ほぼ日刊資料保存

必也正名乎

図書館やアーカイブ等の資料保存に関する世界のニュースを伝える、ほぼ日刊のページです。 土日・祝日は休刊します。 リンクも引用も自由です。

2010 年 1 月 のアーカイブ

2010年1月29日(金)

火災によるススの被害を受けた図書をドライアイスで洗浄、これまでのラバー・スポンジよる拭き取り法との比較実験

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IFLA(国際図書館連盟)の International Preservation News (IPN:No.49, December 2009)は災害管理(disaster management)の特集号。掲載論文のうち、火災によるススの被害を受けた図書をドライアイスを吹きつけて洗浄し、これを従来法であるラバー・スポンジでの拭き取りと比較して、その効果と影響を見た実験について紹介する。

 

Fire and Ice Revisited: A Comparison of Two Soot Removal Techniques for Book

Randy Silverman(Preservation Librarian at the University of Utah’s Marriott Library in Salt Lake City)
Seth Irwin(Helen Ohrenschall Intern at John’s Hopkins University’s paper conservation laboratory)

 

表題が Revisited になっているのは著者の一人 Silverman が2006年に行った実験報告(Fire and Ice: A Soot Removal Technique Using Dry Ice Blasting, IPN, No.39,Octber,2006)に続くたため。前回はドライアイス洗浄の効果(上記の右の画像)だけを見たが、今回は他方法との比較になる。

 

直径1ミクロン以下のカーボン粒子からなるススは紙や布の繊維の微細な隙間に入り込むために、これを除去するのは容易なことではない。また消火のための水と組み合わさった場合には資料の表面に「接着」したようになってしまう。こうしたやっかいなススを、他の工業分野やランドリー・クリーニング業界ですでに使われているドライアイス洗浄(原理や応用分野については Wikipedia を参照)を使うことで効果的かつスピーディに除去する実験を行った。

 

従来からススの除去に使われてきた天然ゴム製のスポンジ(natural rubber sponge)による方法は、スポンジ表面の適度な粘性により、スポンジを押し付けて細かいススを吸着、拭き取るというもの。これに対しドライアイス洗浄は、高速でドライアイスペレットを噴射し、ドライアイスの極度の低温(-78.9℃)による熱収縮の効果によりススを分離し、剥離したススと基材(この場合は本の表紙)との間にドライアイスが入り込み急激に気化し、その体積が膨張変化(750倍)、この体積変化により洗浄する–という方法だ。

 

20冊のススの被害を受けた図書を2つの方法でクリーニングし、残留がどのぐらいあるかという除去効果、表紙(布や革)が変色しないか、表面は傷んでいないか等を表面形状測定器(Topographic scanning)と比色計とで計測した結果、ドライアイス洗浄のほうが除去効果が優れ、傷み(擦傷など)も最小に抑えられていることが判った。

 

 

2010年1月28日(木)

米議会図書館の資料保存研究プロジェクトのテーマがアップデート、保管環境や紙媒体などの5分野でテーマを設定

アメリカ議会図書館(LC)の資料保存研究プロジェクト(preservation research project)がアップデートされた。今回掲げられた研究分野は5つで、各分野のテーマは以下の通り。

 

Environmental Studies (環境)

 

Anoxic Encasements: Visual Storage
(低酸素環境の保管ケース)

 

Environmental Monitoring: Climate Notebook and Web-based Climate Control System
IPIと提携してのウェブベースの環境モニタリング)

 

Evaluation of Storage Materials: Alternatives to Oddy Test
(現在の Oddy試験に代わる、保管資材の試験法の開発)

 

Lab Renovation: Increasing Energy Efficiency and Reducing Environmental Impact
(エネルギー効率が良く環境負荷の小さな試験研究室への改革)

 

Preservation of Traditional Materials (書物や文書、パーチメントや写真などの従来型の資料の保存)

 

Aging: Improved Accelerated Aging Testing Techniques
(加速老化試験法の改良)

 

