国立公文書館の機関誌『アーカイブズ』最新号(第.24号、2006/7)は尾立和則氏(絵画・文書修復家)による「資料所蔵施設における防災と救済計画」を掲載している(p.57-63)。以下は各章の要約。章タイトルは原文ママ。
はじめに
阪神・淡路大震災(1995年)を契機として資料所蔵施設における防災意識が高まり、これに応えて施設の機材販売業者は展示ケースの改良や内装材の改良を行い、施設側も防災対策の見直しを行った。それも震度7クラスの大きな災害への対処というだけでなく、現実的な策として、既存の設備でどのように対応するのかという情報の交換が行われるようになったことは注目して良い。
1. 防災計画
防災担当部署を設置し、建物の構造と設備への理解から始め、被害を最小限に抑えるための必要なことを明文化し、改善可能なことから順次実施する。
1.1. 防災計画は誰が作る
防災計画の作成は、自館の条件と同等の他機関でのそれを参考にし、保存担当部門と他の各部門とが共同して行う。防災意識を館全体のものにするためにも共同作業は必要であり、逆に失敗例として多いのが保存担当者任せにする場合である。建物本体や周囲への環境問題は法規則に準じて対策を講じる。備品の確認は職員自身で行うことが必要だ。
1.2. 緊急連絡網
災害発生時の、職場内と外との緊急連絡網を整備し、いつでも目に触れるようにしておく。
2. 救済計画(館蔵品への対応)
あらゆる被害に対してひとつの救済計画というのではなく、被害の規模によって、①被害時に館内にいた職員だけで対応、②出勤していない職員も動員しての対応、③外部の専門家(消防署、空調、冷暖房、コンピュータなどの建物や一般設備関連、防火設備関連、収蔵庫や書庫等の収蔵設備関連等々の各分野での専門家を指す)の応援による対応–というように複数用意し、それぞれに細かな作業マニュアルを作る。この際も他館のものを参考にすると共に専門家に助言をもらう。
2.1. 救済計画の目標
業務全体の復旧の進行に合わせた、救済の期間や程度を設定する。救済活動は応急手当というべきものだが、この活動によって被害の実態が明らかになり、復旧予算全体が把握できるようになる。活動の写真や映像の記録を残すと、復旧予算だけでなく、各種保険への基礎資料になる。また、緊急に行う保全処置ではあるが、処置のままの状態で何年も経過することもあるので、これを考慮した救済時の方法や資材を選択する。修復作業は可能な限り専門家の立ち会いや助言を求める。修復の優先順位の判断は館が行うが、処置難易度の判定は修復家に頼るしかない。
2.2. 館内の指揮系統を明確化
計画遂行のためのマニュアル完備と共に重要なのが指揮系統の明確化である。救済計画は防災担当部署が管理し、各部署との円滑な連携を図る。もうひとつ重要なことは広域災害時の対応である。自館が被災していない場合でも、周辺が被害を受け、その影響が自館に及ぶことがある。また、救援活動を求められる場合もあり、こうしたことを救済計画に盛り込むかどうかも協議する。さらに広域災害時には緊急の支援組織が立ち上がる場合があるが、主体が行政か任意団体かで支援内容が異なってくるので、組織に加わると依頼する場合とに応じた意思統一を図っておく。
まとめにかえて(防災計画とは大災害用なのか)
資料収蔵機関における災害とは震災だけではなく、豪雨による水害、火災や施設損壊による資料の損傷、台風等の被害も含む。また開館時の閲覧者への安全対策、停電や不法侵入者、落書き、害虫の発生からテロ対策なども含む。これらへの緊急連絡から応急処置までの流れを明確にしておく。
【要約文責:木部徹】
国立公文書館『アーカイブズ』第24号は同館から入手できる。また、12号から 再近号(No.23)までの全文が、以下のページにPDFで公開されている。
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