ほぼ日刊資料保存

必也正名乎

図書館やアーカイブ等の資料保存に関する世界のニュースを伝える、ほぼ日刊のページです。 土日・祝日は休刊します。 リンクも引用も自由です。

2006 年 3 月 のアーカイブ

2006年3月31日(金)

『シーボルト和紙コレクションの紙質調査』、データベース化で江戸期の和紙製造技術を明らかに

稲葉政満・東京芸術大学大学院美術研究科助教授を研究代表とした『シーボルト和紙コレクションの紙質調査』成果報告書がこのほどまとまった。文部科学省の平成16~17年度科学研究費補助金によるもの(特定研究領域 A A06. 内外特定コレクションの総合的調査研究:課題番号 16018207, 169pp)。


この報告書は1826年(文政9年)にシーボルトが収集し、現在はオランダのライデン国立民族学博物館が所蔵する和紙を中心に約400点の同館所蔵コレクションの紙質(寸法、厚さ、坪量、地合、簀の目間隔等)感覚を調査し、データベース化したもの。


先に行われた英国のV&A所蔵のパークスコレクション(1871年、明治4年、412種)の調査結果–今回の報告書に改訂版を掲載–と合わせると、他には、これだけまとまっての、生産地がわかっているコレクションがないことから、江戸時代の紙の製造技術を知る上での情報の基本がデータベース化されたといえる。地合や簀の目間隔についてはスキャナによる画像データの解析を行ったのも特筆されよう。


主な章目次は次の通り。


1. 研究の組織と概要
2. シーボルト和紙コレクションのキャラクタリゼーション
3. 画像処理による紙の分析
4. 琉球国文書と帰化紅紙

2006年3月30日(木)

国会図書館が調査・研究情報の総合ページ、新たに関連リンク集やRSS配信の収集も

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国立国会図書館は28日、「カレントアウェアネスポータル」 (Current Awareness Portal:CAPortal)」を試験公開した。同ページは、これまで『カレントアウェアネス』等を公開してきたホームページ「図書館に関する調査・研究」をリニューアルしたものだが、新たに、事務局が日々収集しているニュースや情報の速報を提供する『カレントアウェアネス=R』、収集のネタもとへのリンク集『カレントアウェアネス-Links 』、これらのリンク先のRSS配信情報を収集して提供する『LIS Headlines』–から構成される。「ここに来れば海外を中心として図書館界で今なにが起こっているのかほぼ分かる」というような総合的な図書館情報提供サービスを目指すとしている。新年度から正式スタートする。


Current Awareness Portal
http://www.dap.ndl.go.jp/ca/

2006年3月29日(水)

米議会図書館とCLIR、『アナログ・ディスクやテープのデジタル保存時のキャプチャリング』報告書

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アメリカ議会図書館(LC)と米国・図書館情報資源振興財団(CLIR)はこのほど共同でアナログ・ディスクやアナログ・テープからの音をデジタルで保存するためのキャプチャリングに関する規格の現状や最良の実行方法についての報告書 Capturing Analog Sound for Digital Preservation: Report of a Roundtable Discussion of Best Practices for Transferring Analog Discs and Tapes を出版した。この報告書は2004年にアメリカ議会図書館で開催された音響の専門家による円卓会議での発表をもとにしたもの。紙媒体での有料頒布とともに、PDFでもダウンロードできる。


Capturing Analog Sound for Digital Preservation: Report of a Roundtable Discussion of Best Practices for Transferring Analog Discs and Tapes
March, 2006. 37 pp. $20
ISBN 1-932326-25-1
ISBN 978-1-932326-25-3


http://www.clir.org/pubs/abstract/pub137abst.html<

2006年3月28日(火)

6月の文化財保存修復学会のプログラムが決定、紙媒体関連が多数並ぶ

6月3、4日の両日、国士舘大学(東京・世田谷区)で開催される文化財保存修復学会第28回大会のプログラムが発表された。今年は例年以上に紙媒体関連(アート・オン・ペーパー、写真も含む)の研究発表が多いのが注目される。また、近年美術館や博物館を中心に、その考え方と実践が普及し始めた虫・カビ予防対策プログラム(IPM)の実例が並んだのも特記できる。


