

PETフィルムに封印された敦煌遺文の断片
国際敦煌プロジェクト(IDP:International Dunhuang Prokject)のNewsletter (No.27) はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使った敦煌遺書の封印処置(エンキャプシュレーション)と、ガラス板を使った封印処置についての比較および問題点についての記事
The Use of Melinex for Enclosing Manuscript Fragments を掲載している。執筆は英国図書館のの
Barry Knightコンサベーション研究部長。
ここで Melinex というのは、デュポン・帝人フィルム社のPETフィルムの商標で、マイラー(デュポン社)、ホスタファン(三菱化学)のPETフィルムも同等品。
著者は、敦煌遺書のような貴重な資料をフィルムとガラス板で封印することの是非や優劣について、これまで論議されてきた問題を4つ分けて論じている。
第一は物理的な保護に関連する。ガラスとフィルムとではガラスの方が硬いことは明らかで、このため極度に脆弱化したものを封印して保護するのには良いが、ガラスは重く、またそれ自体も割れてしまい、資料を傷める可能性があり、扱いや保管に特別な注意を必要とする。PETフィルム封印は軽く、扱いやすいが、一方で資料が大きく、劣化が酷い場合には保護力に欠ける。またガラスに比べてフィルムは柔らかく傷が付きやすく、封印物も貼り付きやすい。
二番目はフィルムからなにか悪い影響を及ぼすモノが出て資料が傷まないかということ。これについてはPETは非常に安定した物質で不活性であることが確認されている。
三番目は資料そのものが劣化してゆくときに発生するガス状の劣化物を閉じ込めることで生じる影響。ただし、この懸念はフィルムでもガラスでも同じ事になる。これについての最近の研究があるが(David
Jacobs and Joanna Kosek of the British Museum ,"What happens to enclosed
paper?" in Art on Paper: Mounting and Housing, London: Archetype,
2005"),さらに精緻な研究が望まれる。
最後は封印された内部の環境(温度と相対湿度)について。嵩としては小さいが面積は広く、吸湿性が高い紙媒体を封印することで、どのような内部環境が形成されているのかの予測は難しい。これも今後の研究成果に期待したい課題ではあるが、しかし、この問題はフィルム封印でもガラス封印でも同様に在る。
結論をいえば、PETフィルム封印がガラスよりも悪い影響を及ぼすという証拠はない。どちらを使うかは、資料の脆弱度、資料の使われ方、そして保管方法を総合してコンサーバターが専門的な判断を下すことになる。
The Use of Melinex for Enclosing Manuscript Fragments
■参考
フィルム・エンキャプシュレーションの現在
ハーバード大学図書館資料保存部門は、同部門のサイトに、簡潔な内容解説を付けた「写真資料の保存」文献目録 Photographic Preservation: A short Annotated Bibliography を掲載した。
この目録は、今年新たに、同図書館の写真資料の保存業務全体を任されることになったBrenda Bernier(前・米国立公文書館の写真資料コンサーバター)がまとめたもの。紹介されている文献数は16と少ないが、写真資料の保存の全般に関する論文から始まり、資料の同定、包材、カラー写真、アルバムとスクラップブック、そして保管について、現時点での最新の情報が盛り込まれている。
Photograph Preservation:A Short Annotated Bibliography
Brenda Bernierの「写真資料のコンサーバターの仕事とは」
(社)情報科学技術協会の会誌『情報の科学と技術』最新号(Vol.56, 2006-12)は「情報・データを捨てる」の特集号。編者は「増え続ける文書,データ,図書,資料等の処分について特集してみました。特集にあたっては,理論から実例まで,また「個人情報保護」「リサイクル」といった近年のキーワードも絡めて概説していただきました。」としている。中島康比古(国立公文書館)「総論:情報を捨てる。情報を残す。--アーカイブの評価選別論の視点から」、小谷允志(日本レコードマネジメント)「オフィスにおける文書の廃棄基準」、藤原静雄(筑波大学法科大学院)「文書管理・資料管理と個人情報保護」等の6つの論文を掲載している。抄録は以下のページに。
『情報の科学と技術』(Vol.56, 2006-12)抄録
