文化庁は文化財保存のための伝統的な技術や技能を広く一般に紹介するため「文化財保存技術2007」を10月6、7日の両日、石川県金沢市で開催する。文化財保存の選定保存技術フォーラムとして保存技術の名匠の技についての講演、インタビュー、技術展として選定保存技術団体による活動紹介、パネル展示、体験ワークショップなどが予定されている。紙媒体関連では国宝修理装こう師連盟、全国手漉和紙用具製作技術保存会が参加する。
2007年9月28日(金)
文化庁が「文化財保存技術2007」を10月6~7日に金沢で開催、パネル展示やワークショップなど文化庁は文化財保存のための伝統的な技術や技能を広く一般に紹介するため「文化財保存技術2007」を10月6、7日の両日、石川県金沢市で開催する。文化財保存の選定保存技術フォーラムとして保存技術の名匠の技についての講演、インタビュー、技術展として選定保存技術団体による活動紹介、パネル展示、体験ワークショップなどが予定されている。紙媒体関連では国宝修理装こう師連盟、全国手漉和紙用具製作技術保存会が参加する。
2007年9月26日(水)
欧州全域のアーカイブに対して「デジタル記録の長期保存」に関するアンケート調査をウェッブ上で開始
チェコ共和国国立図書館はこのほど、欧州全域にまたがるデジタル記録保存のための協力組織DPE(Digital Preservation Europe)からの委託によるアンケート調査 ‘Survey on long-term preservation’ を、欧州のアーカイブを対象に開始した。同種の調査は今年初めには全欧州の国立図書館を対象に行われている。10月20日が〆切。質問項目は全部で7つで、デジタル記録の保存は戦略的な優先性を持つか、信頼できるレポジトリを持っているか–等。
Digital PreservationEurope Survey on long-term preservation issues in European institutions
2007年9月26日(水)
IFLA『写真の手入れ、取り扱い、保存』の邦訳全文がPDFで国会図書館のサイトに掲載
(日図協の刊行物の表紙)
国立国会図書館の資料保存のサイトに国際図書館連盟(IFLA)資料保存コア活動(IFLA/PAC)が発刊した“Care, Handling and Storage of Photographs”の邦訳『写真の手入れ、取り扱い、保存』がPDFで掲載された。印刷物としての日本語版は昨年、日本図書館協会から刊行されたが、日本語訳を担当した国会図書館のサイトににも掲載され、より幅広く活用できるようになった。原本はアメリカ議会図書館のマーク・ルーサにより執筆、その後アップデートが行われIFLAの刊行物として2004年に出版されている。日本語版には国内の参考文献も掲載されている。
1 はじめに 7
2 写真の構造 8
3 識別 8
4 写真方式の変遷 9
5 コレクション管理 10
6 劣化 12
7 清掃 19
8 化学現像処理と画像の安定性 19
9 保存方法と保存用包材 20
10 デジタル出力,ハードコピー 28
11 取り扱い 30
12 謝辞 32
13 参考文献 33
14 規格 39
国内刊行の参考文献 40
2007年9月21日(金)
巨大なシンクロトロン放射光設備による赤外線や紫外線で「固着して開かない本」の内容を読む
英国のコンサベーション協会(ICON)のホームページは、南オックスフォードシャイアに設置された巨大なシンクロトロン放射光設備 Diamond Ligth Sorce を使って、「固着して開かない本」を読む技術について掲載している。
シンクロトロンとは円形加速器の一種。 電子を光の速度にまで加速させるために、強力な磁石と無線周波数を活用し、太陽の光の何百万倍という輝度の高い光が作り出される。 Diamond Ligth Sorcはサッカー競技場5つ分という巨大な設備で、これによる赤外線、紫外線、遠赤外線を利用すると、水濡れやインクの劣化、媒体自身の劣化等によって、そのままひらくと壊れてしまうような巻物や冊子の中身を三次元的に画像として取り出すことができる。ページが重なってしまっている部分も画像処理で解析する事で特定のページの内容を取り出すことができるという。ICONのホームページでは没食子インクにより固着してしまったパーチメント(羊皮紙)冊子の解析の試みを紹介している。
