ほぼ日刊資料保存

必也正名乎

図書館やアーカイブ等の資料保存に関する世界のニュースを伝える、ほぼ日刊のページです。 土日・祝日は休刊します。 リンクも引用も自由です。

2009 年 のアーカイブ

2009年12月22日(火)

来年5月開催ののIADA大会プログラム、「超臨界流体+アルコキシ化合物による新脱酸性化法」など多彩なテーマ

来年5月27、28日両日、プラハで開催されるIADA(Internationale Arbeitsgemeinschaft der Archiv-, Bibliotheks- und Graphikrestauratoren)Symposium 2010 でのプログラム(暫定版)が発表された。このうち紙媒体資料関連は以下の通り。

 

Nicolas Pickwoad (UK) Book Boxes: A New Design in Stainless Steel.

 

Florence Darbre (CH) Preservation on View: A Re-usable Book Support.

 

Jana Náprstková, Jana Tomsu (CZ) Future of Manuscripts and Old Prints Collection of the National Museum Library and its Preservation, Prague.

 

Henk Porck et al (NL) Conservation Treatment and the Consequent Change in Collection Value.

 

Jedert Vodopivec (SL) Analysis and Risk Assessment in Slovenian Archive Repositories.

 

Istvan Kecskeméti (FI) Digitisation of Archival Collections: A Project of 1 . 55 Million Euro.

 

Michal Durovic et al (CZ) Gaseous Pollutants: Monitoring in the Repositories of the State Archives of Czech Republic.

 

Anne-Laurence Dupont et al (FR) Volatile Organic Compounds and their Impact on Paper Degradation.

 

John Havermans (NL) COST D42 Network: Impact and Challenges.

 

Eliza Jacobi et al (NL) Local Repairs on Iron Gall Ink: In Search for an Adhesive and a Method.

 

Hilde Schalkx (NL) Washing Water Sensitive Paper Objects: Capillary Unit or Blotter Wash?

 

Stefan Blankenborg (NL) Deacidification and Strengthening of Acdified Books and Documents: A New, Fast and Safe Method (Papercare Process) for Conservation of our Paper Based Cultural Heritage.

 

Véronique Rouchon et al (FR) Room Temperature Ageing of Iron Gall Ink Impregnated Papers: The Impact of Oxygen and Humidity.

 

 

Pickwiad の"Book Box ~"は、聖キャサリン教会の貴重書保存修復プロジェクトでも採用されたステンレススチール製の保存容器について。

 

Havermansの"COST D42~"文化財と屋内環境のEU協力プログラムの成果について。

 

Hilde Schalkx(オランダ)の"Wahing Water~"はNetherlands Institute for Cultural Heritage(NICH)卒論を基にした発表で水に敏感なものへの二つの水洗法(毛細管法と濾紙法)の影響の比較が行われている。

 

おなじくEliza Jacobiらの"Local Repairs on Iron Gall Ink~"もNICHの卒論を基にしたもので、インク焼けの破損部を数種の接着剤をジェル状と再加湿状にしたものによる部分補修について。

 

最も注目されるのが Blankenborg(オランダ)による "Deacidification and Strengthening ~" であろう。アルカリ性アルコキシ化合物による脱酸性化法はこれまでもフランスの研究者等により発表されているが、今回のはaminoalkylalkoxysilanes (AAAS)を、紙への際だった浸透力を持つ二酸化炭素の超臨界流体(気体と液体の臨界の流体)と組み合わせて脱酸性化するとともに、低下した紙力も補えるという方法。しかも「処理が早く、安全」とされる。すでに国際特許が出願されている(→こちら)。

 

 

                                                                                      [文責:木部]

 

 

2009年12月21日(月)

英ICONの機関誌 Journal of the Institute of Conservation が古糊、朝鮮本や和書版本の製本と装丁の歴史など好論文を掲載

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英国の文化財保存修復学会の機関誌 Journal of the Institute of Conservation (Volume 32 Issue 1 2009)は以下の論文を掲載している。

 

 

Furunori (aged wheat starch paste): challenges of production in non-traditional settings
Regina Belard; Hisashi Higuchi; Jennifer Perry (Department of Conservation and Scientific Research, Freer Gallery of Art, Arthur M. Sackler Gallery, Smithsonian Institution)
Pages 31 – 51

 

