製本(洋)
2008年11月4日(火)
製本家のための e-Journal ”Bonefolder” 最新号、製本のための各種の糸や織物の繊維科学的な解説を掲載

製本家と製本工芸家のための電子ジャーナル Bonefolder の最新号(Vol..5 No.1, Fall 2008)は以下の記事を掲載している。
・Limp bindings from Tallinn, by Monica Langwe Berg 3
・An Overview of Fibers, Yarns, and Textiles for the Book Artist, by Amanda Thompson, PhD and Anna Embree, MFCS 6
・Thinking by the Book by Wendy Strauch-Nelson 14
・Colours of Persia: The Making of a Book by Susan Allix 19
・The Simplified Binding Examined by Laura Wait 22
・Big Books: Constructing a Four Foot Springback by Charlene Matthews 28
・Modified for Re-use: Broken Ledger Bindings become Ledger Enclosure by Karen Jones 32
・2008 Bind-O-Rama, a look back on techniques introduced in The Bonefolder 34 Book Reviews 4529
このうち An Overview of Fibers, Yarns, and Textiles for the Book Artist は製本で用いられる繊維、糸、織物について繊維科学からの知見。綴じ糸、紐、平紐、表装材などとして製本に用いられる綿や麻、絹の自然物からナイロン等の化学製品までを、最小単位の繊維、縒り合わせた糸、織り込んだ織物という順に、それぞれの特徴と製本での適切な使い方を述べている。
The Bonefolder — Volume 5, No. 1, Fall 2008
2008年10月31日(金)
スイスのザンクトガレン修道院図書館が8世紀からの貴重書144冊をデジタル化し公開、製本の多面的な画像も

スイスのザンクトガレン修道院図書館(Abbey Library of St. Gallen)は所蔵する貴重書144点をデジタル化し Codices Electronici Sangallenses (CESG) – Virtual Library としてサイトで公開している。同図書はスイスで最古の図書館で8世紀から15世紀までの2,100点の手稿本、1,650点のインキュナブラ(初期印刷本)を持つ。デジタル化し公開されている貴重書は詳細な内容の書誌情報とともに、製本についての画像が掲載されている。表の表紙、裏の表紙、背、前小口、表紙の裏(上記画像)、そして必要な場合には天地の小口の画像があり、書誌情報のなかの製本の説明と共に、装飾と製本構造がよく判る。
Codices Electronici Sangallenses (CESG) – Virtual Library
2008年10月23日(木)
弊社スタッフによる翻訳『館内で本を修理する』の連載がスタート、一般書対象のコンサベーション・マニュアル
弊社のスタッフよる翻訳『館内で本を修理する』の連載がスタートしました。Altemis BonaDeaによるConservation Book Repair: A Training Manual の全訳です。原本は、専門的な訓練を受けてはいない図書館職員等が、傷んだ一般の蔵書を館内で修理するときのマニュアルとして、アラスカ州立図書館から1995年に刊行されたもの。類似の修理マニュアルはこれまでにも国内でも海外でも紙媒体で刊行されているし、ウェブ上の文献としても数多く見つけることができますが、BonaDea女史によるこの本は、表題が示すように、旧来の修復(restoration)ではなく、現在の書物のコンサベーション(conservation)という考え方を、一般書の修理において一貫させていることに特徴があります。すなわち、書物の見た目ではなく機能の回復を優先させる、後々に悪い影響を及ぼさない材料や技術を選ぶ、可能な限り可逆的な方法を採用する---等々。本の構造から説きおこし、傷みの部位や程度に応じて初級・中級・上級の修理へとステップアップしてゆき、災害対策と復旧にまで及ぶ本書は、館内修理に取り組んでいる人たちやこれから取り組もうという人たちへ過不足ない有益な情報を提供する好著といえます。
アルテミス・ボナデア著 (伊藤美樹 訳) 『館内で本を修理する』
2008年10月22日(水)
製本史家ピアソンの新著『歴史としての書物』、デジタル時代のテキストを越える歴史的モノとしての書物とは

英国の製本史家 David Pearson の BOOKS AS HISTORY: THE IMPORTANCE OF BOOKS BEYOND THEIR TEXTS が出版された。過去に紙媒体等で出版された書物の大規模なデジタル化が進む中で、単なるテキストを盛り込む媒体としてでなく、物体(モノ)としての書物を形成する上での印刷、製本、装幀等の意味と歴史を、中世から今日までのさまざまな書物の例を挙げながら論じている。著者のピアソンはロンドン大学は研究図書館サービス部長で、これまでにもProvenance Research in Book History (Oak Knoll Press and The British Library, 1994), English Bookbinding Styles, 1450-1800: a Handbook (Oak Knoll Press and The British Library 2005)などの著作を持つ。
- New Castle, Delaware and London, England : Oak Knoll Press and The British Library 2008
- 8.75 x 9.5 inches - Hardcover
- 208 pages
- ISBN 9781584562337 / Order Nr. 96664
- Price: $ 49.95
BOOKS AS HISTORY: THE IMPORTANCE OF BOOKS BEYOND THEIR TEXTS
2008年9月8日(月)
アメリカ図書館製本協会(LBI)、国家規格(ANSI/NISO/LBI Z39.78-2000)の解説書をPDFで公開