2007年9月20日(木)
CLIR、Googleやマイクロソフトによる大規模デジタル化計画の問題を探る『白書』への一般からのコメントを募る米国の図書館情報資源振興財団(Council on Library and Information Resources:CLIR)はこのほど発表した白書『大規模デジタル化時代の資料保存』(Preservation in the Age of Large-Scale Digitization)に対しての一般からの意見(パブリック・コメント)を募っている。白書ではGoogle, Microsoft, そして Open Content Alliance等による書籍の大規模なデジタル化計画が進展する中で、果たしてこうした記録が時を越えてアクセス可能な形で残るのか、また従来の紙媒体に印刷された記録との整合はと問いかけ、資料保存戦略の再考を促すいくつかの提言を行っている。執筆はコーネル大学のOya Rieger( Interim Assistant University Librarian for Digital Library and Information Technologies, Cornell University Library)。.コメントの締め切りは10月5日。白書の原文(PDF)は下記から入手できる。
Preservation in the Age of Large-Scale Digitization By Oya Rieger
2007年9月19日(水)
英国図書館の「危機に晒されているアーカイブ」救済プログラムによる助成の申請を受付へ英国図書館の「危機に晒されているアーカイブプログラム」(Endangered Archives Programme)は来年度の基金からの助成を申請する申し込みを始めた。この助成金交付は世界中の研究者に開かれている。下記のホームページから書類をダウンロードして交付の申し込みができる。対象となる記録資料は本、雑誌、新聞、手稿、絵画、ポスター、写真等の他紙媒、AV資料、デジタル・データなど幅広い。詳細は下記で。
2007年9月19日(水)
和紙文化講演会『料紙加工の伝統–手漉き紙の多彩な展開』が12月に開催和紙文化研究会は12月9日(日)に昭和女子大学グリーンホール(東京・世田谷区)で第15回和紙文化講演会をかいさいする。今年のテーマは「料紙加工の伝統–手漉き紙の多彩な展開」で、平安時代の料紙加工(大柳久栄)、植物染の技と美(吉岡幸雄)、経師等による加工紙や装飾紙の歴史(半田正博)等が予定されている。
参加費は一般が3,500円、定員250名、締め切りは11月30日、郵便振替用紙に住所、氏名、電話・FAX番号、所属等を書いて、参加費と共に郵便振替00170-8-402506 和紙文化講演会に。軸曲の特設電話は080-6730-8581。
2007年9月14日(金)
イタリアの研究者、「ナノレベルの磁石を埋め込んだジェル状のスポンジで文化財をドライ・クリーニング」
汚れを吸着して表面に残ったジェル状のスポンジに磁石を近づけると 楽にスポンジが剥がれる
New Scientistのホームページは、イタリアの研究者らによる「ナノマグネティック・スポンジ」を紹介している。フィレンツェ大学の Piero Baglioni らがこのほど開発した、文化財のドライ・クリーニング用スポンジは、ポリエチレン・グリコールとアクリルアミドをベースにしたジェル状のものにナノレベルの粒子経の鉄を埋め込んだもの。任意の大きさにカットたスポンジでクリーニングしたい絵画や彫刻などの表面をなぜたり、ジェルを埋め込むようにして表面の細かいホコリやチリを吸着する。ジェル状なので表面の細かい凹凸にまで入り込む。表面に残ったジェルは普通の磁石を近づけると磁石に吸い付き、結果的に完全なクリーニングができるとしている。正式な論文はACS(American Chemical Society) の雑誌 Langmuir に発表されるという。
2007年9月13日(木)
『現代の図書館』の小特集「図書館資料の汚破損–利用者のモラルと公共財のリスクマネージメント」雑誌『現代の図書館』(Vol.45, No.2, 2007.6)は小特集として「図書館資料の汚破損–利用者のモラルと公共財のリスクマネジメント」を掲載している。
小特集にあたって 須永和之 –55
汚破損を不快に思う利用者からの提言 諸橋孝一 –56