米フリーア美術館の東洋絵画コンサベーション・スタジオ(EAPCS)による古糊の作成の試作報告。日本で古くから行われてきた方法とは別のさまざまな方法が試みられ、一定の成果を得たが、日本の古糊の質には至らなかった。著者は日本での小麦粉澱粉とそのメーカーを調べ、生糊が長期に保管されて古糊になるプロセスを化学的に説明、。また日本の代表的な装こう業者(岡墨光堂)における年次ごとの製造プロセスも詳細に調査した。そしてEAPCSの失敗の原因の解明を試みている。さらに日本以外の他の機関での古糊製造とも比較している。

 

 

 

The history and characteristics of traditional Korean books and bookbinding
Minah Song (CCAHA)
Pages 53 – 78

 

伝統的な朝鮮の書物と製本技術の歴史の研究。中国の影響下で発展したが、料紙や印刷、そして製本法や素材、装丁における朝鮮の独自性を解明。形態としては12世紀まで巻物だったが、高麗朝の中頃に折本が仏典に広く使われ、中国に先んじて、13世紀からは袋綴じの形態が主流になった。料紙も楮紙が主。14世紀からは木版ともに、朝鮮の書籍の世界的な画期といえる活版も採用された。黄色に染め、エンボス模様が施された表紙、赤い綴じ糸も朝鮮の伝統的な書物の特徴である。【本号の論文中の白眉–木部】

 

 

 

Japanese printed books of the Edo period (1603–1867): history and characteristics of block-printed books
Kazuko Hioki (日沖和子 Preservation Department, William T. Young Library, University of Kentucky)
Pages 79 – 101

 

江戸時代の版本の歴史と特徴の研究。【これまで海外では断片的にしか採りあげられなかったテーマを、日本を含む複数の機関での調査を元に周到に論じている。日本語ではすでに書かれていると思われるだろうが、包括的なものは、実は無い–木部】

 

 

 

Side-stitched books of China, Korea and Japan in western collections
Jesse Munn (Conservation Division, Library of Congress)
Pages 103 – 127

 

欧米の図書館等に所蔵される中国、韓国、日本の袋綴じ本の研究。綴じ方は共通しているためか、欧米では一緒くたにして縦置きで保管されたりコンサベーション処置されていることが多く、傷みの原因にもなっている。ここではそれぞれの特徴を述べるとともに、取り扱いや保管法、保護用のラッパーを提言する。

 

 

 

 

                                                                           [要訳文責:木部]

2009年12月16日(水)

来年の文化財保存修復学会は6月に岐阜で、ファーストサーキュラーを発表

文化財保存修復学会の第32回大会と総会は2010年6月12日(土)、13日(日)の両日、長良川国際会議場(岐阜市)を会場に開催される。業者等による機器等の展示も併催される。ファーストサーキュラーは以下に。

 

 

2009年12月16日(水)

Interlending & Document Supply誌、英国図書館の責任者による「デジタル化計画–目標と優先課題」を掲載

Interlending & Document Supply(2009 Volume: 37 Issue: 3)は英国図書館デジタル化計画の責任者であるSteve Greenの論文「英国図書館のデジタル化計画–目標と優先課題」(The digital library programme at the British Library: goals and priorities)を掲載している(Page: 136 – 139)。同計画が、急激に変化する出版の世界にどのように貢献するかに的を絞り、計画の目標、優先順位、所蔵するデジタル資料へのアクセス機能、半永久的なアクセスの保証の方策、新しい課題について述べている。

 

 

2009年12月9日(水)

米ALTCS、取扱い方や補修を教える資料保存のための動画のリンク集のページをアップロード

米国図書館協会(ALA)の下部組織である図書館コレクション・技術サービス協会(ALCTS)は来年(2010年)5月9日から協会傘下の図書館が実施する資料保存ウィーク(Preservation Week)のイベントにあわせたホームページ作りの一環として、このほど欧米の図書館や関連機関が作成した資料保存のための動画のリンクを集めたページ Video on Preservation を公開した。

 

 

 

Collection Care Videos
British Library
www.bl.uk/aboutus/stratpolprog/ccare/collectioncarevideos/index.html

英j国図書館による資料の取扱い方の動画。本、折りたたまれた資料、巻いてある資料、手稿、印刷物、絵画、写真ほか。

 

 

The FUNdamentals of Book Care in 5 Easy Lessons
George Mason University Libraries
http://www.youtube.com/watch?v=zX1Eiz7rLwg

ジョージ・メイソン大学図書館の学生向け取り扱い方ビデオ。

 

 

Coping with Water Damage and Save Family Treasures from Soot
Heritage Preservation/Heritage Emergency National Task Force
www.heritagepreservation.org/PROGRAMS/WaterSegmentFG.HTM
www.heritagepreservation.org/PROGRAMS/TFsoot.HTM

水害にあった資料のクリーニング法と、火災でススでを被った「我が家のお宝資料」の掃除法。

 

 

Preservation Faux Pas
Kansas State University Library
www.youtube.com/watch?v=IfegfUyoxQc

カンサス州立大学図書館の「閲覧時にやって良いこと、悪いこと」

 


Cockroach Encounters of the Third Kind!