アメリカ図書館製本協会(Library Binding Institute)はこのほど、2000年に国の規格として定められた図書館製本の規格(ANSI/NISO/LBI Z39.78-2000 Library Binding)の一般向けの解説書 Guide to the Library Binding Institute Standard for Library Binding を作成し、PDFで公開した。同規格は1990年に最初の版が定められたが、製本に従事する専門家向けで、必ずしも判りやすいものではなく、図書館製本を依頼する側の館員向けの解説が必要とされた。Guiide はこうしたニーズに応えるべく同年に刊行されている。今回の新しい Guide は、規格そのものの2000年の改訂に則し、技術や素材の進歩も踏まえての改訂版になっている。前の版と同じく、図書館界からは Jan Merrill-Oldham(ハーバード大学図書館)、図書館製本業界からは Paul A. Parisi(元同協会会長)が参画、編集・執筆を担当した。また、豊富な解説図も前回同様、Gary Frost が担当した。
図書館製本の目標は次の4点になる。
・丈夫で経済的な製本
・テキスト・ブロック(本体)の物理的な状態を可能な限り変えない
・製本そのものが、可能な限り資料を傷めないものであること
・再製本されたものは楽に180度に見開き、利用の際に開いた状態を保つこと
この目標を達成する製本の方法には以下の選択肢がある。
・本体の綴じがしっかりしており、表紙だけを替える(Recasing)
・本体を綴じ直し、表紙も替える(Resewing and recasing)
・ダブル・ファン接着剤製本(double-fan adhesive binding、下図参照)
・からげ綴じ(Over sewing)
・平綴じ(Side sewing)

以上の選択肢は、元の製本の形態や傷み具合等により選択され、どのように選択すれば良いかの三つのフローチャートが、「そもそも製本は必要か」(下図)、「単行本の場合」、「逐次刊行物の場合」として示されている(p.38-40)

また、いわゆる一般図書ではなく、歴史的な価値がある、あるいは将来そのような資料として扱われる可能性があるものには次の原則が当てはめられる。
・小口の傷みが激しい、もしくは小口がアン・カットではない限りは、テキスト・ブロック(本体)の小口は断裁しない。
・本紙が破れていたりする場合には紙基材の粘着テープ(粘着剤はアクリル系)を使う。ただし、このテープは、可逆性があるものも、剥がすためには有機溶剤が必要になる。もし将来その本が貴重書に組み込まれる可能性があるならば、その修理と製本はコンサーバターに任せる。その本が美術的な価値を持つならば、修補は和紙と糊で行うのが良く、図書館製本をするべきではない。
規格および解説は以下から無料でダウンロードできる。
Library Binding Institute のホームページ
Guide to the Library Binding Institute Standard for Library Binding (PDF 8.6MB)
ANSI/NISO/LBI Z39.78-2000 Library Binding (PDF 172KB)
※図書館製本がそのまま修理製本であると思われている日本の図書館では、貴重書として認知されている本の小口が、それも天・地・前小口だけでなく、背さえも断裁され、無線綴じやからげ綴じが行われているし、紙が極度に劣化しているものも同様の「修理」が行われ、ハードコピーやスキャニングのために180度開くと壊れるのが現状である。
2008年8月27日(水)
カーターの名著 ABC for Book Collectors 全文がPDFで、版元と英国図書館の了解のもとに国際古書店協会(ILAB)が
国際古書店連合協会(International League of Antiquarian Booksellers)はこのほど、版元の Oak Knoll 社と英国図書館の了解の下に、John Carter の名著 ABC for Book Collectors 全文をPDFにし、サイトに掲載した。無料でダウンロードできる。書誌学者 Carterが執筆したこの本は、コレクターだけでなく洋書を扱う図書館員にもバイブルとして使われてきたもので、Carter の後を受けて英国図書館の貴重書部門の責任者だった Nicolas Barker による改訂が継続的に行われてきた。
ABC for Book Collectors
2008年3月13日(木)
「ブック・コンサーバターのためのブック・コンサーバター」クリストファー・クラークソンのサイトが登場