Aging: 100-Year Paper Natural Aging Program
(北米の複数機関の協力による紙の100年自然老化試験

 

Book and Paper: Volatile Organic Compound Testing
(劣化時に発生する有機化合物の研究)

 

Cellulose Acetate Laminates: Re-treatment and Storage
(かつて行わていたセルロース・アセテートフィルム被覆処理の評価)

 

Iron Gall Ink Corrosion
(インク焼けの研究)

 

Mass Deacidification: Saving the Written Word
(大量脱酸性化技術)

 

Paper Strengthening through Paper Splitting
(ペーパー・スプリット法による紙力強化)

 

Parchment: Integrated Forensic Investigations
(パーチメントへの統合的な法医学検査)

 

Photographs: The Effects of Solvent Treatments
(写真資料への溶剤処置の影響)

 

Photographs: Early Ungilded Daguerreotype Images
(初期の艶なしダゲレオタイプの写真資料)

 

Recycled Fiber Paper: Longevity Study
(再生紙繊維の長期安定性)

 

Storage Materials: Determining Purity of Polyester Film for Use in Encapsulation of Collection Materials
(エンキャプシュレーション用ポリエステルフィルムの純度判断)

 

Storage Materials: Effects of Zeolites
(包材に使われているゼオライトの影響)

Preservation of Audio-Visual Materials (視聴覚資料の保存)

 

CD ROM Longevity Research
(CD ROM の長期安定性試験)

 

CD-R and DVD-R RW Longevity Research
(CD-R と DVD-R RWの長期安定性試験)

 

DVD ROM Longevity Research
(DVD ROM の長期安定性試験)

Technology Transfe (他分野からの技術移転)

 

Anoxia: Fire Suppression System Tests
(無酸素消化システム試験)

 

14C-AMS Dating of Silver Gelatin Photographic Prints
(14C加速器質量法による写真銀塩ゼラチンの分析)

 

Direct Analysis in Real Time Mass Spectrometry (DART-MS)
(DART質量分析)

 

Haptic Technology for Use in Conservation Training
(疑似触感技術を応用したコンサベーションの訓練)

 

Integrated Digital Imaging Systems – Hyperspectral Imaging
(統合的デジタルイメージシステムの応用)

 

Laser Cleaning of Documents
(文書資料へのレーザークリーニング)


Experimental Sample Reference Collections

(比較実験の参照サンプル)

 

The Barrow Book Collection: Characterization and Access
バロウが紙の脱酸性化試験のための集めたコレクションのキャラクタライゼーションとアクセス)

 

Center for the Library’s Analytical Science Samples (CLASS): Dedicated Collection Space for the Library’s Valuable and World-Renown Scientific Study Specimens
(これまでの蓄積された図書館資料の分析科学サンプルのセンターの設置)

 

The Forbes’ Pigment Reference Collection: Characterization Using Scanning Electron Microscopy (SEM) and X-ray Fluorescence (XRF)
(顔料の研究者 Forbe が集めた参照サンプルコレクションのSEMとXRFによるキャラクタライゼーション)

 

The TAPPI Standard Paper Reference Collection: Characterization Using Optical and Scanning Electron Microscopy
(アメリカ紙パルプ技術協会の規準に則した参照サンプルコレクションの光学・走査型電子顕微鏡による分析)

 

 

2010年1月28日(木)

米Appleがタブレット型の小型パソコン iPad を発表、電子ブック+ビデオ+音楽再生+Webブラウザで499ドル


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米Appleは27日、タブレット型の小型パソコン iPad を発表した。重さは680g、薄さは1,3㎝、バッテリー駆動時間は10時間、3G&無線LAN対応、スムースなページめくりによる電子ブックの閲覧、iPodを上回るビデオや音楽の再生の他、ウェブのブラウジング、E-mail等ができる。価格は499ドル~829ドル。Appleの動画による紹介ページは以下に。

 

 

2010年1月27日(水)