紙媒体関連は、口頭発表では「料紙加飾技法 -打雲、飛雲について―」、「インドネシア・スマトラ沖大津波被災土地台帳修復支援の現況―」等の5つだが、ポスター・セッションでは全部で100の発表のうち25近くが、書籍や文書の記録資料や写真、そしてアート・オン・ペーパー関連になる。


詳細は下記で。


文化財保存修復学会第28回大会:セカンドサーキュラー
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsccp/06KOKUSHIKAN/2nd_c.html

2006年3月22日(水)

英国資料保存室が最大規模のニーズ調査、環境管理面での弱点を浮き彫りに

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英国ナショナル・プレザベーション・オフィス(National Preservation Office: NPO)はこのほど英国内の79の図書館や公文書館を対象にした保存ニーズ調査をまとめ Knowing the need: a report on the emerging picture of preservation need in libraries and archives in the UK, 2006 としてPDF(
1.45 MB)で出版した。この種のニーズ調査では過去最大の規模になる。


79機関の97コレクションと、43,687点の個別資料(総数で約2,800万点の図書、文書、写真他からランダムサンプリング法で抽出)を対象にした過去5年間にわたる資料保存ニーズ調査の結果、資料保存に関わる取り組みが全体に不足しているが、特に保存環境管理面ではこの傾向が顕著で、不安定な保管環境に置かれていたり、環境基準そのものが不適切であることが明らかになった。また、1850年代以降の資料が悪い環境下に置かれ劣化が進行していること、すでに媒体としての安定性がなくなっているものや利用されない資料を可能なかぎり少なくすること、他の安定した媒体への代替を効果的に行うことの必要性も浮き彫りになった。NPOはこの改善に向けて主要な機関と協力し、国や地域レベルでの大量脱酸性化や分担保存等の、ニーズに見合う保存戦略を進めて行くという。

 

060322-2

適切 不適切

 

http://www.bl.uk/services/npo/pdf/knowing.pdf>

2006年3月17日(金)

宍倉佐敏氏が紙の繊維分析の専門ラボを設立、修復対象紙や用紙等の裏付けに

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土佐雁皮紙のC染色液による染色(倍率は140倍)


和紙・洋紙の両方にまたがる各種の繊維分析の第一人者である宍倉佐敏氏(元・特種製紙)がこのほど繊維分析の専門会社「宍倉ペーパー・ラボ」を設立し、事業を開始した。


主事業の紙の繊維分析では、日本工業規格(JIS P-8120)に基づく方法で、資料に使用された植物繊維の判定と各種繊維の配合率推定、内部の添加物や加工剤の有無、叩解状況を判定する。また場合によっては製造年代も推定する。


分析の報告は報告書と繊維写真一対で、分析手順に従いその時点で得られた事柄を記し、資料の持つ総ての情報を報告する。写真は67もしくは100倍の繊維写真とC染色液で反応した実態写真になる。写真倍数は希望により25~500倍が可能という。


分析の費用は以下の通り(一回の依頼毎)


資料一点のみ    7,000円 (複数層紙は異層の数になる)
資料二点~九点まで 6,000円
資料十点~三十点まで 5,500円


これ以上の場合は事前の打ち合わせで。


以上の事業の他に、実物資料の出張調査、紙漉き、植物調査、講演会などの講師などになるが、事前の打ち合わせが必要になる。


宍倉ペーパー・ラボ
住所:静岡県沼津市大岡 2905-5
電話: 055-922-4107
FAX: 電話と同じ

 


■宍倉氏の仕事については「ほぼ日」内の次のリンクも

 

半流し漉きの発見–『高野山正智院伝来資料による中世和紙の調査研究』

 

山本信吉『古典籍が語る–書物の文化史』


■当社が依頼した分析の報告実例

 