James Madison University Libraries
www.lib.jmu.edu/media/preservationvideo.aspxheirlooms

学生が館内にもちこむ飲食物がゴキブリを引き寄せることの教えるビデオ。ジェームス・マヂソン大学図書館の館員がゴキブリの縫いぐるみで演じる。

 

 

Conserving Early Modern Books
Washington State University Libraries
www.wsulibs.wsu.edu/holland/masc/video/preservation_grant.html

ワシントン州立大学図書館による、過去に不適切な補修が行われた本の再補修。

 

 

Saving Your Treasures and more videos at www.netnebraska.org/extras/treasures/
NET Television, Saving Nebraska’s Treasures
www.netnebraska.org/extras/treasures/videos/snt.asx

全56分の動画。博物や美術品を含むさまざまなモノに対するコンサベーションを、コンサーバターへのインタビューもまじえて紹介。

 


Digital Preservation and Nuclear Disaster: An Animation and Team Digital Preservation and the Aeroplane Disaster
Digital Preservation Europe
www.youtube.com/watch?v=pbBa6Oam7-w and http://www.youtube.com/watch?v=EKnsZZzuUr4&feature=channel_page

Digital Preservation Europe(DPE)によるデジタル記録の保存の危うさと、それゆえのマイグレーション等の大事さを知らせるアニメ。

 

 

2009年12月8日(火)

雑誌『情報管理』の時実・愛知大学教授「Internet Archive創設者Brewster Kahleへのインタビュー」、手めくりスキャナーも紹介

科学技術振興機構の機関誌『情報管理』最新号(Vol.52 No.9 12月号)は時実象一・愛知大学文学部教授の「世界の知識の図書館を目指すInternet Archive 創設者Brewster Kahleへのインタビュー」を掲載している。

 

[著者抄録] Internet ArchiveはBrewster Kahleによって1996年に設立された非営利団体で、過去のインターネットWebサイトを保存しているWayback Machineで知られているほか、動画、音楽、音声の電子アーカイブを公開し、またGoogleと同様書籍の電子化を行っている。Wayback Machineは1996年からの5,000万サイトに対応する1,500億ページのデータを保存・公開している。書籍の電子化はScribeと呼ばれる独自開発の撮影機を用い、ボストン公共図書館などと協力して1日1,000冊のペースで電子化している。電子化したデータを用いて子供たちに本を配るBookmobileという活動も行っている。Kahle氏はGoogle Book Searchの和解に批判的な意見を述べているほか、孤児著作物の利用促進やOne Laptop Per Child(OLPC)運動への協力も行っている。

 

本文では書籍のデジタル化のために Internet Archive が独自に開発したScribeが紹介されている。「この機械は手めくりであるが、操作が簡単で 作業スピードが速く、ガラス板で開いたページを押 さえて撮影するのできれいに撮影できる。しかも自 動装置に比べて本の傷みが少ない。実際これまで50 万件撮影して、ページが破れたのは3ページだけだ という。Scribeを使ってこれまでにすでに50万冊を 電子化している。Googleの700万冊に比べるとまだ 少ないが、ボストン公共図書館などの参加により、 1日1,000冊のペースで電子化しているという。」(p.538)

 

全文が下記からダウンロードできる。

 

 

 

 

linksource: http://farm1.static.flickr.com/29/56193081_8e366058cd.jpg

2009年12月8日(火)

仏CRCC、日中韓米の関連機関によるアジアの手漉き紙の技術と歴史のデータベース構築の国際協力事業に参画

フランスの国立研究機関CRCC(Centre de Recherche sur la Conservation des Collections)のホームページ同機関がアジアの手漉き紙の技術と歴史に関する国際的なデータベース構築事業に参加することになった。と報じている。

 

それによると製紙技術はアジアからヨーロッパそして北米へと伝播し、欧米での技術や歴史に関する調査研究は一定の成果を挙げているが、一方アジア地区(日本、韓国、中国、東南アジア、ヒマラヤ等)での紙に関する情報は、言語的な障害も手伝って、この分野の研究者に共有されているとはいえない。

 

今回のデータベース構築事業は、フランスのCRCCとソルボンヌ大学、日本の国立民族学博物館と高知県立紙産業技術センター、韓国の国立文化財研究所と韓国国民大学(Kookmin University)製紙科学研究所と韓国忠北大学(Chungbuk University)、米国のフリーア美術館が協力し、用語(科学的なものと通称的なもの)、原料、製紙法、道具、生産地域、原料・道具・方法の歴史について調べ、データベース化するろいうもの。

