova, B. Havlinova, L. ?vorcova, V. Brezova, E. Hanusova :
CHANGES OF SOME ARYLMETHANE DYES ON PAPER
DURINGCONSERVATION TREATMENT
www.infosrvr.nuk.uni-lj.si/jana/ICOMd/29JHanus.pdf

 

 


■SEASON TSE, HEATHER HENDRY, PAUL BEGIN, P. JANE SIROIS
&MARIA TROJAN-BEDYNSKI: The Effect of Simmering on the Chemical and Mechanical Properties of Paper.


インク焼けの熱湯処置は紙に悪い影響を与えない
インク焼け資料を熱湯(90-95℃)に浸漬して焼けを防御する方法は、対策のひとつとして長く使われてきたが、紙への悪い影響が懸念されていた。著者らはリネンのラグ紙(おそらく1758年の)と、ろ紙を水酸化カルシウム(pH 8.5)液に15分浸漬し、この処置を行わなかった試料と、アルカリ水で洗浄しただけの試料を、共にチューブ法により熱老化させ、その影響を、重合度、含水率、pH、耐折強度、引き裂き強度、色の各変化で見た。また、走査型電子顕微鏡、SEM/EDS、FTIRでも観測した。その結果、化学的・物理的なダメージはないことを確認した。さらに室温の洗浄水だけの洗浄と浸漬は耐熱老化性が非常に良好で、特に新しい紙の場合に顕著だった。なお、老化してブリットルになった紙の柔軟性が浸漬後に良くなったのは、水溶性のサイズ剤や添加剤が紙中から流されたためと推測される。


この論文の関連Web
Season Tse, Sherry Guild, Roberta Partridge, Maria Bedynski, Kyla
Ubbink :Activities at the Canadian Conservation Institute and Library and
Archives of Canada
http://www.knaw.nl/ecpa/ink/research_2.html

 

 


■ANTONIO ZAPPALA, CAROLINE DE STEFANI: Evaluation of the Effectiveness of Stabilization Methods. Treatments by Deacidification,Trehalose, Phytates on Iron Gall Inks.


抗酸化剤トレハローゼとの組み合わせで好結果
ろ紙に没食子インクを含浸させ、フィチン酸カルシウムによるキレート処置と炭酸水素カルシウムによる脱酸性化に加えて、トレハローゼを抗酸化剤として用いた場合の効果を見た。重合度とpHを計測した結果、キレート処置と酸化剤との組み合わせが最も効果が高く、脱酸性化と抗酸化剤のみでは充分な効果は得られなかった。また概して、一口に没食子インクといっても、歴史的に使われてきたレシピは多用で多種であることを考えると、劣化の実際の状態を化学的な術語で正確に表すことは難しいといえる。

 

 


■LORENA BOTTI, ORIETTA MANTOVANI & DANIELE RUGGIERO: Calcium
Phytate in the Treatment of Corrosion Caused by Iron Gall Inks: Effects on Paper.


フィチン酸カルシウムによるインク焼け処置は紙に悪い影響を与えず効果が
高い

没食子インクインク焼けはインクの中の過剰なFe2+イオンが触媒として機能し、セルロースの酸化劣化を加速させるものだ。フィチン酸カルシウムによるキレート処置はこうした焼けの進行を食い止める方法として世界的に定着しつつあるが、その処置の基材の紙への影響を見た。フィチン酸カルシウムと炭酸カルシウムとの組み合わせの効果が最も高く、紙への悪い影響も無かった。


この論文の関連Web
Lorena Botti, Orietta Mantovani and Daniele Ruggiero: Calcium Phytate, a
Natural Antioxidant to Counter Paper Corrosion Caused by Iron Gall Ink
www.asrm.archivi.beniculturali.it/CFLR/Dobbiaco/Poster/Abstract/Fitato_en.pdf

 

 


■GERHARD BANIK: Mass Deacidification Technology in Germany and its Quality Control.


