ほぼ日刊資料保存

必也正名乎

図書館やアーカイブ等の資料保存に関する世界のニュースを伝える、ほぼ日刊のページです。 土日・祝日は休刊します。 リンクも引用も自由です。

2009 年 9 月 のアーカイブ

2009年9月30日(水)

IFLAのIPN最新号は「紙」の特集号、仏で開発中の新しい脱酸性化技術や日本の研究者らの成果などを掲載

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IFLA(国際図書館連盟)資料保存分科会のニューズレター International Preservation News (IPN) の最新号(No48, August 2009)は「紙」の特集号。米英仏、中国、そして日本などの紙および紙媒体の保存に関連する調査や研究活動の現状が報告されている。目次は以下の通り。

 

Hervé Cheradame: Some Progress Towards a Multifunctional Mass Deacidification Process
Fenella G. France and Matthew Kullman: Recycled Paper Research at the Library of Congress
Jali Heilmann: Electronic Paper

David Pineault et al.: Economics Focus: Demand Drivers for Printing Paper
Rita Hofmann : Modern Ink-jet Prints: Structure and Permanence
Philippe Serenon: Why and How the Art Market Converts to Archival Pigment Prints?
Naoko Sonoda, Masazumi Seki, Takayuki Okayama and Hajime Ohtani: Ongoing Study on the Conservation of Paper and Books: Evaluating Paper Deterioration Strengthening of Deteriorated Paper
Tian Zhouling and Zhou Chongrun: The Survey of pH Value in National Library of China and the Project of Conservation for Ancient Books
Marija Grabnar: Chronicles of Preservation 32 Half a century of the Centre for Conservation and Restoration at the National Archives of Slovenia
Jedert Vodopivec: Book Conservation Training with Prof. Christopher Clarkson

 

 

 

主な論文の概要は以下の通り。

 

Some Progress Towards a Multifunctional Mass Deacidification Process
フランスEvry大学の著者らが開発中の新しい液相法の脱酸性化技術。

aminoalkylalkoxysilanes (AAAS)を有機溶剤に溶かしもので処置すると、脱酸性化とともに紙力強化と防かび性を付与できるという。また、比較的コストがかからず、環境やヒトへの負荷も無いとしている。

 

Recycled Paper Research at the Library of Congress
米国の政府関係機関によるグリーン購入を促進させる大統領令(EO, Executive Order)に基づく再生紙の導入が盛んになり、政府刊行物には比率で30%を満たすものが使われるようになる一方で、その保存性が問題になっている。アメリカ議会図書館は再生紙の長期保存性のアセスメントに乗り出したが、その予備研究報告。今後、含有率、繊維組成、リサイクル回数、製法などがどのような影響を及ぼすかを調べていく。

 

Modern Ink-jet Prints: Structure and Permanence
これまでの紙焼き写真を代替する資料や作品としてインクジェットによる印刷物がアーカイブや美術館に収蔵されるようになってきた。この20年ほどの間に広く普及したインクジェットによる印刷法は、技術進展が早く、印刷基材(紙)もインクもプリンターも多様なものが次々と開発され使われている。このため印刷物としての長期保存性がどの程度かを一般化するのは極めて難しいのが現状だ。この論文ではインクは水性に、また用途は屋内での仕様に、対象物も写真画像に限定して、光、湿度、温度、大気汚染物の影響を調べた。ナノレベルの空孔がある基材(紙)に染料インクで描いた画像は大気汚染物(特にオゾン)に敏感だが、表面をポリマー加工した基材では高湿度に敏感だった。一方、顔料インクはナノレベルの空孔のある基材では湿度や光の影響は無いが、擦り傷が付きやすい。こうした特徴は銀塩写真とは全く異なり、温度には逆に敏感ではないため、定温保管は絶対条件ではない–ということが判った。


Ongoing Study on the Conservation of Paper and Books: Evaluating Paper Deterioration and Strengthening of Deteriorated Paper
日本の国立民族学博物館等の研究者による劣化紙の脱酸性化+紙力強化法および評価法の開発。セルロースエーテル類(MC, CMC, HPCなど)水溶液とアルコールに分散させた炭酸マグネシウムの混合液をスプレーで塗布したのちに物理的な特性を調べた結果、CMC、MC,HPCで好結果が得られ、なかでもMCは炭酸マグネシウムとの親和性がもっとも良かった。評価法では非破壊のアコースティックエミッションと超微破壊の熱分解ガスクロマトグラフによる実験を進めている。

 

