
レーザー・クリーニングやインク焼けのような派手な話題にはならないが、世界中の紙媒体資料のコンサーバターがその完成を待ち望んでいる教材作成プロジェクトが順調に進んでいる。paper and water : a guide for conservators と名付けられたこの『手引き』は来年央にdvd付きで上梓される予定である。ドイツ、イギリス、オーストリア、アメリカ、イタリアのコンサーバターが協力し、2001年にスタートして現在まで製作を進めてきたものだが、この作業の中核を担う gerhard banik(department of paper conservation, state academy of art and design, stuttgart, germany) と irene br/uckle (art conservation department, buffalo state college, united states)が現在の進展状況を hand papermaking (vol.19, no.2)に寄せている。br/uckle
氏からのメール(私信)も合わせ、現状を紹介する。
紙そのものを作るときにも、そこに記された記録を保管するときにも、環境その他の原因で傷んだ紙媒体を治すときも、全て水(水蒸気も含む)が関連する。クルクル丸まった紙を平らにするときには水が必要だし、澱粉糊を溶くのも水だ。紙の酸性劣化とは酸が触媒となった加水分解だし、この酸のうち水溶性の酸(圧倒的な割合になる)を洗い流すのも水である。さらにアルカリを紙の繊維の奥深く入り込ませて不溶性の酸を中和しバッファにする脱酸性化処置も水性に勝るものはない。
水は、紙媒体資料のコンサベーションではこれほど身近で、ごく普通に使用しているモノであるにも関わらず、いやそれ故にか、紙とのインターフェイスが抜本的に考えられることはなかった。紙が濡れるときにどのような物理的・化学的変化が生じるのか、同じく紙が乾くときはどうか、オリジナルと、水に接して「修復」された紙媒体はなにがどのように違ってくるのか、「紙中の水分」というが、分子レベルではそれはどのような状態なのか、セルロースの繊維とどのように結合あるいは分離しているのか---等々、知っているようで実は知らないことが沢山ある。
2001年に開始されたこのプロジェクトは、アメリカ文化財保存修復学会(aic)を窓口にした
samuel h. kress 基金と、欧州連合(eu)のレオナルド・ダビンチ基金から資金援助を得て、iccrom、ipc、iada、icort 等からそれぞれ専門家を招聘し、教材の中身についてこれまで8回のセミナーを開催、練り直しを重ねてきた。紙媒体のコンサベーションに関わる者ならば誰もが認識しておくべき「水と紙」について、基本から徹底的に学ぶことで、より良いコンサベーションを実践することを目的にした教材である。
教材は印刷された本とdvdから成る。全体の構成は次の7章。コンサベーションの実技そのものではなく、それを支える理論を学ぶことになる。
1. 基礎:紙の基本的な構造、水の性質、純水の純粋なセルロースに与える影響。
2. 製紙:水との関わりを中心にした製紙について。
3. 環境の中の紙:湿度と紙の変化、紙の劣化と水。
4. 水性溶媒:コンサベーションで使う水溶性物。水の浄化、自イオン化とph、水性脱酸溶液の作り方と働きほか。
5. 水性処置:水性コンサベーション処置における水と紙の相互作用、濡れた時になにが起こっているか、効果的な洗浄とは。
6. 紙の乾燥:製紙の際の乾燥、コンサベーションの際の乾燥。
7. 水性コンサベーションの際の一般的な注意事項
図表を豊富に駆使するととともに、関連する動画をdvdで見ることができる。
gerhard banik, irene br/uckle, "paper and water: a guide for conservators",
hand papermaking (winter 2004, vol. 19, no.2), p.19-22.
hand papermaking
http://www.handpapermaking.org/
leonardo:water in paper
http://www.sabk.de/forschung/description_leonardo.htm
workshop at iccrom:paper and water - training of trainers pilot course
http://www.iccrom.org/eng/news/iccrom/2004/
meetings/03_01paper&water.htm
■濡らし wetting

アメリカの公共放送に関する非営利団体pbs(public br/oad-casting service)の科学ドキュメンタリー制作部門であるnovaはこの2月に、アメリカ国立公文書館が所蔵する『独立宣言』『憲法』『権利の章典』へのコンサベーションの記録 saving
the national treasures を放映したが、好評のためvhsとdvdに起こして頒布することになった。4月に頒布される。novaのサイトでも2分38秒の動画(quicktimeやreal
player等による)のプレビューを見ることができる。
この三つの文書は charters of freedom と呼ばれるもので、アメリカのいわば「出生証明書」である最重要文書。1954年に不活性ガスのヘリウムを充填した「密封容器」に収納され、以来そのまま、同公文書館の展示の目玉として公開されてきた。今回、同公文書館の二人のコンサーバター(m.