「修復からコンサベーションへ」---アーツ・アンド・クラフツ運動の伝統を踏まえ、1966年のフィレンツェ洪水による貴重資料の救出作業を契機として確立していったブック・コンサベーションへの流れを決定づけたクリストファー・クラークソン(Christopher Clarkson)のサイトが登場した。クラークソンはフィレンツェ後、アメリカ議会図書館、ワルター美術館(ボルチモア)、ボードリアン図書館(オックスフォード大学)へと、それぞれの機関でのブック・コンサベーションの考え方の浸透とコンサベーション部門の設置・運営を経て、ウェスト・ディーン・カレッジ(英サセックス)における初の貴重書のコンサベーション講座を開設、現在も世界中の図書館・アーカイブズに対するコンサルティングを精力的に行っている。日本でも国立国会図書館が2003年12月に、ボードリアン図書館のロバート・ミンチ(Robert Minte)氏とともに招聘し講演会を開催した。
今回開設されたサイトはクラークソンのこれまでの業績を文献一覧の形で見ることができるページと、著作の中でも最も重要視されながら少部数での発行だったために入手が難しかった“Limp Vellum Binding and its Potential as a Conservation Type Structure for the Rebinding of Early Printed Books ? A Break with 19th and 20th Century Rebinding Attitudes and Practices” を購入できるページで構成されている。
Christopher Clarkson; Book Conservator
■参考
クラークソン(金谷博雄 抄訳)「書物のプリザベーションに求められるもの」
クラークソン「貴重書の修復はどこまで許されるのか--minimum intervention の勧め」 (PDF 362KB)
資料保存活動の歴史と取組み <国立国会図書館での講演会報告>
アンソニー・ケインズと書物のコンサベーション
2006年12月4日(月)
International Preservation News 最新号、仏での革装幀の修理用革の研究や大量脱酸性化技術比較など
IIFLA-PAC( 国際図書館連盟 資料保存コア・プログラム )国際センターの発行するニューズレター International Preservation News 最新号( No.39, October 2006)は次の記事を掲載している。
----------------------------------------------------------------
Coralie Barbe et al. : La selection d’un cuir de tannage vegetal destine a des traitements de restauration de livres anciens : une etude en cours a la Bibliotheque nationale de France.
古い貴重書のコンサベーション処置用の植物タンニン処理した牛革の選択:フランス国立図書館の研究の現状報告
Nathalie Buisson : Programme de recherche de la BnF, 1994-2000 : conclusions de l’etude comparative des quatre procedes de desacidification de masse.
4つの大量脱酸性化処置法の比較:フランス国立図書館が1992年から2000年にかけて行った調査研究
Nathalie Buisson : Les principaux procedes de desacidification de masse : situation en 2004.
上記の調査研究の2004年時点の状況
Randy Silverman : Fire and Ice: A Soot Removal Technique Using Dry Ice Blasting.
火と氷:ドライ・アイスのブラスターで煤を除去する試み
Randy Silverman: Report Tsunami and Archives: The Unexpected Possibilities. Jakarta, Indonesia - 17-18 July 2006.
津波とアーカイブ:予期せぬ可能性、インドネシアでのシンポジウムの報告
----------------------------------------------------------------
このうち最初の記事(p.4-8)、Coralie Barbe らによるコンサベーション用の革の研究について、少し詳しく紹介する。
----------------------------------------------------------------
Coralie Barbe et al. : La selection d’un cuir de tannage vegetal destine a des traitements de restauration de livres anciens : une etude en cours a la Bibliotheque nationale de France.
フランス国立図書館は、Centre de Recherches sur la Conservation des Documents Graphiques (CRCDG)の協力のもとに2004年から表題の研究を進めている。この研究は欧州全体での Environment Leather Project に基づくもので、ある種の新しい革を使ったコンサベーション処置がさらに劣化を促してしまうという現状の改善を目指している。
この現状は次の二つの理由による。
ひとつは、見栄えを優先させる処置が行われてきたこと。19世紀の"美麗な製本(reliures fines)"というファッションは、革を紙のように薄くして使うことを流行らせたが、これがコンサベーションにも導入され、結果的に非常に物理強度が低下してしまう修理が行われてきた。
二つ目の理由は革の製造自体の問題。19世紀初頭からに革は、なるべく早く造ることを要求されるようになり、また、新規の、しかし害のある薬品が製造工程に導入された。
現在は、ほとんどの鞣し(tanning)行程が、原皮(skin)を得る現地の国で行われるようになり、昔のように消費国で鞣しの行程をコントロールしながら革(leather)にすることが難しくなっている。耐久性のある製本用革の品質についても提供側は関心を示さない。一方、依然としてコンサーバターや修復家は見栄えを優先させた修理をしている。その例が、オリジナルの革装幀の欠損部を直す際に、この革の下に補修用の革を潜り込ませたいがために、挿入する部分をできるかぎり薄くして「綺麗」に見せるという処置だ。結果的には、オリジナルの革装幀よりも早く、補修用の革が劣化してしまい、再度の補修が必要になる。なんのための処置だったのか、というわけだ。

