英国立公文書館(The National Archives:TNA)はこのほど、アーカイバル容器(archival boxes)用の各種ボードのための試験法と、市販のボード6種類の評価試験結果を発表した。この試験評価プログラムには英国図書館(BL)も協力している。
収納物の長期保存に適した品質を持つアーカイバル容器は欧米でも複数のメーカーで製造、販売されているが、そもそも「アーカイバル品質」なるものの厳密な定義が無く、保存容器として規格化されているわけでもない。各メーカーがそれぞれ、既存の紙の規格(書籍の本文紙向けのISO 9706:1994 パーマネント・ペーパーの規格など)を当てはめ、ボードの仕様として掲げているのが現状であり、アーカイバル容器の材料に特定した規格はなかった。
今回、英国立公文書館と英国図書館が協力し立ち上げたプログラムは、図書館や文書館そしてコンサベーションの現場で使用される主要な材料に対して、より厳密で信頼性のある情報を提供し、材料あるいは製品を選択する際の「基準」にするというものだが、その第一段として今回、保存容器に使用されるボード(厚紙、板紙)が採り上げられた。
その特徴は、アーカイバル容器用のボードして「適している」、「適していない」に2分するのではなく、耐久性(permanence)の指針となる化学物性を調べる7つの試験と、耐用性(durability)の指針となる物理物性を調べる5つの試験を適用し、使用目的に合わせてボードの品質を3つの等級(grade)に分けたところにある。耐久性と耐用性の定義および3つの等級は次の通り。
耐久性(Permanence): 長期に渡り化学的・物理的な安定性を保持する力
耐用性(Durability): 使用中に損耗や破れが生じにくい力
グレード1:耐久性も耐用性もあるボード(Board Permanece and Durable)
収納物の恒久的な保存と、容器自体の恒久的な使用に適したもの。高いレベルの化学的な安定性を持ち、その組成物や、それの(経時劣化による)副生成による相互の影響がない材料で構成されていること。長繊維のパルプの使用は強さと長寿を与えよう。
グレード2:耐久性のあるボード(Board Permanence)
グレード1と同様に、収納物の恒久的な保存と、容器自体の恒久的な使用に適したボードであるが、場合によっては、物理的な保護力はそれほど必要としない用途で使われる。高いレベルの化学的な安定性を持ち、その組成物や、それの(経時劣化による)副生成による相互の影響がない材料で構成されていること。ただし短繊維のパルプの使用により、強さと長寿はそれなりのレベルになる。
グレード3:耐用性のあるボード(Board Durable)
物理的な堅牢さが第一条件になり、したがって保存容器としては短期間の使用(例:輸送や一時的な保管)の限定した容器に使用される。こうした輸送や保管時に収納物を保護するだけの高い物理的な保護力を持つ構造のためのボード。
耐用性の指針になる物理物性試験(Strength Qualities: an indication of durability)
引っ張り試験、坪量に則した引っ張り強度インデックス、引き裂き試験、破裂試験、同インデックス
6種類の市販製品での試験結果は以下のように発表されている。
Board test results
以上を踏まえた、英国立公文書館としての「容器用のボードに対する要求仕様」が
Box board specification
として提示されているが、内容は以下の通り。
グレード1:耐久性も耐用性もあるボード(Board Permanece and Durable)
晒し化学パルプ 100%
pH 7.5-9.5
Kappa価は5を越えない、もしくはリグニン含有量が1%未満
アルカリ残留量は2~5%
中性内填サイジング
残留硫黄分は0.0008% 未満
(接着剤は)可塑剤を含まない中性域のEVA
蛍光剤を含まない
可塑剤を含まない
金属粒子、ワックス、残留漂白剤、その他、収納物がボードに直接接触しているときに、収納物の劣化に結びつくおそれのある物質を含まない
グレード2:耐久性のあるボード(Board Permanence)
Kappa価は5を越えない、もしくはリグニン含有量が1%未満
晒し化学パルプ そして/もしくは機械パルプ100%
pH 7.5-9.5(※)
アルカリ残留量は2~5%
中性サイジング
残留硫黄分は0.0008% 未満
(接着剤は)中性域のEVA
蛍光剤を含まない
可塑剤を含まない
金属粒子、ワックス、残留漂白剤、その他、収納物がボードに直接接触しているときに、収納物の劣化に結びつくおそれのある物質を含まない
※写真の恒久的な保管のための容器に使われるボードは、pH 6.5-7.5、残留硫黄分は0.0008%未満、アルカリは含まず、PAT(Photographic Activity Test)をパスしていること。
グレード3:耐用性のあるボード(Board Durable)
晒し化学パルプ そして/もしくは機械パルプ100%
この仕様は同公文書館向けに特定したものであり、世界のどこの機関でも当てはまるというわけではない、としながらも、新しい知見が得られる時を繰り込みながら変えてゆくことになり、他の機関でも参考になろう、と補足している。
なお、英国図書館との協力によるこの材料・製品評価試験プログラムの第二弾は、「接着剤」が予定されている。
Evaluating archival box board
(文責:木部徹)