国立国会図書館の『月報』(No.548, 2006-11)は、この8月に国会図書館で開催された国際コンファレンス「アジアにおける資料保存」の記録を掲載している(p.2-7)。発表者と表題は以下の通り。
ジョン・ディーン(元コーネル大学図書館資料保存部長)「東南アジアにおける資料保存教育」
ルジャヤ・アバコーン(元チェンマイ大学教授)「東南アジアにおける保存活動・保存協力の諸問題とその未来」
O.P. アグラワル(インド文化財保存期間協議会会長)「アジアの紙資料とパームリーフの修復」
斎藤友紀子(IFLA/PACアジア地域センター長)「ネパールにおける保存協力 研修からパームリーフ資料の電子化まで」
クリスチャン・バリラ(IFLA/PAC国際センター長)「IFLA/PACコア活動」
李春明(中国国会図書館逐次刊行物部主任補佐)「中国における新聞のマイクロ化・電子化」
コリン・ウェブ(IFLA/PACオセアニア・東南アジア地域センター長)「資料保存における媒体変換の役割 今日、明日、そしてその先」
『月報』は以下からダウンロードできる(PDF 1.9MB)
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/geppo/index.html
IIC(International Institute for Conservation of Historic and Artistic Works.
国際文化財保存修復学会)の第22会大会は2008年9月15-19日にロンドンで開催される。テーマは、文化財へのアクセスを保証するためのコンサベーションの在り方。詳細は下記ページで。
http://www.iiconservation.org/conferences/london2008/congr_index.php

(社)日本画像情報マネジメント協会(JIIMA)の機関誌『月刊IM』最新号(Vol.46 No.1, 2007-1)は楢林幸一氏(コダック株式会社)によるスウェーデン国立公文書館のデジタルアーカイブに関する論文「デジタルブラックホール」と、最近のデジタルアーカイブについての世界の動向の紹介文を掲載している(p.18-24)。
「デジタルブラックホール」は、スウェーデン国立公文書館のプリザベーション部長である Jonas Palm 氏による論文 Digital Black
Holeで、同公文書館が実施してきた文書のデジタル化とデジタルフォーマットでの長期保存に関するコストを分析し、最良の実践に向けた新たな戦略の検討を開始したことの報告書である。
デジタルソリューションの素晴らしさのあまり、それを長期維持する経費の手当てが軽視される傾向にあるが、これが継続的に獲得できない場合は、そのデジタルプロジェクトはブラックホールに飲み込まれ、失敗するだろう、している。
デジタルに最適なプロジェクトは5年程度の短期間のものであり、長期的なアクセスを保証するためには、職員、サポート、施設を合算したコストが必要になる。同公文書館の試算では、その額は機器コストの12倍以上になるという。
そこで同公文書館では新しいデジタルアーカイブ戦略として「デジタルイメージをまず作成し、そのイメージから長保存フィルムを作成する。そしてデジタルファイルを将来に渡って保有することは約束しない」(p.22)。
また、イメージをマイクロフィルムに変換するだけでなく、検索メタデータもマイクロフィルムにすることを検討しているという。マイクロフィルムは情報を保存する”容器”なので、デジタルと同じ検索データは必要とせず、フィルムは将来必要になったときに非常に素早くデジタルに変換でき、検索可能な状態でイメージをデジタルの世界に提供できる、という。そして、同公文書館では、劣化した紙文書の保存に貢献してきたマイクロフィルム技術のひとつCOM(コンピュータアウトプットマイクロフィルム)の採用を検討しており、デジタル/アナログ・ハイブリッドシステムの導入を計画しているとしている。
最後に同論文は「プロジェクトが新たなデジタル・ブラックホールに飲み込まれて破綻する危険を回避するためには、あらゆる可能性をカバーしたコスト予測を計画プロセスに組み込むことが必要になる」と結論している。
Palm 氏の原文は以下に掲載されている。
The Digital Black Hole, by Jonas Palm
また日本語訳もJIIMAのサイトに掲載予定である。
(社)日本画像情報マネジメント協会
日本図書館協会の資料保存委員会は、下部組織として「保存管理」に特化したチームを発足させた。事務局は安江明夫氏(元・国会図書館副館長)と村上直子氏(資料保存委員会委員)が担当する。安江氏による趣旨は以下の通り(原文ママ)。
