抗酸化/抗変色(インク焼け処置含む) 3
■「ほぼ日刊資料保存」の記事
2008年2月20日(水)
米文化財学会機関誌 JAIC、「劣化抑制とゼラチン」、「フォクシング研究の動向」、「インク焼け部分の結晶」の論文
アメリカ文化財保存修復学会の機関誌(Journal of the Amrican Insutitute for Conservation of Historic & Artistic Works:JAIC)の最新号(Vol. 46, 2007)は以下の論文を掲載している。
John Baty and Timothy Barrett: Gelatin size as a pH and moisture content buffer in paper. (紙のpHと含水量のバッファとしてのゼラチン・サイズ), p.105-121.
紙の耐久性へのゼラチン・サイズの効果として、pHのバッファとしての役割、相対湿度の変化に伴う紙の含水量変化のバッファとしての役割を試験した。前者は滴定法によりバッファ機能が、それも長い間の自然の経時老化により生じることを確認した。後者は一定の周期で湿度を変化させ、ゼラチン・サイジングしてある紙とそうでないものとの含水量を比較したところ、出入りに伴う紙へのストレスを抑制できるバッファとして機能していることを確認した。コンサベーション時の洗浄、脱酸性化等の後にリ・サイジングすべきかどうかの選択に寄与する研究。
Soyen Choi: Foxing on paper - a literature review. (紙上のフォクシング-- 文献レビュー), p.137-152.
経時した紙媒体の上にできるフォクシング(茶褐色の斑あるいは点状の着色物)についてはこれまで多くの研究が行われてきた。当論文は1930~2003年までの同テーマに関する研究論文をレビューするとともに今後に向けての議論と研究を示唆することを目的したもの。走査型電子顕微鏡や有機・無機化合物の分析により発生の要因は紙中の金属か微生物(カビ)、もしくはこの組み合わせとされてきたが、近年の研究はフォクシングの被害を受けた紙そのものの劣化(酸化と酸加水分解)によるフリー・ラジカルやその他の反応基の生成に焦点が当てられている。ある種のフォクシングは金属もかびも関連していない。特定の繊維あるいは紙中の水分の偏在がフォクシングの形成に関与しているのではないかという仮説が登場している。フォクシングへの処置では、金属を含む部分やカビの部分の物理的な除去、水性洗浄、酸化・還元漂白、金属のキレート封じ込み、酵素利用などが挙げられる。
Deborah La Camera: Crystal formation within iron gall ink-- observation and analysis (没食子インク焼けの結晶化--観察と分析), p.153-174.
ボストン美術館ほか複数の機関が所蔵する絵画の没食子インクに見られる結晶の生成の研究。色は白色、灰色から黄色、オレンジ色まで多様、形も多様、形成部は相当量のインクの溜まりがある紙上。エックス線蛍光分析、走査型電子顕微鏡、フーリエ変換スペクトル赤外線分析等により、結晶は鉄を含む硫酸塩であることが確認された。織物上の没食子インクの12サンプルによる加速老化試験で、生成に関連するインクの構成と環境の役割が実験的に行われた。構成物では没食子とバインダーのアラビアゴムとの比率が結晶の多寡に明らかな相関があり、硫酸鉄が多くバインダーが最少のもので結晶生成が繰り返されることが分かった。
(要訳文責:木部)
2008年1月8日(火)
フィチン酸マグネシウムによるインク焼け資料処置の新しい方法、溶解性があり表面デポジットがない等の利点
文化財保存修復科学の電子出版 e-PS の最新号(e-PS, 2007-4)は、インク焼け(ink corrosion)処置の新しい方法として、フィチン酸マグネシウム(magnesium phytate)をキレート剤に使った方法を紹介している。これまでのフィチン酸カルシウムを使った方法は同カルシウムが水中に分散しているために、処置後に資料表面に微少な炭酸カルシウムが残留するリスクがあるが、マグネシウムの場合は完全に水溶液になり、デポジットが生じないこと、溶液のため作り置きができること、pH調整のためのアンモニア添加が不要なこと--が利点としてあげられるという。また、このための試験から得られた新しい知見としては、カルシウムもマグネシウムも、pHが5.8-6.0の時が、インク焼け抑制効果が最も高いという。
J.Kolar et. al. STABILISATION OF IRON GALL INK: AQUEOUS STABILISATION WITH MAGNESIUM PHYTATE
2007年8月2日(木)
Restaurator 最新号、水性処置時の滲み止めや没食子インク焼けの処置等の論文を掲載
図書館・文書館資料の保存と修復のための専門誌 Restaurator:Journal for the Preservation of Library and Archival Materials 最新号(2007, Vol.28, No.2)は、水溶性のインクの水処理時の滲み止めの方法、没食子インク(Iron gall ink)によるインク焼け被害の処置についての論文を特集している。
