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almost daily news of preservation and conservation

本紙掲載記事をカテゴリー別に整理してあります。また、関連する文献への本文もしくは/またアブストラクトへのリンクも載せました。


収納と容器・包材


■「ほぼ日刊資料保存」の記事

2008年5月28日(水)
小規模な機関がビデオやCD等の電子メディア・コレクションを長期保存するための4つのステップとは--CCIが公表

カナダ文化財研究所(CCI)はこのほど小規模な博物館やアーカイブが所蔵するオーディオ・テープ、ビデオ・テープ、CD、DVD等の電子メディア・コレクションを長期保存し利用してもらうためのマニュアル Electronic Media Collections Care for Small Museums and Archives を作成しサイトで公表した。様々な素材や環境要因が複合的に影響することで、そのメディアがどのぐらい持つかを一概に測ることは難しいとしながらも、磁気ディスク、磁気テープ、光ディスクなどの各メディアの予想寿命を提示した上で(上記表を参照)、コレクションとしての調査の方法(メディアの種類は、再生するためのソフト機器およびその保有の有無は、メディアの状態は、記録の価値は)、各メディア別の保管法の改善(保管環境、収納ケースの良し悪し、置き方、ラベルの付け方など)、リ・フォーマッティングの準備と実際(フォーマットの選択、メディアの選択、テスト・ラン時の注意)、書誌やリ・フォーマッティングに関する事項の記録化(いつ、どのように記録されたのか、コンテンツの種類、オリジナルの記録になにが生じたためにリ・フォーマットするのか、どのように利用されてきたものなのか、採用したリ・フォーマットの方法)まで、4つのステップを簡潔に説明している。

Electronic Media Collections Care for Small Museums and Archives



2006年12月27日(水)
国際敦煌プロジェクトのNewsletter、PETフィルム VS ガラス板での遺書のエンキャプシュレーションを比較
 


PETフィルムに封印された敦煌遺文の断片

国際敦煌プロジェクト(IDP:International Dunhuang Prokject)のNewsletter (No.27) はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使った敦煌遺書の封印処置(エンキャプシュレーション)と、ガラス板を使った封印処置についての比較および問題点についての記事 The Use of Melinex for Enclosing Manuscript Fragments を掲載している。執筆は英国図書館のの Barry Knightコンサベーション研究部長。

ここで Melinex というのは、デュポン・帝人フィルム社のPETフィルムの商標で、マイラー(デュポン社)、ホスタファン(三菱化学)のPETフィルムも同等品。

著者は、敦煌遺書のような貴重な資料をフィルムとガラス板で封印することの是非や優劣について、これまで論議されてきた問題を4つ分けて論じている。

第一は物理的な保護に関連する。ガラスとフィルムとではガラスの方が硬いことは明らかで、このため極度に脆弱化したものを封印して保護するのには良いが、ガラスは重く、またそれ自体も割れてしまい、資料を傷める可能性があり、扱いや保管に特別な注意を必要とする。PETフィルム封印は軽く、扱いやすいが、一方で資料が大きく、劣化が酷い場合には保護力に欠ける。またガラスに比べてフィルムは柔らかく傷が付きやすく、封印物も貼り付きやすい。

二番目はフィルムからなにか悪い影響を及ぼすモノが出て資料が傷まないかということ。これについてはPETは非常に安定した物質で不活性であることが確認されている。

三番目は資料そのものが劣化してゆくときに発生するガス状の劣化物を閉じ込めることで生じる影響。ただし、この懸念はフィルムでもガラスでも同じ事になる。これについての最近の研究があるが(David Jacobs and Joanna Kosek of the British Museum ,"What happens to enclosed paper?" in Art on Paper: Mounting and Housing, London: Archetype, 2005"),さらに精緻な研究が望まれる。

最後は封印された内部の環境(温度と相対湿度)について。嵩としては小さいが面積は広く、吸湿性が高い紙媒体を封印することで、どのような内部環境が形成されているのかの予測は難しい。これも今後の研究成果に期待したい課題ではあるが、しかし、この問題はフィルム封印でもガラス封印でも同様に在る。

結論をいえば、PETフィルム封印がガラスよりも悪い影響を及ぼすという証拠はない。どちらを使うかは、資料の脆弱度、資料の使われ方、そして保管方法を総合してコンサーバターが専門的な判断を下すことになる。

