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almost daily news of preservation and conservation

図書館やアーカイブ等の資料保存に関する世界のニュースを伝える、ほぼ日刊のページです。 土日・祝日は休刊します。 リンクも引用も自由です。

2009年4月のアーカイブ

2009年4月30日(木)

国際保存修復学会(IIC)、画像保存の貢献者へのHP Image Permanence Awardは米国立公文書館の Steven Pugliaに

国際文化財保存修復学会(International Institute for Conservation of Historic and Artistic Works:IIC)がヒューレット・パッカード(HP)社からの資金的な支援を受けて毎年贈る HP Image Permanence Awardの今年の受賞者は Steven Puglia に決まった。この顕彰制度は2006年から始まったもので、色材やプリント材料の耐久性の著しい向上や、画像耐久性に関する科学的な業績や、画像の保管や利用の教育などに貢献した人や機関に毎年贈られる。ことしの受賞者の Steven Puglia は、1986年にニトリルフィルムについての論文を発表後、NEDCCを経て米国立公文書館でマイクロフィルムをはじめあらゆる画像資料の保存の責任者として活躍、さらにISO(国際標準化機構)のカラー写真画像やデジタル・プリントの作業部会の代表も務めている。


hdariyasjirusiWinner of 2009 IIC Image Permanence Award

hdariyasjirusi関連:Steven Puglia et al. "Common Imaging Problems"

 

業者とどのように連携して資料保存に取り組むか?--ミシガン図書館コンソーシアムの6月のコンファレンスのテーマ

ミシガン州の図書館の協力組織 Michigan Library Consortium は6月4,5日の両日、Who are You Going to Call? Library-Vendor Partnerships on Preservation Projects を開催する。デジタルではなく、モノとしての資料の保存に的を絞ったコンファレンスで、大量脱酸性化、マイクロフィルムでの代替、貴重書のコンサベーション、災害救助まで、関連する業者(vender)との連携による事例をもとにした報告が行われる。


hdariyasjirusiWho are You Going to Call? Library-Vendor Partnerships on Preservation Projects

2009年4月27日(月)

国会図書館、World Digital Library に「百万塔陀羅尼」から「日本国憲法(官報号外)」等15件で参加

国立国会図書館は、米国議会図書館とユネスコが共同で推進している電子図書館プロジェクト(World Digital Library) に、国会図書館の蔵書15点で参加する。同プロジェクトは4月21日にスタートした。世界各国の図書館等から手稿、地図、貴重書、写真、動画等のデジタルコンテンツの提供を受け、各国の文化の特色を示す資料を地域、時系列、テーマ別に一望できるウェブサイトの構築を目指している。


hdariyasjirusi2009年4月22日 ワールドデジタルライブラリーに参加します

 

2009年4月24日(金)

独IADAの機関誌が誌名をJournal of PaperConservationに、最新号は「冠水した大型地図への保存手当て」など

ドイツ語圏のペーパー&ブック・コンサーバターを中心にした組織 IADA の機関誌 PapierRestaurierungはこのほど誌名を英文のJournal of PaperConservation に変更した。最新号(vol.10, 2009, No.1)の主な内容は以下の通り。

Buntpapier-Einbände der Österreichischen Nationalbibliothek / Decorated Paper Covers of the Austrian National Library. Ilse Mühlbache

The Conservation of Water Damaged Outsized Maps / Restaurierung großformatiger wassergeschädigter Karten.  Cecilia Lundin

このうち Lundin のは、スイスの国立アーカイブでの水漏れによる被害を受けた11枚の大型地図へのコンサベーションの事例。構成材料も状態も歴史も異なる。あるものはほとんど被害を受けておらず処置の必要もないもので、新しい保管法だけで対応できた。しかし、‘Map of the British Empire in North America’のようにかなり踏み込んだ直接的な処置を必要とするものもあった。モノとしての安定性や資料としての使われ方を考え、どのような処置にするかを決めた。ここでは水に敏感なこの地図への処置--表面のクリーニング、以前の裏打ちの除去、欠損部の補修、ゆっくりと乾かせる新しい裏打ち---などを解説した。予防的な対策を盛り込んだ保管法の採用がコンサベーションの最後のステップになった。

 

hdariyasjirusiJournal of PaperConservation

 

開館50周年迎えた山口県文書館、アーカイブズウィークなど多彩な行事を展開

日本で最初の文書館として昭和34年(1959年)に誕生した山口県文書館が今年、開館50周年を迎える。これを記念して同館では6月からの第4回中国四国地区アーカイブズウィーク などでシンポジウムや展示など、多彩な行事を展開する。詳細は下記ページで。


hdariyasjirusi山口県文書館開館50周年記念事業

2009年4月22日(水)

弊社スタッフによる「中国古籍の修理--コンサーバターのために」の全訳が完成しました

デヴィット・ヘリウェル著 “The Repair and Binding of Old Chinese Books. Translated and Adapted for Western Conservators.”(1998)の翻訳「中国古籍の修理--コンサーバターのために」の連載がこのほど完結しました。


hdariyasjirusi福島希訳「中国古籍の修理--コンサーバターのために」

このページの右枠内の The Grass Is Greener? Headline News of Digital Preservation のアーカイブを作りました