<写真:革で補修されたヒンジ部。上がオリジナルの革だが、すでに「新しい革」のヒンジ部に傷みが来ており、再度の補修が必要になっている。>
装幀革の劣化の問題と、丈夫な補修用の革の開発の歴史を見てみると、まず1905年にロンドンの図書館協会(Library Association of London)の調査が挙げられる。ここでは濃縮タイプのいくつかの植物タンニンが劣化の原因とされ、無酸の鞣しが推奨されたが、現実的には革の劣化は止まらなかった。1931年にはおなじく英国で革の耐久性試験「PIRA 試験」が開発され、これに則した「耐久性のある革」はPIRA試験をパスしているというラベルを貼付されて販売されたが、しかしこれも充分なものではなく、このラベルはいまは採用されていない。
1976年に英国図書館はアルミニウムと植物タンニンとの「コンビ鞣し」による耐久性のある革のレシピをつくり、実際にこれに則った革が市販されたが、疎水性が非常に高くて扱いにくく、歓迎されなかった。
今回のEnvironment Leather Project による協力プロジェクトはこうした歴史を背景にして立ち上げられたもので、植物タンニン鞣しの行程に焦点を当てて研究が進められている。すでにいくつかの成果や提言が発表されている(P. Larsen:The deterioration and conservation of vegetable tanned leathers - Status of the EU environmet leather project.)。
このプロジェクトの一環としてフランス国立図書館では植物タンニン鞣しの牛革(calf leather)に焦点を当てて研究している。この鞣し革は、製本やコンサベーションでは希にしか使われることはなかったが、しかしその耐久性は優れており、特に折ったり、曲げたり、凹ませたりといった「形作り易さ」への評価は高い。
一方、ヨーロッパ各国から40種類の革を集め、その品質を調べているが、うち四分の一はクロムの含有量が高くて「形作り易さ」に劣るなどの問題があり、選択の対象にはならなかった。
また現在、鞣しで使われている濃縮タンニンのうちのいくつかは、ある種の大気汚染物質と化合することで革の劣化の原因になっていることも判り、現時点では補修用に最適な革は見つからないという結果になった。
そこで今後の研究の方向は、科学的な試験を継続して、革に要求される品質を満たす条件の影響をさらに精緻に確認することと、プロジェクトに盛り込まれた提言の中身を改良してゆくこと、鞣し業者(tanneries)との共同作業を密にして技術的・理論的なデータを固めること、になる。
いずれ近い時期に、「補修用に適した諸物タンニン鞣し革」が実用化されることになろう。
----------------------------------------------------------------
International Preservation News (IPN)
2006年11月27日(月)
英 National Preservation Office、製本の理解と、そのケアのためのリーフレットをPDFで

英国National Preservation Office(NPO)はこのほど、NPOリーフレット・シリーズのひとつとして、書籍の製本への理解を深め、資料として保存してゆくときのケアの方法を簡潔にまとめた Understanding and Caring for Bookbindings (全22頁)を上梓した。ダウンロードできる PDFのほかに、印刷物としても入手できる。いずれも無料。
著者は John Mumford(英国図書館ブック・コンサベーション部)、David Pearson(ロンドン大学図書館研究サービス部)、Alison Walker(NPO)の三者。リーフレットで対象としているのは、西洋の、基本的には英国内の、手作業による印刷(1830年代)から以降に作られた書籍の製本。盛られた内容や表紙の装幀とともに、製本の構造自体も歴史的な、あるいは学術的な意味をもつとし、製本を形作る部分や材料、その組み合わせとしての構造の説明と、資料として存続させるためのケアの方法を述べている。
Understanding and caring for bookbindings (PDF format) 645KB
National Preservation Office
The British Library
96 Euston Road
London, NW1 2DB
Email: npo@bl.uk
2006年11月7日(火)
1966年のフィレンツェ洪水で被災した書物のコンサベーションの記録映画をストリーミングで

