英国図書館はこのほど蔵書ケアのためのサイトに、オン・ラインで見ることができる教育ビデオ「蔵書の取り扱いかた」 Collection Care Videos: ‘Using Collection Items’ を掲載した。「はじめに」を含めて全部で9つの短い動画(それぞれ1分から3分程度)だが、同図書館が持つ本や文書などのアナログ媒体の資料のほとんどをカバーし、アイテムごとに利用時に守らなければならない基本的な取り扱い方を要領よく解説している。以下は解説の要訳。
1. Caring for the Collections – Introduction (はじめに)
世界でも最大の図書館のひとつである英国図書館にとって蔵書ケアは重要な責務である。
蔵書はBC1000年から現在までのすべての文明から集められた1億5千万アイテムで構成される。
文化的・歴史的にかけがえのないものが多い。希少で脆弱なものもあり、将来に渡って残さねばならないものが多い。
あらゆる蔵書が、作られた時代や現在の状態がどうあれ、価値を持ち、ケアが必要である。
こうした蔵書を利用する際には利用者はまず利用登録を行う。利用者パスを使うのだが、閲覧室に入室するまえに「利用条件」許諾のサインが必要である。そして閲覧時の注意をしっかりと認識してもらう。
入室時にスタッフがパスの提示を求めることがある。大きなバッグなどの中身をあらためることもある。閲覧室の外へ蔵書を持ち出すことはできない。
2. Using Books (書籍を利用する)
棚から本を抜き出すには二つの方法がある。両脇の本をひとまず奥にずらし目的の本を引き出すか、本の天小口にそって奥に手を入れて前小口を手前に押すようにして取り出す。背の天の部分に指をかけて引き出すと本が傷む。引き出すときは本の背の中央部を持つ。
本を平らに重ねる時には前小口と背を互い違いに重ねると安定する。特に重ねて持ち運ぶ場合にはこのようにする。運ぶ際には両手で一回でしっかりと持てる量に限定し、何回かに分けて運ぶ。
大きい資料や重い資料を移動するときにはスタッフの手を借りる。蔵書に思わぬ事故が起こらないように閲覧の机の上は整理する。閲覧スペースは限られているので、利用しない本は棚に戻すか返却する。
閲覧時の本の支持台(ブック・サポート)が必要ならばスタッフに頼む。たいていの本は120度以上は見開かない。無理に平らに開こうとせずにサポート台を使う。
ブック・サポートの利用法は次の通り。ホロウ・バックの本はサポートの背の所を開けて(gap)。背の丸みが固定されている本(rigid tught back)も同様に。和本などの平綴じされたものも同様にして閲覧時に閉じてしまわないように紐状の重しを置いて。開くと背の丸みが凹む本(flexible tight back)は背の開いたところに背を支える台(spine support)を入れて。spine support はまた、厚いペーパーバックの本にも良い。
ほとんどの本を閲覧するのに手袋は不要だが、手は清潔に、乾かして。指先で字をなぞらずにペーパー・スリップを置いて読むと閲覧しやすく本も汚れない。
ポスト・イットを貼ること、本の角を折り曲げることは厳禁である。後々にコピーしたいところにはペーパー・スリップを挟む。
閲覧中にアン・カットのページがあったときにはスタッフに告げて開けてもらう。
3. Using Gloves with Collection Items (手袋を使うときは)
ほとんどの資料が手袋を使うことはない。手を洗って清潔にし、乾かして資料に触れること。ハンド・クリームやローションも御法度。
手袋をして資料を扱うと、本の傷み等の状態が解らなくなってしまい
、逆に壊してしまいがちである。また、手袋は汚れが移りやすく、その汚れが別のものを汚す原因になる。手袋着用よりも、たびたび手を洗うことを奨める。
ただし、特定の資料には手袋着用が良い。着用した方が良いかどうかはスタッフに相談を。
4. Using Books in Boxes and Using Other Types of Books (保存箱等に入れてある書籍、その他の形態の書籍資料)
保存箱などの専用の容器に収納された本は特別のケアが必要だ。平紐で結ばれているものもあるし、装幀が精美なものもある。
表紙に金属製の凸部がある本もある。こうした本は必ず支持台を使う。
前小口に留め具があるものを開閉するときには慎重に。利用しない間は保存箱に入れておく。
蛇腹状に折り畳んだ資料は机の上に平らに置いて、一度に一つの折りを返す。
