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almost daily news of preservation and conservation

図書館やアーカイブ等の資料保存に関する世界のニュースを伝える、ほぼ日刊のページです。 土日・祝日は休刊します。 リンクも引用も自由です。

2006年11月のアーカイブ

2006年11月30日(木)

カナダ文化財研(CCI)の2006-2007年度の研究報告、インク焼け処置やBookkeeper脱酸の長期効果など

カナダ文化財保存修復研究所(Canadian Conservation Institute:CCI)はこのほど、2006-2007年度の同研究所における研究・調査プロジェクトの成果と進展状況を概説した報告書を発表した。

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The Effect of Simmering on the Chemical and Mechanical Properties of Paper.
インク焼け処置法のひとつとして30年以上使われてきたアルカリ性熱水浸漬法の紙への影響。18世紀の書籍紙とろ紙で影響を見たが、化学的・物理的な悪い影響は見られなかった。

Monitoring of mass deacidified samples treated in 1993 (Phase III)
1993年に大量脱酸性化処置(Akzo-DEZ法、Wei T'o法、FMC法)された紙の現状を。モニタリングはフェーズⅢ段階で、2008年に終了予定。

Preservation of Works on Paper with Iron Gall Ink in Canadian Collections - Research into Aqueous Treatment Methods.
没食子インク焼けの記録文化財に対する8つの異なった水性処置法を比較する。2007年完了予定。

Preservation of Works on Paper with Iron Gall Ink in Canadian Collections –Risk Assessment Survey.
没食子インク焼けの記録文化財のリスクアセスメント調査。2007年完了予定。

Study on the Effectiveness of Bookkeeper Deacidification Technology Using the Arrhenius Relationship.
サブミクロンの酸化カルシウムの粉体を繊維間に埋め込んでいくブックキーパー脱酸性化法と、従来法であるアルカリ溶液法との比較と、懸念されている長期的な安定性の試験。50℃での低温加速劣化試験を含むために試験自体が長期のものになり、2010年の完了予定。
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同研究所はさまざまな素材・材料や分野を対象にした研究や調査を行っているが、このうち紙媒体(paper)関連は次の5つのプロジェクトを進めている。概要は以下の通り。

CCI Research and Development Projects 2006– 2007

2006年11月28日(火)

IFLA資料保存地域センター長会議が来年1月に北京で、中国・韓国・日本が集い保存管理等がテーマ

国際図書館連盟(IFLA)コアプロラムのPAC(Presrvation and Coservation)は、中国、日本、韓国の地域センター長によるアジア・オセアニア地域の資料保存に関する会議を来年1月16~19日に北京の国立図書館で開催する。保存管理(conservation management)と資料保存の事例について話し合う。

2006年11月27日(月)

英 National Preservation Office、製本の理解と、そのケアのためのリーフレットをPDFで


英国National Preservation Office(NPO)はこのほど、NPOリーフレット・シリーズのひとつとして、書籍の製本への理解を深め、資料として保存してゆくときのケアの方法を簡潔にまとめた Understanding and Caring for Bookbindings (全22頁)を上梓した。ダウンロードできる PDFのほかに、印刷物としても入手できる。いずれも無料。

著者は John Mumford(英国図書館ブック・コンサベーション部)、David Pearson(ロンドン大学図書館研究サービス部)、、Alison Wwalker(NPO)の三者。リーフレットで対象としているのは、西洋の、基本的には英国内の、手作業による印刷(1830年代)から以降に作られた書籍の製本。盛られた内容や表紙の装幀とともに、製本の構造自体も歴史的な、あるいは学術的な意味をもつとし、製本を形作る部分や材料、その組み合わせとしての構造の説明と、資料として存続させるためのケアの方法を述べている。

Understanding and caring for bookbindings (PDF format) 645KB

National Preservation Office
The British Library
96 Euston Road
London, NW1 2DB
Email: npo@bl.uk



2006年11月24日(金)

芸術作品の材料情報と教育に特化したネットワーク AMIEN が本年末にスタート


アメリカに本拠を持つ Intermuseum Conservation Association(ICA)は芸術作品に使われている材料の専門家と、この分野の第一人者である Mark Gottsegen氏(ICAディレクター)と協力し、材料情報と材料教育に特化したネットワークをウェッブ上に立ち上げる。Gottsegen氏が運営してきた Painter's Handbook のサイトを発展的に引継ぎ、本年12月にArt Materials Information Education Network.(AMIEN)として正式発足する。