 

第一段階として長い製紙の歴史を持つ日本と韓国、第二段階として多様な原料とノウハウとの組み合わせを蓄積している中国、第三段階として当南アジアとヒマラヤ地区、最後にアラブ諸国を介して北アフリカへと繋がる通商ルートをあとづけるとしている。

 

 

 

 

※同ページからの情報は以上だけで、いつから開始されるのか等は掲載されていない。

2009年12月7日(月)

紙からの臭いの分析と劣化度を相関する「物質デグラドミクス法」、英国とスロベニアの保存科学者の成果

アメリカ化学協会の雑誌 Analytical Chemistry (2009, 81-2009, 81-20, pp 8617–8622)は Matija Strlic らによる Material Degradomics: On the Smell of Old Books を掲載している。古書や古文書が劣化し発生させる「臭気」を分析し、これを紙の劣化度に相関させる物質デグラドミクス法という非破壊分析調査法。

 

複数のVOC(揮発性有機化合物)から成るガスをヘッドスペース法(揮発性物質の分析法の一つで、試料を密閉容器に入れ、上部の空間の気体をとって分析する方法)で分析し、このデータと、紙の劣化の原因になるサイズ剤のロジン、リグニン、カルボニル基の量、重合度、酸性度を相関させたとしている。また、従来、酢酸およびフルフラールの二つのVOCが紙の劣化度の指標になるとされてきたが、今回の研究では脂質反応過酸化物が同じく指標になることがわかったしている。

 

 

2009年12月4日(金)

【弊社のニュース】アラン・カルメスほか「アーカイブの紙資料の保存-理論と実践」を掲載

アラン・カルメス、ラルフ・シェーファー、キース・R・エバーハート著「アーカイブの紙資料の保存-理論と実践」を掲載した。原文は Theory and Practicc of Paper Preservation for Archives (Restaurator, Vol.9,No.3, 96-110, 1988.) として発表された。日本語訳は『文書管理通信』(1996, 9-10)に掲載された。今回の電子テキスト化にあたり表題と訳語の若干の変更や訂正が行われている。

 

 

2009年12月3日(木)

【弊社のニュース】メアリー・バーグマン「ブック・コンサーバターになるには」を掲載

Mary Baughman "Book Conservation Training Deep in the Heart of Texas" (The Libarary Scene, Vol.5, No.3, June 1986)の全訳「ブック・コンサーバターになるには」を掲載した。かつて「本の保存専門家になるには 1~3」の表題で『CAP: 本の保存のための海外ニュース月報』(Vol.2, No.6~8, January~March, 1988)に掲載した。今回のテキストのデジタル化にあたって、若干の訳語の訂正とともに、表題を改めた。

 

著者のバーグマンさんはテキサス州立大学附属ハリー・ランサム・センター・コンサベーション部(The Cnservation Department of Harry Ransom Center)のブック・コンサーバター。1983年に同センターに職を得る。1988年にKress and Kittredge基金により世界的な工芸製本家であるスイスの Hugo Peller (2003年に鬼籍に。 In Memoriam を参照)のもとで製本を学ぶ。センターとの仕事と並行して、現在、彼女は子ども達にブック・アートの楽しさを教える教室を主宰している。著作一覧は → こちらに

 

 

2009年12月3日(木)

国会図書館のカレントアウェアネス-E 「欧州の図書館の資料デジタル化に関するワークショップ」の報告

国立国会図書館のカレントアウェアネス-E (2009.12.02)は同館関西館図書館協力課の堤恵氏による「欧州の図書館の資料デジタル化に関するワークショップ(報告)」が掲載されている。今年10月にオランダ国立図書館で開催されたWorkshop on the Digitization of Library Material in Europeの参加記。欧州の図書館等で進展している資料のデジタル化の現状と課題が見渡せる好レポートになっている。

 

 

2009年12月1日(火)

国立公文書館修復係長の有友至氏が人事院総裁賞を受賞、修復部門の個人での顕彰は初めて

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【インドネシア・アチェ州立公文書館修復研修での有友氏】
linksouce: http://www.archives.go.jp/news/091130_01_03.jpg

 

独立行政法人国立公文書館業務課修復係長の有友至氏がこのほど、第22回人事院総裁賞を受賞することになった。授与式は12月9日(水)11時30分から明治記念館(港区元赤坂)において行い、その後、受賞者は天皇皇后両陛下の御接見を賜る予定。

