ほぼ日刊資料保存

必也正名乎

図書館やアーカイブ等の資料保存に関する世界のニュースを伝える、ほぼ日刊のページです。 土日・祝日は休刊します。 リンクも引用も自由です。

2008 年 7 月 のアーカイブ

2008年7月24日(木)

「PETベースのマイクロフィルム神話への疑義」、アーカイブレコーディングセミナーでの東大経済学研究科の発表で

7月18日に開催された第五回アーカイブレコーディングセミナー(株式会社ニチマイ主催)では小島浩之氏(東京大学大学院経済学研究科)による「文書の長期保存(マイクロ化・電子化)の留意点–利用者の視点から」が発表されたが、このなかで氏は「PETベースのマイクロフィルム神話への疑義」として、これまで「PETフィルムは加水分解を起こさないからベースの劣化はあり得ない」、ベースの表面に光沢のあるシミができる「フェロ化は保存の問題であり、(TACベースフィルムの)ビネガーシンドロームのような媒体自体に由来する劣化ではない」と説明されてきたことへの根本的な疑義を提出した。

 

小島氏によると、まずフェロ化は温湿度の変化に由来するものではあるが、そのメカニズムはもっと複雑で、次のように説明できる。すなわち温湿度変化による結露が生じ、その水分がリール側面から内側に浸潤し、ベース裏引層のゼラチン室を溶かす。これが再度の温湿度変化による乾燥することで、フィルム表面に光沢性のあるシミを作る。重度になるとシミは全体に広がりフィルムの固着が生じて、リーダーにかけると裏引層が剥離して白色の斑のようになり、さらにフィルム同士を剥がすこともできなくなる—。

 

さらに氏は、従来の劣化においててもエマルジョン化や膜面剥離が指摘されてきたが、これらは乳剤面とベースの分離のことで、ベース下部の裏引層について問題になった事例は公にされておらず、PET特有の劣化と推定されるという。このフィルムは従来考えられている以上に温湿度の変化に弱く繊細であるから、各所臓機関での早急な実態の把握と共に、業界には科学的な憲章を要望したいとし、TACフィルムでのビネガーシンドロームの二の舞になってはならないと提言した。

 

なお、小島氏の所属する東京大学経済学部図書館では2007年から継続的なマイクロフィルムの状態調査と環境調査と調査結果の公表を行っており、これらの最新の概要も併せて発表された。今回の提言もこうした実績を踏まえてのもの。

 

2008年7月23日(水)

国立公文書館がICAの「アーカイブズ資料の展示のガイドライン」を邦訳しPDFで公開、傷めずに輸送・梱包・展示するには

国立公文書館はこのほど国際公文書館会議(ICA)温帯気候における資料保存に関する委員会が作成した「アーカイブズ資料の展示に関するガイドライン」(GUIDELINES ON EXHIBITING ARCHIVAL MATERIALS)を邦訳しPDF(全77ページ、780KB)でサイトに公開した。「展示」という、アーカイブズの業務のなかでも大事な活動のひとつでありながら、選定や貸し出し時あるいは輸送や展示の際にどのようやリスクが予想され、それを防ぐにはどのようにしたらよいかを、「資料保存」という観点から述べた邦文文献はなかった。訳は達意であり、アーカイブズだけでなく、図書館さらには美術館・博物館にとっても有益である。見出しは次の通り。

 

序 文
第1 部
第1 章 選定と貸出し
第2 章 輸送及び梱包
第3 章 環境に対する留意点
第4 章 額装及び展示ケース
第5 章 安全な予防措置及び保安
第2部
付 録
付録1. 資料の輸送
付録2. 展示の際の留意点
付録3. 人工光、照明の選択、留意点、照明器具の点検、フィルター
付録4. 温度及び相対湿度についての留意点
付録5. 展示品貸出覚書
付録5.A. 貸出申込書(様式1、様式2、様式3)
付録5.B. 展示品貸出契約書
付録5.C. 展示環境報告書

 

2008年7月23日(水)

9月の全国図書館大会資料保存分科会は「マイクロ化とデジタル化」、ワークショップも同時開催

今年9月18~19日に神戸で開催される全国図書館大会での第9分科会「資料保存」は「マイクロ化とデジタル化–利用のための資料保存を支えるパートナー」をテーマとして19日(金)に神戸学院大学ポートアイランドキャンパスで開催される。資料保存をめぐるこの一年のレビュー、神戸付属図書館の震災文庫と東京大学経済学部の山一證券資料、そして尼崎市立地域研究史料館の写真資料の等の事例などが報告される。また、図書資料のデジタル化とマイクロフィルムの健康診断のワークショップが同時開催される。詳細は下記ページで。