AMIENの目的は芸術家や芸術作品のコンサベーションに携わる人たち(コンサーバター、学芸員、保存科学者、コレクター等々)に、適切かつ最新の材料情報(組成、適切な使い方、老化の性質、安全性)と、関心を持つ人たちのネットワーク形成による情報交換のためのフォーラムを提供すること。アクセスはフリーで、e-mail、電話、手紙、ファックスなどで質問などを受け付けるという。

AMIEN (仮サイト)

2006年11月22日(水)

アメリカの資料保存の推進のために--10月のCLIR資料保存会議での立場の異なる専門家による提言

米国の図書館情報資源振興財団(Council on Library and Information Resources:CLIR)はこのほど、10月に開催した資料保存関連の専門家による会議での提言をまとめ、発表した。

アナログ資料だけでなくデジタル資料も将来に向けて保存してゆかねばならない今日、それぞれの機関や推進母体での資料保存活動にギャップが生まれ、国全体としての方向性が見えにくくなっている。アメリカ国内の主要な研究図書館、図書館・文書館関連協会や財団、国立機関などから18名の専門家を招聘したこの会議では、財団であるCLIRがアメリカの資料保存を支援し推進するために、どのような方向付けをすればよいかを専門家に諮問したことに対して、次のようないくつかの提言が行われた。

1. 国内の各機関の連携を高めると共に海外類似機関とも協力した、資料保存の
    国家戦略の構築

2. アナログ資料(視聴覚資料その他を含む)、デジタル資料を問わず、あらゆるフォ
ーマットの資料の保存

3. 図書館と同様に、文書館、歴史資料機関、博物館がもつ記録物も対象にする

4. 印刷・デジタル保管・ビジネスモデル、ツール、資料保存サービス等の構成要
素からなるコア資料保存インフラの整備

5. 危機に瀕している資料に対しての注意の喚起と、その資料の保持者による優先
順位付けの必要性のコンセンサス形成

6. 資料保存教育での新しい取り組み

7. 資料保存のための新しい基金の必要性

Preservation Experts, Leaders Inform CLIR’s Agenda

2006年11月21日(火)

宍倉佐敏著『和紙の歴史--製法と原材料の変遷』が上梓、古代から近代までの1300年を一望に


財団法人印刷朝陽会はこのほど、宍倉佐敏氏による『和紙の歴史--製法と原材料の変遷』を出版した。日本の手漉き和紙の歴史を、主として製法と原材料から辿ったもの。著者の長年に渡る製紙用植物繊維研究の集大成になる。古代・中世・近世そして近代に至る1300年の歴史を、百万塔陀羅尼を始めとした各時代の実物の調査と、自ら原料植物を栽培し実際に漉いてみるという作業での裏付けをしながら、一貫した視点で説き起こしたもので、類書がない。特に白眉といえるのが中世和紙の研究で、元奈良国立博物館館長の山本信吉氏の指導の元に、高野山の中世文書の料紙を研究することで、これまでの流し漉き法と溜め漉き法の他に、「半流し漉き法」と著者が名付けた製法があることを発見してゆくプロセスには興味尽きないものがある。

著者   宍倉佐敏
発行 財団法人印刷朝陽会
販売 株式会社印刷学会出版部
B5判/141頁
定価 2,400円 (本体2,000円)

『和紙の歴史--製法と原材料の変遷』
http://www.choyokai.or.jp/books_goods/washinorekishi.htm

宍倉ペーパー・ラボ
住所:静岡県沼津市大岡 2905-5
電話: 055-922-4107
FAX: 電話と同じ


■上記のラボの紹介と当社が依頼した分析の例は「ほぼ日」の2006年3月17日付の記事を参照

2006年11月20日(月)

アジア歴史資料センター、日米交渉史のデジタル・アーカイブ等で12月8日にシンポジウム

アジア歴史資料センターは設立5周年を記念し、12月8日(金)に「歴史が語るデジタル・アーカイブ -- 日米交渉史などに見るアジ歴5年目の展開」を開催する。

同センターは2001年に国立公文書館の下に設立されて以来、アジア歴史資料のデジタル・データベースを構築し、ウェブサイトで公開してきた。今回のシンポジウムでは5年間の活動をレビューし、ウェブサイトでの特別展でとりあげてきた開戦に至る日米交渉史を事例として、細谷千博氏(日本学士院会員)による基調講演や、加藤陽子氏(東京愛学助教授)等によるパネルディスカッションを行い、歴史資料の今日的な意味とデジタル・アーカイブの役割と将来像を探る。