ritzenthaler, k. nicholson)が初めてこのケースを開き、劣化の有無とその原因を調べ、より負荷のない容器を開発し収納した。コンサーバターだけでなくエンジニア、化学者、物理学者を始め、容器に使われる金属やガラスの供給業者の協力をあおぎ、5年間、500万ドルをかけて2003年に終了したこのプロジェクトは「月にヒトを送る」のに等しいといわれたほどの困難を伴い、その扱いは特別な慎重さを要するものだったという。以前に収納された際の記録がほとんど残されていなかった。
いくつかトピックを拾うと---
※50年代に容器に充填されたヘリウムは、予想と違い、ほとんど抜けていなかった。
※パーチメント(皮紙)資料のため作業環境は温度20℃、相対湿度38~39%に維持。
※独立宣言には誰のものとも解らない手形があり、これを除去するかどうかで議論があったが、そのままにした。
※文書の皺ひとつ、汚れのひとつにいたるまで、現状の全てを記録した。50年後、100年後の比較のためである。
※国立公文書館に収められる前にインクはかなり退色していたが、その補彩はしなかった。記録物として貴重なものには"お化粧"的な処置を行うことはしない。
※端の破れた箇所に限って、パーチメントと違和感のない和紙を食い裂きにして補修した。
※一般に貴重な資料を扱う際には手袋をつけることが推奨されるが、手袋そのものが資料の端にひっかかり資料を破損することがある。また、微妙な手触りから判ることがある。今回の扱いは基本的に清浄な素手で行った。
※収納ケースはアルゴン・ガスを充填した特別な構造のものを新たに作った。
saving the national treasures
http://www.pbs.org/wgbh/nova/charters/
dvdの入手(予約)はアマゾンからもできる
http://www.amazon.com/exec/obidos/asin/b0000b1og1/
ref%3dnosim/ricksphotograpag/002-0645746-9284804

タイポグラフィ・ジャーナル『vignette』(ヴィネット)最新号は板倉雅宣著『12号--号数活字サイズの謎』。明治期にもたらされた近代活字のサイズは号数で区分されたが、基準値があいまいで、俗説や通説がまかり通ってきた。例えば、初号-二号-五号のサイズの関係は倍数関係であり、それぞれが44ポイント、22ポイント、11ポイントに相当するというものとと、42ポイント、21ポイント、10.5ポイントに相当するとするふたつの組み合わせがあった。著者の板倉氏は徹底した資料収集と実測を重ねて、なぜこうした混乱がもたらされたのかを五号活字サイズを中心とし、また初号サイズまでをふくめて明快な解答を与えることに成功した、という。
『12号--号数活字サイズの謎』
板倉雅宣 著
112頁 定価・本体2800円+税
朗文堂 発行
『vignette』(ヴィネット)は年間12冊程度の発行を目指した不定期刊行物。書物、メディア、活字に関する新鮮な論考を毎号、提供している。詳細は下記の朗文堂のホームページで。
http://www.ops.dti.ne.jp/~robundo/vignette.html
(社)日本画像情報マネジメント協会(jiima)はこのほど『大切なマイクロフィルムのためにぜひ知っておきたい--マイクロフィルム保存の手引』を刊行した。b5判、11ページ。頒価は300円。劣化を起こす要因、フィルムの構成、フィルムの異常現象、tacフィルム劣化のチェックと対策手引の簡易フロー、マイクロフィルムの保存と管理、参考文献から成る。それぞれ簡潔に要点をまとめている。改訂箇所は、最近利用が拡大しているカラーマイクロフィルムについて。
入手の問い合わせは下記へ。
http://www.jiima.or.jp
(有)資料保存器材が収集している紙媒体記録資料のコンサベーションのための文献の一覧(海外のみ)を更新しました。文献数は465。「製本」等の
book conservation と、日本語の文献については鋭意作成中です。原本はほとんどが紙媒体です。閲覧はどなたでも可能ですが、著作権(著作権法第31条)等に抵触しないかたちになりますので、希望者はメールでお問い合わせください。
フランスの国立機関 crcdg : centre de recherche sur la conservation des
documents graphiques の 文庫 (centre de documentation)や、イギリスの ipc : institute of paper conservation の chantry libr/ary には及びもつきませんが、せめて志は等しくし、日本のこの分野での研究や実践が開かれた場で公平に行われることの一助になればと思っています。