デジタル保存に関する世界の動きを伝える見出し(headline)だけのコーナーです。当初は週単位の読み捨てでアーカイブ化の予定はありませんでしたが、ご要望が寄せられたため、アーカイブにすることにしました。 →こちら

 

CBSのニュース "Bye, Tech: Dealing With Data Rot"、次々に生まれては腐食してゆくデータとの付き合い方


注:最初に10秒程度のCMが入り、次に8分ほどの本編が始まります

アメリカ三大ネットワークのひとつCBSは、Bye, Tech: Dealing With Data Rot と題したニュースを伝えている(3月1日付)。「遅かれ早かれ"それ"は、あらゆる音声記録、動画記録、コンピュータのファイルに影響を及ぼす。技術が進化するときに我々の最も大切な記憶や記録に何が起こるのか?」「コンピュータのデータのフォーマットが新しく生まれては消えてゆく。取り残されたユーザーはデータを読もうにももはやソフトもハードもない。これがデータ・ロット、データの腐食というものだ」。


hdariyasjirusiBye, Tech: Dealing With Data Rot

2009年4月21日(火)

予防的保存対策の事例:東京大学社会科学研究所における「労働調査」資料及び「糸井文庫」の保全対策

弊社のホームページ「プリベンティブコンサベーション(予防的保存対策)の事例」に東京大学社会科学研究所における「労働調査」資料及び「糸井文庫」の保全対策を掲載しました。目録作成からクリーニング、 アーカイバル容器(タトウ式保存箱、台差し箱及び被せ箱)の製作、収納までの作業の事例です。



hdariyasjirusi東京大学社会科学研究所における「労働調査」資料及び「糸井文庫」の保全対策

 


 

月刊IMが神戸大学「震災文庫」の挑戦を掲載、関係資料の収集、現物保存やデジタル化によるウェブでの公開まで

社)画像情報マネジメント協会(JIIMA)機関紙の月刊IM最新号(May 2009)は稲葉洋子氏(元神戸大学図書館、現大阪大学附属図書館)による「神戸大学「震災文庫」の挑戦」を掲載している(p.10-14)。

1. はじめに
図書館員という立場から震災資料をどのようにして収集し、整備・公開していくか、また将来に引き継いでいくかを考えた成果が「震災文庫」。そのノウハウを応用してもらいたい。

2. 阪神・淡路大震災からの復旧と図書館再開
学外からの震災資料を網羅的に見ることができるところはないかという問い合わせや、上司からの資料収集・公開担当の誘いがあり、着手。

3. 阪神・淡路大震災関係資料(震災資料)の収集開始~1995年4月
4月時点では一般書として出版されているものは少なく、新聞を遡っての関連記事のチェックにより、政府や市区町などの情報や催しの案内があり、大学内にも市区から送られたFAX情報などもあり、それぞれに寄贈依頼を開始した。またボランティアのNPOにも協力を仰いだ。

4. 「収集速報」をインターネットで発信~1995年7月
6月下旬までの資料数は約300点、さらに幅も広く資料を収集するためにホームページで「収集速報」として公開、冊子としてもプリントして配布した。

5. 「震災文庫」一般公開~1995年10月
資料点数が1,000点を突破、一般公開の準備。震災文庫としての、NDCとも関連付けた16の分類をした。学内施設だが一般人も自由に利用できるように規則を整備、メディアにも広報することで資料集に弾みがつく。一般利用者が押し寄せた。

6. 図書館被災写真の画像公開~1996年7月
公開件数が5,000点を突破。附属図書館の被災写真300枚の画像データを公開。インパクトが大きく反響大。

7. 新聞原紙の保存・公開
保管する8つの新聞原紙(1995年1月17日~1996年3月31日)の製本開始。ただし、当時は未配達となって欠号があるという状態。

8. 一枚もの資料のデジタル化~1998年著作権許諾依頼始める
チラシやポスターのデジタル化には著作権許諾が必要で点字図書館のそれを参考に進めたが、著作権者から新たに追加で寄贈されることが増えた。

9. 海外への情報発信
1998年はトルコや台湾で地震が発生し、このころからホームページへのアクセスが急増、現地からの資料請求やレファレンス依頼に対応できるように、日本語以外の資料の収集や画像キャプションの英訳も。

10. 神戸大学電子図書館システムへの移行~1998年
文科省の予算措置による稼動した電子図書館システムへの統合。メタデータ作成に移行し、資料の各章、各節、図表ごとのデータも提供できるようになり、使いやすいと研究者からも評価。

11. データベース「阪神・淡路大震災マルチメディア・アーカイブズ」構築
1999~2003年の5ヵ年に科学研究費補助金を受けて、一枚ものた写真資料のデジタル化、音声・動画資料、図書の全ページなどを「震災文庫」デジタルギャラリーとして全て公開している。

12. 「震災文庫」資料活用と新たな試み
本年4月で15年目を迎える文庫は、資料件数44,500点、現在も毎月200件近い資料が集まる。デジタル化済み資料は4,700件を超え、写真資料も24,000枚以上を公開、内外で活用されている。

 

hdariyasjirusi神戸大学附属図書館デジタルアーカイブ「震災文庫」のHP

hdariyasjirusi稲葉洋子氏の著作『阪神大震災と図書館活動~神戸大学震災文庫の挑戦』



(要約文責:木部)