 

同賞は多年にわたる不断の努力や国民生活の向上への顕著な功績等により、公務の信頼を高めることに寄与したと認められる職員(一般職の国家公務員)又は職域を顕彰するため、昭和63年に創設された。顕彰は毎年1回。

 

今回の有友氏の顕彰は「歴史資料として重要な公文書等の修復の第一人者であり、和紙と糊を用いた伝統的な修復技術や科学的保存技術などを国内ばかりか広く海外にも広め、国内外のアーカイブズ文化の発展に貢献するとともに、国民共有の知的資源である公文書等を国の活動や歴史的事実の正確な記録として後世に残し、将来の国民に対する政府の説明責任を果たすため、修復技法に創意工夫を施し、歴史公文書等を良好な状態で保存することに尽力し、公務の信頼の確保と向上に寄与」による。

 

同賞の修復部門関連での受賞には、平成9年(第4回)の宮内庁書陵部図書課古文書等修補部門、平成9年(第10回)の宮内庁正倉院事務所保存課古裂等補修部門が挙げられるが、いずれも職域での受賞で、個人での顕彰は初。

 

 

2009年11月24日(火)

広島県立文書館のサイト、インターネット講座「保存管理講座」として保存装備やカビの除去法等を掲載

広島県立文書館のサイトは、インターネット講座「保存管理講座」として以下を掲載している。現場でのノウハウが盛り込まれた内容になっている。

 

◆ 古文書の保存装備について
◆ 古文書の整理について
◆ 古文書に発生したカビの除去方法

 

また、一般向けのリーフレットとして「古文書を取り扱う方へ」、「文書を所蔵している方へ」がPDFで掲載されている。

 

 

2009年11月20日(金)

ブログもんじょ箱、9月の国会図書館の保存フォーラム「害虫を入れない・増やさない」の詳細なレポートを掲載

特種紙商事株式会社のブログもんじょ箱は17日付で「国会図書館におけるトラップモニタリング調査報告」を掲載している。9月11日に行われた第19回保存フォーラム「害虫を入れない・増やさない-図書館における有害生物管理-」における東京文化財研究所生物科学研究室長の木川りか氏と国会図書館収集書誌部資料保存課の宇野理恵子氏が講演と事例報告を再構成し、レポートとしてまとめたもの。木川氏の害虫入門、内外でのIPMの事例、モニタリング法の解説から、宇野氏の国会図書館での事例を詳細/的確にまとめた好レポートになっている。PDF(88KB)としてダウンロードできる。

 

2009年11月19日(木)

【弊社のニュース】 ボナデア著(伊藤美樹 訳)『館内で本を修理する』全文をPDFでアップロード

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2009年11月18日(水)

国会図書館カレントアウェアネス・ポータルの記事「Googleブックス訴訟の修正和解案、日本の作品は対象外に」

国立国会図書館のカレントアウェアネス・ポータルは11月16日付のニュースとして「Googleブックス訴訟の修正和解案、日本の作品は対象外に」を掲載している。

 

「対象となる書籍の範囲が縮小され、米国の作品以外で対象となるのは、米国著作権局に登録された作品か、カナダ、英国、オーストラリアの3か国で出版された作品に限定される。これにより、日本の作品のほとんどは対象外となる。」等、13日に提出された修正点をまとめるとともに、関連する情報のソースをウェブ・リンクで載せている。

 

 

 

 

なお、上記のリンクとしては挙げられていないが、反Googleの旗手、ブルースター・ ケイルが率いる Open Book Allianceのサイトは、修正案が提出された13日当日に Is the Google Books Settlement Worth the Wait? を掲載、修正案は姑息な内容で、Google とそのグループの利益しか考えていないと非難している。

 

 

2009年11月17日(火)

早川典子氏の講演「絵画修復に使われる糊と布海苔」、11月13日開催の国際研究集会『日本絵画の修復―先端と伝統―』から

東京文化財研究所主催の第33回文化財の保存及び修復に関する国際研究集会『日本絵画の修復―先端と伝統―』が11月12日(木)~14日(土)にかけて、東京国立博物館平成館大講堂で開催された。初日は「日本絵画修復の現状」をテーマに、絵画修復の理念や自然科学との連携についての発表に加え、海外における日本絵画の修復事例発表が行われた。二日目は「修復技術と材料をテーマとして、日本絵画修復に使用される材料についての確認や作業工程について、また、最新の試みに関しての発表がされた。最終日は「修復と自然科学」をテーマに、海外の美術館における絵画修復の現状、および九州国立博物館で行われている取り組みについての発表があり、最後に3日間の総括として総合討論が行われた。