 

2008年7月17日(木)

英ナショナル・プリザベーション・オフィス(NPO)、CDとDVDの長期保存のためのパンフレットをPDFで刊行

080717

 

英国ナショナル・プリザベーション・オフィス(NPO)はこのほどCDとDVDの長期保存のための簡潔なマニュアルをパンフレットにし、Caring for CDs and DVDs としてPDFで公開した。

 

CDとDVDは図書館やアーカイブが蔵書として持つ光ディスク・タイプの資料の中でもっとも一般的なもの。音声や画像や動画があらかじめ収められた商品として、個人や機関が自ら作成したものとして、さらには紙媒体書籍に附属して–といった形で蔵書になる。そのデータのライフスパンはディスクの物理的な寿命とデータを読み出すハードウェアやソフトウェアに依存する。図書館の伝統的な蔵書のすなわち書籍やパーチメントよりもディスクのライフスパンは短いとされている。

 

この18ページのパンフレットはCDとDVDの物理的な構造の解説と、収められたデータの保存に影響をおよぼす環境因子(温度、湿度、大気汚染物、光、貼付ラベルハンドリング)の解説と注意事項、保管やクリーニングの方法、新しいメディアへの移行や大規模メディアへの一括収納の際の要点、参考文献書誌をまとめたもの。

 

2008年7月16日(水)

国際文化財保存修復学会(IIC)がウェブサイトを一新、ニュースやイベント情報などをきめ細かく

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国際文化財保存修復学会(Institute for Conservation of Historic and Artistic Works )のウェブサイトが一新された。保存修復に関する世界の動向や会議などのイベント情報、IICが刊行する書籍や機関誌 Studies in Conservation やReviews in Conservation等のデータベースの拡充などが行われている。この9月にロンドンで開催される2008 IIC大会の技術プログラムの発表テーマも発表されている。二つの機関誌(PDF)へのアクセスは会員限定。会費は個人会員が年間47ポンド、学生会員が19ポンド。

 

2008年7月16日(水)

米議会図書館(LC)と米国立公文書館(NARA)、世界デジタル図書館(WDL)構築で提携

アメリカ議会図書館(Library of Congress)とアメリカ国立公文書館(National Archives and Records Administration)は15日、世界デジタル図書館(World Digital Library )の実現に向けたパートナーシップを組む、と発表した。両館が蓄積しつつあるデジタル化記録のデータを持ち寄り、さらに内外の類似機関に呼びかけ、2009年の初めにはWDLを発足させたいとしている。世界中の研究者、、学生、一般人がウェブを通してアクセスできるようにするという。

 

2008年7月10日(木)

フリッツ・ラングの映画『メトロポリス』、消失したとされていた幻の30分のパーツを加えた完全版への修復作業が開始

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SF映画の金字塔といわれるフリッツ・ラング監督の『メトロポリス』完全版の修復作業が開始された、と英国コンサベーション協会(ICON)のニュース・サイトが伝えている。消失したとされていた約30分間のパーツを付け加えた修復作業は、ドイツの映画保存修復のための基金F.W.ムルナウ基金の修復家により進められている。

 

2008年7月9日(水)

『国会図書館月報』、米・ニュージーランド・オーストラリアでの「デジタル時代の新聞の保存と利用」の調査レポート

『国立国会図書館月報』(2008/6, No.567)は五十嵐麻里世「デジタル時代の新聞の保存と利用–アメリカ、ニュージーランド、オーストラリアの取り組み」を掲載している(p.19-23)。三カ国の6つの図書館(米議会図書館、ニューヨーク公共図書館、ニュージーランド国立図書館、クライストチャーチ市立図書館、オーストラリア国立図書館、ニューサウスウェルズ州立図書館)におけるデジタル環境下での新聞の保存とサービスについての好レポート。

 

三カ国ともに著作権保護期間が満了したパブリックドメインのみがデジタル化の対象で署名入りのもパブリックドメインとして扱う。デジタル化はすでにマイクロフィルム化されたものから作成し、フィルムの保存計画とあわせて進められている。また各国とも国としての新聞の保存計画が基本になっている。

 

利用者はマイクロフィルムから必要な紙面や記事を選び、デジタルデータとしてUSBメモリ等にコピーして持ち帰ったり、メールで自宅に送信してもらうことができる。

 

