IIFLA-PAC( 国際図書館連盟 資料保存コア・プログラム )国際センターの発行するニューズレター International Preservation News 最新号( No.39, October 2006)は次の記事を掲載している。
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Coralie Barbe et al. : La selection d’un cuir de tannage vegetal destine a des traitements de restauration de livres anciens : une etude en cours a la Bibliotheque nationale de France.
古い貴重書のコンサベーション処置用の植物タンニン処理した牛革の選択:フランス国立図書館の研究の現状報告
Nathalie Buisson : Programme de recherche de la BnF, 1994-2000 : conclusions de l’etude comparative des quatre procedes de desacidification de masse.
4つの大量脱酸性化処置法の比較:フランス国立図書館が1992年から2000年にかけて行った調査研究
Nathalie Buisson : Les principaux procedes de desacidification de masse : situation en 2004.
上記の調査研究の2004年時点の状況
Randy Silverman : Fire and Ice: A Soot Removal Technique Using Dry Ice Blasting.
火と氷:ドライ・アイスのブラスターで煤を除去する試み
Randy Silverman: Report Tsunami and Archives: The Unexpected Possibilities. Jakarta, Indonesia – 17-18 July 2006.
津波とアーカイブ:予期せぬ可能性、インドネシアでのシンポジウムの報告
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このうち最初の記事(p.4-8)、Coralie Barbe らによるコンサベーション用の革の研究について、少し詳しく紹介する。
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Coralie Barbe et al. : La selection d’un cuir de tannage vegetal destine a des traitements de restauration de livres anciens : une etude en cours a la Bibliotheque nationale de France.
フランス国立図書館は、Centre de Recherches sur la Conservation des Documents Graphiques (CRCDG)の協力のもとに2004年から表題の研究を進めている。この研究は欧州全体での Eivvironment Leather Project に基づくもので、ある種の新しい革を使ったコンサベーション処置がさらに劣化を促してしまうという現状の改善を目指している。
この現状は次の二つの理由による。
ひとつは、見栄えを優先させる処置が行われてきたこと。19世紀の"美麗な製本(reliures fines)"というファッションは、革を紙のように薄くして使うことを流行らせたが、これがコンサベーションにも導入され、結果的に非常に物理強度が低下してしまう修理が行われてきた。
二つ目の理由は革の製造自体の問題。19世紀初頭からに革は、なるべく早く造ることを要求されるようになり、また、新規の、しかし害のある薬品が製造工程に導入された。
現在は、ほとんどの鞣し(tanning)行程が、原皮(skin)を得る現地の国で行われるようになり、昔のように消費国で鞣しの行程をコントロールしながら革(leather)にすることが難しくなっている。耐久性のある製本用革の品質についても提供側は関心を示さない。一方、依然としてコンサーバターや修復家は見栄えを優先させた修理をしている。その例が、オリジナルの革装幀の欠損部を直す際に、この革の下に補修用の革を潜り込ませたいがために、挿入する部分をできるかぎり薄くして「綺麗」に見せるという処置だ。結果的には、オリジナルの革装幀よりも早く、補修用の革が劣化してしまい、再度の補修が必要になる。なんのための処置だったのか、というわけだ。
<写真:革で補修されたヒンジ部。上がオリジナルの革だが、すでに「新しい革」のヒンジ部に傷みが来ており、再度の補修が必要になっている。>
装幀革の劣化の問題と、丈夫な補修用の革の開発の歴史を見てみると、まず1905年にロンドンの図書館協会(Library Association of London)の調査が挙げられる。ここでは濃縮タイプのいくつかの植物タンニンが劣化の原因とされ、無酸の鞣しが推奨されたが、現実的には革の劣化は止まらなかった。1931年にはおなじく英国で革の耐久性試験「PIRA 試験」が開発され、これに則した「耐久性のある革」はPIRA試験をパスしているというラベルを貼付されて販売されたが、しかしこれも充分なものではなく、このラベルはいまは採用されていない。
1976年に英国図書館はアルミニウムと植物タンニンとの「コンビ鞣し」による耐久性のある革のレシピをつくり、実際にこれに則った革が市販されたが、疎水性が非常に高くて扱いにくく、歓迎されなかった。
今回のEnvironment Leather Project による協力プロジェクトはこうした歴史を背景にして立ち上げられたもので、植物タンニン鞣しの行程に焦点を当てて研究が進められている。すでにいくつかの成果や提言が発表されている(P. Larsen:The deterioration and conservation of vegetable tanned leathers – Status of the EU environmet leather project.)。
このプロジェクトの一環としてフランス国立図書館では植物タンニン鞣しの牛革(calf leather)に焦点を当てて研究している。この鞣し革は、製本やコンサベーションでは希にしか使われることはなかったが、しかしその耐久性は優れており、特に折ったり、曲げたり、凹ませたりといった「形作り易さ」への評価は高い。
一方、ヨーロッパ各国から40種類の革を集め、その品質を調べているが、うち四分の一はクロムの含有量が高くて「形作り易さ」に劣るなどの問題があり、選択の対象にはならなかった。
また現在、鞣しで使われている濃縮タンニンのうちのいくつかは、ある種の大気汚染物質と化合することで革の劣化の原因になっていることも判り、現時点では補修用に最適な革は見つからないという結果になった。
そこで今後の研究の方向は、科学的な試験を継続して、革に要求される品質を満たす条件の影響をさらに精緻に確認することと、プロジェクトに盛り込まれた提言の中身を改良してゆくこと、鞣し業者(tanneries)との共同作業を密にして技術的・理論的なデータを固めること、になる。
いずれ近い時期に、「補修用に適した諸物タンニン鞣し革」が実用化されることになろう。
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International Preservation News (IPN)
文責:木部徹