利用者の立場から考えた図書館資料の汚破損問題への提言。早急な被害状況の把握と共に利用者の理解を述べる。さらに貸し出しの有料化、返却時のチェックなどの可能性を述べながら「図書館を利用することにホコリを抱く人」を増やすことの必要性も論じている。
図書館のモラルを生き延びる道を道を教えよ–新聞投書に見る図書の書き込み・切り取り問題と公共意識の変化 小泉徹 –64
朝日新聞・読売新聞の投書欄から図書館に関するものを抽出し、1991年に開かれた図書館大会資料保存分科会でのアンケート調査からいくつかの対策案を提示、アメリカとイギリスでの対策も紹介している。
図書館資料の汚破損と無断持ち出しについて 山口由美 –74
被害を受けた資料を展示して、利用者を啓発する試みを紹介。公共図書館での被害の実態も報告。
ジョージ・オートン–本への攻撃/社会への攻撃 矢島直子 –80
図書館から図書を盗んだり汚破損させ刑務所に6ヶ月投獄されたイギリスの劇作家オートンについて。刑期後に次々に発表紙した作品のテーマを分析、そこに表現された反社会的な姿勢と図書館に向けられた攻撃的な行為の呼応。
現代の図書館
(ただしここでの目次は2006年12月刊行号までしか掲載されていない)
2007年9月13日(木)
文化財虫害研究所、第27回防虫防菌処理実務講習会を10月に横浜で開催財団法人文化財虫害研究所は10月18、19日の両日、横浜情報文化センター(神奈川県横浜市中区)で「文化財防虫防菌処理実務講習会」を開催する。
講演は「写真材料への薫蒸剤の影響」(写真美術館・山口孝子)、「文化財の生物被害と対策」(東京文化財研究所名誉研究員・新井英夫)、講義はフッカスルフリル、酸化プロピレン、酸化エチレン、ヨウ化メチルの各薫蒸剤による方法の説明や「DNAへの薫蒸剤の影響」(京都大学大学院農学研究科準教授・田中千尋)等が予定されている。
受講料は会員が28,000円、非会員が33,000円。〆切は10月10日。問い合わせ・申し込みは同研究所(電話:03-3355-8355 FAX: 03-3355-8356)へ。
2007年9月13日(木)
デジタル写真の修復をステップ・バイ・ステップで学ぶ Digital Restoration: From Start to Finish
褪せたり傷んだ写真をアドビのPhotoshopというソフトを使ってデジタル的に補修・修復する方法を丁寧に解説した本。
Digital Restoration From Start to Finish:
How to Repair Old and Damaged Photographs
Ctein
$39.95; Focal Press
2007年9月6日(木)
Paper Conservator 最新号は東洋のコンサベーションの特集号、日本の技術の伝播と展開も
表紙は美濃紙漉きの古田さんご夫妻
英国のICON(コンサベーション協会)の Paper & Book Groupe の機関誌 Paper Conservator(vol.30, 2006)は、日本や中国、、韓国、チベットなどの紙媒体作品のコンサベーションについての特集号。以下の論文を掲載している。編集は Jane Eagan と Philip Meredith.
Masuda, K. "Reflections on the spread of Japanese paper and conservation techniques". pp.7-9.
増田勝彦「和紙とコンサベーション技術の伝播」。日本の表具技術が西欧に急速に伝播した時期に筆者が関わった活動を述べると共に、現在の日本での紙媒体資料や作品の発展についても言及。また、筆者が現在進めている、微少点接着法、ゆとり巻き込み式収納用具、羅紋紙復元についても。
Grantham, S. "Some painting techniques and materials used in Japan and the Far East". pp. 11-24.
「日本と東アジアにおける絵画技法と材料」。東アジア絵画の発達と、そのためのインクや顔料の特徴の見極めと筆や画布の選択について。
McClintock, T. K. "Japanese folding screens in a Western collection: Notes on a representative treatment". pp.25-42.