■cap文庫--紙媒体記録資料のコンサベーションのための文献
http://www.hozon.co.jp/cap/bib/cap_bibliography.htm

ニューヨーク近代美術館(museum of modern art, new york)は同館が所蔵するピカソの「アビニョンの娘たち」(1907)へのコンサベーション工程をwebで公開した。webのページ数にして20ページに及ぶ詳細なもので、絵としての歴史、ピカソの技法、地のキャンバスの構造、顔料等色材の分析、これまでに7回行われた手当ての解説、今回のコンサベーション処置、そして処置の責任者である
mihael duffy へのインタービューが収められている。なお、同サイトのコンサベーションのページには、ピカソの他に、モネの「睡蓮」(c1920)、ポロックの複数の作品へのコンサベーションの記録が掲載されている。
les demoiselles d'avignon; conserving a modern masterpiece.
http://moma.org/collection/conservation/
demoiselles/index.html

アメリカの地域コンサベーション・センターのひとつであるccaha(conservation
center for arts and historic artifacts)はこのほど15世紀の聖書へのコンサベーションをwebで発表した。コンサベーションの工程を静止画像で追える。他にパステル画、文書、写真、パピルス資料等の事例もある。
15th c. bible undergoes full treatment
http://www.ccaha.org/treatment_slides.php
英ノーサンブリア大学は来年春に第二回2回没食子インク会議を開催する。2000年に開かれた第一回会議(1st
iron gall ink meeting )に続くもの。インクや顔料あるいは紙中に含まれる鉄や銅などの遷移元素のイオン化による紙媒体記録資料の劣化を食い止めるための研究成果(分析技術、保管と展示、安定化、錆への処置法)が発表される。詳細な期日は未定。
the 2nd iron gall ink meeting
http://online.unn.ac.uk/faculties/art/humanities/
conservation/irongallink.htm
この問題の解決のために欧州の関連機関や研究者を結びつける契機になった第一回会議の成果が postprintとして入手できる。
postprints of the first triennial northumbr/ia conservation conference,
the iron gall meeting
http://online.unn.ac.uk/faculties/art/humanities/
conservation/noticeboard.htm#postprints
ポルトガルのコンサーバター協会apr (associacao profissional de conservadores-restauradores
de portugal) が年二回発行の機関誌"conservar patrimonio"を創刊した。文化財全般のコンサベーションに関わる研究や事例の発表の場になる。創刊号の論文はポルトガル語で書かれたものが主になっているが、その他の言語(英語、仏語、スペイン語)の論文も可、としている。論文にはポルトガル語と英語の要約が付く。創刊号には紙媒体関連の論文として「超音波ミストによるアート・オン・ペーパーの処置」ultrasonic
misting in the treatment of works of art on paper. by joao paulo dias)が掲載されている。水に流れるインク部を避けるように、水酸化カルシウムと水酸化ホウ素ナトリウムとの混合溶液による洗浄とフォクシング汚れの除去を超音波で発生させた霧で行う。
conservar patrimonio
http://www.arp.org.pt/revista/
erpanet(electoric resources preservation and access network)は2004年5月にオーストリア国立図書館で開催された『保存のためのファイル形式』(file
formats for preservation)セミナーの記録を全文、公開した。現在および将来にわたり安定した電子記録を提供し続けるためのファイル形式はいかにあるべきか---焦点となるこの問題をめぐって欧米から11名の専門家が集い、発表した。