 

2009年4月20日(月)

6月の保存修復学会、 発表タイトルが決まる

今年6月に倉敷(岡山県)で開催される文化財保存修復学会第31回のセカンド・サーキュラー(口頭・ポスター発表の表題)が明らかになった。このうち紙媒体関連は以下の通り。

 

[口頭発表]

ペーパースプリットマシンプロトタイプの開発  関正純(高知県立紙産業技術センター)、園田直子ほか(国立民族学博物館)、岡山隆之(東京農工大学)

浮世絵顔料フェロシアン化鉄による和紙の化学変化 貴田啓子、稲葉政満(東京芸術大学)

促進劣化処理をした中国宣紙の物性評価およびその応用  松尾美幸(京都大学)、梅村研二ほか(京都大学生存圏研究所)、杭迫柏樹(日展理事)


[ポスター発表]

フォクシングの形状分類法の考察および修復処置に関する研究  平野はな子ほか(東京芸術大学)

緑青による紙の損傷に対する保存処置法の研究開発--「東京国立博物館蔵十六羅漢像 A-225 16 幅」解体修理を通じて  鈴木晴彦ほか(東京国立博物館保存修復支援技術者)、神庭信幸ほか(東京国立博物館)

加速劣化処理による竹パルプ繊維シートの劣化評価  カイン・カイン・ウィン、岡山隆之(東京農工大学)

乾式コピー機トナーの移行現象について  鈴木英治(吉備国際大学)、飯島正行ほか(アトリエ・鈴木)、鈴木京子(専修大学図書館)

フォクシングに対するクリーニング、漂白処置の評価~処置後の経年シミュレーションから  大林賢太郎、四本広樹(京都造形芸術大学)

被災した近現代歴史資料の救済のための簡便な真空乾燥法の開発②  村田忠繁(九州国立博物館)、川本耕三(元興寺文化財研究所)、中村晋也(金沢学院大学)、中越一成(金沢文化財保存修復研究所)  

料紙加飾技法--打雲文様の表現と生成条件 増田勝彦(昭和女子大学)

災害等で固着した和本資料の展開について~簡易型真空凍結乾燥装置の応用と検証   荒木史ほか(石川県文化財保存修復工房)、中村晋也(金沢学院大学)、川本耕三(元興寺文化財研究所)、村田忠繁(九州国立博物館)

固着塗工紙境界面に関する保存科学的基礎研究  松田泰典ほか(東北芸術工科大学)

和装本の保存方法における新案 -- 平置き、縦置きに対応する保存箱の活用  米倉乙世ほか(東京国立博物館保存修復支援技術者)、神庭信幸ほか(東京国立博物館)

紙資料の保存・修復技術としての裏打・繕いについて 飯島正行ほか(アトリエ・鈴木)

ペーパースプリットマシンプロトタイプによる強化処理紙の劣化評価  岡山隆之ほか(東京農工大学)、関正純(高知県紙産業技術センター)、園田直子ほか(国立民族学博物館)

紙資料の褐色斑における菌体と代謝物の蛍光に関する考察  吉川也志保ほか(東京文化財研究所保存修復科学センター)

二酸化炭素処理・酸化エチレン処理がジアゾ複写物に及ぼす影響  加藤雅人ほか(東京文化財研究所)

 

hdariyasjirusi文化財保存修復学会HP


英RSP、リポジトリは「保存」に充分な備えがあるのか?---注意喚起のためのメンバーによる論議を音声ポッドキャストで提供

英国情報システム合同委員会(JISC)の主な活動のひとつ、英国内の機関リポジトリネットワークの成長と発展を目的にしたプロジェクト Repositories Support Project (RSP) のホームページはこのほど、同プロジェクトのメンバー機関からの代表による「リポジトリは「保存」に充分な備えがあるのか?」という論議を記録した音声によるポッドキャストを掲載した。約30分の論議をストリーミングでもファイルをダウンロードしてでも聞くことができる。

10名による論議の結論は「誰かが保存のことはしてくれるだろうと座して待っているのでは、とても充分とはいえない。ユーザーになにを求められているのかを特定し、保存のポリシーを確立せねば」というもの。


hdariyasjirusiDigital preservation: are repositories doing enough for preservation?

2009年4月17日(金)

Restaurator誌の最近号(2008年 No.2~4)から

図書館・文書館資料の保存修復のための季刊誌 Restaurator; International Journal for the Preservation of Library and Archival Materials の最近号から、『ほぼ日』関連論文をいくつか紹介する。

<Vol.29, No.2, 2008>

The Study of Two Humidification and Flattening Methods for Albumen Prints to Determine their Impact on the Evolution of the Cracks in the Albumen Layer
Christophe Vischi, Gregory Hill

紙焼き写真の基材として1855~1890年代に多用されたアルブミン紙への加湿とフラットニング(平らに直す処置)の効果。2つの異なった処置法がそれぞれアルブミンの塗布された表面にどのような影響を与えるか。卵白のアルブミンが塗布されたこの時代の写真は一般的に脆く、網の目のような細かい割れが発生している者が多い。加湿はこの損傷を拡大させるとしてこれまでは適用が制限されていた。まず19世紀のレシピ通りのアルブミン塗布紙を作り、これを加速老化させて割れを発生させ、(1) 加湿とフラットニングをして大きさや割れの数を顕微鏡とデジタル画像により調査、(2)ゴアテックスに挟んと加湿チャンバーでの加湿処置、(3)再度、デジタル画像での調査--を行った。ゴアテックス法では10分もたたない間に割れが変化し、チャンバーでは24時間後も変化がなかった。フラットニングもいくちか試みたが、 HomburgerとKorbelが開発した “hard-soft sandwich” 法がもっとも効果的だった。