Munoz-Vinas, S.: A Dual-Layer Technique for the Application of a Fixative on Water-Sensitive Media on Paper (p.78-94)
昇華性の滲み止めシクロドデカンの昇華時間の長さと適用の煩瑣さを軽減できるように、有機溶剤に溶かした撥水剤パラロイドB72を併用する方法。
Havlinova, B. Minarikova, J. Hanus, J. Jancovicova, V. Szaboova, Z.: The Conservation of Historical Documents Carrying Iron Gall Ink by Antioxidants (p. 112-128)
BHT (2,6-ditercbutyl-4-methylphenol) とフィチン酸カルシウムによる抗酸化処置の比較試験。いずれの処置も脱酸性化処置と組み併せることで劣化を抑制する。あたフィチン酸余地は物理的特性を向上させ、紙の変色はどちらの処置においても影響を与えなかった。
Rakotonirainy, M. S. Juchauld, F. Gillet, M. Othman-Choulak, M. Lavedrine: The Effect of Linalool Vapour on Silver-Gelatine Photographs and Bookbinding Leathers (p.95-111)
天然由来のエッセンシャル・オイル「リナルール」を防虫剤として使った時の写真と書籍用皮革への影響試験。低濃度でも悪い影響を与える。
Csefalvayova, L. Havlinova, B. Ceppan, M. Jakubikova, Z.: The Influence of Iron Gall Ink on Paper Ageing (p. 129-139)
ろ紙上の没食子インクの加速老化試験による変色、化学的・物理的な物性の変化の試験。セルロース劣化における鉄イオンの役割の確認と、酸触媒加水分解と金属触媒酸化の関係の解明。
Huhsmann, E. Hahner, U.: Technical Note: Application of the Non-Woven Viscose Fabric Paraprint OL 60 for Float Screen Washing of Documents Damaged by Iron Gall Ink (p.140-151)
フィチン酸カルシウムと炭酸水書カルシウムとを組み合わせたインク焼けの水性抗酸化処置の時に使う不織布支持体の改良。
(要約文責:木部徹)
2006年11月30日(木)
カナダ文化財研(CCI)の2006-2007年度の研究報告、インク焼け処置やBookkeeper脱酸の長期効果など
カナダ文化財保存修復研究所(Canadian Conservation Institute:CCI)はこのほど、2006-2007年度の同研究所における研究・調査プロジェクトの成果と進展状況を概説した報告書を発表した。
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The Effect of Simmering on the Chemical and Mechanical Properties of Paper.
インク焼け処置法のひとつとして30年以上使われてきたアルカリ性熱水浸漬法の紙への影響。18世紀の書籍紙とろ紙で影響を見たが、化学的・物理的な悪い影響は見られなかった。
Monitoring of mass deacidified samples treated in 1993 (Phase III)
1993年に大量脱酸性化処置(Akzo-DEZ法、Wei T'o法、FMC法)された紙の現状を。モニタリングはフェーズⅢ段階で、2008年に終了予定。
Preservation of Works on Paper with Iron Gall Ink in Canadian Collections - Research into Aqueous Treatment Methods.
没食子インク焼けの記録文化財に対する8つの異なった水性処置法を比較する。2007年完了予定。
Preservation of Works on Paper with Iron Gall Ink in Canadian Collections –Risk Assessment Survey.
没食子インク焼けの記録文化財のリスクアセスメント調査。2007年完了予定。
Study on the Effectiveness of Bookkeeper Deacidification Technology Using the Arrhenius Relationship.
