脱酸性化 4
■「ほぼ日刊資料保存」の記事
2008年10月2日(木)
Restaurator最新号、過炭酸ナトリウムでの新漂白法や水酸化カルシウム/マグネシウム・ナノ粒子による脱酸性化効果
図書館・文書館資料の保存と修復のための専門誌 Restaurator:Journal for the Preservation of Library and Archival Materials 最新号(2008, Vol.29, No.2)は、以下の4つの論文を掲載している。
The Study of Two Humidification and Flattening Methods for Albumen Prints to Determine their Impact on the Evolution of the Cracks in the Albumen Laye.
Vischi, Christophe. / Hill, Gregory. (Page 45 - 75)
A Study about Colourants in the Arabic Manuscript Collection of the Sacromonte Abbey, Granada, Spain. A New Methodology for Chemical Analysis.
Arias, Teresa Espejo. / Montes, Ana Lopez. / Bueno, Ana Garcia. / Benito, Adrian Duran. / Garcia, Rosario Blanc. (Page 76 - 106)
A Preliminary Study on Paper Bleaching with Sodium Percarbonate.
Baldin, Alice. / Calvini, Paolo. / Zappala, Mariagrazia Plossi. (Page 107 - 124)
Study of the Photochemical Stability of Paper Deacidified with Dispersions of Ca(OH)2 and Mg(OH)2 Nanoparticles in Alcohols.
Stefanis, Emmanuel. / Panayiotou, Costas. (Page 125 - 138)
このうち、Baldin らによる過炭酸ナトリウムでの紙の漂白は、新しい酸化漂白法の基礎的な研究。一般に用いられてきた過酸化水素水よりも化学的に安定した固体の過炭酸ナトリウムを使う。漂白工程の最後に塩化カルシウム水溶液を使い炭酸カルシウムのアルカリバッファを直接紙の中に形成するのがポイント。機械パルプ紙の漂白効果と処置後の安定性が確認されたという。Stefanisらによる論文は、水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムのナノ粒子のアルコール分散液による脱酸性化した紙の光に対する安定化効果試験で、効果が確認されたという。
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2008年5月22日(木)
国立公文書館『アーカイブズ』最新号、安江「大量脱酸技術の展望--マネジメントの視点から--」
国立公文書館の機関誌『アーカイブズ』(第32号)は安江明夫氏による「大量脱酸技術の展望--マネジメントの視点から--」を掲載している(p.29-36)。「本稿の主眼は、大量脱酸技術の歴史と現状を視野に置き、図書館・アーカイブズが本術を保存計画にどのように組み入れるべきか、それをマネジメントの視点から展望することにある」。章節の構成は以下の通り。
1. 酸性紙問題への取り組み
2. 大量脱酸技術
2.1 初期の展開
2.2 大量脱酸技術の研究と評価基準
2.3 第2世代
3. マネジメントの視点から
3.1 保存計画における位置づけ
3.2 対象資料群
3.3 技術評価と適用の時期
結び
※なお、『アーカイブズ』本号は上記の安江論文の他に、「Ⅰ文書の保存・管理、修復技術について」(p.1-28)特集として青木睦氏「アーカイブズ保存の理論」と、同公文書館が定期的に開催している実務担当者研究者会議への参加記録・報告を掲載している。しかし、いまだに「最良の保存法は修復」、もしくは「保存修復とは技術の課題」というトラウマから脱しきれないでいるという印象を拭えない。そのことは、本来ならば保存計画の立案とその運営すなわち保存管理を語るべき立場にあるであろう青木氏の講演の冒頭が「アーカイブズの保存・修復というのは、日々技術革新で変わってまいります」(p.1)で始まり(もちろん、そんなことがあるはずがない!! -- 木部)、プリザベーション・アドミニストレーターが必要とは言いつつもその仕事の中身についてはほとんどなにも語っていない、あるいは誤解していることに象徴されるように思われる。また、こうした資料保存の研修会と言われるものが、国会図書館による類似のものも同様、結局は傷んだモノをどう治すかの修復技術研修会になってしまうことにも象徴される。資(史)料保存とは技術の課題ではもちろん、とりあえず、ない。方策の話ではなく政策の話であり、それに基づく保存計画の円滑な運営の話である。具体的には、アーカイブズ資料に対する大量脱酸についてならば、「マネジメントの観点では、アーカイブズの資料は印刷物と違い、それぞれが唯一のものである。そのなかで、貴重ではないがしかもオリジナルで保存すべき資料はなにか、図書館の場合の「特定資料群」のような選出が可能か」、「米国立公文書館員が述べるように、大量脱酸処理と低温保管環境の整備・代替などの資料保存選択肢との比較考量、組み合わせも検討しなければならない。」「これらの課題について、アーカイブズ側が、「解」を見いださないと前に進めない。研究者、技術者の支援も受けながら、この検討のステップが不可欠である。」(安江論文、p.36)ということである。安江氏は図書館畑の方だが、こうした視点をいまだにアーカイブズ側から提議できないのはなぜなのだろうか?