The Survey of pH Value in National Library of China and the Project of Conservation for Ancient Books
中国国家図書館所蔵の古典籍(明~清朝)を対象にしたpH調査。60年代に調査した時点ではpHは平均で7.6(靭皮紙は8.3、竹紙は6.9)だったが、最近の調査では平均6.6((靭皮紙は6.7、竹紙は6.4)と下がっていた。さらに50年後には平均が5.5、100年後には5.0に達することになる。しかし、幸いなことに国家計画としての文化財保護の一環としてこうした古典籍の保護も組み込まれており、保管環境の改善や脱酸性化処置などが見込まれている。

 

 

 

 

(要訳文責:木部徹)

2009年9月30日(水)

【弊社のニュース】 次の二つをアップロードしました

【寄稿】 安江明夫「第11回図書館サポートフォーラム賞表彰式での祝辞」

 

スタッフのチカラ:木部徹「紙資料の保存方法と修復技術 -新聞資料を中心に」

2009年9月29日(火)

村上直子さんが「フランス国立図書館での研修」の模様をブログで

この9月からフランス国立図書館でブック・コンサベーションを中心とした資料保存の研修をスタートさせた村上直子さん(国立国会図書館資料保存課)のブログがほぼ日刊のペースで更新されている。次回からはいよいよ研修内容の報告という。

 

 

2009年9月29日(火)

10月末のIFLA-PAC主催「水の衝撃 Water Impact on Library, Archival and Museum Materials」 コンファレンスのプログラム

10月29日から31日までチェコのプラハで開催される国際会議 Water Impact on Library, Archival and Museum Materialsのプログラムと発表内容のサマリーが発表された。同会議は国際図書館連盟(IFLA)のコア活動(Core Activity)のひとつであるPAC(Preservation and Activity)が展開している連続コンファレンス。資料の保存に影響を与える4つの環境要因(Air, Water, Earth, Fire)をテーマに連続4回の開催が予定されている。今回の Water をテーマにしたコンファレンスは、今年3月に開催された In and out Air Strategies コンファレンス に続く第2回目。コンサベーション処置での水の影響(Banik)、大量乾燥と滅菌(Silverman)、今年2月のスコットランドの洪水からの救出とカビ対策(Jackson、Singh)、チェコ国立図書館の共同乾燥装置(Neuvert)、マイクロウェーブによる感想と殺菌(Hajek)ほか、意欲的な発表が予定されている。

 

 

2009年9月29日(火)

第17回和紙文化講演会「海を越えた和紙の魅力―手漉き紙の多彩な展開」を11月22日(日)に開催

16世紀以降、来航した海外知識人の記録した和紙の魅力を、初期の万国博などで確かめた西洋市民は生活にも活用した。そして紙史研究のD・ハンターは「和紙作りは世界最高の技術」と評価している。欧米で客観的あるいは科学的な視点で高く評価された和紙のすばらしさの広がりを展望し、和紙のすぐれた価値を探りたい。(後援会チラシから) 詳細は下記の「ブログもんじょ箱」に。

 

 

2009年9月16日(水)

今月21日から開催のLACONA VIII(芸術作品のコンサベーションへのレーザー技術)、紙媒体への応用でも2件の発表

今月21日から25日にルーマニアのシブウで開催される第8回 LACONA VIII コンファレンスのプログラムが同コンファレンスのサイトに掲載されている。大半が絵画や建築物、彫刻等のコンサベーションや科学分析への応用に関連した発表だが、紙媒体への応用についても以下の2件が予定されている。

 

Jörg Krüger "The influence of paper type and state of degradation on laser cleaning of artificially soiled paper."

 

Matija Strlič "Non-destructive characterisation of iron gall ink drawings: not such a galling problem anymore."

 

 

今回の予稿集も、前回までと同様、紙媒体で出版される。

 

 

2009年9月15日(火)

11月の『日本絵画の修復―先端と伝統―』国際研究集会のプログラム、ブログもんじょ箱が掲載

11月12日から14日にかけて東京国立博物館で開催される『日本絵画の修復―先端と伝統―』国際研究集会のプログラムがブログもんじょ箱のページに掲載された。

 

「日本絵画の修復技術について、その材料や工程を確認するとともに、最新の試みについても検討する研究集会です。海外での修復事例も発表。参加者には、次年度に研究集会の報告書が送られる予定です。」(同ページから)

 

 

2009年9月14日(月)