サブミクロンの酸化カルシウムの粉体を繊維間に埋め込んでいくブックキーパー脱酸性化法と、従来法であるアルカリ溶液法との比較と、懸念されている長期的な安定性の試験。50℃での低温加速劣化試験を含むために試験自体が長期のものになり、2010年の完了予定。
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同研究所はさまざまな素材・材料や分野を対象にした研究や調査を行っているが、このうち紙媒体(paper)関連は次の5つのプロジェクトを進めている。概要は以下の通り。
CCI Research and Development Projects 2006– 2007
2006年7月18日(火)
Restaurator 最新号、「FT-IRによる和紙の分析」、「束の状態での新聞紙の光酸化」など
Restauraotr-International Journal for Preservation of Library and Archive Material 最新号(Vol. 27, No.2, 2006) の主要論文は次の通り。
Paolo Calvini, Andrea Gorassini und Rosanna Chiggiatto: Fourier Transform Infrared Analysis of Some Japanese Papers. (p.81-89)
市販されている和紙のFTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)による分析。これらの和紙を、セルロースだけで製紙したもの、手漉き和紙と比較し、それぞれの紙に含まれるヘミセルロース、化学パルプ、炭酸塩等無機フィラー、リグニンの量の測定に対するFTIR法の可能性を見た。ヘミセルロースは1600と1660の、リグニンは1510の、木材パルプは810の、無機炭酸塩は1790 cm -1のスペクトラムで測るのが最も有効であるのが判った。
Sonja Titus, Regina Schneller, Gerhard Banik, Enke Huhsmann und Ulrike Hahner: The Copyinf Press Process: History and Technology, Part I. (p.90-102)
.プレス機による文書の複製は1780年から行われてきた。コピー・プレス用のインクで書かれた文書はインキが湿気を含んでいる間に平滑でサイジングされいない紙に圧されて複製物が作られた。こうした物性をもつインクだけに水に弱く、傷みが顕現化している。この論文はコピー・プレスの歴史と技術の変遷を明らかにし、コンサーバターが資料を同定するための糧とすることを目的にしている。
Vladimir Bukovsky, Maria Trnkova, Peter Nemecek und Peter Oravec: Light-induced Oxidation of Newsprint Sheets in a Paper Block. (p.114-131)
新聞を束にして、メトキシドメチル炭酸マグネシウムによる非水性脱酸性化したもとの、していないものを、改良を施した太陽光輻射設備で光酸化劣化させた。束にすることで、表面だけでなく、内側の紙への光による変色の影響を見る。予想以上に深いところにまで影響を及ぼしていた。脱酸性化処置は光酸化を著しく改良できることが判った。
Ulrike Hahner: Condition Report of the Ink Corrosion Damage in the Handwritten Estate of the Jurist Freidrich Carl von Savigny. (p.131-142)
18世紀の著名な法学者Freidrich Carl von Savignyの手稿資料のインク焼けの状態調査。資料のデジタル化を前提に、マーブルグ大学図書館に所蔵されている手紙約4,500点、原稿その他20,000点を調査した結果、大半が良い状態を維持しており、わずかに1% が酷いインク焼けの被害を生じていることが判った。以前に行われたランダム・サンプリングでのチェックではもっと高い比率だったが、チェックの方法が単純すぎたのではないか。この調査を元に、今後の保存計画の推進と、劣化の程度に応じた処置を図る。
Restaurator
http://www.reference-global.com/toc/rest/27/2
2006年4月12日(水)
PapierRestaurierung、「アルコール消毒の効果と影響」、「デジカメによるインク焼け同定」等
ドイツ語圏を中心にした紙媒体資料のコンサーバターの団体IADA(Internationale Arbeitsgemeinschaft der Archiv-, Bibliotheks- und Graphikrestauratoren)の機関誌 PapierRestaurierung(Vol7, 2006, No.1)はカナダ国立文化財研究所(CCI)による粘着テープや熱圧着薄様紙プロジェクト、デジカメを用いた没食子インク同定、アルコール消毒の効果と影響などについて掲載している。