申し込みの締め切りは11月30日、詳細は下記ページで。

シンポジウム「 歴史が蘇るデジタル・アーカイブ - 日米交渉史などに見るアジ歴5年目の展開 - 」開催のご案内

米国立公文書館、「歴史資料のデジタル代替物の創製・保管・利用」で来年4月にコンファレンス

アメリカ国立公文書館(National Arhives)は第21回資料保存コンファレンスとして、来年4月30日~5月1日に、「モノとして存在しない資料を管理する--歴史資料のデジタル代替物の創製・保管・利用」(Managing the Intangible: Creating, Storing and Retrieving Digital Surrogates of Historical Materials)を開催する。

同公文書館は2003年に開催した資料保存コンファレンスで、「アナログ資料 vsデジタル化した資料」として、後者が保存メディアとして適当かを検討したが、近年国内でも国際的にもデジタル代替物を使用保存のための有力なオプションとして認知するようになり、歴史量に対しても広範な採用が行われるようになってきた。しかし問題は多い。

今回のコンファレンスでは、デジタル化が適正とされるときのリフォーマットと検索、メディアを跨いでのアナログからデジタルへの変換、アナログと同等の効果と経済性を持つデジタル化のためのツール・仕事の流れ・スキル、保管メディアの選択、インフラコスト--等々で報告と討議が行われる。

21st Annual Preservation Conference, Managing the Intangible: Creating, Storing and Retrieving Digital Surrogates of Historical Materials

2006年11月15日(水)

レーザー技術の文化財保存修復への応用で、来年秋にスペインで国際会議 LACONA VII 開催

医療や工業、家電等の幅広い分野で使われているレーザー(LASER:Light Ampli-fication by Stimulated Emission of Radiation=放射の誘導放出による光の増幅)の文化財の保存修復分野での活用が進んでいるが、世界の関係者が1995年から2年に一度集い、成果を発表するLACONA (Laser in the Conservation of Artworks) VII が、2007年9月17~21日にスペインのマドリッドで開催される。レーザーを用いた文化財表面のクリーニングをはじめとした現在の応用事例、その評価や分析法、各国でのプロジェクトやネットワークの現状等が発表される。来年1月までに発表内容のアブストラクトを受け付け、、審査の後に6月末に正式なプログラムが発表される。

LACONA VII


■ 紙媒体のレーザー・クリーニングの例

Paper Restoration using Laser Technology

Selective laser cleaning of paper

Laser cleaning of pressure sensitive tapes on paper

2006年11月9日(木)

豪州のコレクション・コンサベーション調査が終了し、報告書 Conservation Survey 2006としてウェッブに


オーストラリアのCollections Council はこのほど、国内のコンサベーションとプリザベーションに関する人的・財政的な資源の現状調査報告書 Conservation Survey 2006: A Survey of human and financial in Australian conservation and preservation をまとめ、ウェッブで得公開した。国内のあらゆるコレクションが対象になり、国内314の関連機関(図書館・文書館・美術館・博物館等と業者も)に対してアンケート形式で応えてもらった。回答機関数は143。

それによると、2003年から2005年までの人的な資源については適切な人材の不足が顕著であること(30才以下の人材が全体の11%しかない)、専門的な、あるいはそれに近い形での、総合的な人材育成教育が必須であること、財政的な資源も、基金が不足していることで充分ではないことが明らかになったとし、提言として、人材育成のための教育・訓練システムの開発、就業計画の総合的なシステムの開発、この調査結果の現場への啓蒙促進--等を挙げている。

Cosnervation Survey :Survey Sixth Announcement 24 October 2006

2006年11月8日(水)

NPO書物の歴史と保存修復に関する研究会、デボラ・エベッツ女史迎えて12月にシンポジウム

NPO法人書物の歴史と保存修復に関する研究会は12月9~10日に、製本修復家のデボラ・エベッツ女史(元・ピアポント・モルガン・ライブラリのブック・コンサーバター)を迎え、奈良県立図書情報館において「第2回シンポジウム 歴史遺産としての古典資料の保存修復」を開催する。基調講演は女史による「欧米書物修復の哲学」(日本語逐次通訳つき)、またパネルディスカッション「書物は修復されるべきか」(仮題)は、コーディネーターに鈴木英治(吉備国際大学)、パネリストに安江明夫(元国立国会図書館関西館館長)、金山正子(元興寺文化財研究所)、生田敦夫(京都保存修復研究所 所長)の各氏を迎えて行われる。