erpanetは欧州委員会(european commission)が支援し、美術館・図書館・文書館の「記憶保存機関」、ソフトウェア産業、行政機関そして金融等の民間機関を統合した、全欧州ににまたがるコンソーシアム。
file formats for preservation
http://www.erpanet.org/events/2004/
vienna/index.php#papers
欧州委員会とはeuの主要機関の一つで、eu全体の主要な政策や法案を閣僚理事会に提案する役目を担う。
euでの電子的記録のアーカイビングについては
欧州におけるウェブ・アーカイビングの背景と全域プロジェクト, カレントアウェアネス,
no.275 2003年3月20日
http://www.ndl.go.jp/jp/libr/ary/current/no275/doc0008.htm
日本図書館協会資料保存委員会発行『ネットワーク資料保存』(第74号 2004.11)は「国会図書館で実施した大量脱酸処理の試行に関する委託調査結果について」(国立国会図書館収集部資料保存課)を掲載している。平成10年度、11年度に試行的に実施した乾式アンモニア・酸化エチレン(dae)法による脱酸処置済みの酸性書籍の安全性(発生する異臭ガスの特定と安全性、残留アルカリのトリエタノールアミンの安全性)と有効性(アルカリ域の維持と含有量の保持)を見るために、(財)化学物質評価研究機構に委託した調査の概要。
dae法処置済みの図書から発生するアセトアルデヒドだがガンとの関連性は明らかではない。ただし、一冊当たりのアセトアルデヒドの検出量は0,01μg/gで、処理数総量の4,315冊からは0.43g、書庫内の濃度は0.13mg/m3になり、許容値濃度(25ppm=45mg/m3)を下回る。健康に影響を与える濃度ではないと推計される。狭い空間にまとめて置いた場合は許容濃度を超える場合があり、また処理直後は発生濃度は高いと予想される。
トリエタノールアミンの安全性につては、毒性が弱く、低濃度であり毒性が発現することはない。(ページをめくるなどで)図書から指を経由して体内に入る場合でも、影響が現れる量が人体に入ることはないと考えられる。
一方、有効性については、phは7.2~9.0のアルカリ域に入る。トリエタノールアミンの含有量は、従前(平成12年度のガスクロマト法による)の測定値と、今回同じ書籍を測定(高速液体クロマト法による)と比較すると50~68%に低下しており、経時的変化とともに物理的性状の変化も定期的に測定する必要がある。
今後は、国立国会図書館での大量脱酸処理の評価基準の策定を視野に入れながら、最近の大量脱酸技術の進歩や各国における実施状況の調査を行う。
dae法による大量脱酸については---
dae脱酸処理法の実用化と実績(日本ファイリング株式会社 山本尚彦)
http://www.hozon.co.jp/cap/con-con/archives/
yamamoto01.htm
(文責:木部徹)

紀年(868年)のある最古の木版印刷物として知られる敦煌出『金剛経』(diamond
sutra)をインターネットを介してディスプレイ上で開くことができる。上の写真のような画面で右側の軸にカーソルのポインターを置くと、するすると巻き取られてゆく。音声での説明もある。英国図書館(br/itish
libr/ary)が提供している。
同図書館は所蔵する記録物のうち世界遺産として認知されているもののデジタル画像を作成し、ウエッブで公開しているが、「静止」画像のパノラマではなく、ショックウェイブ(shockwave)というソフトを使って「動画」として見ることができる。turning
the pages と名付けられたこのページでは金剛経の他にも、中世写本の至宝『リンディスファーン福音書』等の「ページを捲る」ことができる。ソフトのshockwave(無料)が手持ちのパソコンに入っていなければ、インストールするかどうか聞かれる。
turning the pages
http://www.bl.uk/collections/treasures/digitisation1.html
文化財保存修復学会第27回大会のプログラムがこのほど発表された。会場は東京芸術大学。紙媒体資料関連の発表は次の通り。
■口頭発表
・セルロース誘導体を用いた紙資料の強化法について(高知県立紙産業技術センターほか)
・羅文紙復元のための模造実験(昭和女子大学)
・古糊様多糖類の調整とその物性について(東京文化財研究所ほか)
■ポスターセッション
・資料の保管・展示に使用する素材の材質調査における熱分析法の可能性(国立民族学博物館ほか)
・文化財保管・収納に用いられる木材の揮発性有機化合物(voc)とその文化材質への影響
