ほぼ日刊資料保存

必也正名乎

図書館やアーカイブ等の資料保存に関する世界のニュースを伝える、ほぼ日刊のページです。 土日・祝日は休刊します。 リンクも引用も自由です。

2008 年 2 月 のアーカイブ

2008年2月29日(金)

Nikkei BP net「レコード針を使わずにレーザーでアナログレコードを再生するエルプ社のプレーヤー」の記事

080229

 

Nikkei BP net はシリーズ「もの作りの軌跡」として、埼玉県さいたま市にあるオーディオ・メーカーのエルプが開発した「世界で唯一の針の要らないレコードプレーヤー」の記事を掲載している。同記事によると、アナログレコードは現在、全世界に300~400億枚あるといわれ、人類にとって大切な文化遺産であるが、CD全盛の現在では忘れられ、廃棄されたり、ホコリを被ったままで放置されている。同社が開発したレーザーターンテーブルは、レコード針の代わりにレーザーで読みとり、これをデジタル変換せずにアナログ再生するために、音が極めて自然で、しかも接触する針で摩耗することもないために古いレコード盤も傷めずに再生できる。一台ずつ手作りするために年間200台程度しか生産できず、価格も百万円以上するが、世界中から注文が殺到しているという。最初の顧客はカナダの国立図書館。1992年に第一号機により同図書館が再生したレコードは1919年のカナダ独立の日の国会議長のレコードで、傷みが酷く、それまでだれも声を聴いたことはなかったとしている。

 

エルプ社のホームページにはレーザーターンテーブルの案内と共に、レコード盤上のホコリを除去するバキュームレコードクリーナー、長期の保存で歪んだアナログディスクを短時間でフラットに修正するディスクフラッターも紹介されている。

 

もの作りの軌跡第3回「レコード針を使わずにアナログレコードを再生する」

 

同第4回「消え行くアナログレコードに新しい技術で再度光を当てる」

 

株式会社エルプのホームページ

2008年2月28日(木)

CLIR issuessの「大量脱酸性化の再考」、デジタル化等の環境変化のなかでの北米とドイツの現状調査と提言

図書館情報資源振興財団(CLIR:Council on Library and Information Resources)の刊行物CLIR Iisues(Number 61 • January/February 2008 )は Mass Deacidification Revisited を掲載している。昨年1月に組織された調査研究グループ(Connie Brooks, former head of preservation at Stanford University; Paula DeStefano, head of preservation at New York University; James Neal, Columbia University librarian; Alice Prochaska, Yale University librarian;Hans Rütimann, senior advisor to the Mellon Foundation)による北米とドイツでの図書館資料の脱酸性化の現状と、これを踏まえた今後に向けての提言をまとめたもの。


それによると、酸性の本文紙による図書や文書資料の劣化は依然として大きな問題ではあるが、大量脱酸性化を実際に導入している図書館は依然として限られれていること、北米ではひとつの方法(Bookkeeper法)だけが採用され競合はないこと、依然として高いコストに見合う科学的な効果が明確ではないこと、図書館資料の現物保存の方法として安定した環境書庫への保管への収納という選択肢があること、現物として保存すべき資料がいわゆる貴重書や特別コレクションにシフトしつつあること、さらには図書館の関心の焦点がデジタル化に変わってきたことと–等々が列挙されている。


以上の調査結果をもとに同グループは、今年末を目標に資料保存の専門家と紙の化学者を組織して、アメリカ議会図書館が取り組んでいる科学的な研究や、ドイツで予定されている大量脱酸性化の長期的な効果の研究報告も取り入れたもっと厳密な評価をおこなう、新しく出版され図書館資料になる紙媒体はどの程度が酸性あるいは中性なのかを把握する、大量脱酸性化を保存プログラムに組み込んでいる図書館の代表を集めて活動の現状と将来展望を話し合いまとめる、ドイツで実用化と商業化が進んでいるBookSaver法をモニタリングし、その見通しを確認する、と提言を行っている。

 

Mass Deacidification Revisited by James Neal, Connie Brooks, Paula DeStefano, Alice Prochaska, and Hans Rütimann

2008年2月28日(木)

22日に終了したUNESO「世界の記憶プログラム」国際会議での報告がサイトに

この2月19日から22日までキャンベラ(オーストラリア)のオーストラリア国立大学で開催された UNESCO の第3回「世界の記憶プログラム」(Memory of the World Programme)国際会議での各発表者による報告が同会議のサイトに掲載された。プログラムの発足から15年目にあたる今回の会議では、「コミュニティと記憶:グローバルな視点から」をテーマとして、危機に瀕した歴史的な記録遺産を保存し利用してもらうためのこれまでの成果を確認すると共に、今後に向けての改良点が、世界各国から集まった図書館員、アーキビスト、文化財保存に関わる専門機関からの発表者により、さまざまな角度から話し合われた。なお、日本には世界の記憶遺産として登録されているものは、いまだにない。