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資料保存委員会「保存管理チーム」について
このほど資料保存委員会に「保存管理チーム」を発足させた。保存管理はPreservation Administrationの日本語訳だが、平たくプリザベーションと考えていただいても良い。
チーム設置の趣旨を述べると、資料保存をプリザベーションとコンサベーションの2つのレベルで区別することが大事だ。(「用語の定義」を参照のこと)
コンサベーションについては、1990年代、木部徹さんや佐藤祐一さんが中心となった資料保存委員会の資料保存基礎技術WGの活躍などにより、日本でもその考えが明確になり、理解と実践が大きく前進してきた。これは高い評価に値する。
しかし、プリザベーションについては、「利用のための資料保存」の方針とコンセプトは良かったが、それ以外では前進していない。
ここでプリザベーションのレベルと言うのは、製本・補修、予防的保存、維持管理、マイクロ化・電子化、環境整備、災害対策、利用者教育・職員教育、収集方針・廃棄方針との連携、利用者サービスとの関連、図書館協力などを包括するコンセプト。このように多岐に亘る責務に、図書館が統合的、体系的、計画的に取り組むことが重要。それ無しでは蔵書の保存、サービス基盤の適切な確保はできない。それが保存管理のコンセプトだが、この点の理解と実践が日本では薄いのが現状。それを打破して前に進みたい。そうしないと資料保存が萎み、図書館が責任を充分に果たせない。
趣旨は以上。但し、本チーム、当面は歩きながら考え体制を整えていく。現在の事務局は安江明夫と村上直子(資料保存委員会委員)の二人。チームの設置期間は2年半(平成18年度~20年度の3か年度)を予定している。
チームは、テーマ毎の研究会等の開催、セミナーの開催(研究成果の発表など)、成果の刊行物、HP等での提供に取り組んでいく。必要に応じて研修会なども開催したい。そうした作業を通じて、日本の図書館での保存管理が徐々に軌道に乗ってくることを願っている。
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保存管理チームのホームページ
日本図書館協会資料保存委員会保存管理チームは、「調査から計画へ」と題した連続セミナーの第一弾として「戦略的資料保存--残すために何を考え、どう実践するか」を来年2月2日に開催する。講師は小島浩之氏(東京大学経済学部図書館)。東京大学経済学部図書館で実施した蔵書劣化状態調査と調査結果に基づく保存対策についての報告。紙媒体資料だけでなく、マイクロフィルムの劣化調査を実施、蔵書の優先順位付け、資料保存のHPを立ち上げ調査結果を一般公開、など画期的な取組みの紹介になる。
調査から計画へ -1-
「戦略的資料保存 -残すために何を考え、どう実践するか-」
講師: 小島浩之氏(東京大学経済学部図書館)
日時: 2007年2月2日(金) 18:30~20:30
会場: 日本図書館協会会館 2階研修室
(http://www.jla.or.jp/kaikan.htm)
申込: 不要 参加自由です
主催: 日本図書館協会 資料保存委員会

アメリカのアイオワ大学図書館は、紀元1世紀から20世紀の代表的な製本形態をモデルにしたコレクションをウェッブで公開している。実物(考古資料として発掘された断片からの推測も含む)、を元に、同図書館の製本修復家だった
William Anthony他が作成したもの。紀元1世紀から4世紀の一括(写真)の平綴じ形態、完全な形でエジプトで発見された多括の冊子 Nag
Hammadi Codex、そして20世紀のブック・コンサベーションの象徴ともいえるエンキャプシュレーション・ブックなど、計14種類の製本が、簡潔な説明と共に掲載されている。
Bookbinding Model Collection
東京大学東洋文化研究所は、昨年に引き続き、アジア古籍保全講演会を来年1月23日(火)に開催する。プログラムは以下の通り。
| 時間 | 内容 | 担当 | |
|---|---|---|---|
| 10:30-10:40 | 開会挨拶 | 関本 照夫 (東京大学東洋文化研究所長) |
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| 10:40-11:20 | 事例報告 | 東洋文化研究所所蔵 漢籍・中国書の劣化調査と補修 |
木部 徹 ((有)資料保存器材) |
| 11:20-12:00 | アジア近現代資料の保存と利用 -東京大学経済学部資料室の取り組み |
小島 浩之 (東京大学経済学部図書館資料室助手) |