■Down, Jane L. et al., The Tapes and Heat-set Tissues Project. (p.13-17)
2001年からCCIが進めている表題のプロジェクトの現状報告。同定のためのスクリーニング法、そのための試験法を述べる。44種の粘着テープと熱圧着薄様紙の組成とpHの詳細な一覧がある。
■Kecskemeti, Istvan et al., False-colour Infraed(FCIR) Imaging-- An inexpensive Method for Identifying iron-gall ink by Standard Digital Camera. (p.18-31)
赤外線カラー合成画像(フォールス・カラー画像)で没食子インクを同定する方法。一般のデジタルカメラを使い、簡単かつ安価に同インクの有無を特定できる。
■Meier, Christina. Shimmepilze auf Papier--Fungizide Wirkung von Isopropanol und Ethanol. (p.24-31)
70%の濃度のイソプロパノールとエタノールアルコール溶液 を用いた殺菌消毒効果の実証報告。スプレー、浸漬、ガス化の三つの方法で各種のカビへの効果を確かめた結果、エタノール浸漬によるものがほぼ完全な効果が見られた。エタノールのガス法はカビの生長をおさえるだけ、スプレー法はカビの担持体を作る可能性があるので避けたい。
■Weiss, Doreen. Ethanol und Chlormetakresol als Fungizide--Auswirkungen auf die Alterungsbestadigkeit von Papier. (p.32-39)
エタノール溶液への浸漬とクロルメタクレゾール(ガス)による殺菌後の紙への影響を報告。光および熱による加速劣化を行い、物理的強度の変化と変色を見たが、処置しないものに比べて、いずれも目だった強度低下や変色には至らなかった。
2006年3月15日(水)
JAIC最新号、酸化資料の水性での中和+抗酸化+アルカリ化と、「布海苔」の文献レビューを掲載
アメリカ文化財保存修復学会の機関誌(Journal of the Amrican Insutitute for Conservation of Historic & Artistic Works:JAIC)の最新号(Vol. 44, No.2, 2005)は酸化した紙媒体資料をおだやかなアルカリ域で中和し、さらに抗酸化と脱酸性化(弱アルカリ化)を行う新しい方法と、日本では古くから表具他の分野で使われてきた布海苔のコンサベーションへの適用に関する、欧米からの新しい視点を掲載している。
■John Bogaard et al. A Method for the Aqeous Deacidifi-cation of Oxidised Paper. (p.63-74)
pH が中性域の塩(えん)の水溶液による光酸化した濾紙への安定化効果を見た。いくつかの塩の水溶液で実験したところ、短時間の浸漬で酸性紙は中和されたが、この処理後に、過剰な塩を洗い流す処置をしないと紙が黄ばむことが多い。しかし塩化カルシウムでの処置では化学的な劣化は認められず、未処置の濾紙と比較しての熱劣化試験でも劣化の進行は緩やかであることが分かった。希釈した水酸化カルシウム水溶液での洗い流しは、さらに効果的であった。またこれらの処置と水酸化ホウ素ナトリウム水溶液での還元処理を組み合わせると、還元漂白効果だけでなく、酸化した紙への抗酸化効果も増大することも分かった。一般に塩素(Cl)はコンサベーションの分野では「嫌われもの」だが、塩化カルシウムは穏やかな中世域の水溶液ができて、銀や亜鉛を除く、他の紙中の金属化合物との相性も良いので、今後実際の、酸化劣化した紙媒体資料への応用が期待できる。
■Joseph R. Sweider et al. FUNORI: Overview of a 300-Year Cosolidant. (p.117-126)
日本の表具師には馴染み深い布海苔は、接着剤や顔料の定着剤等として300年以上前から使われてきたが、その効果や影響の科学的な解明は充分ではない。東洋美術の収集で名高いフリア・ギャラリー/アーサー・M・サックラー・ギャラリーの保存科学研究部門でも紙媒体や東洋美術の修復に布海苔を15年以上使用してきた。この論文では、欧米での関心が高まっている布海苔の有効性と影響について、日本を含む各国でどのような知見の蓄積や研究が行われてきたかを文献上で調べまとめている。
2006年1月17日(火)
Restaurator最新号- 500年経時の紙の化学的劣化、pHの新計測法、インク焼けの水性処置など