ただ、オンラインで発行されている新聞については、米議会図書館やオーストラリア国立図書館では現時点では保存に着手していない。ニュージーランドでは2003年からインターネット情報やオンライン出版物も「納本」対象になっているため、選択的にオンライン新聞を収集している。

 

各国とも、データを長く共有して利用するために、オープンソースを基本としたシステム環境の整備や標準化を進めており、その意義を周知させるための広報活動や研修プログラムも充実させている。

 

2008年7月8日(火)

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2008年7月8日(火)

オランダの書物史家がウェブの双方向性等の機能を駆使した印刷と書物の年表を発表、他の研究者の参加も歓迎

オランダの書物史研究者 Dr. Paul Dijstelberge がウェブの双方向性等の機能を駆使した印刷と書物の年表 A Chronology for the History of the Book を発表した。Underlying, Inc が提供する無料の年表ソフトとサイト Dipityを利用したもので、テキスト、静止画像、動画、Google地図などを逐次付け加えたり訂正することができる。現在はグーテンベルグ以後が中心になっているが、この年表に関心がある他の書物史家も参加して一緒に年表の拡充を目指している。

 

2008年7月7日(月)

米文化財保存機構 Heritage Preservation が水害に遭った本や写真などの救出法を10分のストリーミングで

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アメリカ国立コンサベーション協会(National Institute for Conservation)の文化財保存サイト(Heritage Preservation)は火災や洪水や漏水等の水害にあった写真や本などの救出法をステップ・バイ・ステップで示す10分のビデオ Coping with Water Damage を作成し、同サイトで公開した。

 

2008年7月7日(月)

PDF現行1.7ヴァージョンがISO32000-1として国際標準に、アドビ社はFlash機能をサポートしたリーダーを発表

国際標準化機構(ISO)はこのほどアドビ・システム社の電子文書フォーマットPDF(Portable Document Format)の現行ヴァージョン PDF 1.7をISO32000-1として認定した。コンピュータの機種や環境に大きく影響されずにオリジナルのイメージを再生できること、、もしアドビ社がソフトウェアの提供を止めたとしても、公になっている文書作成とリーダーのプログラムの供給が継続できることが評価されてのもの。アドビ社はまたPDFリーダーの新ヴァージョンを発表している。双方向性を持つアニメーション機能FLlashをサポートしている。

 

2008年7月7日(月)

英国立公文書館のオンライン・サービス新戦略、ウェブサイトの再構築など今後3年間の枠組みを提示

英国国立公文書館はこのほど今後3年間のオンライン・サービスの枠組みを定めた新しいオンライン・サービス戦略 Provide and Enable: The National Archive’s Online Strategy を公表した。先に定められた新ビジョンに基づくもので、これまでのウェブサイトを再構築して新ファミリー・ウェブサイトにすること、個別のデジタル・ドキュメントが掲載されているウェブをデータ・ウェブとして移行し検索や活用を促進すること、利用者のニーズの把握、以上のための意志決定などが主な内容。

 

2008年7月2日(水)

公文書管理有識者会議が中間報告「時を貫く記録としての公文書管理の在り方–今、国家事業として取り組む」を公表

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公文書管理の在り方等に関する有識者会議(座長・尾崎護元大蔵次官)は1日、中間報告「時を貫く記録としての公文書管理の在り方–今、国家事業として取り組む」をまとめ、福田首相に提出した。タイトルは上川・担当大臣の提案による。新法として「公文書管理法(仮称)」の制定や、内閣府・総務省・国立公文書館の人員も現行の50人弱から「数百人」規模への増員などが盛り込まれた。ただ、組織の在り方は2案が併記され、10月の最終報告まで持ち越されることになった。

 

2008年7月2日(水)

ニチマイ主催「アーカイブレコーディングセミナー」が18日に、最新の記録管理の動向やマイクロ化・電子化の留意点など

株式会社ニチマイは7月18日(金)に第5回アーカイブレコーディングセミナー」を開催する。今回のテーマは国の文書管理制度改革の課題を中心にした最新の記録管理の動向(講師:小谷 允志・日本レコードマネジメント株式会社)と、マイクロ化やデジタル化による長期保存を行う際の留意点(講師:小島浩之・東京大学経済学部資料室)。あわせて同社が行ってきた米国での日本関係資料のスキャニング業務について紹介する。会場は富士フイルム本社(東京・港区)、参加費は無料、定員は60名。詳しいプログラムと参加申し込みは下記ページに。