和紙に喰い先を作り、欠損部を補填する

表紙芯ボードに綴じの支持体を通す(laced-in)
今年(2006年)は、1966年11月4日に起こったイタリア・フィレンツェでの大洪水による文化財被災から40周年に当たるが、その現地での救済活動のうち、書物を対象にした活動を映像に納めた記録映画 The Restoration of Books: Florene,1968 を、ウェッブ上でのストリーミング配信(ファイルとしてダウンロードはできない)で見ることができる。同映画は1968年に英国の王立芸術学校(Royal College of Art)が作成したもので全39分。ユタ州立大学マリオット図書館のメディア・ストリーミングというサイトに置かれている。
フィレンツェ災害と救助活動は、"BEFORE THE FLOOD, AFTER THE FLOOD" という言葉に象徴されるように、洪水以前とそれ以降の「保存修復」の在り方を決定的に変えた。特に書物を対象にしたブック・コンサベーションでは、現在の資料保存の原則(「可逆性のある手当て」や「手当ての記録化」等)に結びつく考えだと技術が適用された。
映画では、現地でのブック・コンサベーション活動の中核を担ったイギリスのチームによりフィレンツェ中央図書館に設置された工房での作業、指導的な役割を果たした Peter Waters による革製本装幀、Christopher Clarksonによるベラム製本装幀などを見ることができる。
The Restoration of Books: Florence, 1968
■フィレンツェを分岐点としたブック・コンサベーションの歴史については、
「アンソニー・ケインズと書物のコンサベーション」を参照してください。
2006年9月5日(火)
Paper Conservator 29号、「フィレンツェ水害から40年の現状」、「書物のジョイント部補修のアセスメント」など
英国のInstitute of Conservator(ICON) はこのほど Paper Conservator 29号を発刊した。主な内容は以下の通り。
Brian W. Singer and Colin A. Liddie
A study of unusual degradation on a seascape painting associated with the use of zinc white pigment.
Scott W. Devine
The Florence flood of 1966: A report on the current state of preservation at the libraries and archives of Florence.
David Dorning
The development of a testing method for assessing book joint repair.
Athanasis Velios and Nicholas Pickwoad
Current use and future development of the database of the St Catherine's Library Conservation Project
Clark Maxwell, Nancy Bell, Craig J. Kennedy and Tim J. Wess
X-ray diffraction and FT-IR study of caprine and ovine hide.
また、現在、鋭意編集中の30号は東洋の紙作品とコンサベーションの特集号になる。2007年1月の刊行が予定されているが、これには 過去に発刊されて、現在では入手が難しくなっているPaper Conservator No.9の「表具」の特集号がCD-ROMで同梱されるという。
Institute of Conservator
2006年6月26日(月)
楮紙の薄さと靱さを活かして、革装幀本の外れた表紙を再接合する方法を解説(弊社関連)

弊社(有限会社資料保存器材)はこのほど「革装幀本を和紙で治す--外れた表紙の再接合」をアップロードしました。洋古書の傷みの中でも特に際だって数が多い背と表紙との接合部(ジョイント部)が切れてしまって表紙が外れたものを、楮和紙の薄さと靱さを活かして再び接合する方法である。一見、ミスマッチに見える方法だが、1980年代後半にブック・コンサーバターのドン・エザリントンや、キャロリン・ホートンらによって開発、紹介されたこの方法は、欧米では広く普及している。写真と図を豊富に使い詳説した。
永島真帆子「革装幀本を和紙で治す--外れた表紙の再接合」
2006年5月16日(火)
IICミュンヘン大会、聖キャサリン教会図書館の超貴重書コレクションへの保存修復手当ての報告
ことしの8月末からミュンヘンで開催されるIIC(International Institute for Conservation of Historic and Artistic Works. 国際文化財保存修復学会)
大会の口頭発表プログラムが公開されている。このうちブック・コンサベーション関連では、ニコラス・ピックウォード博士らが進めてきた聖キャサリン教会図書館の貴重書コレクションへの保存手当ての報告が注目される。


(上)調査中のピックウォード博士ら (下)このプロジェクトで開発された容器
同報告 Conservation and Continuity: preserving the library of the monastery of Saint Catherine on Mount Sinai は現在に伝わるキリスト教界における最古の図書館であり、ビザンチン時代の最大規模の蔵書を持つ聖キャサリン教会図書館(エジプト・シナイ山)が保有する貴重書コレクションへのコンサベーションとプリザベーションの現状を述べる。不毛の砂漠地帯にある同図書館の貴重書の物理的な真正性を保持しながら、現物へのアクセスも保証するという困難な目的を果たすために行われた精緻きわまりない状態調査、専用の保存容器の開発、さらには3万のイメージを詰め込んだデータベースの構築までが語られる。
Conservation and Continuity: preserving the library of the monastery of Saint Catherine on Mount Sinai , by Professor Nicholas Pickwoad, Dr David Cooper and Dr Athanasios Velios
http://www.iiconservation.org/conferences/munich/m_arts.php
■関連
ニコラス・ピックウォード(木部徹訳) 「保存製本とはなにか」
http://www.hozon.co.jp/cap/Pickwoad01.pdf 画像でのPDF (1.3MB)
Saint Catherine Projects
http://www.arts.ac.uk/research/stcatherines/?q=
2006年5月2日(火)
米CCAHA、17世紀手稿楽譜本へのコンサベーション行程をウェッブのスライドで