「西洋美術コレクションのなかの日本屏風:ある代表的な処置について」。ロングフェローが日本から持ち帰った日本屏風への修復事項の決定と行程について。歴史と伝統に裏付けれた専門領域が、本来の地理的、教育的枠から外れた場所でどのように行われ、信頼できる仕事として受け入れられたか。
Webber, P. "East and West: A unified approach to paper conservation", pp. 43-56.
「東も西も:ペーパー・コンサベーションとしての統一的理解」。この30年間のペーパー・コンサベーション分野での交流と相互理解・影響について、著者の個人的な経験および文献によるアプローチ。相互の情報交換は処置の選択肢を豊かにし、開かれた知識の幅を広げている。
Sasaki, S. "Soura uchikae: Replacement of the final backing layer in hanging scrolls", pp. 57-64.
佐々木志保「掛け軸の修理:総裏打ちを替える」。フリアー美術館(米ワシントンDC)での江戸後期浮世絵掛け軸の総裏打ち替え処置の記録。
Thompson, A. "Japanese tools for conservation", pp. 65-72.
「コンサベーションのための日本の道具」。日本製の筆や刷毛の評価は高いが、これら以外の日本の職人の道具についての説明と、使用方法や手入れについて。欧米のそれと外観は似ているが特性は異なり、効果的な使用のためにはそれを理解する必要がある。
Hare, A. "Guidelines for the care of East Asian paintings: Display, storage and handling" , pp. 73-92.
「東洋絵画のケアのためのガイドライン:展示、保管、ハンドリング」。繊細な素材と伝統的な手法で製作された東アジアの掛け軸や屏風、画帖は、手荒な取り扱いや不安定な環境下ではダメージを容易に受けてしまう薄層構造の裏打ちがされている。伝統的な訓練を受けた東洋絵画のコンサーバターとしての経験に基づき、また欧米での保存修復に関わった知見を元に、掛け軸、屏風、画帖の安全なケアの方法、ガイドライン、実践的な提案を紹介している。
Lin, H.-S. "Preservation and conservation of traditional antique Chinese painting and calligraphy seen through observation and examination of works of art" , pp. 93-98.
「観察と調査から見た中国古典絵画と書跡のプリザベーションとコンサベーション」。古今の処置の効果を観察することでの調査研究の意義。伝統的な保存容器、の説明を交えながら、掛け軸と絵巻物の劣化について述べる。掛け軸の裏打ちの際の「平坦さ、柔らかさ、薄さ、明るさ」についても言及。
Elgar, J. "Tibetan thang kas: An overview" , pp. 99-114.
「チベットのタンカ(細密仏画)概観」。ボストン美術館蔵のタンカを例にして、独特の裏打ちスタイルを説明し、17世紀のタンカへの処置、展示法、保管法について解説。
Park, C.-s. "Korean traditional mounting (janghwang)", pp. 115-122.
「韓国の伝統的な表具」。古代以来の歴史的な各時期における韓国表具への文化的な影響にういて説明し、独特の掛け軸、絵巻物、屏風、画帖の構造と特徴を述べる。
Minte, R. "Conservation of Asian art – a select bibliography of Western language publications". pp. 123-131.
「アジア芸術作品のコンサベーションのための参考文献」
なお、この号には、1985年に出版された The Paper Conservator (vol.9) ‘Hyogu: The Japanese tradition in picture conservation’ の全ページ画像PDFファイルを収めたCOROMが附属している。85年号は日本の表具およびコンサベーションのための和紙の全体像を海外に知らせる画期的な出版物だった。現在もバックナンバー入手の希望が絶えないために、今回のCD化になった。今号の中身と比べることで、特に欧米での着実な受容と発展を確認できる。
2007年9月4日(火)
Restaurator (Vol.28, 2006, No.1)、韓国仏国寺出土「無垢浄光大陀羅尼経」への保存修復手当て–等を掲載紙媒体記録資料のコンサベーションのための雑誌 Restaurator (Vol 28, 2007, No.1)は以下の論文を掲載している。
Kim, S-S. and oark, E.G. “Restoration of Mukujungkwang Dharani Sutra: the oldest and extant wood-block printed Buddhist scripture”. pp. 1-10.