The Use of Melinex for Enclosing Manuscript Fragments

■参考
フィルム・エンキャプシュレーションの現在 リンク切れ



2006年11月1日(水)
英国立公文書館(TNA)がアーカイバル容器用ボードの評価試験結果を発表、容器の目的別に3つの等級を


英国立公文書館(The National Archives:TNA)はこのほど、アーカイバル容器(archival boxes)用の各種ボードのための試験法と、市販のボード6種類の評価試験結果を発表した。この試験評価プログラムには英国図書館(BL)も協力している。

収納物の長期保存に適した品質を持つアーカイバル容器は欧米でも複数のメーカーで製造、販売されているが、そもそも「アーカイバル品質」なるものの厳密な定義が無く、保存容器として規格化されているわけでもない。各メーカーがそれぞれ、既存の紙の規格(書籍の本文紙向けのISO 9706:1994 パーマネント・ペーパーの規格など)を当てはめ、ボードの仕様として掲げているのが現状であり、アーカイバル容器の材料に特定した規格はなかった。

今回、英国立公文書館と英国図書館が協力し立ち上げたプログラムは、図書館や文書館そしてコンサベーションの現場で使用される主要な材料に対して、より厳密で信頼性のある情報を提供し、材料あるいは製品を選択する際の「基準」にするというものだが、その第一段として今回、保存容器に使用されるボード(厚紙、板紙)が採り上げられた。

その特徴は、アーカイバル容器用のボードして「適している」、「適していない」に2分するのではなく、耐久性(permanence)の指針となる化学物性を調べる7つの試験と、耐用性(durability)の指針となる物理物性を調べる5つの試験を適用し、使用目的に合わせてボードの品質を3つの等級(grade)に分けたところにある。耐久性と耐用性の定義および3つの等級は次の通り。

耐久性(Permanence): 長期に渡り化学的・物理的な安定性を保持する力

耐用性(Durability): 使用中に損耗や破れが生じにくい力

グレード1:耐久性も耐用性もあるボード(Board Permanece and Durable)

収納物の恒久的な保存と、容器自体の恒久的な使用に適したもの。高いレベルの化学的な安定性を持ち、その組成物や、それの(経時劣化による)副生成による相互の影響がない材料で構成されていること。長繊維のパルプの使用は強さと長寿を与えよう。

グレード2:耐久性のあるボード(Board Permanence)

グレード1と同様に、収納物の恒久的な保存と、容器自体の恒久的な使用に適したボードであるが、場合によっては、物理的な保護力はそれほど必要としない用途で使われる。高いレベルの化学的な安定性を持ち、その組成物や、それの(経時劣化による)副生成による相互の影響がない材料で構成されていること。ただし短繊維のパルプの使用により、強さと長寿はそれなりのレベルになる。

グレード3:耐用性のあるボード(Board Durable)

物理的な堅牢さが第一条件になり、したがって保存容器としては短期間の使用(例:輸送や一時的な保管)の限定した容器に使用される。こうした輸送や保管時に収納物を保護するだけの高い物理的な保護力を持つ構造のためのボード。

耐用性の指針になる物理物性試験(Strength Qualities: an indication of durability)

引っ張り試験、坪量に則した引っ張り強度インデックス、引き裂き試験、破裂試験、同インデックス

6種類の市販製品での試験結果は以下のように発表されている。

Board test results

以上を踏まえた、英国立公文書館としての「容器用のボードに対する要求仕様」が

Box board specification

として提示されているが、内容は以下の通り。

グレード1:耐久性も耐用性もあるボード(Board Permanece and Durable)
晒し化学パルプ 100%
pH 7.5-9.5
Kappa価は5を越えない、もしくはリグニン含有量が1%未満
アルカリ残留量は2~5%
中性内填サイジング
残留硫黄分は0.0008% 未満
(接着剤は)可塑剤を含まない中性域のEVA
蛍光剤を含まない
可塑剤を含まない
金属粒子、ワックス、残留漂白剤、その他、収納物がボードに直接接触しているときに、収納物の劣化に結びつくおそれのある物質を含まない