-- スギ材とキリ材について(東北芸術工科大学ほか)
木質系収蔵庫内装材の揮発成分とその文化財質への影響(東北歴史博物館ほか)
・長期保存用写真包材の経年劣化による写真画像に与える影響に関する報告(千葉大学大学院ほか)
・歴史的建造物としてのフランス国立図書館における温湿度環境と微生物劣化除去の現状(吉川也志保)
・臭化メチル製剤燻蒸による紙への臭素残留について(東京文化財研究所)
・新燻蒸剤の伝世資料への影響について--彩色資料と近代文書への記録素材を対象にして(元興寺文化財研究所ほか)
・近世史料の紙質調査データベース構築の意義(国文学研究史料館)
・印刷物と資料保存について -- 明治から大正期における新聞紙の形状に関する計測調査(元興寺文化財研究所)
・感光性物質を用いた紙製複写画像資料の保存について -- シアノタイプ、ジアゾタイプの長期保存に向けて(東北芸術工科大学)
・市販アルカリ糊化製澱粉糊の紫外線による変色(京都造形芸術大学ほか)
・「かぜひき紙」現象の発生原因について(京都府京都文化博物館ほか)
・復元補修紙改質のための自動打ち紙装置の開発(東京大学大学院)
・近現代紙資料にみられる酸性劣化とインクコロージオンの研究(元興寺文化財研究所)
。テープ痕は除去できるか -- 紙に浸透した粘着テープ接着剤の除去方法(斉藤敦)
・挿入法における紙の強制劣化試験 -- 色変化におよぼす無機イオンの移行の影響(東京芸術大学大学院)
・各種接着剤の劣化および黴性の調査(吉備国際大学)
・生麩糊原料の寒晒し -- 発酵性澱粉の水替えによるph変位(島田錦珪堂ほか)
大会参加登録締め切りは4月25日。参加費は会員(一般)が3,000円、非会員(一般)が6,000円ほか。
問い合わせ等は以下から
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsccp

カナダ文化財保存修復研究所(canadian conservation institute)はこのほど
"preservation of electronic records: new knowledge and decision-making"
を出版した。2003年秋に開催された同名の国際シンポジウムの記録。同シンポジウムは図書館、文書館、美術館、博物館に「収蔵」される電子的な記録の価値や真正性の評価と判断、記録として保存する場合の戦略、メディアの特性(劣化、保管、保存性、被災後の回復性ほか)等について、各界の専門家が論じた。
preservation of electronic records: new knowledge and decision-making
isbn 0-662-68620-9
50米ドル
以下から入手できる。
https://www.cci-icc.gc.ca/bookstore/index-e.cfm

世界的な手漉紙の研究者であり作者として日本でも知られている timothy barrett
が指導するアイオワ大学 center for books の手漉紙研究グループはこのほど、『手漉紙の人間工学』
というビデオを製作した。同グループ長の lynn amlie が四年間かけ、繰り返しの手作業に伴うストレスが生む害を避けるためにはどうすればよいかを、歴史的な製紙と現在の製紙を比較検討するとともに、人間工学研究者、セラピストを動員して研究した成果。
the ergonomics of hand papermaking は25分、dvdが 30ドル、vhs が 20ドル。
このビデオは center for books の手漉紙教育ビデオ・シリーズのひとつ。他に、japanese
style papermaking i ~iii、western papermaking i ~ ii がある。
問い合わせは下記で。
http://www.baph.org.uk/archive/news.htm

製本とブック・アートのための新しい e-journal "bonefolder" が創刊された。book arts web を主宰しているpeter d. verheyen(シラキュース大学図書館特別コレクション保存とデジタル・アクセス長)が編集長を務める。初号(fall
2004)の内容は以下の通り。
the study of bookbinding by pamela barrios, bookbinding education in north
america by jeffrey altepeter, the transcendental drum leafr by timothy
ely, conservation and tools: an inquiry into nature and meaning by jeffrey