現存最古の木版印刷「無垢浄光大陀羅尼経」の修復報告。 【別項で少し詳しく紹介–木部】
Goltz, D.M. [et al.] “Enhancement of faint text: using visible (420-720 nm) multispectral imaging”. pp. 11-28.
デジタルカメラに分光フィルターを付け、ハイパースペクトラルイメージング技術(紫外-可視-近赤外線域で各波長毎のバンド情報を分光イメージングできる技術)を使い、判読が難しかった書籍(1905年ごろに出版)に水濡れで転移した文書のインク文字を判読する試み。
Bonet, M., Munoz- Vinas, S. and Cases, F. “A note on the reversibility of cellulose ethers: detection on artwork surfaces using modified FTIR”. pp. 29-38.
紙媒体のコンサベーションで多用されるセルロース・エーテル類の可逆性の程度をFTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて計測。サンプル紙の表面に1~3回、各種のセルロース・エーテルを塗布し、これをエタノール液に浸して除去した後の残留を調べた結果、漬浸時間と関係なく、エーテルは残留していた。
Adamo, M., Magaudda, G. and Omarino, S. “Biological measurement of damage occurring to the inner structure of paper after gamma irradiation: preliminary tests”. pp. 39-46.
ガンマ線照射処理して内部構造に傷みを生じさせた紙と、傷みがない紙との、カビ被害の発生比較試験。
Calvini, P., Gorassini, A. and Merlani, A.L. “Autocatalytic degradation of cellulose paper in sealed vessels”. pp. 47-54.
密閉された環境下や、棚などに並べて保存される本等が生み出す揮発性の酸による自触媒反応劣化の実験。初期のpHは経時劣化プロットの形に関連性が、またVOCの量的な拡大は劣化の程度に関連性が、それぞれあることがわかったという。換気性がない環境下での加速老化や自然老化を研究するときには、重合度の変化以上に初期pHと参加の化学的なメカニズムをむしろ考慮する必要がある。.
Zervos, S. “Accelerated aging kinetics of pure cellulose paper after washing, alkalization and impregnation with methylcellulose”. pp. 55-69.
純粋なセルロースだけで作られた紙(ろ紙のような)を洗浄・アルカリ化・メチルセルロース含浸処理し、加速劣化により得られた自触媒老化反応速度の指数モデルを応用すると、図書館やアーカイブの紙媒体資料は直線的な劣化モデルよりも早く劣化することが解った。保管庫の換気および清浄な空気の還流が紙の劣化が生み出す有害な酸を除く決定的な役割を果たす。
2007年9月4日(火)
「無垢浄光大陀羅尼経」への修復処置報告(要訳)
国立中央博物館所蔵
Kim, S-S. and oark, E.G. “Restoration of Mukujungkwang Dharani Sutra: the oldest and extant wood-block printed Buddhist scripture”. pp. 1-10.