 

A Preliminary Study on Paper Bleaching with Sodium Percarbonate
Alice Baldin, Paolo Calvini, Mariagrazia Plossi Zappalà

過炭酸ナトリウムによる新しい漂白法。処置後に塩化カルシウム液でリンスを繰り返して洗浄するとともにアルカリを残留させた。これまでの過酸化水素による変色した機械パルプ紙の漂白よりも紙を傷めることが少なく安定した結果が得られた。

 

Study of the Photochemical Stability of Paper Deacidified with Dispersions of Ca(OH)2 and Mg(OH)2 Nanoparticles in Alcohols
Emmanuel Stefanis, Costas Panayiotou

ナノレベルの粒径の水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムをアルコールに分散させた液で脱酸性化した紙(セルロースだけのものと、リグニンが入ったもの)の光化学的な安定性を見る。280 nm の紫外線に晒したところ極めて優れた結果が得られた。

 

<Vol.29, No.3, 2008>

Assessment of the Effect of Various Bleaching Agents on Papers with Foxing Stains
Jasna Malešič, Meta Kojc, Vid Simon Šelih

フォクシングが発生している古い紙に対する5種類の漂白法を適用し、長期的な安定性への効果を調べた。フォクシング部の金属イオンをレーザーアブレーションICP-MS法により確認し、紙を洗浄・脱酸性化して、それぞれの漂白処置をした後に画像スキャンしPhotoshop 7.0でCIELab値を得た。さらにこれらの紙を熱劣化加速試験したところ、漂白法はそれぞれ効果があることが判った。高濃度の鉄イオンが紙に存在する場合には、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)と亜ジチオン酸ナトリウムとの組み合わせで処置するとフォクシング部および紙自体も明るくなり、長期的にも安定性が向上することが示された。また、金属イオン含有量が少ない紙には、洗浄・脱酸性化は、水素化ほう素ナトリウムと同様の効果があり、過酸化水素や次亜鉛素酸化カルシウムで処置した場合よりも、良い結果が得られることが示された。


Infrared Imaging of Corroded and Darkened Oriental Manuscripts with Standard Digital Camera
Thi-Phuong Nguyen, Stéphane Bouvet, Alexis Komenda, Brigitte Dumont

普通のデジタルカメラに赤外線フィルタを付けて撮影し、インク焼けで劣化し読めない文書を可読化する。


New Antioxidants for Treatment of Transition Metal Containing Inks and Pigments
Jana Kolar, Alenka Možir, Aneta Balažic, Matija Strlič, Gabriele Ceres, Valeria Conte, Valentina Mirruzzo, Ted Steemers, Gerrit de Bruin

没食子インクや緑青、マラカイトといった、紙の劣化に影響を及ぼすメディアの安定化策として、臭化テトラアルキルアンモニウム(tetraalkylammonium bromides)とマグネシウムエトキシド(magnesium ethoxide)を組み合わせたアルコール溶液の使用を提案してきた。 またこれとは別のタイプの抗酸化剤-臭化アルキルイミダゾリウム(alkylimidazolium bromides)-を、水性の抗酸化処置として広く使用されているフィチン酸カルシウム(マグネシウム)や、非水性である臭化テトラブチルアンモニウム(tetrabutylammonium bromide)とマグネシウムエトキシドをエタノールに溶解させたものと比較した。 2つの新しい抗酸化剤(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド(1-ethyl-3-methylimidazolium bromide)、1-ブチル-2,3-ジメチル-イミダゾリウムブロミド(1-butyl-2,3-dimethyl-imidazolium bromide)を、それぞれ、アルカリマグネシウムエトキシドとともにアルコールに溶解させたもの)は、アイロンゴールインクを含んだ試験紙の安定化に効果的であった。また安定化の効果は前述した抗酸化剤(臭化テトラアルキルアンモニウムやフィチン酸)よりも優れており、インクの色に対する影響も見られないため、現在使用されている水性のフィチン酸カルシウム処置の代替法として期待できる。


<Vol.29, No.4, 2008>

Treatment of damaged 18th- and 19th-century manuscripts: introduction to an interdisciplinary research project funded by the DFG
Ulrike Hähner

マーブルグ大学図書館が所蔵する法学者サビニ(Friedrich Carl von Savigny、1779-1861)の肉筆原稿への処置。インク焼けが生じているものへ水性の抗酸化処置を行う。その評価については保存科学者だけでなく法学者他の学際的な協力を得た。

 

Phytate treatment of metallo-gallate inks: Investigation of its effectiveness on model and historic paper samples
Ute Henniges, Antje Potthast

濾紙のモニター紙と実際の文書上のインクへの抗酸化効果を見る。水性処置の定番であるフィチン酸カルシウムによる処置後に分子量およびカルボニル基の変化を観察したが、インク部だけでなく基材の紙自体も極めて安定していることが判った。また、鉄だけでなく銅を含むインクにも効果があった。