s. peachey, a traveling punching jig by donia conn,
無料でダウンロードできる(pdf 1.3m)。
http://www.philobiblon.com/bonefolder/
vol1no1contents.htm
ica(international council on archives=国際公文書館会議)の建築物と設備委員会(committee
on archival buildings and equipment)は各国の公文書館の設計・建築に的を絞った調査を行い、実例を
building case study としてホームページで公開している。
調査フォームに盛り込まれているのは、場所、住所、建設費用、建物の構造、書庫・閲覧室・事務所などの広さ、利用者席数などの簡単なものだが、自館の説明の中には書庫の温湿度設定や空調設備についても言及している館もある。
現時点で掲載されているのは、オーストラリア、スコットランド、英国、スイス、フランスの6カ国、8つの公文書館の実例で、それぞれをpdfでダウンロードできる。
http://www.ica.org/biblio.php?plangue=eng&pbr/owse_field=
series&pbr/owse_value=12
熱帯地域に小規模な公文書館を建設するのは、気候に由来する過酷な環境を考えると、建設や維持にかかる費用も含めて、難しい課題が山積する。オーストラリア国立公文書館の
ted ling がまとめたこの『仕様と解説』は、100坪程度の床面積(うち書庫は70坪程度)の小規模な公文書館を例にして、できるだけ低予算で建てるための仕様を述べる。書庫等の設備の他に、環境の管理・計測、照明、防火、防虫・防かび、セキュリティほか。pdf(87kb)でダウンロードできる。
ted ling, building a low-cost archives in the tropics: specification and description ,parbica, 2003
http://www.ica.org/biblio.php?pdocid=98

nara (アメリカ国立公文書館/記録管理庁)が1993年にカレッジパークに設置した第二公文書館(通称
archives ii )は、最新鋭技術を投入し、「最良の保管・保存・活用を提供する」機関と自負されているが、naraのサイトには、この目的のために、建物および設備がどのように作られているかを述べた案内が掲載されている。保管環境(温度、湿度、空気浄化)はもちろん、壁や床や棚の材料、それらへのコーティング塗料の質にまで及ぶ細かい仕様が載っている。採用不可の材料としては、アスベスト、硝酸セルロース系塗料や接着剤、ポリウレタン系塗料やフォーム、硫化水素やメルカプトンの発生源になるゴムや顔料、粘着テープ、塩化ビニル、ホルムアルデヒドの出る合板--等々。また周密棚の仕様、スプリンクラー等の防火設備、電子技術を駆使したセキュリティ・システムにも言及。
archives ii, national archives at college park: using technology to safeguard
archival records nara technical information paper number 13 (1997) pdf
(1.3m)
http://archives.gov/preservation/storage/facilities.html
東北芸術工科大学芸術学部美術史・文化財保存修復学科、京都造形芸術大学芸術学部歴史遺産学科文化財・保存修復コースの平成16年度の卒業・修士論文の発表会が2月18日と23日に両大学でそれぞれ行われた。紙媒体のコンサベーション関連ではスギ・キリ箱からのvocの影響、シアノ・ジアゾの設計図面の保存、市販澱粉糊の劣化等で興味深い成果が得られた。
●文化財保存箱用木材からの揮発性有機化合物(voc)とその文化財材質に与える影響 ~スギ材とキリ材について(東北・美術史・文化財保存修復学科 植竹雅子)=スギ材は天然乾燥の心材と辺材、人口乾燥の心材と辺材の4種類、キリ材は天然乾燥材1種類が対象。密閉瓶に以上の木材片と材質試験片としての顔料(鉛泊、蜜陀僧、緑青)、金属片(鉄、銅、鉛)を入れたものを40℃恒温槽に一ヶ月放置、色差計測、有機成分の定性・定量分析した。その結果、スギ材、キリ材ともに木材からの揮発成分により一部の材質の変質が確認された。また変質の度合いはtvoc(総揮発性有機化合物)量の大小ではなく、特定の成分の量に由来することが推測された。