ブックキーパー等の微粉末脱酸法は、紙中に生成される酢酸に効果なし
ヨーロッパですでに実用化されている脱酸性化法(ペーパーセイブ、ネッシェン、ブックキーパー、リベルテック)の効果を、German Research Association(Deutsche Forshungs-gemeinschaft: DFG)が開発した非破壊的な試験法で評価した。この方法はGC/MSを使ってセルロース劣化の指標となる二つの劣化生成物(酸加水分解によるフルフラル、酸化劣化による酢酸)を測るというもの。酸性紙をそれぞれの脱酸性化処置後に、これらがどの程度残っているかで各方法の効果を見た。いずれも液体の中で処置するネッシェン(水)とペーパーセーブ(HMDOという非水性液)は満足できる結果が得られた。しかし
酸化マグネシウムや炭酸カルシウムの微粉末を使う方法(ブックキーパー、リベルテック)は望まれる中和効果を達成するには遠く及ばなかった。さらに酢酸は、ネッシェンとペーパーセーブでは完全に除去できるが、ブックキーパー、リベルテックでは紙から除去することはできない。またこの論文の後半は脱酸性化法を実際に導入する場合の選択の仕方について、それぞれの方法の利点と欠点をどう組み込んでゆけばよいのかをワークフロー図(p.72)と共に述べている。


この論文の関連Web
Gerhard Banik "Technische Verfahren zur Papierentsauerung, Stand der Entwicklung Qualitatssicherung."
http://www.artconservation.nl/massaconservering.html

2005年5月18日(水)

UNESCO–ウエッブ上でのデジタル図書館の作り方マニュアルを無料頒布

UNESCO(国連教育科学文化機関)とFAO(国連食糧農業機関)はこのほど共同で、主に発展途上国の図書館人および専門家ではない人たちを対象にした、ウェッブ上でのデジタル図書館の作り方マニュアルを開発し、無料のモデュール・ソフト・キットとして頒布を始めた。ペンティアムI以上のOS上ではもちろん、これよりも古いOS上でも動く。発展途上国の人たちが自分の持っている情報をどのようにデジタル化し、インターネットを通じて世界に発信するかを、15時間の教育プログラムで独習できる。

 

ユネスコの関連ページ
http://portal.unesco.org/ci/en/ev.php-URL_ID=19096&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201.html

 

Digitization and Digital Libraries kit
http://www.fao.org/IMARK/modEdescription_en.htm

2005年5月17日(火)

保存修復学会発表–スギやキリ材の影響、酵素による古糊の製造などで成果

文化祭保存修復学会第27回大会が14、15日の両日、東京芸術大学(東京・台東区)で開催された。要旨集から、紙媒体資料の保存と修復に関連する発表を5件、紹介する。(文責:木部徹)

 

・早川典子(東京文化財研究所)ほか「古糊様多糖の調整とその物性について」:10年以上も竃中に寝かせて作る古糊を、原料澱粉に直接的に酵素を作用させて、同様の性質を得るという研究。低分子化のためにα-アミラーゼを採用、「老化」のために一週間以上5℃に保持し、さらに有機酸を添加することで、実際の古糊に近い接着力や、乾燥後のしなやかさを持つ糊を得たという(要旨集、p.64-65)。


・松田泰典(東北芸術工科大学)ほか「文化財保存箱用木材からの揮発性有機化合物(VOC)とその文化財材質へ与える影響–スギ材とキリ材の再検討」:発表者らのこれまでの研究ではベイスギ材、キリ材、スプールス材からはヒノキチオールと酢酸が、スギ材からは酢酸が検出され、一部の金属や顔料を変質させることが分かっている。今回はスギ(秋田県産で、天然乾燥の芯材と辺材、人口乾燥の芯材と辺材の4種)とキリ(福島県会津産で2年間天然乾燥させた1種)を使った保存箱を採り上げた。密閉瓶に鉛白や酸化鉛等の顔料(試薬レベル)と鉄や銅などの金属片、保存箱からの木材片を入れ、
40℃恒温槽で一ヶ月放置。その結果、どの樹種でも金属に錆が、顔料に変色が見られた(p.94-95)。

 