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| 13:30-15:00 | 講演 | 中国古籍の保全と修復 | 周 崇潤 (中国国家図書館善本部図書保護係長) 通訳:橋本 秀美(北京大学歴史系副教授) |
| 15:00-16:30 | 書籍・資料のカビとその対策 | 木川 りか (東京文化財研究所保存科学部主任研究官) |
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| 16:45-17:15 | 総合討論 | <進行> 鎌田 繁(東京大学東洋文化研究所副所長) <参加者> 周崇潤/木川りか/橋本秀美/小島浩之/木部徹 |
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申し込み〆切は1月19日。E-mail で受け付ける。詳細は下記で。
第2回アジア古籍保全講演会
ユネスコ(UNESCO)とアメリカ議会図書館(LC)が主催する世界デジタル図書館プロジェクト(World Digital Library project)立ち上げのための会議が1日、パリのユネスコ本部で開催された。インターネットを基盤にした同プロジェクトは、あらゆる文化とあらゆる言語の知識をデジタル記録で共有しようというもの。国際図書館連盟(IFLA)の
Claudia Lux 会長が議長を務め、参加者もアフリカ、アジア、ヨーロッパ、中東、南北アメリカから集った。
UNESCO and US Library of Congress host meeting on World Digital Library
project
イラク国立図書館・文書館(Iraq National Library and Archive)は、爆撃と襲撃に会い、閉鎖された。これは同館の館長であるDr. Saad Eskander が伝えたもので、ドイツの資料保存フォーラム(Forum Bestandsherhaltung)が掲載している。
それによると同館は過去三週間に三度の爆撃に会い、また館長室にも及ぶような襲撃砲弾があり、若い図書館職員が殺害されたとしている。さらに建物が数日に渡る追撃砲弾幕に覆われて被害が酷く、開館を継続することが不可能と判断、閉鎖に至った。

独立行政法人文化財研究所・東京文化財研究所は「文化財のカビ被害防止チャート」を作成、パワーポイント用ファイル(22.3MB)として公開している。同研究所保存科学部の頁からダウンロードできる。
このチャートは、カビが出たらどうするのかではなく、カビを出さないようにするためには日頃からなにをするべきか、というコンセプトに沿って作られたもの。副題に「カビに強い環境に、IPMの考え方に沿って」とし、「カビの被害は環境改善なしには制御できない」とある。
同チャートでは「カビとは」にはじまり、被害歴の調査と施設の点検、収納前の資料の清掃と隔離、発見と処置、最後に管理体制の見直しという組み立てで、図や写真も使い、分かりやすく解説している。
ダウンロードは以下の頁から。
東京文化財研究所保存科学

アメリカの非営利・地域保存修復センター Northeast Document Conservation Center (NEDCC)のサイトが一新された。同センターは世界で最も早く、1973年から図書館・文書館資料を対象にした保存修復業務を行ってきたところで、現在の各地にある地域保存修復センターの先駆けになった。
今回一新されたサイトには、Preservation Leaflets として、保存管理(8つのリーフレット)、環境管理(6)、防災・救助(11)、保管と取り扱い(12)、写真資料(5)、コンサベーションの方法(8)が挙げられている。
Northeast Document Conservation Center

ドイツの Saur 者はこのほど、Newspapers of the World Online: U.S. and International
Perspectives. Proceedings of Conferences in Salt Lake City and Seoul, 2006
を上梓した。今年5月にアメリカのソルトレイクで開催された国際コンファレンスと、本年ソウルで開催された国際図書館連盟新聞部会での発表(Newspapers
of East Asia)をまとめたもの。
Newspapers of the World Online: U.S. and International Perspectives Proceedings of Conferences in Salt Lake City and Seoul, 2006
Edited
by Hartmut Walravens
K.G. Saur, 2006, 195 p.