 

Authentic characteristics in manuscripts: An analysis of relevant characteristics before and after aqueous treatment
Gudrun Bromm

水性処置を施した後の手書き文書の真正性、とりわけ筆致のダイナミズムへの影響を、字体学、法的な筆跡学から問う。

 

What is an original? The interests of the historian working with manuscripts, for example those of Jacob and Wilhelm Grimm
Ulrich Hussong

オリジナルとは? グリム兄弟の原稿に見る真正性の意義。コンテンツだけでなく、紙やインクを包含する全体こそ現物だけが持つオーラの源。

 

Work standard for the treatment of 18th- and 19th-century iron gall ink documents with calcium phytate and calcium hydrogen carbonate
Enke Huhsmann, Ulrike Hähner

18-19世紀の没食子インク文書を水性処置する時の11のステップを記した処置基準。目視での観察、イオンの確認、濡れ特性の確認、加湿、濡らし、洗浄、フィチン酸処置、アルカリの導入、ゼラチン塗布、乾燥、フラットニング。


hdariyasjirusiRestaurator

 

(要訳文責:木部、久利、蜂谷)

 

 

ドイツIADA、尾立氏迎えて今秋に「ペーパー・コンサベーションのための日本の技術と材料」ワークショップを開催

ドイツ語圏を中心にした紙媒体資料のコンサーバターの組織 Internationale Arbeitsgemeinschaft der Archiv-, Bibliotheks- und Graphikrestauratoren(IADA)は8月31日~9月4日の5日間、バイエル国立図書館でEast Meets West. Traditional Japanese Techniques and Materials for Paper Conservationと題したワークショップを開催する。講師は尾立和則氏。「1960年に日本の伝統的なペーパー・コンサベーション(表具)の技術が紹介されて以来、現在ではその道具や材料が欧米の工房で良く使われるまでになった。しかし、それらの正しい使い方や、利点・欠点について、定かでないところが残る。講師の尾立氏は日本だけでなく、フランス、カナダ、USAでも同種のワークショップを開き、日本の技術の啓蒙をしている。講義は、紙・接着剤・道具の解説、仮張りによる裏打ち、日本の技術の特徴、ヨーロッパのコンサベーションへの融合には」。

 

hdariyasjirusiIADA COURSE:East Meets West. Traditional Japanese Techniques and Materials for Paper Conservation

 

2009年4月15日(水)

東京文化財研究所『保存科学』、「二酸化炭素処理・酸化エチレン処理がジアゾタイプ複写物に及ぼす影響」

独立行政法人東京文化財研究所の機関紙『保存科学』(第48号、平成20年度)は加藤雅人らの報文「二酸化炭素処理・酸化エチレン処理がジアゾタイプ複写物に及ぼす影響」を掲載している(p.43-48)。

一般に青図(blueprint)と呼ばれている設計図面等にはシアノタイプ(cyanotype)とジアゾタイプ(diazotype)の二種がある。近年、近・現代資料の保存への関心が高まるなかで、虫菌害駆除のための二酸化炭素や酸化エチレンによる燻蒸処理の大量な青図資料への影響が懸念されている。

この論文では酸化エチレンによるジアゾタイプの図面(2003年の建築図面)への影響を主に見たが、目視で確認できる変色が生じた。二酸化炭素処理では、比色分析では元の色よりも暗くなることが示されたが、目視では判断できないレベルだった。臭気(メルカプタン)はいずれのガスでも感じられた。表面pHは上昇した。シアノタイプ(新規に作成したもの)への二種のガス処置では、pHは上昇したが、変色と臭気の発生はほとんどなかった。

 

保存科学 第48号 (平成20年度) 掲載報文・報告

 

※ジアゾ「2003年の建築図面」とシアノ新規作成がそれぞれひとつというのは、サンプル数としてなんとしても少なすぎます(木部)

右枠にThe Grass Is Greener? Headline News of Digital Preservation を設けました

デジタル保存に関する海外ニュースの見出し(headline) だけです。週替わりの「読み捨て」です。アーカイブにはしません。  → ご要望が多いためにアーカイブにすることにしました(09/04/21)。 →こちら

2009年4月14日(火)

英NPOが「蔵書のためのセカンド・ライフ」会議での発表をPDFに、デジタル化が本命、マイクロ化の新しい展開も

英国のナショナル・プリザベーション・オフィス(NPOは、一昨年(2007年)10月に開催した「蔵書のためのセカンド・ライフ」(Second life for collections)コンファレンスでの発表をまとめ、上梓した。PDFでも全文をダウンロードできる(無料)。内容は以下の通り。

Introduction  Alison Walker, Head, National Preservation Office
The metamorphosis of Metamorfoze  Dennis Schouten, Programme Manager, Metamorfoze, Koninklijke Bibliotheek
The British Library/JISC British Newspaper projects  Ed King, Head of Newspaper Collections, British Library Newspaper Library
Project Motorway: Implementation of large-scale scanning projects  Jess Ahmon, Preservation Officer, Collection Care Department, The National Archives
Google at Oxford  Michael Popham, Head of the Oxford Digital Library, Oxford University Library Services
The future of microfilm  Paul Negus, Managing Director, The Microfilm Shop
The future of digitisation  David Dawson, Museums, Libraries and Archives Council
Case study 1. Beyond microfilm: digitising very large plans  Simon Caunt, Mining Information Projects Manager and Customer Services Manager The Coal Authority
Case study 2. The challenge of operating a local authority archive reprographic service on a commercial basis  Sue Wood and Keith Gilroy, Woodhorn, Northumberland Museum, Archives and Country Park
Case study 3. Microform and digital publishing  Roderic Vassie, Head of Publishing Microform Academic Publishers


