
日本図書館協会・資料保存委員会は10月と11月に、資料保存セミナーを開催する。このうち、10月10日(火)は、8月20~24日のIFLAソウル大会の資料保存関係会議、およびそれに先立ち8月16・17日に国立国会図書館で行われたプレコンファレンス「アジアにおける資料保存」の報告会。また、11月21日(火)はイェール大学図書館保存部長のロバータ・ピレット女史を迎えての「図書館における保存管理者の役割」。いずれも18時30分から、同協会(東京都中央区新川)の会議室で。無料。詳細は以下のページに。
資料保存委員会お知らせ
平成18年度・第12回国宝修理装こう【さんずいに黄】師連盟定期研修会が11月11日(土)に京都府民総合交流プラザで開催される。
プログラムは、基調講演『料紙に残された情報ー古写経を中心にー』、『古絵図の持つ情報を中心として』、事例報告は『情報の復旧(ケーススタディ:応庵和尚の修理)』、 『天平経の修理ー情報の発見と残し方ー』、『焼経(藍紙華厳経)の修理ー方針と処置ー』ほか。研修会は無料、参加申し込みはFAXで10月6日までに。詳細は下記ページに。
平成18年度 第12回 国宝修理装こう師連盟定期研修会プログラム
紙媒体記録資料のコンサベーションのための雑誌 Restaurator (Vol.27, 2006, No.1)は以下の論文を掲載している。
Marta Vilela, Luisa M. Ferreira & Joao Vieira: Discolouration of architectural
photoreproductions: causes and prevention.(p.1-8)
設計図面などに多用されているジアゾコピーの保存上の問題は変色(赤みがかったピンク色~オレンジ色)である。間紙をいれても、これへの色移りや、間紙を貫通して別の紙への色移りが生じる。原因はジアゾコピーを作る際の結合剤である。間紙をアルカリ性にするとさらに変色が促進するのでアルカリ性紙は避けるべきだ。
Lorena Botti et al.: The effect of sodium and calcium ions in the deacidification
of paper: a chemophysical study using thermal analysis.(p.9-23)
水酸化カルシウム等とともに水性脱酸性化剤として多用されてきたボラックス(Borax:ホウ酸ナトリウム)だが、これまではナトリウムの存在が処置後の紙の重合度の低下や黄ばみの原因とされてきた。しかし、今回の熱分析法で、ホウ酸カルシウムでも同じ結果がでた。ナトリウムではなくホウ素がその主因だった。
B. Havlinova et al.: Studying the ageing of Arylmethane dyes by UV-VIS
Spectroscopy. (p.24-34).
メチル・バイオレット等に代表されるアリルメタン染料6種類のUV-VIS分光分析による劣化メカニズムの解明。
Martina Cedzova: Patents for paper deacidification. (p.35-45)
1930年代から今日までの脱酸性化技術関連特許(特許としては出されていないが重要なものの一部含む)の一覧。
Meta Cernic Letnar, Stanka Grkman & Jedert Vodopivec: The effect of
surface coating on the stability of leafcast paper. (p.46-65)
リーフ・キャスティング(漉き填め)処置の際に用られる各種のコーティング剤(デンプンやセルロースエーテル類)15種類の比較試験。化学的、物理的、機械的、光学的な特性と、実際の作業の適用しやすさなども見た。小麦粉デンプン糊と低重合度のメチルセルロースで極めて良い結果が得られた。
(要訳文責:木部徹)

創元社の「知の再発見」双書 のひとつとしてこのほど『紙の歴史―文明の礎の二千年 』(原書名:Le Papier, Une aventure au
quotidian)が出版された。著者はフランス国立科学研究センター現代文献研究所(ITEM: L'INSTITUT DES TEXTES ET
MANUSCRITS MODERNES)所長のピエール-マルク=ドゥ・ビアシ(Pierre-Marc de Biasi)、日本語訳監修は丸尾敏雄(紙の博物館学芸部長)。
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インターネットと電子データ隆盛の時代、紙は歴史的使命を終え、情報メディアとしての重要性を急速に失うであろうと予言された。しかし21世紀の今日、紙は生産量を伸ばし続け、その役割も用途も拡大している。本書は中国における紙の発明以来の歴史を探求し、人類の知的営為の中心にありつづけた紙の文化・歴史をわかりやすく伝える。工芸品としての紙、工業製品としての紙など紙の多様性と可能性もあますことなく伝える。紙のすべてがわかる本。(版元による内容紹介のママ)
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『紙の歴史―文明の礎の二千年』
ISBN:4422211897
190pp、180×130㎜
版元:創元社
・ビアシ,ピエール‐マルク=ドゥ【著】〈Biasi,Pierre‐Marc de〉・丸尾敏雄【監修】・山田美明【訳】
[B6 判] NDC分類:585.02 販売価:\1,680(税込) (本体価:\1,600)
第1章 アジアの紙
第2章 紙の道
第3章 ヨーロッパの製紙所
第4章 機械とパルプによる工業化の時代
第5章 新たな時代の紙
資料編
紙の歴史―文明の礎の二千年
■カラー画像を抱負に使った美しい本。歴史を辿り、未来を占うのに最良のテキストといえる。5章の「新たな紙の時代」には、紙と複製、有害な酸、保護政策、耐久紙の規格--の項があり(p.144-149)、簡潔かつ充分な内容になっている。些少の誤訳(例:p.31の「袋綴じ」は「折帖」であろう)はしかたがないが、p.149