(IFLA Publications;
122)
ISBN-13: 978-3- 598-21849-1
ISBN-10: 3-598- 21849-4
Price: EUR
78.00
Newspapers of the World Online: U.S. and International Perspectives.
IIFLA-PAC( 国際図書館連盟 資料保存コア・プログラム )国際センターの発行するニューズレター International Preservation News 最新号( No.39, October
2006)は次の記事を掲載している。
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Coralie Barbe et al. : La selection d’un cuir de tannage vegetal destine
a des traitements de restauration de livres anciens : une etude en cours
a la Bibliotheque nationale de France.
古い貴重書のコンサベーション処置用の植物タンニン処理した牛革の選択:フランス国立図書館の研究の現状報告
Nathalie Buisson : Programme de recherche de la BnF, 1994-2000 : conclusions
de l’etude comparative des quatre procedes de desacidification de masse.
4つの大量脱酸性化処置法の比較:フランス国立図書館が1992年から2000年にかけて行った調査研究
Nathalie Buisson : Les principaux procedes de desacidification de masse : situation en 2004.
上記の調査研究の2004年時点の状況
Randy Silverman : Fire and Ice: A Soot Removal Technique Using Dry Ice
Blasting.
火と氷:ドライ・アイスのブラスターで煤を除去する試み
Randy Silverman: Report Tsunami and Archives: The Unexpected Possibilities. Jakarta, Indonesia - 17-18 July 2006.
津波とアーカイブ:予期せぬ可能性、インドネシアでのシンポジウムの報告
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このうち最初の記事(p.4-8)、Coralie Barbe らによるコンサベーション用の革の研究について、少し詳しく紹介する。
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Coralie Barbe et al. : La selection d’un cuir de tannage vegetal destine
a des traitements de restauration de livres anciens : une etude en cours
a la Bibliotheque nationale de France.