詳細と申し込みは下記ページで
http://www.npobook.join-us.jp/basic_info/sinpojiumu.htm


■deborah Evetts 女史の工芸作品は
http://palimpsest.stanford.edu/byorg/gbw/gallery/
100anniversary/retro/Evetts.shtml


■deborah Evetts 女史のPierpont Morgan Libraryでの仕事は
Treating 5000 Books at the Pierpont Morgan Library

The Morgan Library and Museum

2006年11月7日(火)

1966年のフィレンツェ洪水で被災した書物のコンサベーション活動の記録映画をストリーミングで


和紙に喰い先を作り、欠損部を補填する


表紙芯ボードに綴じの支持体を通す(laced-in)

今年(2006年)は、1966年11月4日に起こったイタリア・フィレンツェでの大洪水による文化財被災から40周年に当たるが、その現地での救済活動のうち、書物を対象にした活動を映像に納めた記録映画 The Restoration of Books: Florene,1968 を、ウェッブ上でのストリーミング配信(ファイルとしてダウンロードはできない)で見ることができる。同映画は1968年に英国の王立芸術学校(Royal College of Art)が作成したもので全39分。ユタ州立大学マリオット図書館のメディア・ストリーミングというサイトに置かれている。

フィレンツェ災害と救助活動は、"BEFORE THE FLOOD, AFTER THE FLOOD" という言葉に象徴されるように、洪水以前とそれ以降の「保存修復」の在り方を決定的に変えた。特に書物を対象にしたブック・コンサベーションでは、現在の資料保存の原則(「可逆性のある手当て」や「手当ての記録化」等)に結びつく考えたと技術が適用された。

映画では、現地でのブック・コンサベーション活動の中核を担ったイギリスのチームによりフィレンツェ中央図書館に設置された工房での作業、指導的な役割を果たした Peter Waters による革製本装幀、Christopher Clarksonによるベラム製本装幀などを見ることができる。

The Restoration of Books: Florence, 1968


■フィレンツェを分岐点としたブック・コンサベーションの歴史については、
アンソニー・ケインズと書物のコンサベーション」を参照してください。

欧州研究図書館連盟(LIBER)が来年5月に「モノとしての書物の価値、デジタル遺産の価値」国際会議

情報と人間の思索を運ぶ物理的な媒体である印刷物の役割はデジタル技術の追撃に会い、その未来が疑問視されている。一方、デジタル的な文化遺産の未来も、盛んな論議の的だ。あらゆる分野から提出されている以上のような課題に応えるため、欧州研究図書館連盟(LIBER, 欧州の350図書館が加盟)は2007年5月24-25日に、ストックホルムのスウェーデン国立図書館において LIBER Think Tank on the future value of the book as artefact and the future value of digital documentary heritage と名付けた国際会議を開催する。図書館や文書館等からだけでなく、行政や学術研究分野からもパネリストが予定されている。予定されている主な論点は以下の通り。

価値と信頼性というコンセプトは伝統的に物理的なモノとそのコレクションの上に築かれているものだったが、デジタルの発展によりモノとしての価値は減少するのか、それとも増大するのか? ヴァーチャルな情報の媒体の価値と信頼性はどこにあるのか? 目も眩むような量の、最初からデジタル記録として生まれてくる「ボーン・デジタル記録」や「古い」記録物をデジタルに代替したものははたして新しいデジタル文化記録遺産になるのだろうか?