アメリカの非営利地域保存修復センターのひとつCCAHA(Conservation Center for Art and Historic Artifacts、在フィラデルフィア)のホームページは同センターによる17世紀の手稿本のコンサベーション行程を11枚のスライドで見ることができるページを公開した。同書はイタリアの作曲家でありバイオリニストでもあったアルカンジェロ・コレッリの直筆のソナタを一冊に製本したもの。革装幀の解体から始まり、水蒸気加湿によるフラットニング、表紙革と本紙の
クリーニング、純水+カルシウムによる弱アルカリ水での洗浄、乾燥、フェルトに夾んでのフラットニング、和紙による破れや欠損部の修補、無漂白のアイリッシュ麻コードを支持体にした綴じ直し、アクリル顔料染めの和紙による革表紙の補修、牛革による新しい背作り、最後の保革ワックス塗布まで。
Treatments Portfolio
http://www.ccaha.org/treatment_slides.php
2006年4月18日(火)
米手製本業者、外れた表紙と本体の接合用溝(ボード・スロット)を切る専用機を市販へ


アメリカの手製本道具業者 JEFFREY S. PEACHEY はこのほど、書物のコンサベーション用のボード・スロッティング・マシンを製造し、アメリカ市場で販売することになった。同マシン(board slotting machine)は、特に革装幀本で頻発するヒンジ部での表紙外れの直しに使うもの。表紙ボードのヒンジ部天地に細い溝を切るだけの専用機で、本体からのフラップや綴じの支持体を挿入して表紙と接合できる。
このマシンは1970年代に書籍コンサーバターのクリストファー・クラークソン(Christopher Clarkson)が開発した。ヨーロッパ市場ではボードレアン図書館(英国)やバイエルン国立図書館などに等に導入されている。原理は単純だが、ボードの厚みに応じて斜めのスロットをスムーズに切れるのがミソ。
Peachey Board Slotting Machine
http://jeffpeachey.wordpress.com/board-slotting-machine-2/
■関連
Board Slotting: A Machine-Supported Book Conservation Method
http://aic.stanford.edu/sg/bpg/annual/v19/bp19-25.html
2005年11月8日(火)
定評ある Kite & Thompson編著『革製文化財の保存修復』改訂版が上梓へ

Marion Kite と Roy Thompson の編著 Conservation of Leather and Related Materials の改訂版がElsevire 社から出版される。Kite は英国ビクトリア&アルバート美術館のシニア・コンサーバター兼レザー・コンサベーション・センター長、 Thompson は前レザー・コンサベーション・センターCE。内容は、皮革とは何か、製法、劣化のメカニズム、試験法から、各種革製品(革装幀本も含む)のケア、保存手当て、ケース・スタディ--等々、類書がない内容になっている。
Hardbound, ISBN: 0-7506-4881-3, 368 pages, publication date: 2005
Imprint: BUTTERWORTH HEINEMANN
USD 79.95, GBP 49.99, EUR 72.95
http://www.elsevier.com/wps/find/bookdescription.cws_home/677698/description#description
2005年10月18日(火)
M. Foot の新刊 『製本家の仕事:その役割と方法』-16~18世紀の英独仏蘭での歴史

製本史家 Mirjam Foot の Bookbinding at Work; their Roles and Methodsが Oak Knoll 社と英国図書館から 2006年1月に出版される。これまでの「製本史」の研究は、わずかな例外をのぞいて、ほとんどが表紙のデザインの変遷に関したものであるが、この書は、16世紀から18世紀までのフランス、ドイツ、オランダ、イギリスの文献および実際に製本されたモノを調査し、製本構造と、それを成り立たせる方法にまで踏み込んで歴史的に論じたもの。著者の Dr. Mirjam Foot は、British Library の Collections and reservation 長を歴任、現在はロンドン大学の図書館・アーカイブ学部教授。
Bookbinding at Work; their Roles and Methods
hardcover, 7×10 inches, 162 pages
ISBN 1564561688
$ 59.95
Oak Knoll Press の該当ページで予約できる
http://www.oakknoll.com/detail.php?d_booknr=87274&d_currency=
2005年7月20日(水)
クラークソン『リンプ・ヴェラム製本』の改訂版とDVDを刊行
現在のコンサベーション・バインディング(conservation binding )の考え方と技術を決定づけたクリストファー・クラークソンの Limp vellum binding and its potential as a conservation type structure for the rebinding の改訂版が刊行された。元は1975年にパリで開催されたICOM の予稿集に発表されたもの。30年後の改訂版には6ページの序文と、沢山の注釈が付け加えられた。また1970年に行われたワークショップでの製本工程を収めたDVDも同時に刊行された。入手は下記から。
Christopher Clarkson, 31 Stanley Road, Oxford OX4 1QY England.
■ クリストファー・クラークソン(金谷博雄 抄訳):書物のプリザベーションに
求められるもの
http://www.hozon.co.jp/report/other/clarkson01.html
■アンソニー・ケインズと書物のコンサベーション
http://www.hozon.co.jp/report/kibe/kibe-no004-cains_bookconservation.html
2005年6月27日(月)
フランス国図のコンサベーション--水性洗浄、キャスティング、表打ち等を紹介
フランス国立図書館のコンサベーション部門のページでは、紙媒体資料を対象にした治療的な処置(Conservation : traitements curatifs)の例として、水性洗浄と脱酸性化、繊維キャスティングによる損失部補填ほか、同部門が実施している技術を紹介している。特に目新しいものはなく、8つの技術のうち最後を除く7つはイギリス、アメリカ、ドイツ、デンマークのコンサーバターがこの20年ほどの間に開発し、欧米の、あるいは弊社のような工房で普通に実践している技術だが、フランスのコンサベーションの現在がわかり、興味深い。
http://www.bnf.fr/pages/infopro/conservation/cons_traitement_trad.htm
水性洗浄と脱酸性化(Le nettoyage aqueux et la désacidification)