コプト綴じされている本は支持台の片方だけを使って表紙を支える(訳注:普通は背表紙が無く、綴じが剥き出しで傷みやすいためと思われる)。
貝葉(palm leaf)手稿本は、プラスチックフォームを敷いて、脆弱な表紙を守る。糸を充分に緩めておいて、葉が楽に捲れるようにする。
5. Using Folded Items (折り畳み資料)
折り込んである地図や図面を含む本は、V字型の支持台を使わずに、片方にだけ本を載せる。こうすると折り畳んだものを楽に平らに開くことができる。
折り込みは折り部や本の本体との接合部が特に弱っていて裂けたりすることが多いので注意する。一度に一枚ずつ開き、逆順に折り戻す。
スリップケースに入った地図は全部が同じ折り方をしているのではない。折りの状態を見ながら一つの折りごとに開いてゆく。また、予想したよりも大きいことがあるので、開くのに充分なスペースを確保すること。戻すときは正確に逆順に折り戻し慎重にスリップケースに収める。
蝋封(seal)付きの羊皮紙証書(charter)は扱いが難しい。証書そのものが折ってある場合は特にそうだ。
持ち上げるときや開くときには蝋封が動かないようにする。蝋封はプラスチックフォームの上に置く。一折りずつ開いてゆき、端に重しを置く。
※charter: 憲章や契約書などの、いわゆる捺印証書。「捺印」に相当するのが蝋封(seal)。
6. Using Rolled Items (巻いてある資料)
紙の巻物は巻き癖が付いているので扱いにくい。少しずつ開いて、その部分を重しで固定して閲覧し、次の箇所を開いたら元の部分は巻き戻しながら利用する。
絹製の巻物は一度に閲覧できる部分だけを開いて利用する。
パーチメントの巻物は数枚のシートを一緒に巻いてあることがある。閲覧したいものの上に重なっているものを巻き込み、利用後は順番通りに巻き戻す。
7. Using Archive Material (文書資料)
紐状の留め具(タグ)で束ねられている文書でタグを外すべきではない場合には、タグに充分な遊びを保たせて、一枚ずつめくり、束を崩さないようにする。
ラッパーにくるまれている文書は慎重にラッパーを外して、一枚ずつ捲ってゆく。順番を崩さないように。束で持って小口を机上に打ちつけて文書を揃えてはいけない。
大きな一枚物の資料は、全体が広げられるだけの充分な大きさの机を用意し、固定のために端に重しを置く。画像などが載っている部分には重しがかからないようにする。
一枚物をさまざまな形態の文書を製本した資料は、文書一枚ずつ捲ってゆく。サイズが異なるものが重なっているので不用意にまとめて開いて傷めないこと。
8. Using Prints, Drawings and Photographs (絵画や写真資料)
版画などの絵画資料や写真資料を閲覧する前には手を洗う。画像の部分に触れてはいけない。
マウントされたものはマウントごと机の上に平らに置く。マウントを開き、資料の上にかぶせてある保護用の薄紙も外す。閲覧後は薄紙を戻しマウントを閉じる。もしスタッフの補助が必要ならば申し出る。
マウントされていないペラの状態のものは、一枚一枚を持って順番通り重ねて置きながら閲覧する。持つときは資料の端だけにして画像部に触れてはいけない。
写真資料(紙焼きした物)は透明のポリエステル封筒に入っているので、手袋を付ける必要はない。上向きで閲覧し、順番を違えないようにする。
アルバムは保存箱の蓋のほうにクッションを敷いて一枚ずつ捲ってゆく。画像部に触れてはいけない。
9. Using Other Formats (他の形態の資料)
大きな地球儀は可能な限り表面に触らないようにする。しかしこれが必要な場合には手袋を着用する。スタッフがアドバイスしてくれるだろう。
小さな地球儀はそれを支えているピンの天地を手でもって見る。専用のコルク製のスタンドを貸してもらえる。
ガラスで挟まれたパピルス資料は、ガラスを割らないように注意する。資料は一つずつ運ぶ。ラッピングを外したらプラスチックフォームの上に置く。
パピルス資料は脆いし、すでに物理的な劣化が激しいことが多い。紙の入れ物に納められたパピルス資料は一枚ずつ丁寧に捲って閲覧する。
※ビデオの中で小さな「重し」が使われているが、同種のものを弊社でもコンサベーション処置の時に使っているので紹介する。不織布(例:使い切りのティーパックの袋の素材)で小さな袋を作り、これに散弾銃の鉛の弾を入れて封じたもの。大きさもサイズも自由に作れて、中は球なので相手の形状に合わせて接触面の形を変えて置ける。
(文責:木部徹)