 

全体のプログラムは →こちら

 

 

以下に早川典子氏による講演の概要を紹介する。

 

 

早川典子氏(東京文化財研究所)「絵画修復に使われる糊と布海苔」

日本絵画修復に使用される接着剤は、膠、小麦デンプン糊(新糊)、それを保管して作る古糊、布海苔に大別される。具体的な使用方法としては、表打ちには布海苔、剥落止めには膠、裏打ちには新糊や古糊、増粘剤として布海苔というように分けられる。これらは全て、可逆性を必要とする箇所に用いられる点で特殊な使われ方だと言える。しかし、使用技術が発展してきた一方で、経験や勘に頼った調製がなされ、材料自体の物性や化学構造については明らかになっていなかった。今回は古糊と布海苔を主に取り上げ、科学的な観点から得た成果を報告する。

 

古糊について

 

古糊は古くから裏打ちに使用されており、「仕上がりがやわらかいこと、接着が強すぎないため本紙に必要以上の張力をかけないこと、再修理の際に確実に剥離すること、小麦デンプン糊よりもカビが生えにくいこと」が利点として挙げられる。一方で、化学組成が不明であることや有色であること、酸性であることが問題として挙がっていた。今回はまず、デンプンの分子量や老化度、生成初期の微生物変化や剥離強度試験により科学的に物性を確認した。その結果、デンプンの老化は冷所保存(4℃前後で最も老化が進む)、デンプンの低分子量化はカビ由来の酵素、酸性はデンプン分解物、中間生成物(単糖オリゴ糖など)の消失は微生物による消費にそれぞれ起因するものだと明らかになった。この結果を踏まえ、新糊を5℃に冷やしてαアミラーゼを添加、脱イオン水で洗浄・遠心分離を行う方法で、古糊によく似た糊の短期間での調製が可能となった。この糊に有機酸を添加することは、接着力だけに関して言えば有益であるが、酸性に傾くことや、そもそもその接着力が必要なものなのかを考える必要がある。さらに、古糊使用時に行う打ち刷毛についても検討したが、和紙、特に美栖紙と宇陀紙の組み合わせの場合、接着力が最も高まることが剥離強度試験において確認できた。対して、パルプ紙に打ち刷毛を行うのは全く効果がなく、むしろ接着力の低下が見られた。

 

布海苔について

 

布海苔は日本画修復において、増粘剤としてデンプン糊の粘度調整や、接着剤として表打ちに使用されてきた。ゲル化しにくく粘度が高いのが特長で、水を与えると容易に剥離する性質は、修復終了後に速やかに除去する必要のある表打ちには非常に有効的な材料である。しかし、粘度や濃度の調製が難しい点が問題だった。そこで、今回は調製方法を変えて、抽出液の粘度や乾燥後の水への再溶解性について検討した。調製方法として、加熱抽出の他に室温抽出を行った結果、低い粘度のものが得られ、加熱抽出したものに比べて再溶解性が高く、除去しやすいという成果が得られた。室温抽出法は加熱抽出法と比較すると、分子量が低い、接着力が高い、溶解度が高いという特徴があり、表打ちに向いていることが明らかになった。しかしながら、室温抽出と言っても、季節(温度)によって条件が異なってくるため、20℃前後を想定した抽出方法であることを断わっておきたい。

 

セルロースエーテルについて

 

最後に近年使用されつつあるMC、HPC、CMCなどのセルロース誘導体について簡単に触れる。これらの材料は分子量や溶媒によって、また湿度によっても接着力が変わってくることに注意したい。カビの抵抗性試験では、自然材料に比べて抑制が確認されているという利点があるものの、材料の物性をきちんと理解した上での使用が肝要である。

 

 

 

[文責:福島希]

 

※参考

 

2009年11月17日(火)

英国の資料保存支援センター(PAC)が写真資料の保存のためのブックレットをPDFで公開

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英国の資料保存支援センター(PAC: Preservation Advisory Center)はこのほど写真資料の保存のためのマニュアル Preservation of photographic material を作成し公開した。全19ページのブックレット。銀塩写真だけでなく、カラー写真、マイクロフィルム、X線フィルム、動画フィルムも対象にしている。目次は以下の通り。

 

Introduction
What is a photograph?
History
Identification of photographic process
Causes of degradation
Handling
Housekeeping
Environment
Temperature and relative humidity
Conservation heating
Environmental targets
Cold storage
Cellulose nitrate film – a warning
Air purity
Light and display
Housing
Conservation
Digitisation
Online resources
Additional Reading

 

 