補填、表打ち等の紙力強化の前段階として不可欠の資料の水性洗浄と脱酸性化処置。汚れだけでなく、紙中の経時劣化物を紙から追い出す洗浄の後に、紙中にアルカリを入れるのが脱酸性化。
欠損部の紙繊維による補填(Le colmatage)

紙の繊維を水頭差の吸引力で欠損部に補填するリーフキャスティング機によ
る方法と、サクション(吸引)テーブル上で資料の穴、破れ等の欠損部に手作
業で充填する方法。
表打ち(Le doublage)

極薄の和紙またはマニラ麻紙による傷んだ紙の表打ちによる強化法。
間剥ぎ(Le clivage)

一枚の紙を、厚みの真ん中で引き剥がし、二枚にして、中に別の紙や不織布を挟み、再び張り合わせて一枚に戻す技術。
分離した表紙の本体との再接合(Le rattachement des plats)

後々の本格的な修復処置を前提にした、利用時に支障のない程度の強化を目的にした接合方法と、ボードの厚みの中に溝を設えて背からの綴じの支持体を挿入する本格的な方法。
パーチメントを表装材にしたコンサベーション製本(La reliure deconservation)

いわゆるリンプ・ベラム製本のコンサベーションへの応用。本体以外の表紙部材がなくなっているもの、製本がこわれていて、なおかつ製本自体に歴史的な価値が無いもの、同じ製本の中に別のドキュメントが含まれているものなどを対象に、よりフレキシブルで丈夫な製本に改装する。
古典籍の革装幀部位を和紙で修復する(Le traitement de conservation des reliures anciennes en cuir effectué avec du papier japonais)

革を革で直すのではなく、絡みが良く、成形がしやすく、丈夫な和紙を革のように使って直す。
古典籍の革装幀を革で修復する(Le traitement de conservation des reliures anciennes en cuir effectué avec du cuir)

昔から行われている革装幀本の修復法。
2005年5月9日(月)
プリンストン大図書館--手製本の歴史をWeb で一堂に

米プリンストン大学図書館は手製本の装飾と構造とが歴史を追って理解できる Hand Bookbindings: Plain and Simple to Grand and Glorious を公開した。2002年秋から翌年春にかけて行われた展示のWeb版。最初期のコプト製本から版元製本や工芸製本、さらには保存のためのコンサベーション製本まで、26グループ、211点の書物が画像と説明付きで一覧できる。
Hand Bookbindings: Plain and Simple to Grand and Glorious.
http://libweb5.princeton.edu/visual_materials/hb/hb.html
2005年4月13日(水)
IDAP--パーチメントの劣化機構の解明で成果を発表へ

加水分解によるパーチメントのゼラチン化
パーチメント(皮紙)劣化のアセスメント法の開発を進めてきたIDAP(Improved Damege Assessment of Parchment)はその成果を 2005年8月にコペンハーゲンで開催するセミナーとワークショップで発表する。IDAPは欧州のコンサーバターや皮革業者、図書館、文書館、博物館の関係者などが協力し、EU協会からの支援を受けて発足した研究機構。今回の発表で一区切りをつける。成果はセミナー参加者だけでなく、ホームページでも詳しく発表される。
パーチメントは、タンニンなめしの革と異なり、比較的耐久性が良いことは知られているが、近代の製造法の変化による質の低下や、没食子インクによる腐食などの問題をかかえている。このため英仏独などの欧州の八カ国の研究者が協力し、劣化機構のアセスメント法の開発を進めてきた。
詳細はIDAPのサイトで。
http://www.idap-parchment.dk/portal/DesktopDefault.aspx
2005年4月4日(月)
より長持ちする装丁用の皮革とは--英国図書館他の共同プロジェクト