BBC、英国図書館が2600万ボンドを投じて新設した自動書庫を紹介する動画を掲載

英BBCのサイトは、英国図書館が2600万ポンドを投じてボストン・スパ(西ヨークシャ)に新設した自動書庫を紹介する動画を掲載している。

 

 

2010年1月26日(火)

国会図書館、2月19日にデジタル情報の長期保存とアーカイブの長期利用に関する国際シンポジウム

国立国会図書館は2月19日(金)午後から同図書館で筑波大学知的コミュニティ基盤研究センターとの共催による「ディジタル情報資源の長期保存とディジタルアーカイブの長期利用に関する国際シンポジウム」を開催する。ミシガン大学(アメリカ)、ウィーン工科大学(オーストリア)、ナンヤン工科大学(シンガポール)から講師を招聘する。詳細は下記ページで。

 

 

2010年1月26日(火)

「事業仕分けや行政改革は市町村公文書館にどのような影響を与えているか」、全史料協関東部会が寒川文書館の事例で研究会

全史料協関東部会は2月26日(金)に芳賀町総合情報館(栃木県芳賀町)で第255回定例研究会を開催する。テーマは「市町村公文書館の運営をめぐって-その現状と課題」。近年話題の事業仕分けをはじめとする外部評価や行政改革等が市町村公文書館の現場にどのような影響を与えているのか、事業仕分けの現場に臨んだ寒川文書館(神奈川県寒川町)の報告を踏まえて議論する。

 

施設見学    13時~14時20分

報告と討議    14時30分~17時

   「行財政改革と公文書館–寒川文書館の事例–(仮)」 高木秀彰氏

コメント 藤沢市教育委員会 細井守氏

 

40名まで。事前登録厳守。申し込みは2月20日までに関東部会事務局(長野県立歴史館内、電話 026-274-3993 fax 026-274-2996)へ。

2010年1月25日(月)

独IADA機関誌 PaperConservator、天球儀上のワニス処置事例、と北欧の2人のコンサーバターの和紙ツアー報告等

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ドイツ語圏を中心にした紙媒体資料のコンサーバターの組織 Internationale Arbeitsgemeinschaft der Archiv-, Bibliotheks- und Graphikrestauratoren(IADA)の機関誌 PaperConservator最新号(Vol,10, 2009, No.4)は主要な記事として以下の処置事例を掲載している。

 

 

EIN GEFIRNISSTER HIMMELSGLOBUS Untersuchung der Konstruktion und Überlegungen zur Problematik der Firnisbehandlung
Anna Endreß, Rebecka Thalmann

1799年にロンドンで作成された天球儀の表面に塗布され著しく変色したワニスの調査とコンサベーション。紫外線および遠赤外線顕微鏡で観測、ワニスは完全には除去せず、下の図柄が見えるぐらいに薄くする処置をエタノール含浸綿棒により行った。

 

DIE DRITTE DIMENSION Methoden zur Feststellung technologischer Merkmale an historischen Künstlerpapieren und die Relevanz ihrer Erhebung
Thomas Klinke
EC(欧州委員会)の支援のもとに2006年から各国の紙の歴史研究者が協力するかたちで進められてきた歴史的な紙の情報データベース Bernstein-Projekt—The Memory of Papers の紹介。デジタルイメージとともにインターネットで公開されることで研究が飛躍的な向上をもたらした。

 

 

以上とともに本号には、ノルウェイとスウェーデンのペーパー・コンサーバターによる、昨年(2009年)春に行われた和紙ツアーの参加記が掲載されている(p.7-10)。訪問した紙漉場は高知(浜田工房、典具帖)、奈良(福西工房、宇陀紙)、同(上窪工房、美栖紙)、岐阜(長谷川工房、美濃紙)、福井(岩野市兵衛工房、越前和紙)、同(岩野平三郎工房)。

Study Trip to Japan: Washi Manufacture–Seen Through two Nordic Paper Conservator’s Eyes
Nina Hesselberg-Wang, Karin Wretstrand

 

 

2010年1月22日(金)