のISO 9706(ISOの耐久紙規格)に関する説明の「アルカリの残留率は2%の炭酸カルシウム中に含まれる量より小さいこと」は「アルカリ残留率は炭酸カルシウム換算で紙の重量比の2%以上であること」の間違いである。
慶應義塾大学は貴重書のデジタルアーカイブに関する研究と実践のプロジェクト 「HUMIプロジェクト」の発足10周年を記念して、10月21日(土)に同大学三田キャンパス(港区)でシンポジウム「HUMI
プロジェクトの10年」を開催する。
グーテンベルク聖書の収蔵を契機に設立した同大学のHUMIプロジェクトはこれまで、貴重書のデジタルアーカイブに関する研究とデジタル化の実践、高精細デジタル画像を用いた書物学研究の拠点として活動を続けてきた。その10年のあゆみを振り返り、いまの活動を紹介し、これからの展開について話し合う--としている。
「貴重書の活字パターンの自動解析―文字認識から研究支援へ」、「初期印刷本とXML―貴重書の実践的コンテクスト化」、「奈良絵本のデジタル化と研究」等が発表される。参加は無料。詳細は以下のページで。
http://www.humi.keio.ac.jp/humi10/index.html
第14回和紙文化講演会「暮らしを彩る和紙の加工--手漉き紙の多彩な展開」が12月10日(日)に昭和女子大学グリーンホール(東京・世田谷区)で開催される。内容は以下の通り。
和紙のいろいろ (丸尾敏雄:紙の博物館)
ちりめん紙 --しわの生む魅力 (五十嵐久美:元 紙の博物館学芸員)
染色用の型地紙について (水上嘉代子:遠山記念館)
江戸からかみの復興を願って (伴充弘:江戸からかみ共同組合代表)
和紙の多彩な用途と加工技法 (久米康生:和紙文化研究会代表)
参加費:3,500円
申し込み方法:参加費の事前払い込みによる受付。郵便振替用紙に住所、氏名、電話、FAX番号、専門分野もしくは所属を記入の上、郵便振替口座:00170-402506
和紙文化研究会 宛に。締め切りは11月230日(木)
事務局:東京芸術大学大学院美術研究科保存科学気付 第14回和紙文化講演会事務局 稲葉政満、特設携帯電話:090-1790-9208

ユネスコの「世界の記憶」プログラム(Memory of the World Programme)のアジア/太平洋地域委員会(Asia/Pacific
Regional Committee for the Memory of the World Programme=MOWCAP)の正式なウェッブサイトがこのほど発足した。委員会そのものは1998年に発足している。同地域の43ヶ国の図書館や文書館等が保有する記録資料のうち、特に稀少で、劣化がすすみつつあるものの保護とアクセスの保証を、ユネスコの「世界の記憶」遺産への登録等を通して促進するのが目的である。
Asia/Pacific Regional Committee for the Memory of the World Programme
http://www.unesco.mowcap.org/index.htm
8月16、17日の両日に国立国会図書館で開催された「アジアにおける資料保存--国際図書館連盟(IFLA)大会プレコンファレンス」の概要の報告が、同図書館の「カレント・アウェアネスーE」に掲載されている。特に二日目のテーマ「マイクロ化と電子化」では、電子化は利用のため、マイクロ化は保存のためというこれまでの手法から、マイクロフィルムを最終的な保存形態とせず、いきなり電子化を進め、電子情報として「保存」する、という取り組みが参加者の関心を集めた、としている。
http://www.dap.ndl.go.jp/ca/modules/cae/item.php?itemid=553
なお、当日は参加者には各発表の日本語抄訳が配布されたが、ウェッブでは全文のペーパーが英文でのみ以下のページに掲載されている。
http://www.ndl.go.jp/en/iflapac/preconference/program.html
第7回 Indoor Air Quality (IAQ)の国際会議が11月15-17日にドイツのブラウンシュヴァイクで開催されるが、このほどプログラムが発表された。同会議は博物館・アーカイブの資料やヒトに与える屋外大気環境汚染物について、その研究の現状が毎年報告されるが、今回は各国内や国際的な規制を踏まえた屋内大気汚染物との関連や資料の劣化メカニズム、アセスメントの方法などが採り上げられる。日本からも関根嘉香・東海大学理学部化学科助教授がS. F. Watts(Oxford Brookes University)と共同で、Indoor air standards in Japan for healthy living environment (健康な生活環境のための日本の屋内環境基準)について発表する。
The 7th Indoor Air Quality 2006

英国ナショナル・トラスト(National Trust)はこのほど、歴史的な建造物と、そこに収蔵されている各種文化財の保存のために、日常的に職員が行う掃除や環境管理などの業務のマニュアル The
Manual of Housekeeping を改訂、出版した。コレクションだけでなく、建物の外装や内装そものもの文化財的な価値がある場合には、環境管理ひとつとってもみても抜本的な対策が難しい場合が多い。英国ナショナル・トラストは多年に渡って国内だけでなく、海外も含めた数百の施設での実践例と、最新の科学的な知見を踏まえ、マニュアルとしてまとめた。
The National Trust Manual of Housekeeping
Published by Elsevier
£49.99
Hardback format, 954 pages
. ISBN: 0750655291.