2009年11月16日(月)

園田直子編『紙と本の保存科学』が出版、保存科学者とコンサーバター、図書館員・アーキビストらの共同執筆

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園田直子(国立民族学博物館教授)編『本と紙の保存科学』(岩田書院)が出版された。図書館やアーカイブでの資料保存に役立つようにと、保存科学者だけでなく、コンサーバターや図書館員やアーキビストと共に、「それぞれの専門的な立場から執筆したもので、化学的な事項も含めた総覧的な内容になって」(はじめに、p.1)いる。目次は以下の通り。

 

Ⅰ 紙の基礎知識
紙とは 大江礼三郎
修復材料としての和紙 増田勝彦

 

Ⅱ 紙の劣化度判定
司書による紙の劣化度評価 村本聡子
ダブルフォールドテスト 村本聡子
紙の物理的性質の測定 岡山隆之
紙の化学的試験法 関正純
ローリングテスト–紙の劣化度判定の新しい可能性– 園田直子
アコースティック・エミッション法による紙の劣化度測定 岡山隆之
熱分解ガスクロマトグラフィーによる紙の劣化度測定 大谷肇

 

Ⅲ 紙資料の保存処理
少量の紙資料を対象とした保存処理 金山正子
紙資料を対象とした大量脱酸性化・強化処理 園田・関・岡山
カビの発生した紙資料への対処 金山正子
虫害が発生した紙資料への対処 日高真吾

 

Ⅳ 紙資料の管理
紙資料保存のための環境整備 園田直子
紙資料の保管・収納法 青木睦

 

 

『本と紙の保存科学』
ISBN 978-4-87294-574-4
2009年10月25日発行
A5判、本文216頁
岩田書院
2,800円

 

 

 

 

【書評】

 

複数の著者による共同執筆のためか、各論を比較すると、その密度に差があるのはいたしかたないのかもしれないが、せっかく執筆するのならば納得できる科学的なデータや事例が出そろってからでも良かったのではないか(岡山「アコースティック~」)、実用化に結びつけるためには事例が少なすぎ、他の事例をいくつか重ねてから見せて欲しかった(園田「ローリング~」)というものもある。また、一般の工房での少量脱酸性化処置やインク焼け処置を紹介するならば、紙幅を増やしていま少し踏み込んだ専門的な内容と問題点の指摘にしないと、他の保存科学者による論のレベルとの開きが目立つ(金山「少量の~」)、屋内の温湿度管理では、Tim Padfiled やカナダ文化財研究所(CCI)の研究者による相対湿度の変動場幅許容と consevation heating の導入に象徴される新しい考え方や「基準」が広く注目されるようになっているので、これらの学問的な整理紹介が欲しかった(園田「紙資料保存のための~」)。一方、内外の研究成果を目配り良く概観して保存容器への収納の意味と方向性を明確に示したもの(青木「紙資料の~」)は、読者としての図書館員やアーキビストがなるほどと納得できる論になっている。

 

教えられたことも多々ある。「紙資料を対象とした大量脱酸性化・強化処理」(園田ら)では、かつて模索されたが、いまはもはや復活はするまいと思われるDEZ法などの過去の技術と、今現在実用化されているもの、開発中のものも、丁寧に紹介しており、大量脱酸性化技術の変遷がわかる(p.139-167)。同じく強化処理についてもバイエルン州立図書館のフリース法を詳しく紹介しており、これもコンサベーションの現場からするとありがたい。また、増田「紙修復材料としての和紙」では、「和紙を使う側ですぐにでもできることは使用材料のリスト、できればサンプルを付した修復報告書を作ることが有効ではないだろうか」という提言があり、考えさせられた。その通りだと思う。実は、ある時点までは弊社もこれをこころがけた報告書を顧客に提出していたのだが、大半の顧客先(図書館やアーカイブ)では紙媒体での報告書を保存し管理してゆくシステムが無く、紙媒体の元になるデジタル記録を渡すしかないようになっており(これすらも長期に保存しアクセス可能なのか疑わしいのだが)、まさかこれに実物の補修紙をペーストすることもできず、結局は顧客から要望があったときだけサンプルを提出している。ただ、報告書の記録というのは、私どものものではないのはもちろんだが、修理した資料そのものに常に寄り添うものであって、厳密に言うと、それを伴ってはじめて「修理した資料」の全体ということなのだから、今後は顧客にもアナログでの報告書の保存をお願いすることにした。今さらであるが、心して取り組みたい。

 

総じて本書は、保存科学者とコンサーバター、図書館員やアーキビストが膝を突き合わせて問題の解決に取り組んでゆく記念的な第一歩として評価したい。

 