紙媒体資料への表具技術ワークショップ、3月にバレンシア工科大文化財研究所で

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表具等の日本の伝統的なコンサベーション技術を教えるワークショップが3月2-5日にバレンシア工科大学(Universidad Politécnica de Valencia)の文化財研究所( nstituto de Restauración del Patrimonio)で開催される。講師は Katarzyna Zych Zmuda女史。4日間のコースでは、糊の作り方、紙の扱い方、切り方、膠の作り方、刷毛の扱い方、支持体や顔料等の表面のクリーニング、蒸気チャンバーでの加湿、裏打ち、仮張り等の乾燥法–等の実演と実技指導が行われる。

 

 

2010年1月22日(金)

国会図書館、2月18日に「第1回 公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議」フォーラムを開催

国立国会図書館は全国の公共図書館におけるデジタルアーカイブ事業を推進するとともに、国立国会図書館デジタルアーカイブポータル(PORTA)のコンテンツ拡充を図ることを目的として「公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議」を設置する。第一回会議はフォーラム形式で2月18日(木)午後に、同図書館で開催される。詳細は下記ページで。

 

 

2010年1月21日(木)

4月のICOM-CC Graphic Document Groupe の会議、図書館・アーカイブ蔵書の調査やアセスメント、水性処置や脱酸性化も

今年4月にコペンハーゲンの王立図書館で開催される国際博物館会議コンサベーション部会(ICOM-CC)グラフィックドキュメント・グループ(Graphic Document Groupe)会議の報告プログラムが発表された。同会議のテーマは「コンサベーションにおける選択–実践 vs 研究」(CHOICES IN CONSERVATION – PRACTICE VERSUS RESEARCH)。予定されている報告の大半が図書館・アーカイブ資料の保存に関するものになっている。

 

THE HYPERSPECTRAL IMAGING PROJECT AT THE NATIONAAL ARCHIEF OF THE NETHERLANDS
オランダ国立アーカイブによる分光イメージング法による蔵書の保存状態アセスメント (オランダ)

 

COLLECTION ASSESMENT: DETERMINATION OF THE PAPER CONDITION WITH SURVENIR
SurveNIR を用いた紙媒体の状態調査 (スロヴェニア)

 

ENVIRONMENTAL ASSESSMENT WITHOUT LIMITS AT THE NATIONAL ARCHIVES
保存環境アセスメント。英国立アーカイブに限定せずに。(英国)

 

THE INTERACTION OF COLLECTION SURVEY, PRESERVATION PLAN AND IMPROVEMENT OF STORAGE FASCILITIES
オランダ王立図書館の状態調査と保存計画と保管設備の改善の相互作用 (オランダ)

 

COLLECTION MANAGEMENT TOOLS AT THE NATIONAL ARCHIVES
英国立アーカイブの蔵書保存管理のツール (英国)

 

DEACIDIFICATION AND STRENGTHENING OF ACIDIFIED BOOKS AND DOCUMENTS: A new, fast and safe method (Papercare process) for conservation of our paper based cultural heritage
超臨界流体を用いた新しい脱酸性化法 Papercare process 法 (オランダ) →参考:特許

 

MONITORING AQUEOUS PAPER CONSERVATION TREATMENTS BY ION CHROMATOGRAPHY
イオンクロマトグラフを用いた紙媒体の水性処置モニタリング (フィンランド)

 

A NEW METHODOLOGY FOR WET CONSERVATION TREATMENTS OF GRAPHIC ART ON PAPER WITH A RIGID POLYSACCHARIDE GEL OF GELLAN GUM
固形の増粘多糖類ゲルを用いた紙媒体の水性処置 (イタリア)

 

TREATMENT OF FUNGI IN BOUND VOLUMES
カビの被害を受けた書籍の処置 (オーストリア)

 

PRESERVING THE BOOK AS ARTEFACT: USING CONSERVATION AS THE IDEAL OCCASION IN WHICH BOOKS ARE BOTH REPAIRED AND STRUCTURALLY UNDERSTOOD
モノとしての書物の保存:コンサベーションを契機に (ギリシャ)