・及川規(東北歴史博物館)ほか「木質系収蔵庫内装材の揮発成分とその文化財質への影響(VIII)–文化財材質に影響を与えるベイスギ揮発成分の効果的な除去方法検討のための予備調査」:酢酸と並ぶ汚染因子と予想されるヒノキチオール(Hm)の有効な除去・抑止。Hmのシリコンゴム(Si)への変色現象を利用して、試験管内に除去剤(活性炭、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタンなど11種類)とともに封印、除去効果を見た。このうちHmに効果が高かった4種類および有機酸に有効とされる過マンガン酸カリウム、水酸化カリウムについてベイスギ揮発成分による文化財材質に対する抑制効果を検討し、Hm単独の除去には水酸化カルシウム、炭酸カリウム、酸化チタンが、ベイスギ揮発成分には水酸化ナトリウム、活性炭、炭酸カリウムが有効であることが分かった。今後、これらを組み込んだフィルタでの実際の収蔵庫での効果につていも検討するという(p.96-97)。新保千枝ほか「木質系収蔵庫内装材の揮発成分とその文化財材質への影響–ベイスギ揮発成分による鉛白黄変について」(p.98-99)も。


・小谷尚子(東北芸術工科大学大学院)ほか「感光性物質を用いた紙製複写画像資料の保存について(III)–シアノタイプ、ジアゾタイプの長期保存に向けて」:青写真(シアノタイプ)と青焼き(ジアゾタイプ)を対象に加熱、紫外線照射、ラジカル照射の各試験を行い、変退色を比較した。シアノタイプは光や熱に強い。ただし、プルシアンブルーの特性によりアルカリ性物質との接触(脱酸性化処置も含む)に注意する必要がある。ジアゾタイプの黄変はフェノールが酸素により酸化されるために起こり、紫外線により促進される。密封せずに暗所で大気との接触を避け、低温低湿に保つことが望ましい。(p.196-197)

 

・堀口智代(京都造形芸術大学)ほか「市販アルカリ糊化製澱粉糊の紫外線による変色」:伝統的な生麩糊と、市販の二種の糊(アルカリ糊化製造法による)の紫外線照射による比較と、市販糊の変色の原因の検討。市販糊は紫外線照射によって黄変し、また和紙に挟まれた状態でも変色した。紫外線を照射しないと変色しない。変色はアルカリ糊化の中和剤の硝酸が原因である。簡易な補修処置に市販糊を用いても、紫外線に注意することで変色は防げる。対象資料の価値や補修の緊急性、保管環境などを考えて使い分けたい。(p.202-203)

2005年5月16日(月)

紙パ技協–産業技術遺産の保存と継承のためのデータベースを拡充

紙パルプ技術協会は製紙産業技術遺産保存・発信活動の一環として、技術やニュースのデータベース化を進めているが、年表形式での年代別・分野別の設備技術動向等について大幅に拡充し、PDFとして公開した。この活動は製紙産業の技術遺産を保存・継承し、次世代の技術発展に寄与することを目的としたもので、技術の発展に関する資料を収集・保存し、その体系化をはかることと、資料を情報として発信することが内容。データベースには設備動向のほかに、1947年以降の製紙業界のニュースをまとめた年表、技術遺産
がどこにどのように残されているかをまとめた台帳、そして協会機関誌第一巻(1947年)からの総索引のデータベースがあり、戦後の「紙」の動向が一望できる。

 

http://www.japantappi.org/datebase_1.html

2005年5月16日(月)

2005年英国文化財保存修復賞にガラス乾板13万枚のコレクションも

image

 

2005年度の英国文化財保存修復賞(2005 Conservation Awards)の受賞者がこのほど決まった。このうちコレクションの手当てに関する賞では、英国田園生活博物館(The Museum of English Rural Life, University of Reading)が2003年から進めてきた13万枚に登るガラス乾板資料への保存手当ても含まれた。1万ポンドが贈られる。


この資料は英国の農村風景を記録したもので、時代を反映してか、1940年代のイギリス本土へのドイツの攻撃から守るべく「ガスマスクをした馬」等のユニークな画像も含まれる。