http://books.elsevier.com/uk//conservation/uk/subindex.asp?maintarget=&isbn=
0750655291&country=United%20Kingdom&srccode=&ref=NT05&subcode=&head=
&pdf=&basiccode=&txtSearch=&SearchField=&operator=&order=&community
=conservation
今年5月にワシントンDCで開催された US-UK Digital Preservation Workshop の詳細な報告のドラフトがウェッブで公開された。報告者はMichael Day(UKOLN, University of Bath)とHelen Hockx-Yu(JISC Executive, King’s College Londonwebbude)。HTMLとPDFのどちらでも読むことができる。アメリカとイギリスの専門家が一堂に会したこのワークショップは、両国だけでなく世界の報保存機関におけるデジタル記録の保存の最前線が概観できるものとして注目されていた。最終報告は International Journal of Digital Curation誌に掲載される。
http://www.ukoln.ac.uk/preservation/drafts/jisc-ndiipp/

オランダのアムステルダムを本拠にしたEuropean Archive が9月26日に正式に発足する。アメリカに本拠を置く Internet Archive
と協力し、ウエッブ・ベースでの動画、音響記録、ウェッブ・サイトそのものの三つを主にしたコンテンツを収集・保存していくことになる。現在は試験期間であるが、22の動画、44の音響記録、2つのウェッブ・サイトがそれぞれ収集・公開されている。
European Archive
東京都教育委員会は8月24日、「都立図書館改革の具体的方策」を策定、公開した。現在の都立三館を、中央館と多摩館に集約し、日比谷図書館は廃止、また多摩館に「東京マガジンバンク」(最終的には約1万6000種類、約124万冊を保有)を開設する等の具体策が講じられることになる--等々が注目されているが、「資料の保存」に関する項目では「4. 収蔵対策」(p.49-50)として、貴重資料を除く一般の資料の保存年限を「原則として百年」とし、発行後30年を経過した資料の一部や、複数所蔵する資料は一点を残し除籍する、と明記している。「研究図書館」の性格も持つ機関が、保存年限を明確にし、公にしたのは初、と思われる。
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4 収蔵対策
現状と課題
都立図書館は、広域的自治体の図書館として都民の多様なニーズに応えるため、広範な資料の収集を行うとともに、長期にわたる資料の保存に努めてきました。平成16
年度末現在、都立図書館の収蔵能力は312 万冊、一方収蔵状況は288 万冊(雑誌等は図書換算冊数)であり、限られた書庫スペースでは数年後に満杯になってしまう見込みです。都立図書館に課せられた役割を適切に果たしていくためにも、貴重資料の保全を図るとともに、今後の収蔵対策を早急に検討する必要があります。
改革の方向
資料の保存に対する基本的な考え方を明確にしたうえで、短期的な取組みとして書架の増設、複本の除籍などにより、収蔵能力の向上を図ります。また、中期的な対策として、資料の媒体変換等の収蔵施策を行うとともに、書庫棟の建設を推進します。長期的には、将来の中央図書館の改築時には、都立図書館として目標とする収蔵能力を備えた新館の建設を目指します。
(1)資料の保存に対する基本的な考え方の明確化
ア 保存年限の設定
① 都立図書館の資料については、利用者の調査研究に資するため、長期保存することとし、原則として100 年間保存します。
② ただし、特別文庫資料(江戸後期から明治初期の貴重資料)や東京資料などについては、後世に伝えるため、永年保存とします。
③ また、発行から30 年をめどに点検を行い、内容が古くなり、必要度が著しく劣ったものについてはこの時点で除籍します。
イ 中央図書館・多摩図書館の複本精査の徹底
都立図書館の図書資料は、中央図書館と多摩図書館の機能分担により一点収集を原則としましたが、まだ複本が残っています。複本の精査を徹底し、除籍再活用を進めます。
(2)短期的な収蔵対策
ア 中央図書館のワンストップサービス化による施設の効率的な活用により、各階にある書庫の収蔵余力を高めるよう努めます。
イ 中央図書館や多摩図書館の各々の書庫にある事務用スペースの見直しや、多摩教育センター内のスペースの活用により、書庫としての機能を高めるよう努めます。