 

Papers presented at Communities and memories

2008年2月27日(水)

ミシガン図書館員のブログ Library Preservation が本紙『ほぼ日』を紹介

ミシガン図書館の館員でコンサベーションをしている Kevin Driedger氏 のブログ Library Preservation が本紙『ほぼ日』を International connections (Feb. 25, 2008)として "As far as I can tell, this site belongs to some kind of corporation. " と紹介してくれています。Thank you so much as a comrade-in-arms !!

 

Library Preservation

2008年2月27日(水)

24日付け産経新聞「天草市の水浸しの公文書“復活” 凍結、乾燥の技術利用」の記事

「水害で水浸しになった熊本県天草市の公文書を、文化財修復に使う技術を応用して“復活”させようと福岡市埋蔵文化財センターで進められていた作業が24日、終了し、市の担当者によみがえった文書が引き渡された。」と2月24日付け産経新聞が報じている。


http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080224/acd0802241905005-n1.htm

2008年2月27日(水)

「公文書担当相に上川陽子少子化担当大臣」のニュース、各メディアが報道

「福田康夫首相は25日、公文書管理担当相」を新設し、上川陽子少子化担当相に兼任させる方針を固めた。近く発令」と各メディア(時事読売日経ほか)が報じている。

2008年2月27日(水)

Pearlstein 著『コレクションを保存する–環境整備の原則と方法』がこの5月に上梓

080228

文化財全般の保存に関わる環境の問題と対策を要領よくまとめた Conserving Collections: Environmental Principles and Methods がこの5月に刊行される。著者は20年近く博物館のコンサーバターを、また大学院レベルのコンサベーション講座の準教授も努めたEllen J. Pearlstein で、本書では特に大気汚染、照明、温度・湿度について、その文化財に与える影響と対策を、現在までの各分野での研究成果を的確に組み込んで概説している。


Conserving Collections: Environmental Principles and Methods
Paperback
May 2008
192 pages
ISBN: 9781844071500
Earthscan Pubns Ltd


http://www.earthscan.co.uk/?tabid=787

2008年2月26日(火)

SOLINET、「デジタル・スキャニング時に原資料をどう保護するか」でライブ・オンラインでの遠隔教育講座

アメリカ南東部の2600の図書館の相互協力ネットワークであるSOLINETは4月7日にウェッブを用いた資料保存遠隔教育プログラムのひとつとして、デジタル化のためのスキャニング作業前、作業時、作業の後にオリジナルの資料をどのようにケアすべきかをテーマとした2時間のライブ・オンライン講座を開催する。大規模デジタル化プロジェクトが世界的に進展するなかで、性急なスキャニングのために貴重な原資料が壊れてしまうことが指摘されている。講師はメリーランド大学図書館特別コレクション部門と資料保存部門で実績を積んだKara McClurken。このオンラインでの講座はSOLINETのメンバーでなくとも150ドルで「聴講」できる。

 

Caring for Originals during Scanning Projects (Live Online)

2008年2月22日(金)

アメリカ国立公文書館資料保存コンファレンス、3月10日に「火災対策のABC」で

アメリカ国立公文書館は3月10日、第22回資料保存コンファレンス として The ABCs of Modern Fire Suppression in Cultural Institutions を開催する。火災の発生をどのように防止するか、もし発生した場合にはどのように対処するか、事後の収蔵物への対処等、アーカイブ、図書館、博物館、美術館等の文化機関での災害に的を絞った入門講座になる。プログラムの詳細は下記ページに。

 

22nd Annual Preservation Conference:The ABCs of Modern Fire Suppression in Cultural Institutions

2008年2月22日(金)

雑誌 Libraries & the Cultural Record、2002年のプラハの水害による図書館資料被災への対策を掲載

Libraries & the Cultural Record(Volume 41, Number 3, Summer 2006)はThe Prague Library Floods of 2002: Crisis and Experimentationを掲載している(p.381-391)。2002年の夏ににプラハ(チェコ共和国)を襲った大規模な洪水によるチェコ国立図書館とプラハ市立図書館での救助作業と現状とをレポートしたもの。大量の資料を即座に冷凍することを決断、実行したために、その後の処置をスムースに進ませることができたとしている。全文が HTML もしくは PDFで下記ページから閲覧できる。