The 2005 Conservation Awards – Shortlists Announced Today
http://www.consawards.ukic.org.uk/news.html#shortlists2005

 

Agricultural Glass Negatives Preservation Project
http://www.ruralhistory.org/online_exhibitions/glass_neg/

 

■ Conservation Awards

2005年5月13日(金)

NARA–『独立宣言』等への保存処置で9月にコンファレンス

アメリカ国立公文書館(NARA)が9月22日に開催する第19回資料保存コンファレンスはParchment and Titanium: Preserving the Charters of Freedomで、先に行われた『独立宣言』、『合衆国憲法』『権利の章典』の三つの文書への保存処置を様々な視点から検証する。パーチメント(皮紙)は文書の基材を、チタンはこれら文書を収納・展示する特殊ケースの素材を表す。

 

National Archives and Records Administration (NARA) 19th Annual
Preservation Conference: Parchment and Titanium: Preserving the Charters
of Freedom.
http://www.archives.gov/preservation/conference-2005.html

 

 

■ほぼ日刊の2005年3月29日号「米PBSが『独立宣言』、『合衆国憲法』『権利の章典』へのコンサベーションをDVDで」も参照。
http://www.hozon.co.jp/hobo/archives/200503/hobo_0503.htm

2005年5月13日(金)

製本とブックアートのe-journal "BoneFolder" 最新号

image

 

製本家とブック・アーティストのためのe-Journal "BoneFolder" Vol.1 NO.2,Spring 2005 の主な内容は次の通り。


・ Critical Issues / Exemplary Works ? Johanna Drucker
・ The Book Arts Program at the J. Willard Marriott Library ? Madelyn Garrett
・ Tunnel Book: A Theatrical Structure ? Rand Huebsch
・ The Edelpappband, or “Millimeter” Binding ? Peter D. Verheyen
・ Faith ? Family ? Country: A modern family heirloom ? William Minter
・ The Practical Bench ? Roberta Lavadour
・ Books04: Works of Imagination ? Linda Carroli

 

このうちVerheyen によるThe Edelpappband は、ドイツから広まったブラデル(Bradel)製本を元にしたくるみ製本法の詳説。表装は紙だが、表紙の小口にクロス、革、ベラムなどを使い、耐久性と見栄えを向上させているのが特徴。


BoneFolder は以下からPDF(2.3MB)でダウンロードできる。


http://www.philobiblon.com/bonefolder/vol1no2contents.htm

2005年5月12日(木)

アメリカ議会図書館–活版印刷初期の木版本をWebで

image

イソップ物語(1521年刊行)

 

アメリカ議会図書館(Library of Congress)は、グーテンベルグから始まった活版印刷本初期の時代の、木版印刷を使った本を集め、A Heavenly Craft:The Woodcut in Early Printed Books としてWeb で公開した。同図書館の貴重書群であるローゼンバルド・コレクションのなかから選りすぐった。

 

A Heavenly Craft: The Woodcut in Early Printed Books.
http://www.loc.gov/exhibits/heavenlycraft/

2005年5月12日(木)

米キャノン社–インクジェット印刷物の耐久性でWIR社の認証プログラムを

アメリカ・キャノン社(Canon U.S.A., Inc)はこのほど、自社のインクジェットプリンターによる印刷物の長期安定性を裏付けるために、独立試験機関のWIR社(Wilhelm Imaging

Research, Inc)の画像耐久性試験プログラムによるインクと印刷用紙の試験を受けるとともに、自社製品にWIRの認証シールを貼付することを発表した。すでにエプソン、ヒューレッド・パッカード、レックスマークの各社がWIR の試験と認証を受け入れているが、今回キャノンが加わったことで、世界市場の9割以上を占める主要なプリンター・メーカー全社が出揃ったことになる。


WIR社の認証プログラムは画像の耐久性試験、そのデータ、認証シールから成る。耐オゾン性、耐高湿度性、耐水性などが試験され、展示時およびアルバム貼付/暗所保存で最低25年の耐久性が要求される。各社のインクや印刷用紙のデータはWIR社のサイト(ww.wilhelm-research.com)で公開されている。