グレード2:耐久性のあるボード(Board Permanence)
Kappa価は5を越えない、もしくはリグニン含有量が1%未満
晒し化学パルプ そして/もしくは機械パルプ100%
pH 7.5-9.5(※)
アルカリ残留量は2~5%
中性サイジング
残留硫黄分は0.0008% 未満
(接着剤は)中性域のEVA
蛍光剤を含まない
可塑剤を含まない
金属粒子、ワックス、残留漂白剤、その他、収納物がボードに直接接触しているときに、収納物の劣化に結びつくおそれのある物質を含まない
※写真の恒久的な保管のための容器に使われるボードは、pH 6.5-7.5、残留硫黄分は0.0008%未満、アルカリは含まず、PAT(Photographic Activity Test)をパスしていること。

グレード3:耐用性のあるボード(Board Durable)
晒し化学パルプ そして/もしくは機械パルプ100%

この仕様は同公文書館向けに特定したものであり、世界のどこの機関でも当てはまるというわけではない、としながらも、新しい知見が得られる時を繰り込みながら変えてゆくことになり、他の機関でも参考になろう、と補足している。

なお、英国図書館との協力によるこの材料・製品評価試験プログラムの第二弾は、「接着剤」が予定されている。

Evaluating archival box board

(文責:木部徹)



2006年2月8日(水)
カナダ・ケベック保存修復センター、「予防的保存手当て」のための材料や製品のデータベース


カナダのケベック州にある地域保存修復センター The Centre de conservation du Quebec (CCQ) は、予防的保存手当てやケアのためにどのような材料や製品を使ったらよいか、その品質やメーカーを調べることが出来るデータベース "Preserv'Art" を公開している。更新も頻繁に行われ、用語集や関連文献案内も充実しており、アーカイバルな紙製品やプラスチック製品を調べるための入り口として重宝する。

Preserv'Art
http://preservart.ccq.mcc.gouv.qc.ca/index.aspx


2005年11月7日(月)
画像保存セミナー:新しい寿命評価法、インクジェットの保存性、適正な包材等で講演


(社)日本写真学会が主催する平成17年度画像保存セミナーが11月1日に東京都写真美術館(目黒区)で開催され、6つの講演が行われた。うち4つを、予稿集に拠り要約する。

写真室音寿命評価の新しい考え方と実際 (元富士写真フイルム、瀬岡良雄)
写真保存の暗保存性評価はアレニウス法で室温寿命を決める方法が基本になっているが、劣化データの使い方が経験的かつ非定量的であること、劣化プロファイルが温度で異なる場合には、そのままではアレニウス評価ができない--等の問題が指摘されている。これを克服する新しい概念として「プロファイル外挿法」を導入し、評価時間の短縮のために「サイクルサーモ」を、さらに予測制度を一層向上できる「確率予測法」を取り入れた寿命評価を詳説した。また、国内3カ所でおこなった様々な写真の15年間保存の劣化データを、新しい予測方法による寿命評価データと比べ、その相関性を示す述べるとともに、日本国内では高湿保存条件として70%RH、推奨保存条件としては40%RHと結論している。

インクジェットプリントの画像保存性と試験評価 (コニカミノルタフォトイメージング、須田美彦)
これまでメーカーや試験機関ではインクジェットプリントの暗所保存性や耐光性を銀塩写真と同じ方法で評価してきたが、間違った寿命予測を生じる可能性があることがわかってきた。そのひとつが酸化ガス、とくにオゾンの影響で、外気から持ち込まれ屋内濃度が高くなれば酸化による褪色が起こる。プリントが展示される通常の屋内オゾンの濃度についてははまだ合意がないが、数十ppm・hrの積算暴露量で一年相当と見なすようになってきている。しかしこの条件で加速劣化させてもその褪色が一年間の展示に相当するのかどうかははっきりせず論議が続いている。光褪色には顔料インクはほとんど問題がないが、写真プリント用紙のうち空隙型のものへ染料インクでプリントしたものの褪色が早いのは、光よりも空隙に入ったガスの影響が強い。耐光性試験も、インクジェットは湿度の影響が著しいので低湿度と高湿度の両方での試験が望ましい--等、課題が残る。Iプリント画像の寿命の規格化はSOでも行われているが、一部が規格化されているにすぎない。そこで現在わかっている範囲(屋内への酸化性ガスの進入を防ぐ--等)で少しでも好ましい保管方法を考えることを奨めたい。