以下はないものねだりであるが、かねてから大事だと思ってきたことなのでここに記しておきたい。

 

ひとつは大江「紙とは–6.5 紙の劣化」で言及されている劣化原因についてである。一般に、というよりも世界の紙の科学者も、私どものようなコンサーバターも、近現代の紙の劣化は紙中に作られる酸が主因で、これが触媒になって水が関与した形でのセルロースの加水分解を引き起こす、と認識している。いわゆる酸加水分解説である。 しかし大江の見解は、酸が主因ということでは同じだが、その劣化メカニズムについては全く異なる。「保存中の紙の水分は通常7~9% 程度で、ほとんどの水は吸着・結合水であって遊離水は少ないから、加水分解作用よりも硫酸基による脱水作用が褐色化、脆弱性の原因ではなかろうか」(p.33)。この大江の見方は、管見の及ぶ範囲だが、海外の保存科学者による数多ある論文でも指摘されたことはない。少なくとも大江の見解を受けて試験なり実験した論文を見たことがない。そこで要望というのは、この辺りを日本の保存科学者に取り組んでもらうことはできないだろうか、ということである。これは、「リグニン分を多く含む紙の場合には、まず着色などを伴うリグニン成分の劣化が進行し、その結果、セルロース分子の劣化はかえって抑制される可能性すら考えられる」(大谷「熱分解~」、p.126)と並んで、研究レベルでのインパクトと、資料保存の現場での対策に影響する興味深い展開が期待できるのである。なお大江の酸脱水角質化説は、安江「蔵書劣化の謎を追う スロー・ファイヤー探偵団の冒険」で丁寧に説明されている。

 

もうひとつは「劣化の下限強度」について、しっかりとした解説と論とが欲しかった。書物の本文紙としてどの程度まで劣化していても許容できるのか。紙の寿命を知るために比較加速劣化試験をして結果が出ても、その劣化させた、あるいは劣化するであろう本文紙は、閲覧という使用に耐えるということなのか、そうではないのか、物差しが必要ではないか。いわゆる "So-what? "問題である。岡山は「紙の加速劣化試験によりある程度の物理的性質が半分になる期間をその紙の寿命とするといっても、強度のような性質の場合、元の強度の高い紙でその数値が半分になっても実用上問題にならないことが多い。したがって、半減期を求めるよりも閲覧に耐える下限値を設定し、これに到達するまでの時間を算出するほうが寿命の評価としては妥当である」(岡山「紙の劣化度~」)としながらも、これ以上は展開しておらず、残念である。実はこの下限強度については、大江や岡山らの「劣化の評価法」(『平成3, 4, 5年科学研究費補助金試験研究 (B)(1)研究者報告書 各種セルロース材料による劣化紙の補強方法の開発』、1994)において引裂き強度試験の数値として提示され、この本のなかでも園田が「加速劣化試験に基づいて、閲覧可能な下限強度として紙の引裂強さが 150mN に達するまでの時間を求めたところ、この処理(DAE法による脱酸性化;)による紙の延命効果は2.5~3.2倍と推定された。」(p.153)と言及しているのだが、「150mN」 の一般向けの解説はぜひとも欲しかった。

 

最後に、大変な作業になるのだが、巻末に索引を!!

 

 

[文責:木部]

 

 

2009年11月16日(月)

NPO書物研究会が12月に米フォルジャー・シェイクスピア図書館から F.モーリー氏迎えて書物修復の講演とワークショップ開催

NPO法人書物の歴史と保存修復に関する研究会と奈良県立図書情報館の共催による第3回シンポジウム「歴史遺産としての古典資料の保存修復」が12月5、6日に奈良県立図書情報館で開催される。米フォルジャー・シェイクスピア図書館修復室長のフランク・モーリー氏を迎え、講演、パネルディスカッション、ワークショップが予定されている。詳細は下記ページで。

 

 

2009年11月16日(月)

IADAの国際シンポジウムが来年5月にプラハで、テーマは Out of Sight-Out of Mind?

ドイツ語圏のペーパー&ブック・コンサーバターを中心にした組織 IADA (Internationale Arbeitsgemeinschaft der Archiv-, Bibliotheks- und Graphikrestauratoren)の国際シンポジウムが来年5月にプラハで開催される。チェコ国立図書館、同国立アーカイブ、同国立博物館との共催。テーマは Out of Sight-Out of Mind? (目に見えないものはいずれ心からも消える?、去るものは日々に疎し?)で、紙媒体の作品や資料の保管、保管環境、保存容器、デジタル化、リスク管理等での発表が予定されている。