今年のユネスコ『直指賞』はマレーシア国立公文書館へ、資料保存のための教育や訓練事業等で

現存する世界最古の金属活字本『直指心体要節』(1377年に高麗で印刷、フランス国立図書館蔵)にちなんでユネスコが設けた『直指賞』(UNESCO/Jikji Memory of the World Prize)の今年度の受賞者が、マレーシア国立公文書館(National Archives of Malaysia)に決まり、4日に韓国ソウルで授賞式が執り行われた。 2005年のチェコ国立図書館(Czech National Library)、2007年のオーストリア視聴覚アーカイブ(Austrian Phonogrammarchiv)に続く。今回のマレーシア国立公文書館の受賞は、アジア地区での国際的な資料保存事業の教育や訓練、災害救助支援事業などが評価されてのもの。

 

 

2009年9月10日(木)

スイス国立図書館が脱酸性化処置効果の比較試験、手作業での水性処置と3つの大量処置法で

スイス国立図書館の保存科学者らによる脱酸性化処置の効果の比較試験の結果が、ドイツ語圏のペーパー&ブック・コンサーバターを中心にした組織 IADA の機関誌 Journal of PaperConservation(Vol. 10、No.3、2009)に "Paper De-acidification; A Comparative Study"として発表された(p.17-25)。これまでも複数の大量脱酸性化処置法の比較試験が行われているが、今回のは大量処置法が開発されるまで各工房で行われてきて、現在も少量脱酸性化処置として実施されている水性での方法も組み込んで、その効果を比較したことが特筆される。概要は以下の通り。

 

 

 

Paper De-acidification –A comparative study.
Michael Ramin, Hanspeter Andres, Agnes Blüher, Markus Reist, Marcel Wälchli

 

商業的に利用されている3つの大量脱酸性化法(Papersave swiss, Bookkeeper, CSC Book Saver)及び、炭酸カルシウム+マグネシウム水溶液による水性の少量脱酸性化処置の効果を比較。テストサンプルには酸性の砕木パルプ紙を用い、処置後と加速劣化試験後のpH、アルカリリザーブ量、耐折強度や引裂き強度等の物理的特性を測定した。また3Dマイクロ蛍光X線分析装置(3D-micro-XRF)を使用し、紙の厚み方向へのマグネシウムの分散度を調査した。

 

この結果、全ての方法において一定の効果が認められ、処置後のpHはいずれも7以上を示し、3つの大量脱酸性化法についてはアルカリリザーブ量が0.5%以上となった。

 

ただし、マグネシウムの分散度には大きな違いが見られ、資料を浸漬する方法(Papersave swiss, CSC Book Saver)では厚み方向も含めて紙全体に分散しているのに対し、スプレー式によるBookkeeper法では紙の表面に偏っていることが分かった。この結果は加速劣化試験後の紙の物理的特性にも影響しており、Bookkeeper法の劣化抑止効果が最も小さかった。

 

一方、水性の少量脱酸性化処置については、処置後のアルカリリザーブ量が最も少なかったにもかかわらず、優れた劣化抑止効果を示した。

テストサンプルは試験のために特別に作った酸性紙。砕木パルプを50-65%含んだ、漂白したクラフトパルプで、アラムロジンサイズを施してある。

 

炭酸カルシウム+マグネシウム水溶液による水性脱酸性化処置とBookkeeper法については一枚物(シート)を、CSC Book Saver法とPapersave swiss法については、シートを束状にしたものを処置した。

 

大量脱酸性化法で最も効果があったのはPapersave swiss法。ただし2種類(Library法とArchive法)あり、それぞれを分けて評価した(Archive法はLibrary法に比べ、有効成分が三分の二の量)。Library法は水性脱酸性化処置とほぼ同等の耐用年数予測値(Useful life expectancy: ULE)を示した。Papersave swiss法は、Nitrochemie社が開発した大量脱酸性化法で、マグネシウム・チタニウム・アルコキシドをヘキサメチルジシロキサンに溶かした液に資料を浸漬して処置する。著者らが所属するスイス国立図書館が導入しており、現在、一回当たり500~2,000冊を処理するプラントが稼働している。

 

アルカリリザーブ量が最も少なかった水性脱酸性化処置が、最も優れた劣化抑止効果を示したのは、炭酸塩による脱酸性化効果だけではなく、処置過程での洗浄により、紙を破壊する成分が除去されたことと、水により繊維同士の再結合(水素結合)が生じたためと考えられる、としている。

 

 

 

 

(要訳文責:久利元昭)

2009年9月10日(木)

米国のコンサーバターはどんなところで、何人ぐらいで、どのような分野で働いているのか–米保存修復学会(AIC)の調査

今年5月にアメリカ文化財保存修復学会(AIC)が会員などを対象に行ったコンサベーション・プロフェッショナル・ニーズ調査(Conservation Professionals Needs Survey )のハイライトが公開された。有効回答数は836、うち663が会員、31が非会員、142が会員かどうかは不明。

 

 

どのような職場で働いているか?