このうち、 The metamorphosis of Metamorfoze では、大規模代替手段としてのマイクロ化を切り捨て、デジタル化へと舵をきったオランダの現状が報告されている。国家プロジェクトとして進めているMetamorfoze(紙媒体資料のうち後世に伝えるべき貴重なものの保存プロジェクト)は1997年にスタートし2008年に10年目を迎えた。国からの新たな大型の財政的支援と、国立公文書館が持つ公文書資料も含めるという対象資料の拡大に伴い、新たな転換を迫られることになった。これまでは現物への手当ては酸性紙の脱酸性化とインク焼けの抗酸化処置、そしてマイクロ化し、現物は保存箱に収納して安定した環境の保管庫に、というものだったが、デジタル化の優位性(カラー画像やウェブへの掲載等)が明らかになって、マイクロ化ではなく、デジタル化を代替手段として選択することになった。ただ、デジタル記録をどのように長期に保存し、利用に供してゆくかは、保存法やコストも含めて課題が残っている。プロジェクト全体の終了は2016年を予定している、としている。

 

Project Motorway: Implementation of large-scale scanning projects は英国公文書館の大規模デジタル化の現状。2011年までに最もポピュラーな記録を1億、デジタル画像にする。外部の業者と契約して、デジタル画像の元になる資料(すでにマイクロ化されたものも含む)を提供し、業者の運営による有料でのダウンロード・サービスを行っているが、この発表では計画の概要ととともに、原資料の紙媒体の記録物をデジタル化する際の取り扱い(ファスナーの除去の可否、破れや折れ、欠損などの処置)の考え方と事例をコンサーバターの関与とともに紹介している。

 

The future of microfilm は英国最大のマイクロフィルム関連資材販売業者によるマイクロフィルムの将来展望。デジタル化の波に押されてマイクロフィルムの市場は劇的に縮小しており、5~10年内に下げ止まったまま回復は望めない。フィルムの3大メーカーのうちKodak とAgfaからの回答から推すとフィルムが無くなることはないが、他社分を1社に集約して生産することは今後ありうるとしている。市場はデジタルに奪われているのは明らかだが、長期保存のメディアとしての価値は変わらず、マイクロフィルムからのデジタル・スキャニングと、保存のためのデジタル・データのマイクロ化という市場は今後、大きくなるだろう。新しい商品としてはデジタルから500年の寿命を持つカラー・マイクロへ転換するシステム、モノクロ・フィルムでのスイスの Ilford社の参入と生産が挙げられる。最も新しい市場としては、オンライン・データをウェブを介してマイクロ化するサービス、バイナリー・コードのマイクロフィルムでの保存がある。トピックとして最後に、スイスの国立音響アーカイブ(Swiss National Sound Archives)は、円盤レコードの溝を鮮明なマイクロ画像として撮影し残すことで、「音」の復元を可能にした例が挙げられている。


hdariyasjirusi2007 Conference "Second Life for Collections"

 

 

2009年4月10日(金)

ゲッティ美術館と国立西洋美術館が共催で「地震対策」の国際シンポジウムを7月に開催

米ゲッティ美術館国立西洋美術館が共催で「美術・博物館コレクションの地震対策」の国際シンポジウムを7月21~22日に西洋美術館講堂(台東区上野公園)で開催する。聴講は無料。100名まで。締め切りは6月末。詳細は下記ページで。


hdariyasjirusiJ.P.ゲッティ美術館、国立西洋美術館共催国際シンポジウム

 

ノルウェイのコンサーバター Poulsson 著『アート・オン・ペーパーへのレタッチ』が上梓、美的な統一性重視でレタッチの意義を

ノルウェイの国立美術館(Nasjonalmuseet for Kunst)のペーパー・コンサーバター Tina Grette Poulssonによる Retouching of Art on Paper が出版された。アート・オン・ペーパのコンサベーションでのレタッチは、損傷箇所を直すためにオリジナルの作品そのものに直接描き入れたり 、あるいは補填した部分に施される処置であるが、「オリジナルではないものが作品に加わる」ことは間違いないため、特に直接的な処置については可逆性がどこまで保持されるのか、作品の真正性を侵犯することにはならないのかといった倫理的な問題が論議され続けてきた。一方、補填部へのレタッチは、オリジナルと見まごうばかりの処置ではない限り、まだ受け入れやすい状況にある。Poulsson のこの本は、困難な課題といえる作品への直接的処置について、あえて焦点を当てて書かれている。ただし、デジタル的な再構成や、ファクシミリによる「再生」については一章を設けている。「芸術作品とは鑑賞されてナンボのもの。それゆえ美しさがなにより優先される。レタッチはイメージの構成やその解読を保全するものであるという考え方に則して、可否を論ずるべきだ」というのが論旨。

