7月18日に開催された第五回アーカイブレコーディングセミナー(株式会社ニチマイ主催)では小島浩之氏(東京大学大学院経済学研究科)による「文書の長期保存(マイクロ化・電子化)の留意点–利用者の視点から」が発表されたが、このなかで氏は「PETベースのマイクロフィルム神話への疑義」として、これまで「PETフィルムは加水分解を起こさないからベースの劣化はあり得ない」、ベースの表面に光沢のあるシミができる「フェロ化は保存の問題であり、(TACベースフィルムの)ビネガーシンドロームのような媒体自体に由来する劣化ではない」と説明されてきたことへの根本的な疑義を提出した。
小島氏によると、まずフェロ化は温湿度の変化に由来するものではあるが、そのメカニズムはもっと複雑で、次のように説明できる。すなわち温湿度変化による結露が生じ、その水分がリール側面から内側に浸潤し、ベース裏引層のゼラチン室を溶かす。これが再度の温湿度変化による乾燥することで、フィルム表面に光沢性のあるシミを作る。重度になるとシミは全体に広がりフィルムの固着が生じて、リーダーにかけると裏引層が剥離して白色の斑のようになり、さらにフィルム同士を剥がすこともできなくなる—。
さらに氏は、従来の劣化においててもエマルジョン化や膜面剥離が指摘されてきたが、これらは乳剤面とベースの分離のことで、ベース下部の裏引層について問題になった事例は公にされておらず、PET特有の劣化と推定されるという。このフィルムは従来考えられている以上に温湿度の変化に弱く繊細であるから、各所臓機関での早急な実態の把握と共に、業界には科学的な憲章を要望したいとし、TACフィルムでのビネガーシンドロームの二の舞になってはならないと提言した。
なお、小島氏の所属する東京大学経済学部図書館では2007年から継続的なマイクロフィルムの状態調査と環境調査と調査結果の公表を行っており、これらの最新の概要も併せて発表された。今回の提言もこうした実績を踏まえてのもの。






