ほぼ日刊資料保存

必也正名乎

図書館やアーカイブ等の資料保存に関する世界のニュースを伝える、ほぼ日刊のページです。 土日・祝日は休刊します。 リンクも引用も自由です。

2009 年 8 月 のアーカイブ

2009年8月20日(木)

国会図書館が10月に第20回保存フォーラム、オランダ国立図書館のポルク氏迎えデジタル化とオリジナル保存等で

国立国会図書館は10月6日(火)と7日(水)に第20回保存フォーラムを開催する。オランダからヘンク・ポルク博士(オランダ王立図書館専門サービス・資料部付保存科学者)を招聘し、2日にわたって、オランダにおける保存科学の最新動向とオランダ王立図書館所蔵特別コレクション「紙の歴史」のフォーラムを開く。定員は各回50名。申し込み締め切りは9月11日。詳細は下記ページで。

 

 

2009年8月19日(水)

英国図書館が「シナイ写本」のコンサベーションのページ、デジタル化やインク焼けの補修などの動画も

完本としては世界最古の聖書「シナイの写本」(Codex Sinaiticus)へのコンサベーションのページが英国図書館(BL)のサイトに掲載されている。BLを中心に、これまでドイツやロシアなどに分散されて保存されてきたものを、デジタル化して「一冊」に、ウェブ上でアクセスできるプロジェクトが終了したのを機に、そのコンサベーションの内容をまとめてアップロードした。世界の至宝がデジタル化のために撮影される模様や、ベラムの本紙に記された没食子インク(iron gall ink)焼けへの和紙繊維によるブリッジ(ファイバー・ブリッジ)法を伝える動画が掲載されている。

 

 

2009年8月11日(火)

国立公文書館『アーカイブズ』が「文化財指定された行政文書」の特集、文化庁から地方の文書館の取り組みまで

国立公文書館の機関誌『アーカイブズ』(2009年7月号)は、「文化財指定された行政文書」の特集を掲載している。目次は以下の通り。

 

近代文書群の文化財指定について 地主智彦
公文録等の重要文化財指定とその後の取組 (国立公文書)
京都府行政文書の重要文化財指定と課題 福島幸宏
山口県行政文書の重要文化財指定 山崎一郎
埼玉県行政文書の重要文化財指定とその管理 白井哲哉
東京府及び東京市関連行政文書の都指定有形文化財の指定 畑中佳子
群馬県行政文書の県重要文化財の指定 中村みき
長野県行政文書の県宝指定 児玉卓文
奈良県行政文書の県指定文化財の指定 大宮守友

 

 

 

地主智彦氏(文化庁文化財部学芸課)の「近代文書群の文化財指定について」は、さまざまな問題や課題に対して目配りの良い解説と方向を示した好論文で、今後文化財指定を予定している機関は必読。特に本紙関連では以下が興味深い。

 

「近代文書群は「量の膨大さ」、「素材の多様性」、「文化財 としての認識が未定着」及び「修理技術、修理方 法論が未成熟」という、前近代の文化財とは異質 な性格をもち、1点ごとに詳細に把握されている 美術工芸品と、この膨大な紙数を内包する近代文書群をまったく同一に管理することも不可能であろう。」「しかし手続の運用上の解釈については、文化財 として近代文書群を考えた際に何を後世に伝える べきかという議論を出発点とし、当該文書群の状 態に応じた現実的な取扱方法についての共通理解 を得たうえで、取り決めていくべきではないだろうか。この点は次節で触れることとし、以下に文 化財保護法上の取扱いのうち、日常的に留意すべ きと考えられる事項についてのみ列記する。」

 

そして「(1) 許可事項 ア、現状変更及び保存に影響を及ぼす行為の制 限(文化財保護法第43条) →現状を変更する行為を行うときは、あらかじめ文化庁長官の許可が必要となる。」を挙げ—-

 

「現状変更とは、「文化財としての価値を有する部分に直接的かつ物理的に変化を加えること」と される。ただし、文化財の品質・構造的な特性に鑑み、美術工芸品において現状変更行為に該当するか否かという判断は、「文化財としての価値を有する部分」に変更を加えるか否かが問題となるため、文化財価値の認識の問題に帰結する。/また、 現状(現在の価値) の維持を目的とした保存修理は修理として扱い、たとえ解体工程を有していても現状変更には該当しない。 一例をあげれば、現状掛幅装の古文書を解体修理する場合、劣化した表具裂の取替えを伴うものであっても、再度掛幅 装に仕立て直すのであれば現状変更行為には該当 しない。 いっぽう、これを巻子装や「メクリ」に 変更しようとすれば現状変更行為に該当する、という具合である。 近代行政文書にみれば、取扱上の理由で1冊の簿冊を数冊に分冊しようとする場合などは同行為に該当しよう。 /また、保存に影響を及ぼす行為とは、「文化財の形状に直接物理的変化を生ぜしめるものではないが、材質等に化学変化を起こし、又は経年劣化を促進させる等、保存上何らかの影響を与える行為」とされる。 近代行政文書では、撮影のための解綴及び再編綴作業などが該当しよう。」と説明している(p.35-36)。