保存用紙の見直しと保存環境を改善する機能紙について (特種紙商事、中野修)
「保存性の良い紙」は内外での指標や規格があるが、この評価のための試験法はサンプルを試験槽に吊るして暴露するハンギング法が一般的であった。しかしこの方法では、包材等の隣接する紙同士の影響(移行物質としての無機陰イオンによる)がわからない。そこでpHの違う紙で製本した束の中に各種のサンプルを挟み強制劣化させ変色や強度変化を見る「挿入法」を開発し、その成果を元に製造・販売してきた保存用紙の見直しを行った。そして内外のこれまでの指標・規格に加えて紙中の全無機陰イオン含有量の多寡による良否を判断することにした。特に硫酸イオンについては含有量を70mg/Kg 以下にした。写真用包材としても東京都写真美術館によるPAT試験に合格している。その他、調湿機能をもつ紙、汚染ガスを吸着する紙等も開発し、採用されている。

■関連Web
酸性紙・中性紙・アルカリ紙の新しい見方、「挿入法」で全面的な見直しが可能に

写真銀画像の劣化のメカニズムと化学修復について (コニカミノルタフォトイメージング、河野純一)
白黒の銀塩写真の劣化メカニズムと、これまで行われてきている化学的な修復処置について。劣化は、硫化によるものと、酸化によるものとに分けられる。前者は大気中からの影響もあるが一般には不完全な現像処理(水洗不良のためにチオ硫酸ナトリウムが残留する)により、褐色もしくは黄色の硫化銀を生成して変色やイエロー・ステインを生成する。また定着不良のため残留した硫酸・銀錯イオンが分化して硫化銀が生成し全体が黄ばんでくる。一方の酸化による劣化は、複写機からのオゾン、ホルムアルデヒドからのガス、大気中の窒素酸化物や硫黄酸化物などによるもので、材料によって異なるが褪色や黄褐色化として現れる。いわゆる銀鏡は酸化劣化の典型でバインダー層を持つ材料のほとんどに見られる。その他にはバインダーや支持体フィルムの劣化等がある。これらの劣化に対して、オリジナルを化学的に処理して修復する方法が昔からあるが、現在ではかえって画像を痛めることが多いので行うべきではないという認識が一般的である。



2005年10月24日(月)
包材中のアルカリ移行による資料への影響--シアノ タイプ(青写真)での実証


ドイツの資料保存のコンサーバター養成機関 Staatlichen Akademie der Bildenden Künste Stuttgart, Studiengang Restaurierung und Konservierung von Graphik, Archiv- und Bibliotheksgut はこのほど、Roland Damm の 研究論文 Übertragung von Alkalinität durch Kontakt mit Calciumcarbonat gefüllten Hüllpapieren(炭酸カルシウム含有包材の接触
によるアルカリ移行)を出版した。

いわゆる長期保存に適した中性紙は、 ISO や ANSI、ドイツでは DIN などの国際規格や国の規格で定められた「炭酸カルシウム換算で2%以上のアルカリ塩」が含有されており、包材にもこの規格に即した紙が使われてきたが、写真資料の一部や、色材が載った対象資料によっては、このアルカリ分の長期接触による影響が懸念されていた。著者の Damm は青写真(シアノタイプ、サイアノタイプとも)への長期接触により、水分が介
在してこのアルカリ移行が生じ、変色が生じることを実証的に確認した。
また、相対湿度の変化(Damm の実験では 45~65%を繰り返す)がこの変色を加速させたとしている。「シアノタイプで実証された相対湿度の変化による炭酸カルシウムの移行の影響は、しかしながら、非常にわずかなモノであり、著しい湿度変化下をシュミレーションしたものといえる」と結論している。

Roland Damm, Übertragung von Alkalinität durch Kontakt mit
Calciumcarbonat gefüllten Hüllpapieren.
.Schriftenreihe in Zusammenarbeit mit der Staatlichen Akademie der
Bildenden Künste Stuttgart, Studiengang Restaurierung und Konservierung
von Graphik, Archiv- und Bibliotheksgut und Preservation Akademy
Leipzig GmbH, Band 1.Berlin

Berliner Wissenschafts-Verlag 2005
ISBN: 3-8305-0919-7
http://www.sabk.de/archiv/buecher.htm

Staatlichen Akademie der Bildenden Künste Stuttgart, Studiengang
Restaurierung und Konservierung von Graphik, Archiv- und Bibliotheksgut
http://www.sabk.de/

※関連Web
■稲葉政満・高木彰子・山口佳奈・桐野文良ほか:挿入法による紙劣化
試験--色変化に及ぼす圧力及び湿度の影響
http://www.hozon.co.jp/hobo/archives/200509/hobo_0509.html#inaba リンク切れ


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