●感光性物質を用いた紙製複写画像資料の保存について ~シアノタイプ、ジアゾタイプに関する基礎的研究(東北・芸術文化専攻保存修復領域 小谷尚子)=大正・昭和初期の青写真(シアノタイプ)、青焼き(ジアゾタイプ)の図面資料を対象に、山形県郷土館「文翔館」で調査。シアノタイプの色調による変化はほとんど見られず、ジアゾタイプは地の色が薄く褐色化しているものなどが確認できた。また昭和後期のジアゾタイプは大気に触れる部分が黄変し、紫外線対策の他大気からの影響を考慮した保存が望まれる。また両タイプの試験片の強制劣化による退色傾向を見るために紫外線劣化、加熱劣化、ラジカル照射による劣化を行った結果、シアノタイプはいずれにおいても変退色しにくく、ジアゾタイプは現像法の違いにより、湿式は退色しやすく、乾式はしにくい---等の知見が得られた。
●生麩糊と市販澱粉糊の劣化の比較 ~紫外線による変色に焦点をあてて(京都・芸術学部歴史遺産学科文化財・保存修復コース 堀口智代)=澱粉から煮た生麩糊と、市販のフエキ糊、ヤマト糊を対象に、糊自体、和紙を接着させたもの、和紙に塗布したもの、和紙自体に400時間、紫外線を当て、変色を見た。市販糊のうちフエキ糊は生麩糊の3倍、ヤマト糊は1.8倍、変色した。和紙を接着したものも(市販糊は)著しい変色が見られた。さらに変色の原因としてアルカリ糊化法による市販糊は酸により中和されるが、この時の硝酸が変色の要因ではないかと推測される。光の当たらない暗所に保管し無紫外線蛍光灯による展示等に気をつければ市販糊を使ったものも変色を避けられるのではとし、保管環境や展示環境を考慮して使用、不使用の判断をしてゆくのがよいのでは、としている。
京都造形芸術大学 芸術学部歴史遺産学科文化財・保存修復コース
http://www.kyoto-art.ac.jp/college/geijutsu/
05course/rekishi/bunka.html
東北芸術工科大学 美術史・文化財保存修復学科
http://www.tuad.ac.jp/guide/bunnkazai/index.html

ヘンリク.イプセン (henrik ibsen)の戯曲草稿『カティリナ』のインク焼けへのコンサベーションをノルウェイ国立図書館のホームページが掲載している。イプセンは戯曲『人形の家』の作者として世界的に知られているノルウェイの国民作家。『カティリナ』は1850年に出版された。戯曲家としてのイプセンのデビュー作だが、草稿はイプセンの戯曲の手稿として唯一残されてる貴重なものである。
それぞれ16葉で構成される2冊のノートに書かれた草稿は、インクで両面にペン書きされている。挟み込みも加えると全部で三種類の、比較的良質の紙(リグニン無しの綿紙と麻紙)が使われている。酸性度を示す
ph は 3,7 ~ 4,3、インク部は 3,6 ~ 3,9
と高い。また紫外線照射による目視でも蛍光発色が確認され、電化した鉄イオンを検知する指示薬
(bathophenanthroline)による検査でもピンクに発色するというように没食子インクが使われていることは明らかである。
それぞれ16葉で構成される2冊のノートに書かれた草稿は、インクで両面にペン書きされている。挟み込みも加えると全部で三種類の、比較的良質の紙(リグニン無しの綿紙と麻紙)が使われている。酸性度を示す
ph は 3,7 ~ 4,3、インク部は 3,6 ~ 3,9
と高い。また紫外線照射による目視でも蛍光発色が確認され、電化した鉄イオンを検知する指示薬
(bathophenanthroline)による検査でもピンクに発色するというように没食子インクが使われていることは明らかである。
.
しかし基材の紙が丈夫だったこと、インクの組成が比較的良質だったことが幸いし、インク焼けの被害は、150年後の現在でも目に見えて酷いということはない。そこで、この草稿にはフィチン酸カルシウムによる抗酸化処置等をせずに、アーカイバル容器による小保管環境の形成、所蔵庫の温湿度の安定化(18-20℃、46-48%rh)と大気汚染ガスのフィルタリング(窒素酸化物、二酸化硫黄、オゾンを除去)で大環境を形成することを優先させた。ただしデンプン糊で貼ってある挟み込み草稿は、これを酵素入りの湿布(albertina-kompresse)
を使い本体から外した。
資料への通常のアクセスは電子的なファクシミリ画像で保証されることになる。
詳細は以下に。
the
conservation of henrik ibsen´s debut play catilina
http://www.nb.no/html/engelsk_konservering_catilina_.html
インク焼け(ink corrosion)とは?
condition rating for paper objects with iron-gall
ink.