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「歴代通鑑輯覧」(19世紀頃)


吸水は遅い。非常に脆い紙で繊維が短く単繊維化が難しい。紙表面は強い酸性反応を示す。


表面写真に観られるように、紙の状態では繊維は本来のカタチをしているが、酸化劣化により非常に脆くなっているため、繊維分散時に砕け、微細化されやすい。


繊維をC染色液で染めると、黄色と淡い灰赤色に染まる。黄色に染まった繊維はGP(機械パルプまたはグランド・パルプと称す)で60%、灰赤色の繊維はN-BSP(針葉樹の晒し亜硫酸パルプまたはサルファイト・パルプと称す)40%で製造されている。

2006年3月16日(木)

IFLA『デジタル情報保存のためのネットワーク-15国立図書館での実践』

国際図書館連盟(IFLA)はこのほど世界15ヶ国の国立図書館におけるデジタル情報保存のネットワーキングの現状をまとめたNetworking for Digital Preservation: Current Practice in 15 National Libraries を出版した。版元はドイツのSaur社。掲載国は日本の他、オーストラリア、オーストリア、カナダ、中国、デンマーク、フランス、ドイツ、オランダ、ニュージーランド、ポルトガル、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ。


Networking for Digital Preservation: Current Practice in 15 National Libraries By Ingeborg Verheul.
München: Saur, 2006, 269 p.
(IFLA Publications; 119)
ISBN 13 : 978-3-598-21847-7
ISBN 10 : 3-598-21847-8
Price: EUR 78 (IFLA Members EUR 58)


http://www.ifla.org/V/pr/saur119.htm

2006年3月16日(木)

原初の冊子製本法「コプト製本」を画像・テキスト・動画で学ぶ CD-ROM

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冊子形態の書物の製本法として最も初期のコプト製本の方法を、ステップ・バイ・ステップで、画像・テキストそしてビデオ・クリップにより学ぶことができるCD-ROMが出版された。 19ドル。

 

http://www.papierdesign.de/cd_kopt_engl.html

 


■関連サイト
University of Iowa Libraries: Bookbinding Model Collection
http://www.lib.uiowa.edu/conservation/models/index.htm

2006年3月15日(水)

JAIC最新号、酸化資料の水性での中和+抗酸化+アルカリ化と、「布海苔」の文献レビューを掲載

アメリカ文化財保存修復学会の機関誌(Journal of the Amrican Insutitute for Conservation of Historic & Artistic Works:JAIC)の最新号(Vol. 44, No.2, 2005)は酸化した紙媒体資料をおだやかなアルカリ域で中和し、さらに抗酸化と脱酸性化(弱アルカリ化)を行う新しい方法と、日本では古くから表具他の分野で使われてきた布海苔のコンサベーションへの適用に関する、欧米からの新しい視点を掲載している。


■John Bogaard et al. A Method for the Aqeous Deacidifi-cation of Oxidised Paper. (p.63-74)
pH が中性域の塩(えん)の水溶液による光酸化した濾紙への安定化効果を見た。いくつかの塩の水溶液で実験したところ、短時間の浸漬で酸性紙は中和されたが、この処理後に、過剰な塩を洗い流す処置をしないと紙が黄ばむことが多い。しかし塩化カルシウムでの処置では化学的な劣化は認められず、未処置の濾紙と比較しての熱劣化試験でも劣化の進行は緩やかであることが分かった。希釈した水酸化カルシウム水溶液での洗い流しは、さらに効果的であった。またこれらの処置と水酸化ホウ素ナトリウム水溶液での還元処理を組み合わせると、還元漂白効果だけでなく、酸化した紙への抗酸化効果も増大することも分かった。一般に塩素(Cl)はコンサベーションの分野では「嫌われもの」だが、塩化カルシウムは穏やかな中世域の水溶液ができて、銀や亜鉛を除く、他の紙中の金属化合物との相性も良いので、今後実際の、酸化劣化した紙媒体資料への応用が期待できる。