 

Ray, Emily. The Prague Library Floods of 2002: Crisis and Experimentation

2008年2月21日(木)

公文書管理のための有識者会議設置をめぐる動き

政府はこの3月にも公文書の作成から管理、廃棄の在り方、国立公文書館への移管まで統一した手続きを検討する有識者会議を官邸に設置することになった。公文書の作成から管理、廃棄の在り方、国立公文書館への移管まで統一した手続きを検討することになる。独立行政法人国立公文書館のサイトはこれを巡る直近の動きを、また各新聞社のサイトでもこれについて相次いで報道している。

 

国立公文書館のサイトの「国会における公文書館関連の国会質疑等」

 

公文書保存 諸外国並みの本格的システムを(2月17日付・読売社説)

2008年2月20日(水)

手すき和紙連合会が3月15~16日に京都でフォーラムを開催、シンポジウムと展示・実演

全国手すき和紙連合会は「手すき和紙フォーラム in Kyoto 2008」を3月15日(土)、16日(日)の両日、京都の池坊学園(京都市下京区)で開催する。


3月15日(土) 会場:池坊学園こころホール
受付 13:00~
開会式 13:30
シンポジウム「和紙文化の継承 — 和紙の魅力を語る」
懇親会 19:00~

 

3月16日(日) 会場:同
受付 9:00~
全体集会 9:00~12:40 産地情報、原料情報
                                   、未来の和紙を考える(作り手から、使い手から)

 

3月15日(土)、16日(日) 会場:池坊学園アートフォーラム 9:00~16:00
『和紙総鑑』(全国一千種見本パネル)、手すき実演、和紙工芸品実演

 

 

参加希望者は以下の事項を書いた申込書を連合会事務局にFAXをし、参加費(10,000円)を振り込む。期限は今月末。
 

申し込み必要事項: 県名、所属(会社等)、参加者氏名、住所、電話、FAX
  全和連事務局: 成子紙工房(大津市桐生 2-14-26)  
                       電話 077-549-0323  FAX 077-549-1611
  参加費振込先:京都信用金庫 南草津支店 普通口座 107816
口座名義人 全国手すき和紙連合会 会長 成子哲郎

 

なお、同連合会では開催のための協賛金(一口 10,000円以上)を募っている。

2008年2月20日(水)

米文化財学会機関誌 JAIC、「劣化抑制とゼラチン」、「フォクシング研究の動向」、「インク焼け部分の結晶」の論文

アメリカ文化財保存修復学会の機関誌(Journal of the Amrican Insutitute for Conservation of Historic & Artistic Works:JAIC)の最新号(Vol. 46, 2007)は以下の論文を掲載している。


John Baty and Timothy Barrett: Gelatin size as a pH and moisture content buffer in paper. (紙のpHと含水量のバッファとしてのゼラチン・サイズ), p.105-121.

 

紙の耐久性へのゼラチン・サイズの効果として、pHのバッファとしての役割、相対湿度の変化に伴う紙の含水量変化のバッファとしての役割を試験した。前者は滴定法によりバッファ機能が、それも長い間の自然の経時老化により生じることを確認した。後者は一定の周期で湿度を変化させ、ゼラチン・サイジングしてある紙とそうでないものとの含水量を比較したところ、出入りに伴う紙へのストレスを抑制できるバッファとして機能していることを確認した。コンサベーション時の洗浄、脱酸性化等の後にリ・サイジングすべきかどうかの選択に寄与する研究。

 

Soyen Choi: Foxing on paper – a literature review. (紙上のフォクシング– 文献レビュー), p.137-152.

 

経時した紙媒体の上にできるフォクシング(茶褐色の斑あるいは点状の着色物)についてはこれまで多くの研究が行われてきた。当論文は1930~2003年までの同テーマに関する研究論文をレビューするとともに今後に向けての議論と研究を示
唆することを目的したもの。走査型電子顕微鏡や有機・無機化合物の分析により発生の要因は紙中の金属か微生物(カビ)、もしくはこの組み合わせとされてきたが、近年の研究はフォクシングの被害を受けた紙そのものの劣化(酸化と酸加水分解)によるフリー・ラジカルやその他の反応基の生成に焦点が当てられている。ある種のフォクシングは金属もかびも関連していない。特定の繊維あるいは紙中の水分の偏在がフォクシングの形成に関与しているのではないかという仮説が登場している。フォクシングへの処置では、金属を含む部分やカビの部分の物理的な除去、水性洗浄、酸化・還元漂白、金属のキレート封じ込み、酵素利用などが挙げられる。

 

Deborah La Camera: Crystal formation within iron gall ink– observation and analysis (没食子インク焼けの結晶化–観察と分析), p.153-174.

