東京大学東洋文化研究所はこのほど、平成17年(2006年)から19年(2008年)にかけて毎年開催してきた「アジア古籍保全講演会」の3回分の記録をまとめた『アジア古籍保全講演会記録集』を出版した。日本でも有数の規模のアジアに関する資料を持つ東洋文化研究所図書室の職員として、資料保全についての正しい知識を持つ、という目標からスタートした同講演会は結果的に当初の予想以上の規模に発展し、この種の講演会としては未曾有の参加者を集め、毎回好評を得てきた。
「講演を通じて資料保全に関するさまざまなテーマや考え方が身近なものとなり、実現可能な改善点や新しい手法をすぐに業務に取り入れる姿勢が生まれたこと、劣化資料や環境管理等についてそれなりに自信を持って対応できるようになってきたことが、われわれ自身の研修成果であろうと思います。」「この冊子は現場の問題に対処するアイディアがたくさんつまった1冊になったと自負しております。」(p.335 「あとがき」から)
内容は以下の通り
第1回
・講演「書籍の有害生物管理–IPM(総合的有害生物管理)を中心に」(木川りか・東京文化財研究所保存科学部)
・アジア古籍保全のための環境管理(稲葉政満・東京芸術大学大学院美術研究科)
・「国際連携漢籍資料庫の夢–漢籍のデジタル化について(丘山新・東洋文化研究所)
・ワークショップ「保存管理と補修計画—アジア近現代資料を中心として」(小島浩之・東京大学経済学部資料室)
ワークショップ「紙媒体資料の劣化と予防的保存手当て」(木部徹・有限会社資料保存器材)
・ワークショップ「古文書古典籍の装幀形態と料紙及び補修作業」(吉野敏武・宮内庁書陵部)
第2回
・事例報告「東洋文化研究所所蔵『漢籍・中国書』の劣化調査と補修(中間報告)」(木部徹・有限会社資料保存器材)
・事例報告「アジア近現代資料の保存と利用–東京大学経済学部資料室の取り組み」(小島浩之(東京大学経済学部資料室)
・講演「中国古典籍の保全と補修」(周崇潤・中国国家図書館善本特蔵部)
・講演「書籍・資料のカビとその対策」(木川りか・東京文化財研究所保存科学部)
総合討論
第3回
・講演「後期イスラム世界における紙と書物」(鈴木薫・東洋文化研究所)
・講演「東洋の紙と歴史」(宍倉佐敏・女史美術大学大学院)
・講演「紙資料を修復すること」(増田勝彦・昭和女子大学大学院生活機構研究科)
・講演「マイクロ資料の劣化–原因と対処」(安江明夫・国立国会図書館顧問)
・事例報告「東洋文化研究所マイクロフィルム状態調査」(田崎淳子・東洋文化研究所図書室)
『アジア古籍保全講演会記録集』
A4版、356pp
発行日:平成20年3月31日
編者:東京大学東洋文化研究所図書室
発行者:東京大学東洋文化研究所
紙媒体での出版に続き、PDFにしたものの下記のサイトへのアップロードが予定されている。
東京大学東洋文化研究所図書室