 

TECHNICAL RESEARCH FOR WHITE LEAD IN THE GOTTORFER CODEX Considerations on the suitability of various techniques
2009年からコンサベーション処置が奨められているGottorfer植物園の手彩色貴重書上の鉛白の研究 (デンマーク)

 

ANALYSIS AND STUDY OF TWO MANUSCRIPTS HIDDEN INSIDE TWO LITURGICAL ORNAMENTS OF THE XIV-XV CENTURIES
礼拝堂の装飾内に隠されていた文書の分析と研究 (スペイン)

 

RESEARCH AND ANALYSES OF A 14TH CENTURY ILLUMINATED NAPOLITAN BIBLE
14世紀彩色聖書の研究 (ベルギー)

 

"DIE TRIUMPHZUGMINIATUREN VON ALBRECHT ALTDORFER FÜR KAISER MAXIMILIAN I" EIN PROJEKT ZUR AUSSTELLUNGS-PRÄSENTATION VON 62 GROßFORMATIGEN PERGAMENTBLÄTTERN
大きなパーチメント(皮紙)上に描かれた画家アルトドルファー の絵の展示 (オーストリア)

 

THE COMPLEMENTARY USE OF RAMAN SPECTROSCOPY AND MULTI-SPECTRAL IMAGING TO ASSESS CHINESE QUR’ANS
ラマン分光法と分光画像法による中国で作られたコーランの分析 (英国)

 

ANALYSING INTAGLIO PRINTING INK
凹版印刷インクの分析 (フィンランド)

 

A CONTRIBUTION TO THE STUDY OF BOOKS PRINTED ON BLUE PAPER. ORGANOLEPTIC ANALYSIS OF 9 VOLUME PUBLISHED BETWEEN 1553 AND 1750
青色に染められた紙(blue paper)に印刷された本の官能法による分析 (スペイン)

 

FINNISH WALLPAPER PIGMENTS IN THE XVIII-XIX CENTURY: COMPARISON WITH THOSE USED IN WESTERN EUROPE
18~19世紀の壁画の顔料の研究–西ヨーロッパの顔料との比較 (フィンランド)

 

LE TRAITEMENT DES ENCRES FERRO-GALLIQUES: POSSIBILITES ET QUESTIONS -THE TREATMENTS OF IRON-GALL INKS: POSSIBILITIES AND QUESTIONS
没食子インクへの処置–可能性と問題点 (ベルギー)

 

GELS FOR SOOT REMOVAL ON PAPER
紙上の煤を除去するためのゲル (エストニア)

 

RESTORATION OF PERSONAL CARDS FROM PREVIOUS CENTURY
名刺の保存 (ラトビア)

 

2010年1月20日(水)

米保存修復学会(AIC)、本のコンサベーションのマニュアル Book Conservation Catalog を WIki形式で公開

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アメリカ保存修復学会(AIC)の本と紙グループ(Book & Paper Groupe)はこのほど、書籍のコンサベーション(Book Conservation)のマニュアル Book Conservation Catalog を Wiki 形式で公開した。同グループに所属するブックー・コンサーバター達が、それそれの専門性を活かして、処置前の洗浄、脱酸性化、外れた丁の接合、表紙の接合、見返しの組み立て等の方法を述べたもの。それぞれの工程や革・パーチメントに関する文献一覧もついている。 全体が完成されたものではなく、今後、新たに付け加えたり既存の内容の改訂が行われ充実してゆくことになる。昨年10月に公開された Paper Conservation Catalog に続くもの。

 

2010年1月19日(火)

JIIMA機関誌『月刊IM』、対談「国会図書館蔵書のデジタル化とJIIMAの取り組み」を掲載

(社)日本画像情報マネジメント協会(JIIMA)の機関誌『月刊IM』(Feb. 2010)は「国立国会図書館蔵書のデジタル化とJIMMAの取組み」として長尾真・国会図書館館長と高橋通彦・JIIMA理事長との対談を掲載している(p.15-18)。