 

■Joseph R. Sweider et al.   FUNORI: Overview of a 300-Year Cosolidant. (p.117-126)
日本の表具師には馴染み深い布海苔は、接着剤や顔料の定着剤等として300年以上前から使われてきたが、その効果や影響の科学的な解明は充分ではない。東洋美術の収集で名高いフリア・ギャラリー/アーサー・M・サックラー・ギャラリーの保存科学研究部門でも紙媒体や東洋美術の修復に布海苔を15年以上使用してきた。この論文では、欧米での関心が高まっている布海苔の有効性と影響について、日本を含む各国でどのような知見の蓄積や研究が行われてきたかを文献上で調べまとめている。

2006年3月15日(水)

IADA 50周年記念大会は今年9月にウイーンで

ドイツ語圏を中心にした紙媒体資料のコンサーバターの組織 Internationale Arbeitsgemeinschaft der Archiv-, Bibliotheks- und Graphikrestauratoren(IADA)の今年度の年次大会は、同会の創設50周年にあたり、例年にない規模で今年9月17-20日にウイーンで開催される。現在、発表者を募集中。


XIth IADA Congress – 50th Anniversary of IADA
http://palimpsest.stanford.edu/iada/text_wie.html

2006年3月15日(水)

独語『紙のカビ被害:修復家のためのマニュアル』が上梓

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ドイツのコンサーバターと保存科学者が協力して執筆した、紙媒体のカビの被害とコンサベーションの本が出版された。


Christina Meier und Karin Petersen : Schimmelpilze auf Papier. Ein Handbuch für Restauratoren; biologische Grundlagen, Erkennung, Behandlung und Prävention. Tönning: Der andere Verlag. 2006.
ISBN: 3-89959-431-2


http://www.buparestaurierung.de/documents/meier_umschlag_version1.pdf

2006年3月13日(月)

アイオワ大学図書館がハリケーン災害救助を音声ストリーミングで報告、オンラインの動画も

アイオワ大学図書館は昨年アメリカ南東部を襲ったハリケーンによる図書館災害からの資料救出活動支援サイトを設置しているが、このほど同図書館資料保存部門長であるギャリィ・フロスト(Gary Frost)の報告を掲載した。約46分の、リアル・プレイヤー用の音声でのストリーミング。また同サイトには、オンライン日刊新聞の The Daily Iowan へのリンクがあるが、ここでは動画(2分程度)でフロストによる救助ワークショップの模様を見ることができる。


Library Preservation, University of Iowa, Preservation Activities: Mississippi Disaster Recovery
http://www.lib.uiowa.edu/preservation/pages/news/katrina.htm


■Frost らの救助活動については以下の、国際図書館連盟(IFLA)資料保存委員会の機関誌 International Preservation News, No.37 (December 2005) の Disaster Recovery in the Artifact Fields –Mississippi After Hurricane Katrina がある。


http://www.ifla.org/VI/4/news/ipnn37.pdf

2006年3月13日(月)

CLIR、資料保存諮問委員会を設置し、来春に勧告書

米国の図書館情報資源振興財団(Council on Library and Information Resources:CLIR) はこのほど、同財団の主要4分野での活動のひとつである「資料保存」についての諮問委員会を設置した。すでにこの2月に第一回の会合を開催したが、来年春を目標に諮問委員会としての勧告をまとめる予定である。 委員には国内の図書館情報学の教育者、国公立・研究図書館員のほか海外からオランダ国立図書館、そして出版社の Elsevier からも専門家を招聘している。


CLIR Appoints Preservation Advisory Committee
http://www.clir.org/pubs/issues/issues50.html#pres

2006年3月10日(金)

8月開催の「アジアの資料保存」国際会議のプログラムが国会図書館の英文サイトに発表

今年8月16, 17 日に国立国会図書館で開催される「アジアの資料保存(Preservation and Conservation in Aisa)」国際会議のプログラムが国会図書館の英文サイトに発表されている。発表者と内容は以下の通り。