フランス国立図書館は、Centre de Recherches sur la Conservation des Documents Graphiques
(CRCDG)の協力のもとに2004年から表題の研究を進めている。この研究は欧州全体での Eivvironment Leather Project に基づくもので、ある種の新しい革を使ったコンサベーション処置がさらに劣化を促してしまうという現状の改善を目指している。
この現状は次の二つの理由による。
ひとつは、見栄えを優先させる処置が行われてきたこと。19世紀の"美麗な製本(reliures fines)"というファッションは、革を紙のように薄くして使うことを流行らせたが、これがコンサベーションにも導入され、結果的に非常に物理強度が低下してしまう修理が行われてきた。
二つ目の理由は革の製造自体の問題。19世紀初頭からに革は、なるべく早く造ることを要求されるようになり、また、新規の、しかし害のある薬品が製造工程に導入された。
現在は、ほとんどの鞣し(tanning)行程が、原皮(skin)を得る現地の国で行われるようになり、昔のように消費国で鞣しの行程をコントロールしながら革(leather)にすることが難しくなっている。耐久性のある製本用革の品質についても提供側は関心を示さない。一方、依然としてコンサーバターや修復家は見栄えを優先させた修理をしている。その例が、オリジナルの革装幀の欠損部を直す際に、この革の下に補修用の革を潜り込ませたいがために、挿入する部分をできるかぎり薄くして「綺麗」に見せるという処置だ。結果的には、オリジナルの革装幀よりも早く、補修用の革が劣化してしまい、再度の補修が必要になる。なんのための処置だったのか、というわけだ。

<写真:革で補修されたヒンジ部。上がオリジナルの革だが、すでに「新しい革」のヒンジ部に傷みが来ており、再度の補修が必要になっている。>
装幀革の劣化の問題と、丈夫な補修用の革の開発の歴史を見てみると、まず1905年にロンドンの図書館協会(Library Association
of London)の調査が挙げられる。ここでは濃縮タイプのいくつかの植物タンニンが劣化の原因とされ、無酸の鞣しが推奨されたが、現実的には革の劣化は止まらなかった。1931年にはおなじく英国で革の耐久性試験「PIRA
試験」が開発され、これに則した「耐久性のある革」はPIRA試験をパスしているというラベルを貼付されて販売されたが、しかしこれも充分なものではなく、このラベルはいまは採用されていない。
1976年に英国図書館はアルミニウムと植物タンニンとの「コンビ鞣し」による耐久性のある革のレシピをつくり、実際にこれに則った革が市販されたが、疎水性が非常に高くて扱いにくく、歓迎されなかった。
今回のEnvironment Leather Project による協力プロジェクトはこうした歴史を背景にして立ち上げられたもので、植物タンニン鞣しの行程に焦点を当てて研究が進められている。すでにいくつかの成果や提言が発表されている(P. Larsen:The deterioration and conservation of vegetable tanned leathers
- Status of the EU environmet leather project.)。
このプロジェクトの一環としてフランス国立図書館では植物タンニン鞣しの牛革(calf leather)に焦点を当てて研究している。この鞣し革は、製本やコンサベーションでは希にしか使われることはなかったが、しかしその耐久性は優れており、特に折ったり、曲げたり、凹ませたりといった「形作り易さ」への評価は高い。
一方、ヨーロッパ各国から40種類の革を集め、その品質を調べているが、うち四分の一はクロムの含有量が高くて「形作り易さ」に劣るなどの問題があり、選択の対象にはならなかった。
また現在、鞣しで使われている濃縮タンニンのうちのいくつかは、ある種の大気汚染物質と化合することで革の劣化の原因になっていることも判り、現時点では補修用に最適な革は見つからないという結果になった。
そこで今後の研究の方向は、科学的な試験を継続して、革に要求される品質を満たす条件の影響をさらに精緻に確認することと、プロジェクトに盛り込まれた提言の中身を改良してゆくこと、鞣し業者(tanneries)との共同作業を密にして技術的・理論的なデータを固めること、になる。
いずれ近い時期に、「補修用に適した諸物タンニン鞣し革」が実用化されることになろう。
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International Preservation News (IPN)
文責:木部徹

本紙11月24日既報の、芸術作品に使われている材料情報と材料教育に特化したネットワーク AMIEN(Art Materials Information and Education
Network)がこのほど正式に発足した。 アーティストやコンサーバターはもちろん、保存科学者、材料メーカー、コレクター、学芸員など、幅広い層に向けて、材料の的確な情報を提供し、質問にも答える。アメリカの Intermuseum
Conservation Associatin (ICA)が提供する非営利の活動になる。同サイトではコンサベーションの実際の処置(onservation
treatments)の情報を提供するものではないとしているが、ディスカッション・フォーラム(discussion forum)ではさまざまな処置とそれに関連する材料についての意見交換が行われている。
AMIEN