 

以下、抜粋と要約。

 

高橋「時代も移り変わり、デジタル時代の技術が進歩してきて、活用はデジタルで保存はマイクロで、というのが現在の状況になっている。協会ではデジタルの標準化や普及活動と共に保存を目的としたマイクロフィルム化という伝統も守ってゆくため、マイクロ – デジタル・アーカイブという、デジタルからマイクロへという技術も提唱している」

 

長尾「マイクロは保存用には最適だったが利用者には不便で不評。初期のフィルムの品質劣化や分解能が悪くて読めないものもある。そこでこれからの資料保存はデジタルに移行することに決めた。ただ、デジタルは利用者には便利だが、長期保存については慎重に考えねばという段階である」

 

高橋「協会でもデジタルデータの長期保存を取り上げ、こういう条件ならば30年保存できるというJISを作った。アメリカ国立公文書館では、72年間のデジタルでの保存は、保管・運用コストがマイクロの十数倍かかるという結果が出たためにマイクロフィルムで保存している。また昨年、デジタルデータを保存するときにはマイクロと同時にという国際標準規格(ISO)ができた。スキャンしたものをマイクロに落として活用はデジタル、保存はマイクロという使い分けができるので焦燥している」

 

長尾「(国会図書館の大型デジタル化計画については)、明治・大正期のはほぼ終わり、残りの大正の最後から昭和前期、戦後とあるが、2年間の補正予算では1968年までの図書をデジタル化する計画である。そのほかに博士論文や戦前の雑誌、官報の古いものの計画がある。」「ただ、政権が代わり、予算もはっきりしないため、作業がどこまでいけるか見通しが立たないところがある」「1968年までは約100万冊、蔵書900万冊あるなかでデジタル化したいのが400万冊であるから、残りは300万冊。これらをデジタル化するとなると、さらに400億円ぐらいかかり、雑誌・新聞を含めるとその2倍以上になる。特に地方紙のデジタル化は必要だ」

 

高橋「(人材の育成については)、当協会は文書情報管理士という資格制度を設けている。マイクロの知識から、上級ではシステムの全体設計や運営までできる資格だ。デジタルデータの改竄などにもしっかり対応できる人材を含む」

 

長尾「世界的にも電子図書館の動きが加速しており、主要な館は情報技術を理解した人材を置いている。」「我々も近い将来、電子情報部というようなものを作らなくてはならないと考え、検討し始めている」

 

2010年1月15日(金)

オーストリアのデジタル・スキャナー QIDENUS ROBOTIC BOOK SCANNERが米国で市場開拓へ、自動・手動のどちらにも対応

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オーストリアを本拠に欧州全域で実績を持つデジタル・スキャニング業者の Crowery 社が、自社開発のスキャナー QIDENUS ROBOTIC BOOK SCANNERの米国での市場開発に乗り出す。同機は手捲りでと自動捲りの両方でのスキャニングに対応、V字型のベッドを鋭角に設定しても撮影が可能であることという特徴を持つ。速度は2,000ページ/時(自動捲り)、900ページ/時(手捲り)。

 

 

2010年1月13日(水)

国立女性教育会館が女性情報アーキビスト入門講座を2月8、9日に開催、紙資料やフィルム・写真の保存と管理もテーマに

独立行政法人国立女性教育会館は女性アーカイブの保存・提供に携わる実務者を対象に、具体的な保存技術や整理方法を紹介し、実務者同士の情報交換を行うことを目的として、2月8、9日に同会館(埼玉県比企郡嵐山町9で女性情報アーキビスト入門講座を実施する。2日目の9日には紙資料とフィルム・写真の保存と管理についての講座も盛り込まれている。

 

2010年1月8日(金)