・アジア地域におけるIFLA/PAC コア活動(IFLA/PAC 総センター長もしくはアジア地域センター長)
・東南アジア地域の資料保存教育(ジョン・ディーン、元コーネル大学図書館保存修復課課長、USA)


■発表者の関連Web


Library Preservation and Conservation Tutorial: Southeast Asia
http://www.librarypreservation.org/meolda/index.html

John F. Dean, Conservation and Preservation in the Digital Age
http://libwww.syr.edu/information/spcollections/brodsky/JohnDeanLecture2005.pdf

 


・東南アジア地域の資料保存活動と協力の問題と将来(ルジャナ・アブハコーン、元チェンマイ大学教授、タイ)


・紙およびパーム・リーフ媒体アジア資料のコンサベーション(O.P. アグラワル、インド文化財保存修復機構、インド)


・中国の新聞マイクロ化とデジタル化(リ・チュンミン、中国国立図書館新聞・定期刊行物課課長補佐)


ネパールでの資料保存協力:パーム・リーフ写本のコンサベーションとデジタル化のための訓練(国立国会図書館、アジア文化財保存修復会)


・記録文化財の保存のためのメディア変換(コーリン・ウェッブ、オーストラリア国立図書館資料保存課課長、IFLA/PAC 東南アジア・オセアニア地域資料保存センター長)


Preservation and Conservation in Asia
http://www.ndl.go.jp/en/iflapac/preconference/program.html

 


■上記の英文での人名、肩書き、機関名および表題の日本語訳は「ほぼ日」によるもの。

2006年3月9日(木)

古糊に関する新知見– 東京文化財研究所の早川研究員が TOBUNKENNEWS 最新号で

独立行政法人文化財研究所・東京文化財研究所の TOBUNKENNEWS(No.24, 2006)は早川典子研究員による「古糊に関する新知見」を掲載している(p.12-13)。

 

古糊は小麦デンプン糊を十年ほど寝かせた後に表具の接着剤として用いられてきたが、科学的な解明が不足していた。早川氏らの研究によると、古糊の物性については、デンプンの老化(再結晶化)が著しいこと、分子量が小さくなっているこ、デンプン分解物と思われる有機酸を多く含むこと、などが明らかになった。デンプンの老化とは長い期間に分子が再結晶して行く現象だが、これが古糊のように進むと、接着の際に分子同士が絡みにくくなり、水によって剥離しやすくなる。これが最修理しやすい原因になる。また古糊の保管中に生じる表面のカビの酵素がは低分子量化に寄与していることも分かった。

 

こうしたデータを元に、短期間で同じような「古糊」を作ることができないかとし、林原生物化学研究所の協力を仰いで、小麦デンプン糊に人為的に酵素を作用させ、さらに有機酸を添加することで数週間で古糊とよく似た物性を持つものを得ることができた。有機酸は本紙に大きく張力をかけることなく接着力を向上させる働きをしている可能性が高く、濃度が高くなければ、有機酸の存在は合理的である。また、古糊の打ち刷毛での使用、そして裏打ち紙の美栖紙や宇陀紙との組み合わせの合理性についても知見が得られた。

 

TOBUKENNEWS NO.24 (2006)
http://www.tobunken.go.jp/~joho/japanese/publication/pdf/N024.pdf

2006年3月9日(木)

宮内庁書陵部の蔵書を「写す・裁つ・綴じる」の視点で解説

 

060309

櫛笥節男著『宮内庁書陵部 書庫渉猟 書写と装訂』が出版された。平成14年度の書陵部恒例展示会における「書写と装訂ー写す・裁つ・綴じる」の目録に沿って、宮内庁書陵部図書課が蓄積してきた貴重書を豊富なカラー写真とともに紹介している。目次は以下の通り。


1 古典籍の形態
2 書写と道具
3 複本作製
4 綴じ方いろいろ
5 装訂名称の混乱と経緯
6 本の大きさと紙
7 様々な改装
8 古今伝授資料
9 その他
10 帙
参考