より長持ちする装丁用の革の製法を共同開発するプロジェクトとその結果を英国図書館のサイトの Towards a Long Lasting Leather が伝えている。
革装丁された本の表紙が時とともに赤茶け、強度を失い、やがて粉状になってゆく現象(レッド・ロット)は、世界中の、特に都市区域の図書館、文書館、博物館、美術館にとっては頭の痛い問題である。大気汚染物質(亜硫酸化物、窒素酸化物など)を革が吸収・蓄積して際立った酸性域になり酸性劣化が進んでしまうことが大きな原因であるが、革の製法そのものも、19世紀の中頃から、それまでの丁寧な作り方ではなくなり、最初から「長持ちしない」革になってしまった。
ガス灯が照明器具として使われるようになった時代からイギリスの図書館等はこの問題の解決のためにさまざな研究を行ってきたが、なかでも1980年代に英国図書館と英国皮革製造業者研究所(BLMRA=br /itish Leather Manufacturer's Research Association)の共同研究は、「長持ちする装丁用の革」の製造法として期を画すとされた。一般的に装丁用の革は諸物タンニン鞣しが行われるが、この共同研究では酸性大気汚染物質に抵抗力をつけるため、植物タンニン鞣しとともにアルミニウム塩による鞣しをプラスすることが提唱された。この新しい鞣し法による革は、英国内のタンナーにより実用化され、国の規格にもなった(br /itish Standard NO. 7451/1991)。
しかし、実際に装丁に使ってみるとさまざまな問題が生じた。確かに耐久性はこれまでの革を凌駕するのだが、アルミニウム塩を入れたことで、「加工性」が著しく悪くなってしまった。削ぐと革が伸びてくるし、濡れが悪いために型押しや折返し等をしようとすると反発してしまう。箔の載りも良くない---。こうしたことで製本家に毛嫌いされてしまった。
今回、英国図書館が中心になった共同プロジェクトは、The Development of Archival Quality Leather と名付けられ、長持ちし、加工性も良い装丁用革の開発を目指している。ELKEDE, Design & Technology Centre の I A Loannid 博士がコーディネーターになり、英連邦国、ドイツ、ギリシア、イタリアのタンナー、製本家、図書館、美術館等がパートナーになっている。研究内容は---
1. 現状のアセスメント=現在使われている皮革をサンプリングし、72種類のサンプルに対して物理・化学的物性、官能物性、耐老化性を調べる、既存の人口加速老化試験(STEPやENVIRONMENTが提唱しているもの)の妥当性
2. 手作業で製本やコンサベーションを行う専門家が妥当とする官能性との整合
3. セミ金属塩鞣し法と全く新規の有機鞣し法を使い、基礎・開発・セミ・バルク製造とステップアップする
4. 実際の製本やコンサベーションでの適合性
現在の研究成果は以下の通り。
1. 市販されている皮革のサンプル(72)を試験した結果、大気汚染への耐久性があるものは、アラム・トウド皮、パーチメントとベラム、後加工されていないナイジェリアン・ゴート、アルミニウムで再鞣しされた植物タンニン鞣し革。
2. 既存の老化試験はパーチメント、クロム鞣し皮、アラム・トウド皮の長期耐久性を予測できない
3. 規格化された物理試験を使った、製本用皮革の物性を定義するためのプロトコール(ドラフト)が作られた
4. セミ・バルク規模での生産がタンナーで行われており、共同プロジェクトに参加しているメンバー以外の、外部の関連機関等での評価が進んでいる
Towards a Longer Lasting Leather
http://www.bl.uk/aboutus/stratpolprog/ccare/projects/pastprojects/leatherproject/index.html
セミ・バルク規模でのChieftain Goatskinの生産を行っているタンナーのひとつ
http://www.hewit.com/
■1980年代までの研究については
木部徹「製本用革の劣化とその対策」、ゆずり葉 (37):1986/1, p.690-694
オランダ国立図書館を中心にした製本用皮革の研究は
http://www.kb.nl/cons/leather/index-en.html
2005年2月15日(火)
BLの製本データベースが画像付きでwebに
英国国立図書館(British library)は自館の蔵書から「歴史的製本」をピックアップし "database of bookbindings" にした。web で検索できる。
製本家、(旧)所蔵者、国、表装材料、色、装飾技術、製本スタイル等からも検索やブラウジングができる。画像はサムネイル(上の写真)→300×400ピクセル→1200×1500ピクセルと選べ、最大は極めて鮮明。現在は15世紀以降の製本だけだが、オランダ国立図書館とも協力し、時代や地域を広げてゆきたいとしている。
http://prodigi.bl.uk/bindings/welcome.htm

カテゴリーのトップへ
ページトップへ