 1. Introduction
2 History of Retouching Art on Paper
3. Works of Art on Paper and Historical Consciousness
4. Ethics of Retouching
5. Retouching and Reconstruction in Practice
6. Conclusion

ISBN: 9781904982135
£22.50 / $45.00
Paperback 127 Pages
25 colour, 13 half tones Illustrations 

Retouching of Art on Paper

 

 

今年もツバメが----


弊社のビルの地下駐車場入口の軒下にツバメの巣があります。そこに今年もツバメが帰ってきました。7月ぐらいまでにヒナが育ち、また旅立って行きます。駐車場は通りに面していて、近くには小学校があり、学校帰りの子供たちのちょっとした人気スポットになります。「つばくらめ飛ぶかと見れば消え去りて空あをあをとはるかなるかな」(窪田空穂)

2009年4月9日(木)

カナダ国立文化財研究所(CCI)、Strang とKigawa共著の『文化財を襲う有害生物と戦う』を上梓


カナダ国立文化財研究所はこのほど、同研究所の Tom Strang氏 と東京文化財研究所の木川りか氏の共著による『文化財を襲う有害生物と戦う』(Combatting Pests of Cultural Property)をテクニカル・ブレティン#29 として上梓した。

文化財を襲う害虫などの有害生物有は見た目だけでなく、コレクションの有機的な一体性とともに、建造物、オブジェなどに破壊的な被害を及ぼす。これを防ぐには、コレクションを取り巻く環境への配慮、有害生物の発見と確認、そして改善する行動が必須である。価値の喪失を長い時間の中で減じるのが予防的コンサベーション戦略( preventive conservation strategies)と呼ばれるもので、IPM(総合的有害生物管理)の適用はこのプロセスのひとつになる。ヒトが働く環境を安全に維持するとと同時に、モノへの不都合な影響を最小にするという昨今の関心のありどころが背景なっている。あらゆる制御の方策や処置の効果は、生物被害の繰り返しや被害の範囲を減ずることで測ることが出来る。この冊子ではコレクションを襲う代表的な有害生物の説明と、その被害を減ずるための行動に向けてどのように全体的にアプローチしてゆくかが述べられる。また、被害発生の発見に見合う改善策を導き出す調査法はIPMの第一歩であり、屋外の施設から最新鋭を誇る保存庫にまで、幅広く適用できる。

TB #29 Combatting Pests of Cultural Property
Price In Canada: $20.00, Other Countries: $25.00
paperback, 44 pp., 2009
ISBN: 798-0-660-19899-6
Code: 0901

入手は下記ページから

The Bookstore: TB #29 Combatting Pests of Cultural Property

 

東大東文研が第4回『アジア古籍保全講演会』記録集を上梓、災害と資料保全がテーマ

今年1月に開催された昨年9月に開催された第4回『アジア古籍保全講演会』の記録集がこのほど出版された。A4版、111頁。テーマは「災害と資料保全」。内容は以下の通り。

 ・災害と資料保存 内田俊秀 (京都造形芸術大学芸術学部教授)

・震災時の資料収集と情報発信 -「震災文庫」の挑戦- 稲葉洋子
(大阪大学附属図書館利用支援課長)

・必要な、複合災害対応型の「資料保存」 -インドネシア・スマトラ沖大津波災害
事例から学ぶ- 坂本勇 (ペーパー・コンサバター/駿河台大学非常勤講師)

・東洋文化研究所図書室の資料移転と保全活動 東洋文化研究所図書室


東京大学東洋文化研究所図書室

 

 

10月にコペンハーゲンで開催される第12回「手稿のケアとコンサベーション」セミナーのプログラム、ビザンチン製本などテーマに


link source:http://cc12.nfi.ku.dk/fllesportrt1.jpg/

毎年デンマークのコペンハーゲン大学を会場に開催される Seminar on the Care and Conservation of Manuscriptsの第12回セミナーのプログラムが発表された。期日は10月14~16日。活字以前の手書きによる書物や文書のコンサベーションに的を絞った定期セミナーとして欧米のコンサーバターに定着ししている。今年は、ビザンチン製本の修復、手稿資料を対象にした状態調査、ボックス製本(box-binding)のコンサベーションなど23の口頭発表が予定されている。アブストラクトが大会直前にウェブに、予稿全文は毎年、紙媒体で出版されている。


Care and conservation 12 - October 2009

2009年4月8日(水)

国際文化財保存修復学会(IIC)の2010年大会は9月にイスタンブールで、地中海東岸の文化財とコンサベーション

国際文化財保存修復学会(IIC)の2010年大会は「地中海東岸の文化財とコンサベーション」(Conservation and the Eastern Mediterranean )の総テーマで、来年(2010年)9月20日~24日にイスタンブール(トルコ)で開催される。研究発表を募集しており、アブストラクト送付締め切りは今月末。詳しくは下記ページで。


IIC Congress 2010: Conservation and the Eastern Mediterranean - call for papers

 