櫛笥節男(くしげ せつお)著『宮内庁書陵部 書庫(ふみくら)渉猟 書写と装訂 』
出版社 おうふう
2006年2月発行
価格(税込) 3,990円
ページ数/版型 239P 21cm
ISBN 4-273-03396-8


http://books.yahoo.co.jp/book_detail/AAQ85613/


おうふう
東京都千代田区猿楽町1-3-1
TEL:03-3295-8771 FAX:03-3295-8778
E-mail:eigyo@ohfu.co.jp

2006年3月8日(水)

IFLA資料保存分科会、災害予防と計画のための要約マニュアルをPDFで提供

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国際図書館連盟資料保存分科会(IFLA-PAC)はこのほど、シリーズ International Preservation Issue の No.6 として "IFLA Disaster Prepareness and Planning: A Brief Manual"を上梓した。図書館資料への災害の防止策と計画の立て方を、必要にして充分なエッセンスだけマニュアル化したもの。主な目次は以下の通り。


リスク・アセスメント
予防と保護
防災計画
被災への対応
救助・復旧
付録:必要資材リスト


紙媒体に印刷したものとは別に、下記からPDFでもダウンロードできる。
http://www.ifla.org/VI/4/news/ipi6-en.pdf

2006年3月8日(水)

S.H. クレス基金、ルネサンス絵画を中心にしたコンサベーションの研究と実践の本が出版

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ルネサンス期に描かれた絵画を中心にした Samuel H. Kress コレクションのコンサベーションに関する本が出版された。143のカラーと48のモノクロ画像を駆使したもので、ニュー・ヨーク大学ファイン・アート研究所コンサベーション・センターが全面的に協力している。前半は、ヨーロッパおよびクレス・コレクションの絵画に対するコンサベーションへの歴史的な研究、後半はイタリアとオランダの絵画のコンサベーションから得られた保存科学や人文科学的な知見をまとめている。


Studying and Conserving Paintings.
Paperback, 230 pages,
143 colour and 48 half tone illustrations
Archetype Publications
ISBN: 1-904982-06-9
$50


http://www.jgpubs.com/s_and_c_paint.html

2006年3月6日(月)

動画フィルムのケア・取り扱いと保存の方法を動画で学べるサイトが発足

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アセテートフィルムの酢酸による自壊と、カビによる被害


映画等の動画フィルム媒体の保存や、傷まないような日常のケアと取り扱い扱い法を、50秒~20分程度の動画で学べるサイトVideo Aids to Film Preservation (VAFP)が発足した。「フィルムにカビが発生しているのを知るには?」、「縮んでしまったフィルムとは?」、「リールの巻きがゆるんだらどうするか?」等の、フィルムの取り扱いに関する基本的な問題に応える動画を見ることができる。また、フィルム・ラボの専門家による、傷んだフィルムの修復法についても、その行程をわかりやすく解説した動画もある。MPEG-4もしくはリアル・プレイヤー形式のストリームでの鑑賞とともに、ダウンロードもできる。

 

Video Aids to Film Preservation
http://www.folkstreams.net/vafp/

2006年3月3日(金)

東京大学経済学部資料室が蔵書の劣化調査報告書を上梓、脆弱化した本紙は全体の20%にも

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東京大学経済学部資料室はこのほど『蔵書劣化調査報告書』を上梓した。昨年末に行った所蔵資料18万点の劣化状況と、その結果を踏まえた各種の対策をまとめたもの。


同資料室の所蔵資料は、政府や地方自治体の刊行物、民間団体刊行物、旧植民地資料等、多岐に渡る。いわゆる灰色文献や、国や企業、労働組合の意志決定に関わる一次資料も多く、現在では同資料室しか所蔵しないものもある。しかし、その保存状態は一般の書籍に比べると良好とはいえず、特に戦中から昭和30年代の資料の劣化が著しい。その劣化状況の全体を把握し、講ずべき対策を明らかにする目的で行われたのが今回の調査である。