図書館・文書館資料の保存修復のための季刊誌 Restaurator; International Journal for the Preservation of Library and Archival Materials の最新号(Vol. 26, No.2, 2005)は、この9月にハーグ(オランダ)で開催された国際博物館会議保存修復分科会(ICOM-CC)の第14会国際会議の発表から、資料保存関連の6つの論文を掲載している。ちなみにこの6論文は同会議の予稿集には含まれていない。
■David Erhardt et al. Chemical Degradation of Cellulose in Paper over 500 Years.(p.151-158)
500年の時を経て紙の中に生成された糖類(グルコースやキシロース)の多寡を見ることで紙の劣化の指針にする。14-17世紀の紙と、18-20世紀の紙とを比べた場合、後者の紙の方の単糖類のレベルが高いことが分かった。酸加水分解の速度に倣う。
■Matija Strlic et al. A new electrode for micro-determination of paper pH. (p.159-171)
pHは紙の寿命を測る重要な指針の一つであるが、ポリアニリン・コートしたガラス電極と銀/塩化銀・塩化カリウム化により、従来法よりもさらに精度の高い計測が可能になった。この方法では3つの方法(直径1mm以下のサンプルを直接測る、サンプルを水に浸し水を測る、サンプル表面から5-10g採取して微破壊で測る)が選択できる。従来法の破壊的な冷水抽出法と同様の結果が得られた。
■John Havermans et al, NIR as a tool for the identification of paper and inks in conservation research. (p.172-180)
近赤外線分光法(NIR)による紙の種別の判定と、没食子インクの構成および劣化挙動の識別。NIRにより基準になる紙とインクをが得られ、未知の紙とインクや、劣化挙動の域別が可能になった。比較的簡単で、信頼性と再現性の高い方法としてコンサベーションの現場で活用できる。
■Jana Kolar et al , Stabilisation of paper containing iron gall ink with current aqueous processes. (p.181-189)
現在行われているインク焼け水性処置は、キレート性を持つ化合物による抗酸化か、もしくは腐食性の遷移金属を紙中から洗い流すことで紙を安定化している。この効果はしかし、複合的なものなので、そのメカニズムのより深い理解は、より安定した処置に結びつく。効果的な処置の鍵がpHである。pH5.0のフィチン酸カルシウム水溶液ので処置した紙は、pH6.2で処置したものよりも2,3倍速く劣化した。これは高いpHでの鉄キレートの溶解性が高く、この結果紙の中の鉄分がより良く除かれるためだ。促進劣化試験では、同じような効果を持つと期待されたDTPA(ジエチレントリアミン5酢酸)は、炭酸水素カルシウム水溶液で脱酸しただけのものと比べて、わずかに安定化が向上したに過ぎなかった。
■Birgit Vinther Hansen, Improving ageing properties of paper with iron gall ink through interleaving with papers impregnated with alkaline buffer and antioxidant. (p.190-202)
水処置を前提とした現在のインク焼け処置法は、水に流れるような色材を使ったものには使えない。そこで抗酸化力を持つ臭化ナトリウム(NaBr)と炭酸カルシウムを含ませた間紙を挟むことで、どのぐらいの抑制効果が得られるかを見た。加速劣化の後、引張り強度、pH、変色度を測ったが、この二つを含浸させた間紙は、没食子インクで書かれたサンプル紙でも、なにも書いていないサンプル紙でも劣化が抑制された。ただし後者のサンプルについては、引張り強度があるていど損なわれた。高い湿度の下での短期の処置においても、長期の保管のために半永久的に間紙をしても効果があることが分かった。
Restaurator;International Journal for the Preservation of Library and Archival Material
http://www.saur.de/index.cfm?content=kurzanzeige.cfm?show=0000006512&menu=catalog1
The 14th Triennial Meeting of International Council of Museums – Conservation Committee, The Hague
http://www.icom-cc2005.org/intro/schoonhoven/?set_lang=en
文責:木部徹(資料保存器材)

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