 

ボストン美術館ほか複数の機関が所蔵する絵画の没食子インクに見られる結晶の生成の研究。色は白色、灰色から黄色、オレンジ色まで多様、形も多様、形成部は相当量のインクの溜まりがある紙上。エックス線蛍光分析、走査型電子顕微鏡、フーリエ変換スペクトル赤外線分析等により、結晶は鉄を含む硫酸塩であることが確認された。織物上の没食子インクの12サンプルによる加速老化試験で、生成に関連するインクの構成と環境の役割が実験的に行われた。構成物では没食子とバインダーのアラビアゴムとの比率が結晶の多寡に明らかな相関があり、硫酸鉄が多くバインダーが最少のもので結晶生成が繰り返されることが分かった。

 

(要訳文責:木部)

2008年2月7日(木)

アイオワ大図書館、欧州での初期(1450~1500年)印刷技術の波及が一目で分かるインタラクティブ地図帳をサイトに

080207

アイオワ大学図書館はこのほど、15世紀のヨーロッパでの印刷技術の発展と普及が一目で分かる地図帳 Atlas of Early Printing を同図書館のサイトに掲載した。初期印刷時代のヨーロッパ各地での印刷の登場、それにともなう製紙工場の建設、大学の設置、そして書物の流通に大きな役目を果たしたブック・フェアの歴史がインタラクティブに理解できる。

 

THE ATLAS of EARLY PRINTING

2008年2月6日(水)

京都造形大、歴史遺産学科卒論・修士論文発表会を16・17日に、紙媒体でも6つが

京都造形芸術大学歴史遺産学科は2月16日(土)と17日(日)の両日、同大学直心館で卒業論文・修士論文の発表会を開催する。このうち紙媒体関連は以下の通り。

 

<文化遺産コース> 16日
海野彰子(院生) 旧マウント材の茶変色を抑制する浮世絵色材について
田村公(院生) 書籍・典籍・古文書の修理に用いる紙の寸法安定性に関する基礎的研究
<文化財保存修復コース> 17日
工藤正平 装こう分野における米糊の研究
熊井里沙 ヒガンバナ糊 — 防虫効果と表装糊としての評価
駒居渡 和紙の保存性 — 抄紙用粘材(ネリ)が与える影響について
明神幸祐 アルカリバッファの紙の保存性への効果について

 

問い合わせは同学科資料室へ 電話 075-791-9274 FAX 075-791-8524

2008年2月4日(月)

アメリカ図書館協会、Library Technology Report 「デジタル資料の保存」を刊行

080204

アメリカ図書館協会(ALA)は刊行誌 Library Technology Report の最新号(Vol. 44 Iss. 2) として Priscilla Caplan による The Preservation of Digital Materials を刊行した。著者は Florida Center for Library Automation のデジタル図書館サービス部門のアシスタント・ディレクター。章立ては以下の通り。


1—What Is Digital Preservation?
2—Preservation Practices
3—Foundations and Standards
4—Support for Digital Formats
  5—Preservation Programs and Initiatives
  6—Repository Applications
  7—Special Topics

 

The Preservation of Digital Materials

2008年2月1日(金)

弊社は今春、3名の新入社員を迎えます

弊社(有限会社資料保存器材)はこの4月に3名の新入社員を迎えます。20余名の応募者の中から、1月22日に行われた学科および実技試験をパスした3名は、3ヶ月間の試用・教育期間を経て、男性1名と女性1名がコンサベーション部門に、女性1名がアーカイバル容器部門に、それぞれ配属される予定です。皆様にお目もじが適うのにはまだ少し時間がかかると思いますが、いずれも有意の若者です、その折には宜しくご指導、ご鞭撻をお願いする次第です。


2008年度社員採用試験の概要は以下の通りです。


1. 学科試験 — 化学と英語(英文和訳) 1時間
学科試験問題(PDF)


2. 実技試験 約2時間/2名ずつ
鉛筆をカッターで削る、削った鉛筆で長さ15センチの直線をフリーハンドで書く、同じく直
径10センチの真円を書く、コピー用紙を折って重ねて上の一枚だけを2秒以内でカッター
で波形に切る、極薄の和紙の上にランダムに描いた線画をカッターで切り抜く、和装四つ目
綴じの実演を見た後に一定のスピードとリズムで再現する、虫損のある和紙を典具帖で
裏打ちする。

 

3. 面接試験