 

 

 

2009年8月7日(金)

国会図書館が前フランス国立図書館長ジャンヌネー氏招き、「インターネットと文化:チャンスか危機か」講演会を9月に

国立国会図書館では、前フランス国立図書館長のジャン-ノエル・ジャンヌネー氏を招聘し、「インターネットと文化:チャンスか危機か」講演会を9月に開催する。

 

「情報検索のツールとしてGoogleなどの検索エンジンが台頭し、英語を中心とした情報社会が進んでいます。フランスの歴史家で政治家でもあるジャンヌネー氏は、文化及び言語の多様性が重要であることを強く主張し、欧州電子図書館立ち上げの基本思想を唱えました。また、フランス国立図書館長在任中の2005年にQuand Google défie l’Europe(邦訳『Googleとの闘い―文化の多様性を守るために』佐々木 勉訳、岩波書店、2007年)を著しています。講演会では、インターネットに代表される情報社会の進展と文化との関わりなどについてお話しいただきます。 同タイトルの講演を東京本館と関西館で行います。東京本館では、講演後にジャンヌネー氏と長尾国立国会図書館長との対談を予定しています。」(案内から)

 

 

 

 

0226170

Googleとの闘い ―― 文化の多様性を守るために ――


「グーグルのもつ計画の弱点の一つは、長期的な保管と保存という問題について明らかに無関心なことである。これもまた商業的な計画に隠された短期性によるのだ。投資はなにがあろうと早々に回収されなければならないからだ(株式市場に上場していることから、グーグルは長期的なアーカイブ化に注意を払わないのだ)」。【p.102から引用】

2009年8月7日(金)

国会図書館、6日付日本経済新聞朝刊記事に「事実と異なる」とコメント

国会図書館は7日、6日付の日本経済新聞朝刊記事「国会図書館の本 有料ネット配信」に対し「事実と異なるところがある」とし、同館のデジタル資料の館外提供に関する取り組みについての説明を掲載した。

 

 

2009年8月6日(木)

国会図書館、2011年スタートを目処に蔵書400万冊を有料ネット配信

6日付けの日経新聞朝刊は、国立国会図書館が日本文芸家協会、日本書籍出版協会と共同で、デジタル化した蔵書をインターネットで有料で配信するサービスを始める、と報じている。 両協会が権利者の許諾を得て、個人がネット上で同図書館の蔵書400万冊を読めるようにする。スタートは2011年春の予定。著作権料を作家などに分配する法人も発足させる、としている。

2009年8月6日(木)

画像保存セミナーが10月30日に東京都写真美術館で開催、多様化するニーズに応える広範囲な内容で

社団法人日本写真学会主催の平成21年度画像保存セミナーが10月30日(金)に東京都写真美術館ホール(目黒区三田)で開催される。

 

「近年、写真産業界では、銀塩写真関連の規模の縮小が急速に進み、その一方でデジタ ル化の波が加速してまいりました.このような産業構造の変革によって画像保存を取り 巻く状況が変化するとともに,画像保存に対する意識が様々な分野で高まっております。 今回のセミナーでは、デジタルカラー写真プリントの画像保存性評価、デジタルファ クシミリの制作、殺菌・静菌効果を有する酵素濾紙、図書館の資料保存、写真原板の概 念、フィルム保存の現状、文化財写真としてのデジタル写真画像など広範囲にわたる内 容で構成しております。」(案内パンフレットから)

 

参加費は会員6,000円、非会員8,000円、学生2,000円、申し込み〆切は10月9日。

 

主なプログラムは以下の通り。

 

講演1.画像技術と図書館の資料保存 -Looking backward and forward- │ 資料保存研究者・元国立国会図書館副館長 安江明夫

 

講演2.高品質な貴重書デジタルファクシミリの制作 │ 慶應義塾大学 樫村雅章

 

講演3.文化財保存へのアプローチ『気相中で殺菌・静菌効果を有する酵素濾紙』 │ 日揮ユニバーサル(株) 磯前和郎

 

講演4.写真原板とは何か │ 東京都写真美術館 金子隆一

 

講演5.「我が国の写真フィルムの保存・活用に関する調査研究」について │ (社)日本写真家協会 松本徳彦

 

講演6.文化財等の写真記録に関するガイドライン策定の取組みについて │ オリンパスイメージング(株) (文化財写真ガイドライン検討グループ) 吉田英明

 