http://www.icn.nl/dir003/icn/cmt/publicatie.nsf
/url/082943d0a170c909c1256d8000384a91/$file
/icn_info_01_condition_rating_en.pdf
pdf
(380kb)
■例えば我が社では
遠山郁三「日誌」への保存修復手当て
画像でのpdf
(780kb)

2005年度の英国文化財保存修復賞(2005 conservation
awards)の募集が始まった。11月に各賞が決まり英国博物館で授与式が行われる。この賞は文化財のコンサベーションの興隆に寄与する目的で作られた基金(pilgrim
trust)から、各分野での英国の文化財保存と修復に関わり、貢献したコンサーバターやプロジェクトに対して毎年贈られる。特に2002年から、元ビートルズのメンバーだったサー・ポール・マッカートニーも資金を提供し後援者となったことで一躍内外に知られることになった。大賞に15,000ポンド、学生および教育機関に10,000ポンド、デジタル保存に5,000ポンドなどだが、特に2005年からはコレクションのケアに対しての
awards for collections care (10,000ポンド)が新設されたのが注目される。詳細は以下に。
http://www.consawards.ukic.org.uk/
bbc
が伝えるポールの支援
http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/
arts/4038851.stm
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http://www.paulmccartney.com/main.html
■Q&A :「レンジでチン!」の虫退治?

『ほぼ日刊』の読者からの質問にお答えします。他の読者の方も興味がありそうな内容ですので、以下に質問者のご了解を得て掲載します(ご質問は要約しています)。
ご質問は「電子レンジで虫退治をすると良い、と中野三敏先生(国文学者)が書いておられます。紙にも影響はない、ということなのですが、レンジでチンすることの是非について述べたものはないでしょうか?」というものです。
中野三敏氏の「レンジでチン!」の話は、おそらく次のことを指しているのでしょう。
「死番虫の駆除で絶対確実なのは、ラップして電子レンジで50秒以内のチンをやること。【中略】 ちなみに、同僚の電子工学の先生に尋ねたら、レンジの熱によって燃えることはあっても、和紙の組成に異常をきたすことは、常識的にはあり得ないということであった。」 中野三敏:『江戸文化評判記----雅俗融和の世界』(中公新書、1992),
p.182。
とりあえず【中略】の中身ですが、ここで著者は失敗談を披露しています。レンジにかける時間を一分半で設定したら火を出したということです。
いま現在も中野氏がチンを実行しているかどうかは別にして、この本の執筆時に中野氏がチンしたのは近世の板本(と中野氏は表す)で、基本的に紙は楮、イメージ材料は墨でしょう。こうした日本の「強い紙とイメージ材料」で構成された紙媒体をマイクロウェーブに曝したときの紙ほかの変化がどのようなものなのかは、おそらく研究されたことがないと思われますのでわかりませんが、高い熱が加わることによる影響がないとは、「常識的に」、言えないのではないかと思います。
『ほぼ日刊』のネタ元のひとつである conservation
distlist
というメーリングリストでのやりとりを見ますと、ほとんどの研究者が、放射線照射によりセルロースの劣化が生じるとしています。また、ウェッブで読むことができる
the invasion of the giant spore
は、虫ではなくカビ退治について述べたものですが、米国ジョンズ・ホプキンス医学研究所とチェコ国立公文書館でのγ線照射による実験の例を引いて、カビ退治にはなるが、装幀の革と接着剤が柔らかくなるという影響と共に、紙の繊維の内部構造を壊す(耐折強度が大幅に低下する)として、その使用を奨めていません。
the invasion of the giant spore.
http://palimpsest.stanford.edu/byauth/nyberg/spore.html
ということで、本の虫(カビも)退治に電子レンジでチン!することは避けた方が賢明ではないでしょうか。
(文責:木部徹)

日本写真学会はこのほど機関誌・日本写真学会誌特別号として『写真と文化財との関わり』を出版した。古写真あるいは埋蔵文化財の記録写真は博物館・美術館等に膨大に保管されているが、その保存と活用が短絡的に「デジタル化」一辺倒になるなかで、文化財としての写真資料の適切な保存と活用の指針を提示しようというもの。写真収蔵環境(清里フォト
アート
ミュージアム)、劣化フィルムの保存(奈良市写真美術館)、青焼き(ジアゾ)複写図面の保存(東北芸術工科大)、正倉院・聖語蔵経のカラーcd-r化(富士写真フイルム)、ガラス乾板の保存と復元(東京大学史料編纂所)等が掲載されている。
『写真と文化財との関わり』
isbn
4-902868-00-8
a4判、156頁
2,500円(送料340円)
入手の問い合わせ、内容等の詳細は以下に。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/spstj2/panf.pdf