この経典は1966年に韓国南東部・慶州の仏国寺で発見された。704~751年に、当時の新羅で作成されたもので、楮紙に木版印刷されている。日本の百万塔の経典よりも古いために、現存最古の印刷物としてユネスコの「世界の記憶」遺産にも登録されている。石塔に収められていた1300年の間にホコリや温湿度の変化、酸化、虫カビに侵され、発見時にはすでにひどい傷みが生じ、また発見後も1989年に韓国国立中央博物館に収められるまで特別なケアはされていなかった。今回、学術研究者と韓国政府の肝いりで、修復処置が摂られた。
巻物は12シートで構成され、黒インクでの木版刷り。天地は6.4~6.7センチ、全体の長さはほぼ6.4メートル。楮紙で紙の坪量は65.2グラム/平方メートル、厚さは0.08ミリ、密度は0.815グラム/立方センチ。密度が現在の同種の紙の約二倍あり、これは抄紙後に良く打紙加工が行われていたため。
裸眼と顕微鏡により大きさ、色、染めの状態、厚み重さ、密度を調査した後に、巻物が開かれて平らにされ、刷毛によるドライクリーニングで表面の汚れを落とした。水を用いたウェットクリーニングには紙力が絶えられないと判断された。欠損部が補填され、裏打ち用にオリジナルに可能な限り近い製法で紙をつくり、染められた。特に打紙加工が入念に行われた。裏打ちの接着剤には小麦デンプン糊を使った。桐製の軸はオリジナルの29ミリよりも太くして巻いたときの負荷を軽減された。最後は桐箱に収められた。
※この「「無垢浄光大陀羅尼経」は、現存する世界最古の印刷物ではないのではないか、とする論議が今年(2007年)春に巻き起こった。「無垢浄光大陀羅尼経」とともに発見された「釈迦塔重修記(修理記録)」が最近判読され、「無垢浄光大陀羅尼経」が11世紀に作られたことを証明する内容が記録されていた。以下のように朝鮮日報のスクープだった。
韓国木版印刷物は世界最古じゃなかった!? (日本語版)
(文責:木部徹)
2007年9月3日(月)
イングマル・ベルイマン監督の財団「アーカイブ維持のためには資金が決定的に不足」と窮状を訴えるスウェーデンが生んだ世界的な映画監督イングマル・ベルイマンを記念して設けられたベルイマン財団が、ベルイマンの残したノート、手稿、映画や舞台のプロットのサマリ、写真等のアーカイブを将来に渡って維持保存してゆくためには現在の資金では決定的に不足しており基金への出資を呼びかけている、と英国のコンサベーション協会(ICON)のホームページが報じている。
ベルイマン監督は今年7月に89歳で亡くなった。生涯で62本の映画(大半の脚本も)と、170本の戯曲を書いている。各種のアーカイブ資料はユネスコの「世界の記憶」遺産にも登録されており、スウェーデン政府はこの維持のために年間200万クローネ(約3,500万円)を拠出しているが、財団の広報担当者によると、劣化の著しい文書のデジタル化等を円滑に進めて行くためには、年間少なくともこの二倍の資金が必須とし、このままでは世界的な文化遺産が消えてしまうと危機を訴えている。これに応えるようにスウェーデン最大の新聞社を二つ保有する Bonnier一族が出資の意向を示してるという。
Ingmar Bergman’s archive under threat
2007年9月3日(月)
8月7日付けニューヨーク・タイムズ「アフリカ・マリ共和国トンブクトゥの個人図書館における資料保存」8月7日付けニューヨーク・タイムズはアフリカ地域からのニュースとして西アフリカのマリ共和国の地方都市トンブクトゥ(Timbuktu)での11代に渡る家族による個人図書館での「資料保存」 Timbuktu Hopes Ancient Texts Spark a Revival を掲載している。書写を繰り返すことにより何世紀にも渡って古文書が残されたことがわかる。古いものは12世紀のコーラン等があり、15世紀からこの地域を治めたソンガイ王国時代の文書も残されている。このサイトには multimedia として、この記事をビジュアルに紹介するための音声と静止画像によるスライド・コーナーがあり、ここでは資料の保護のためのシェル・ボックス(夫婦函のようなもの)もある。ちなみに Timbuktuには「遠い遠い、空想もできないような地の果て」という意味がある由。
2007年9月3日(月)
国立公文書館、新たな改正内容を盛り込んだ「歴史公文書等の移管」の改訂版をサイトに国立公文書館は、平成17年6月30日の移管基準の改正において盛り込まれた「定期的作成文書の移管」及び「特定の国政上の重要事項等の指定」に関して、このほど内閣総理大臣と各行政機関の長との間で包括的な合意に達したことから、その合意内容も盛り込んだパンフレット「歴史公文書等の移管」の改訂版を作成した。
パンフレット「歴史公文書等の移管」(国立公文書館 平成19年7月)(PDF)