これらの措置を講ずることにより、平成30 年度末の収蔵能力は340 万冊に増加します。平成30 年度末には、収蔵冊数は341 万冊(雑誌等は図書換算冊数)になることが想定され、収蔵余力が不足することになりますが、それまでの12
年程度の間、資料増に対応できます。
(3)中期的な収蔵対策
ア 媒体変換の検討
年鑑・年報等の統計数値を中心とした資料など、原本による保存が絶対要件ではないものについては、費用対効果を踏まえながら、マイクロ化など媒体変換を検討していきます。
イ 書庫棟の建設
平成30 年度以降の収蔵スペースを確保するため、書庫棟を新たに建設する計画を推進します。
(4)長期的な収蔵対策
将来中央図書館の全面改築時には、都立図書館の機能を十分に果たすことができる規模の収蔵能力を備えた新館の建設を目指します。
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アメリカ議会図書館(Library of Congress=LC)は資料保存分野での試験研究力を見直し、向上させるために200万ドルの資金を投入する。同館の副館長であるDeanna Marcum(前・図書館情報資源振興財団会長)の「あらゆるフォーマットの保存のために必須の措置」という強い希望を反映したもの。他の研究図書館がこの部門への投資を行うことが難しい以上、国の中央機関としての議会図書館が率先して、その責任を果たさねばならないという。この資金投入により、書籍等の紙メディアだけでなく、新しい非紙資料に使われている材料の分析や試験、新しい技術の開発、新しい規格の制定など、国内外の資料保存のニーズに応えられるようになるとしている。資料保存部門では、2006年12月7日に予定されている会合(フィレンツェ水害救援から40年目、議会図書館に資料保存計画室が設置されてから30年目にあたる記念行事になる)までに戦略をまとめてドラフトを提示することになる。
英国のInstitute of Conservator(ICON) はこのほど Paper Conservator 29号を発刊した。主な内容は以下の通り。
Brian W. Singer and Colin A. Liddie
A study of unusual degradation on a seascape painting associated with the
use of zinc white pigment.
Scott W. Devine
The Florence flood of 1966: A report on the current state of preservation
at the libraries and archives of Florence.
David Dorning
The development of a testing method for assessing book joint repair.
Athanasis Velios and Nicholas Pickwoad
Current use and future development of the database of the St Catherine's
Library Conservation Project
Clark Maxwell, Nancy Bell, Craig J. Kennedy and Tim J. Wess
X-ray diffraction and FT-IR study of caprine and ovine hide.
また、現在、鋭意編集中の30号は東洋の紙作品とコンサベーションの特集号になる。2007年1月の刊行が予定されているが、これには 過去に発刊されて、現在では入手が難しくなっているPaper
Conservator No.9の「表具」の特集号がCD-ROMで同梱されるという。
Institute of Conservatorr
国立公文書館はこのほど、政府の電子政府構築計画と、独立行政法人等の業務・システム最適化実現方策に基づき、「国立公文書館デジタルアーカイブに関する業務・システム見直し方針(案)」を作成するとともに、この案に対する意見を募集することになった。
同館およびアジア歴史資料センターは平成17年4月からデジタル情報サービスを運用しているが、公文書館ホームページ、同デジタルアーカイブ、アジア歴史資料センターにおける情報提供において情報の所在が分かりにくいことや、画像データのフォーマットが違うために資産の相互利用が図られていない、利用状況を積極的に収集・博できるシステムがない--等々の課題が指摘されてきた。
今回の見直し案はこれらを踏まえたもので、情報機能の強化、デジタタル資産の共有化、デジタル資産の高度利用判、利用状況の把握--等々を目的とし、広く意見を募るもの。9月15日までに電子メール、FAX、郵送のいずれかで提出する。詳細は以下のページに。
「国立公文書館デジタルアーカイブに関する業務・システム見直し方針(案)」に対する意見募集について