プログラムは以下のページに発表される。
The Ligue des Bibliothèques Européennes de Recherche (LIBER)

2006年11月2日(木)

臭化メチル残留で紙の酸性化や変色が進行 -- 『保存修復学会誌』(Vol 51, 2006)の東京文化財研の論文

『文化財保存修復学会誌』(vol. 51, 2006)は、「臭化メチル製剤の残留による紙への影響」を掲載している(p.69-78)。著者は間渕創氏(文化財研究所東京文化財研究所)と佐野千絵氏(同)。

臭化メチル(メチルブロマイド)製剤は各種文化財や図書や文書の殺虫薫蒸剤として広く使われてきたが、モントリオール議定書(1997年)にもとづく2005年の全廃後には、新たに使用されることはなくなっている。しかし、これまでに行われた薫蒸処置により、図書や文書に残留していると思われる臭化メチル製剤が、どのような影響を及ぼすのか、特に図書等への長期的な影響について、明らかになっていなかった。

今回の両氏による研究は「長期間の残留薬剤と紙の種類や将来的な劣化状態の関係について焦点をあて、繰り返し薫蒸、冊子形態での薫蒸、密閉系での加速劣化処理を行うことで、現在保管・収蔵されている薫蒸履歴を持つ紙試料 [原文ママ] を想定して」(p.70) 、残留した臭化メチル製剤の紙への影響を調べたもの。2回の薫蒸処置の対象になった供試紙は、ろ紙、石州和紙の楮・三椏・雁皮の4種類。これを TAPPI T 573 の熱劣化試験(密閉ガラス瓶に試料を入れて100℃で5日間加速劣化)にかけ、残留臭素、pH、色を測定した。

同論文の「5. まとめ」(p.77)によると、「臭化メチル製剤による薫蒸処理によって臭素が紙試料、特に非セルロース質を多く含む紙に多く残留し、繰り返し薫蒸により臭素が蓄積されること、冊子状の紙試料の深さ方向において、臭素残留量が増加すること、臭化メチルが残留した状態で加速劣化させることにより、紙の酸性化や変色が進行することが明らかになった」、とし、「博物館・美術館・文書館において収蔵され、臭化メチル製剤による繰り返し薫蒸の履歴を持つ紙資料においても、将来の劣化に伴って紙の酸性化やそれに伴う機械的強度、変色などの資質低下が想定以上に促進される可能性があると考えられる」という。

なお上記の「非セルロース質を多く含む紙」とは、試料となったうちの3種の和紙のヘミセルロースの割合の比較からで、「楮と比較して三椏と雁皮で比較的高い値を示し」(p.77)ているという。また、同じく上記の「冊子状の紙試料の深さ方向」とは、150ページの冊子状の試料の「上面から10枚おきに測定した結果、表面から深くなるにつれて臭素残留量が増加する傾向にあった」(p.74)ことをいう。

文化財保存修復学会誌

※臭化メチルによる図書や文書の薫蒸処置は長い歴史をもち、これまで膨大な量の本や文書に対して、繰り返し、行われてきた。そして、図書館員や文書館員からは、「こんなに繰り返し薫蒸をして資料は大丈夫なのだろうか?」、「いますぐでなくても、後々、なにか悪い影響は出てこないのだろうか?」、「毒劇法で指定されている臭化メチルの残留物がもし資料内にあるとしたら、資料そのものへの影響もさることながら、資料の閲覧時に、あるいは書庫内で、人体に悪い影響はないのか?」--等々の懸念もまた、繰り返し、表明されてきたハズである。にもかかわらず、以上のような「研究」がなぜ、今にならないと行われないのか、過去に行われなかったのか---。どなたか理由を教えてください。

(文責:木部徹)

2006年11月1日(水)

国会図書館の遠隔研修「資料保存の基本的な考え方」第2期の研修生を募集

インターネットを通じた自学自習型研修の第一弾として今年6月から始まった国会図書館の遠隔研修プログラム「資料保存の基本的な考え方」の第2期の研修生募集が始まった。開講期間は11月1日~来年2月28日までだが、来年の1月31日まで募集する。定員は250名。詳細は下記で。


遠隔研修「資料保存の基本的な考え方」第2期の案内

英国立公文書館(TNA)がアーカイバル容器用ボードの評価試験結果を発表、容器の目的別に3つの等級を

英国立公文書館(The National Archives:TNA)はこのほど、アーカイバル容器(archival boxes)用の各種ボードのための試験法と、市販のボード6種類の評価試験結果を発表した。この試験評価プログラムには英国図書館(BL)も協力している。

収納物の長期保存に適した品質を持つアーカイバル容器は欧米でも複数のメーカーで製造、販売されているが、そもそも「アーカイバル品質」なるものの厳密な定義が無く、保存容器として規格化されているわけでもない。各メーカーがそれぞれ、既存の紙の規格(書籍の本文紙向けのISO 9706:1994 パーマネント・ペーパーの規格など)を当てはめ、ボードの仕様として掲げているのが現状であり、アーカイバル容器の材料に特定した規格はなかった。