プリザベーション・トリアージという仕事:劣化資料や貴重書のデジタル・スキャニングの前後にすべきこと

国立国会図書館のカレント・アウェアネス・ポータルは12月28日付のニュースとして「LC、Internet Archiveと協力して歴史的書籍数万冊をデジタル化」を掲載している。デジタル化の対象は「歴史家や作家、系図学者らに高く評価され、人々にも求められている資料であるものの、老朽化し、壊れ易くなっている書籍」で「デジタル化された書籍は、LCのウェブサイトで利用可能なほか、Internet Archiveのウェブサイトでも提供され」るという。

このニュースの元は米国政府のサイトが一般の国民を対象にして政府としての活動を報告、PRするサイトの Ameriva. Gov. 当該の記事は Library of Congress Puts Thousands of Historic Books Online; Readers worldwide have free access to significant part of its collection として12月24日付で掲載されている。

 

 

Internet Archiveの総帥 Brewster Kahle 自身によるスキャニングのデモンストレーション
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この記事ではInternet Archiveのデジタル化プロジェクトの責任者である Michael Handy のインタビューが掲載されているが、Alfred P. Sloan 基金からの200万ドルを投入するプロジェクトは、他の類似のデジタル化プロジェクトでは取り扱いが難しいためスキャニングがスルーされていた資料、例えば物理的な劣化がすでに極限にまてきている Brittle Bookも対象になるという。Handy は「そのために我々は充分な保存処置を施すためのいくつかの工程を確立している」。スキャニングの前に当該資料の傷みがどの程度か、スキャニング時にはどのような注意が必要か、そしてスキャニングの後にも傷みが生じていいないかを図書館員はそれぞれ資料ごとにが検査するこの工程は、プリザベーション・トリアージ(preservation triage)と命名されている(トリアージとはもともとは治療現場での、負傷程度に応じた優先順位付けをすること)。

 

事前のトリアージ工程が終わった資料は、上記の写真のようなV字型の台に置かれた本は手捲りでページが開かれ、一週間に1,000冊のスピードでスキャニングされるという。スキャニングが終了した資料はort Meade( Maryland)にある環境の整った書庫に収納される。「もはや閲覧には供されずに保存される」。

 

議会図書館は Brittle Book および地図などの折りたたまれた資料をスキャニングする際の具体的な方法や注意事項を盛り込んだレポートを作成中で、完成次第、議会図書館と Internet Archive(IA) の両サイトに掲載される予定としている。

 

米議会図書館の中に設置されているスキャニング・センター(Library of Congress scanning center)は図書館だけではなく、連邦政府の他の部門、例えば政府印刷局の文書等のスキャニングも引きけている。「それこそがまさに行政の透明化の証になる」と、IA の総帥の Brewster Kahleは言う。

 

 

 

 

プリザベーション・トリアージについてはワシントン大学図書館の特別コレクション部門のサイトが、同部門にアーカイブ資料を受け入れて整理・目録化・公開するステップのひとつとして挙げている。それによると保存のために直ちに行うべきことは「資料の順番を狂わせないようにしながら、そのものが傷んでいたり酸性である容器から安定した品質のフォルダー容器への資料の入れ替えと、緊急の保存処置の要する資料の区分け」としている。

 

2010年1月4日(月)

全史料協近畿部会が「行政文書を文化財として取り扱う」で例会、京都府行政文書を対象にした国庫補助による修理事業の指針等も

全国歴史資料保存利用機関連絡協議会近畿部会は2月2日に京都府立総合資料館で第104回例会を開催する。テーマは「行政文書を文化財として取り扱う」で、地主智彦氏(文化庁文化財部 美術学芸課 文化財調査官)が報告する。概要は以下の通り。

 

「2002年に京都府行政文書15,407点が重要文化財に指定されて以降、近代行政文書を文化財として取り扱うとはどのような意味内容と方法を伴うのか、熱心に議論されてきた。 同資料については、今年度から国庫補助による修理事業が開始されたが、その実施にあたって、行政文書の文化財的価値および実際の修理方針策定上の指針について、資料を前にしながら具体的に検討を行い、行政文書保存の方策と文化財概念の未来を考えたい。」