 

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民間(営利組織)が34%、公的(非営利)機関が57%、その他が9%。公的機関の内訳は博物館・美術館・歴史資料館が27%、図書館・アーカイブが9%、政府機関が8%、大学または学校が8%、地域保存修復センターが5%。

 

 

 

職場の同僚スタッフは何名か?

 

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民間(営利組織)は56%が回答者のみ(1名)、他に1名が15%、他に2~5名が21%、他に6名以上が3.5%。

 

 

 

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公的(非営利)機関は上のグラフのように民間に比べてスタッフ数が多く、回答者のみというところは11%だった。

 

 

 

コンサベーションの職歴は何年か?

 

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回答を寄せたコンサーバターの職歴は概して長く、平均で18,1年だった。ちなみに民間は平均21.0年ともっとも長く、短いのは13.8年の図書館・アーカイブ分野だった。回答者の13%が30年以上のキャリアをもつ。

 

 

 

専門分野はなにか?

 

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複数回答(上図のMultiple。例: 紙媒体のコンサベーションとともに予防的な処置も行う)の結果は以下の通り(上図Top は最優先分野)。

 

Book and Paper(書籍および紙媒体) – 35%
Objects(博物資料等のモノ資料) – 30%
Preventive Conservation (予防的なコンサベーション)– 25%
Paintings(絵画) – 22%
Sculpture(彫刻) – 17%
Archeological Objects (考古物)– 16%
Conservation Administration (保存修復の管理)– 16%
Conservation Education (教育)– 15%
Wooden Artifacts(現代作品) – 14%
Architevture(建築物) – 10%

 

 

 

2009年9月9日(水)

英国ナショナル・プリザベーション・オフィス(NPO)がプリザベーション支援センター(Preservation Advisary Centre)に

1984年に設置され英国内の図書館やアーカイブの資料保存活動を支援してきたナショナル・プリザベーション・オフィス(NPO)がこのほど、英国図書館(BL)のコレクション・ケア部門と統合され、新たにプリザベーション支援センター(Preservation Advisary Centre)になった。一般の図書館員等を対象にした資料保存訓練プログラム、無料の関連出版物の刊行、そして各機関での資料保存アセスメント調査(Preservation Assessment Survey)を指導してゆく。センター長はCaroline Peach氏が就任した。氏はロンドン市アーカイブ、オックスフォード大学図書館等を経て、文化財保存修復学会(ICON)の暫定的な事務局長を歴任した。

 

 

2009年9月9日(水)

オランダのデジタル保存連合(NCDD)が英文での中間報告書を公開、国内の現状と保存対策に関するサマリー

オランダデジタル保存連合(NCDD:Netherlands Coalition for Digital Preservation、)はこのほど、国内でのデジタル情報の現状と保存対策に関する中間調査報告書(A Future for Our Digital Memory: Permanent Access to Information in the Netherlands)の英文でのサマリーを作成し公開した。7月に発表されたオランダ語版の第4章をもとにしたもの。

 

NCDDは、オランダ王立図書館(KB)、オランダ国立公文書館(NA)などの11機関をメンバーとして2007年に結成され、国内デジタル情報への永久アクセス基盤の構築促進を目標にしている、

 

 

2009年9月8日(火)

東大製紙科学研究室が紙文化財の水性クリーニング行程の調査をウェブで、修復法としての妥当性を評価

東京大学大学院農学生命科学研究室生物化学専攻製紙科学研究室の江前敏晴準教授は日本学術振興会の科学研究費基盤研究のプロジェクト「紙文化財修復法の妥当性評価――水によるクリーニング工程の考察――、基盤研究(B)(一般)課題番号19300296(H19~H21)の一環として、修復の現場で行っている修復工程と具体的な処理法がどのようなものか、処理法がどれだけ妥当で有効と感じられるかについて、アンケート調査を実施している。ウェブでのアンケート調査での回答の他、アンケート用紙をダウンロードしての回答も可能。〆切は11月末日。詳細は下記ページで。

 

 

2009年9月8日(火)

ゲッティ保存修復研究所、美術館等での展示照明の実際を動画で、作品への影響を最小限に留めるには

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ゲッティ文化財保存修復研究所(Getty Conservation Institute) は美術館・博物館での作品展示の際の最適な照明の方法を啓蒙するためのビデオ Museum Ligthing をサイトに掲載した。ゲッティ美術館(Getty Museum)、カナダ文化財研究所(CCI)、英国テイト美術館(Tate Britain)等の協力を得て、ジョージア・オキーフの作品展示の最適照明の設計から器具の設営などを約10分のビデオで紹介している。