同種の蔵書劣化調査は、過去にも他機関での例があるが、今回の調査は、いわゆる一般書籍ではない蔵書が対象であること、また本文紙の酸性劣化と同時に製本の構造的な劣化も調べたところに特徴がある。具体的には、資料を見開いた場合の「見開き易さ/難さ」や「綴じ方」、「綴じ位置」等を調査項目に盛り込んだ。例えば針金で平綴じされていて本文紙の劣化が激しいものは、現在は損壊していなくとも、閲覧やコピーで損壊する可能性が高いことになる。こうした「利用」による劣化を予測するとともに、具体的な対策であるマイクロ化等の代替や再製本の難易も予測できることになる。


18万点の中から、約800点をランダムサンプリングし、43の調査項目でチェックした結果、本文紙が酸性の資料は71%、本文紙が脆弱化(brittle, very brittle) しているものは21%、見開き性が悪く、閲覧やコピーで損壊する可能性があるものが48%–等々が明らかになった。


また、今回の調査は、以上の劣化に対する具体的な対処策を提示していることにも特徴がある。本文紙が脆弱化している資料はマイクロやハードコピー等の代替化を優先させる、本文紙が酸性だが、まだ脆弱化していないものは脱酸性化する–等々である。


なお、この調査は企画段階から当社もお手伝いをした。


『蔵書劣化調査報告書』(2006年1月20日発行)に関する問い合わせは東京大学経済学部資料室(電話:03-5841-5591)へ。


『蔵書劣化調査報告書』 (PDF 2.3M)
http://www.lib.e.u-tokyo.ac.jp/shiryo/hozon/hokokusho_01.pdf


資料室のホームページ
http://www.lib.e.u-tokyo.ac.jp/shiryo/shiryo.html

2006年3月2日(木)

英国図書館、過去最高の補助金で書籍の劣化の「環境要因」と「劣化時の揮発性有機物」を研究へ

英国図書館(British Library)はメロン財団から69万5千ドルの補助金を受けて、蔵書の劣化への環境の影響と、書籍が劣化し発生する臭気ガスと劣化速度との関係を研究する二つのプロジェクトをスタートさせることになった。この補助金の額は、図書館資料の保存と修復の研究に与えられるものとしては過去最高になる。プロジェクトは英国図書館を中心に、国内の5つの法定納本図書館、2つの公文書館、2つの大学図書館が協力し実行される。


最初の、蔵書劣化の環境要因に関する研究プロジェクトは4月1日からスタートする。異なった複数の国内図書館が所蔵する同じ図書の劣化状態を比較し、保管環境が劣化状態にどのように影響を与えているかを調べ、最適な保管環境とは何か、どのような資料が劣化のリスクが高いかを予測できるようにする。


二番目のプロジェクトは1年後にスタートさせる計画である。古書特有の「臭い」は、古書の紙が劣化するときに発生する揮発性有機物(VOC)であるが、有機酸を含むこれらのガス状の化合物は、紙の種類によって異なり、その多寡や発生ガスの同定は、本文紙の劣化レベルの指針になると推測されている。酸によるひどい劣化に至る前に、このガスをチェックすることで、予防措置が執れるようになると期待される。

 


■VOC発生の関連文献:


Lattuati-Derieux, A.  et. al.  Identification of volatile organic compounds emitted by a naturally aged book using solid-phase microextraction/gas chromatography/mass spectrometry , Journal of Chromatography A, Vol. 1026, No. 1, p. 9-18 (2004)


Shahani, Chandru J. et. al.  Spontaneous formation of acids in the natural aging of paper. Works of Art on Paper Books, Documents and Photographs. Techniques and Conservation, Contributions to the Baltimore Congress 2-6 September 2002, p. 189-192 (2002)


佐野千絵 他、 劣化の紙中に生成される有機酸の種類と定量、文化財保存修復学会第24回大会研究発表要旨集、 p. 122-123 (2002)