【文責は、引用も含めて、木部】
2008年5月12日(月)
カナダ文化財研究所(CCI)が直近の研究開発プロジェクト報告、「Bookkeeper法による脱酸性化の長期効果」を継続
カナダ文化財研究所(CCI: Canadian Conservation Institute)はこのほどCCI research and development projects 2007-2008 として、同研究所が継続的にあるいは新規に進めている研究開発プロジェクトの成果を発表した。紙媒体関連ではStudy on the Effectiveness of Bookkeeper Deacidification Technology Using the Arrhenius Relationship が挙がっている。
Bookkeeper法は大量脱酸性化法として最も多くの欧米の国立図書館や研究図書館が採用している。カナダでも国立図書館・公文書館が、それまでの液相法(ウェイ・トウ法)からBookkeeper法への転換を行った。このように導入実績は高いが、必ずしもその長期的な効果について充分に納得できる根拠が示されているわけではない。同法以外の脱酸性化法は、液体の中にアルカリを溶解させて紙の繊維の奥深くまで浸透させ、酸の中和と炭酸化したアルカリのバッファを残す仕組みだが、一方Bookkeeper法は固体の酸化マグネシウムを紙に埋め込み、紙中と大気中の水分で水酸化し中和し、さらにバッファを残す。
CCIの研究は普通の保管環境に置かれた場合の紙の劣化の程度と脱酸性化効果を、複数の温度で加速老化させたアレニウス・プロットで測ろうというもの。2006年にスタートしたが、全体では4年間のプロジェクトで2010年に終了する。
CCI research and development projects 2007-2008
2008年2月28日(木)
CLIR issuessの「大量脱酸性化の再考」、デジタル化等の環境変化のなかでの北米とドイツの現状調査と提言
図書館情報資源振興財団(CLIR:Council on Library and Information Resources)の刊行物CLIR Iisues(Number 61 • January/February 2008 )は Mass Deacidification Revisited を掲載している。昨年1月に組織された調査研究グループ(Connie Brooks, former head of preservation at Stanford University; Paula DeStefano, head of preservation at New York University; James Neal, Columbia University librarian; Alice Prochaska, Yale University librarian;Hans Rütimann, senior advisor to the Mellon Foundation)による北米とドイツでの図書館資料の脱酸性化の現状と、これを踏まえた今後に向けての提言をまとめたもの。
それによると、酸性の本文紙による図書や文書資料の劣化は依然として大きな問題ではあるが、大量脱酸性化を実際に導入している図書館は依然として限られれていること、北米ではひとつの方法(Bookkeeper法)だけが採用され競合はないこと、依然として高いコストに見合う科学的な効果が明確ではないこと、図書館資料の現物保存の方法として安定した環境書庫への保管への収納という選択肢があること、現物として保存すべき資料がいわゆる貴重書や特別コレクションにシフトしつつあること、さらには図書館の関心の焦点がデジタル化に変わってきたことと--等々が列挙されている。
以上の調査結果をもとに同グループは、今年末を目標に資料保存の専門家と紙の化学者を組織して、アメリカ議会図書館が取り組んでいる科学的な研究や、ドイツで予定されている大量脱酸性化の長期的な効果の研究報告も取り入れたもっと厳密な評価をおこなう、新しく出版され図書館資料になる紙媒体はどの程度が酸性あるいは中性なのかを把握する、大量脱酸性化を保存プログラムに組み込んでいる図書館の代表を集めて活動の現状と将来展望を話し合いまとめる、ドイツで実用化と商業化が進んでいるBookSaver法をモニタリングし、その見通しを確認する、と提言を行っている。
Mass Deacidification Revisited by James Neal, Connie Brooks, Paula DeStefano, Alice Prochaska, and Hans Rütimann

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