講演7.JEITA 規格「デジタルカラー写真プリント画像保存性評価方法」について │ セイコーエプソン(株) (JEITA) 加藤真一

 

 

2009年8月6日(木)

アート・コンサベーション支援の移動ラボ MoLab、専門家と必要機材を積み込んだバンによりEC全域の現場で仕事

 

オスロのムンク美術館でのコンサベーション支援活動
linksource: http://www.wired.com/images/article/magazine/1708/st_molab_f.jpg

 

欧州連合(EC)に加盟する各国が協力し、アート・コンサベーション支援の各種分析や調査を行う移動ラボMoLabの活動を、Protect and Preserve: Mobile Art-Conservation Van Helps Save Treasures として、Wired Magazine (07.20.09) のサイトが伝えている。

 

移動は大型バンによる。原子間力顕微鏡、マイクロラマン分光分析装置、核磁気共鳴分析装置などの機材を積み込み、コンサーバターと保存科学者による専門チームとともに、コンサベーションが必要なのだが移動するのが難しい絵画などの分析や調査を現場に出向いて行う。行く先はEC全域。

 

すでに5年の実績があるが、この間、英国博物館所蔵のコロンブス上陸以前のメキシコのコデックス(記録冊子)からオスロのムンク美術館の「不安」や「思春期」などの絵画まで、さまざまな作品を扱ってきた。最近ではダヴィンチの「最後の晩餐」のための新たなスケッチをロンドンのナショナル・ギャラリーが所蔵する絵画の下から見いだした。

 

 

 

2009年8月5日(水)

外務省外交史料館が所蔵史料の保存管理等の専門職員を募集、採用期間は今年10月から2年間

外務省外交史料館は任期付き職員の臨時募集として所蔵史料の保存管理等に携わる職員を募集している。詳細は下記ページで。

 

 

2009年8月4日(火)

国立国会図書館、「大量脱酸性化処理の有効性調査」の委託先を公募、DAE法とブック・キーパー法を対象に来年3月までに報告書

国立国会図書館は3日、「大量脱酸性化処理の有効性調査」の委託先を公募すると発表した。国内で稼働している乾式アンモニア・酸化エチレン法(DAE法)とブックキーパー法(BK法)により処置したものを、加速劣化させ、色、pH、引き裂き強さ等の斑利試験、アルカリ残留量などを計り、有効性を見極める。

 

今回の公募にあたっては注意点として「本公募は、国立国会図書館が同等作業を委託した実績があるものの他に本件作業を行う能力がある 者がないかを確認するための手続きであり、受注者を決めるものではない。 当該作業の委託・契約方式は、本公募の結果を考慮の上、別途検討する。」としている。

 

特徴的なのは、加速劣化試験として、従来からの乾式法(ISO 5630-1)と湿式法(ISO 5630-3)とともにISO 5630-5(2008) Paper and board — Accelerated ageing — Part 5: Exposure to elevated temperature at 100 degrees C も行うこと、そして劣化後の試験項目としてアコースティック・エミッション(acoustic emission, AE)法による劣化度試験が盛り込まれたこと。AE法による紙の劣化測定研究は1990年代から製紙分野で行われてきたが、資料保存分野での応用は緒に付いたところ。新しい成果が期待されている。

 

 

 

 

参考:
国立民族学博物館「脆弱化した図書・文書資料の非破壊劣化度評価と新規強化処理法の開発」

 

東京農工大学: アコースティック・エミッション法による紙の劣化度測定—加速劣化条件の影響—

2009年8月3日(月)

アイオワ大学図書館資料保存課が昨年6月の大洪水被害からの書籍、文書、写真、音盤などの救助手当てを動画で紹介

アイオワ大学図書館資料保存課(Universitiy of Iowa Libraries, Preservation Depertment)のホームページは、昨年6月の大洪水により被害を受けた各種資料の救助手当ての方法を動画で紹介している。

 

アイオワ大学では予想される被害に備えて、あらかじめ建物の周辺に土嚢を積み上げて防ごうとしたが、洪水の規模は予想をはるかに上回るものだった。大学全体での被害総額は2億3千万ドルと試算されている。 → University of Iowa Flood Response Video, 2008

 

 

 

ただし、図書館資料は、ボランティアによる避難処置が行われたことで、被災の大規模な拡大を予防できた。 ↓ linksouce:http://www.uiowa.edu/floodrecovery/video/

 

 

 

※写真資料への手当て linksouce*http://vimeo.com/1417232?pg=embed&sec=

 

 

 

※本への手当て linksouce:http://vimeo.com/1353443

 

 

 

※文書への手当て linksouce:http://www.youtube.com/watch?v=I47-fS826Pw

 

 

 

※音盤、CD、DVDへの手当て linksouce:http://vimeo.com/1389675?pg=embed&sec=