今回、英国立公文書館と英国図書館が協力し立ち上げたプログラムは、図書館や文書館そしてコンサベーションの現場で使用される主要な材料に対して、より厳密で信頼性のある情報を提供し、材料あるいは製品を選択する際の「基準」にするというものだが、その第一段として今回、保存容器に使用されるボード(厚紙、板紙)が採り上げられた。

その特徴は、アーカイバル容器用のボードして「適している」、「適していない」に2分するのではなく、耐久性(permanence)の指針となる化学物性を調べる7つの試験と、耐用性(durability)の指針となる物理物性を調べる5つの試験を適用し、使用目的に合わせてボードの品質を3つの等級(grade)に分けたところにある。耐久性と耐用性の定義および3つの等級は次の通り。

耐久性(Permanence): 長期に渡り化学的・物理的な安定性を保持する力

耐用性(Durability): 使用中に損耗や破れが生じにくい力

グレード1:耐久性も耐用性もあるボード(Board Permanece and Durable)

収納物の恒久的な保存と、容器自体の恒久的な使用に適したもの。高いレベルの化学的な安定性を持ち、その組成物や、それの(経時劣化による)副生成による相互の影響がない材料で構成されていること。長繊維のパルプの使用は強さと長寿を与えよう。

グレード2:耐久性のあるボード(Board Permanence)

グレード1と同様に、収納物の恒久的な保存と、容器自体の恒久的な使用に適したボードであるが、場合によっては、物理的な保護力はそれほど必要としない用途で使われる。高いレベルの化学的な安定性を持ち、その組成物や、それの(経時劣化による)副生成による相互の影響がない材料で構成されていること。ただし短繊維のパルプの使用により、強さと長寿はそれなりのレベルになる。

グレード3:耐用性のあるボード(Board Durable)

物理的な堅牢さが第一条件になり、したがって保存容器としては短期間の使用(例:輸送や一時的な保管)の限定した容器に使用される。こうした輸送や保管時に収納物を保護するだけの高い物理的な保護力を持つ構造のためのボード。

耐用性の指針になる物理物性試験(Strength Qualities: an indication of durability)

引っ張り試験、坪量に則した引っ張り強度インデックス、引き裂き試験、破裂試験、同インデックス


6種類の市販製品での試験結果は以下のように発表されている。

Board test results

以上を踏まえた、英国立公文書館としての「容器用のボードに対する要求仕様」が

Box board specification


として提示されているが、内容は以下の通り。

グレード1:耐久性も耐用性もあるボード(Board Permanece and Durable)
晒し化学パルプ 100%
pH 7.5-9.5
Kappa価は5を越えない、もしくはリグニン含有量が1%未満
アルカリ残留量は2~5%
中性内填サイジング
残留硫黄分は0.0008% 未満
(接着剤は)可塑剤を含まない中性域のEVA
蛍光剤を含まない
可塑剤を含まない
金属粒子、ワックス、残留漂白剤、その他、収納物がボードに直接接触しているときに、収納物の劣化に結びつくおそれのある物質を含まない

 
グレード2:耐久性のあるボード(Board Permanence)

Kappa価は5を越えない、もしくはリグニン含有量が1%未満
晒し化学パルプ そして/もしくは機械パルプ100%
pH 7.5-9.5(※)
アルカリ残留量は2~5%
中性サイジング
残留硫黄分は0.0008% 未満
(接着剤は)中性域のEVA
蛍光剤を含まない
可塑剤を含まない
金属粒子、ワックス、残留漂白剤、その他、収納物がボードに直接接触しているときに、収納物の劣化に結びつくおそれのある物質を含まない
※写真の恒久的な保管のための容器に使われるボードは、pH 6.5-7.5、残留硫黄分は0.0008%未満、アルカリは含まず、PAT(Photographic Activity Test)をパスしていること。
 
グレード3:耐用性のあるボード(Board Durable)
晒し化学パルプ そして/もしくは機械パルプ100%


この仕様は同公文書館向けに特定したものであり、世界のどこの機関でも当てはまるというわけではない、としながらも、新しい知見が得られる時を繰り込みながら変えてゆくことになり、他の機関でも参考になろう、と補足している。

なお、英国図書館との協力によるこの材料・製品評価試験プログラムの第二弾は、「接着剤」が予定されている。

Evaluating archival box board

(文責:木部徹)

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