ICOM-CC2008年大会の特別セッション発表予稿集「チベットの宗教画タンカの保存修復」がPDFに

昨年9月に開催された国際博物館会議保存修復分科会(ICOM-CC)大会での特別セッション「タンカのコンサベーション」(Conservation of Thangkas)の発表予稿集ICOM-CC のサイトにPDFで掲載された。タンカは綿布に白亜と膠を載せて下地を作り、顔料で書かれた宗教画。チベット文化圏で作られる。巻いて保管されたり持ち運ばれるために傷みが生じやすい。予稿集には、アジアと欧米の研究者やコンサーバターによる保存のための考え方や方法を述べた13の口頭発表全文と4つのアブストラクトが掲載されている。


Proceedings of the Forum on the Conservation of Thangkas

2009年4月7日(火)

コンサベーションで使われる材料や技術のオンライン・データベースCAMEO、収録素材は1万点を突破

cameo

文化財の保存修復分野で使われている材料や、コンサベーション技術の解説のオンライン・データベース CAMEO(Conservation and Art Materials Encyclopedia Online)がサイトを一新するとともに、収録素材が10.000点を突破した。ボストン美術館のサイトに置かれたCAMEOは1997年に同美術館により作成、公開された。2002年からは米博物館図書館協会の、2005年からはメロン財団の支援を受けて構築されてきた。材料の検索では、材料名や商品名からはもちろん、CAS番号、分子量等の化学・物理的な物性からも検索できる。また関連する文献や画像(9,000点)も掲載されている。用語からのブラウジングによるアクセスも可能。


CAMEO

 

2009年4月6日(月)

全米人文科学基金(NEH)、来年度の「保存とアクセスのための研究開発助成金」の申し込みを開始

全米人文科学基金(The National Endowment for the Humanities)はこのほど、2010年に向けての「保存とアクセスのための助成金」(Preservation and Access Research abd Development Grants)申請を受けつると発表した。なかでもデジタル記録の保存、音響・動画記録、現物アナログ資料を保護し劣化を抑制するための予防的な保存手当て(preventive conservation)の3つが特定助成対象分野になり、向こう3三年間で40万ドルが交付される。


NEH Preservation and Access Research and Development Grants

 

欧州DPEのサイトが「デジタル写真資料保存の神話と誤謬」意見書で提言、ハードはRAIDで、ファイルはTIFFで

欧州委員会によるデジタル資料の保存のための協力推進組織(DPE: Digital Preservation Europe)のサイトはメンバー機関からの意見書(briefing paper)として「デジタル写真保存の神話と誤謬」(The myths and fallacies of digital photographs and their preservation)を掲載している(3月31日付け)。著者はウィーン工科大学ソフトウェア&インタラクティブ・システム科デジタル保存グループの Christoph Beckerら。専門的な写真家の立場にたってデジタル写真の保存の困難さと、将来残すための方策を論じている。

デジタル写真はアナログ写真に対して、膨大な量の画像をワンタッチで手軽に保存し将来に残せるとして極めて魅力的に思えるかもしれない。しかしその保存上の危うさは、JPEGなどの元になるRAW画像を扱う専門の写真家でも問題視するようになってきた。

デジタル写真は2つの脅威にさらされている。①火災や水害によるストレージしたデータ全部の突然の消滅、②JPEG画像が将来的にも可読可能な普遍的なフォーマットとして存続するとしても、RAW画像についてはそれぞれのデジタルカメラでフォーマットが違っていて統一されておらず、将来使えるかどうかわからない。

そこで当面の対策だが、確実なバックアップが要になる。次の6点に注意したい。

 1. CD, DVDに頼らない。寿命も短く、なによりも信頼性の差が予測しがたい。また蓄積したデータの管理が難しくなる。

 2. ハードウェアはRAID(レイド。複数台のハードディスクを組み合わせる)システムで、ひとつのディスクが壊れてもデータを取り出せるように、他のディスクに重複する形でバックアップそておく。

 3. 付加的なバックアップ手段として外部ハードディスク・ドライブを使うときには、それが「活きて」いるかどうか、すくなくとも月に一度は作動させてみる。

 4. オリジナルの画像は安定した標準的なフォーマット、例えばTIFF(LZW圧縮して)などに変換しておく。

 5. 将来の画像の改良などがあることを想定できるならば、RAW画像も保存しておく。

 6. バックアップ・データが復元可能かどうか定期的にチェックする。


近い将来は、専門的な写真家は次の2つのサービスを使うことになろう。

 1. アンチ・ウィルス・ソフトのように、自然と、自動的に、自分のパソコンやハードディスクに収めたデータのケアをするサービス。

 2. 手持ちのハードディスクで保存するんではなく、サーバーにアップロードして保管し、いつでも引き出せて加工できるというサービス。

 

The myths and fallacies of digital photographs and their preservation

 

2009年4月3日(金)

3月18日開催の衆議院内閣委員会、小渕特命大臣への民主党議員による公文書館関連の質疑

国立公文書館のサイトはこのほど、3月18日に開催された衆議院内閣委員会での、小渕優子内閣府特命大臣への西村知奈美議員(民主党)と佐々木隆博議員(同)による公文書館関連の国会質疑の抜粋をPDFで掲載している。

 

第171回国会における公文書館関連の国会質疑等(3月28日現在)

 

下記ではやりとりの全部を動画で観ることができる。画面右サイドバーの「ライブラリ」日付からたどれる。

衆議院インターネットTV

 

2009年4月1日(水)

米議会図書館の保存修復ラボ、グリーン・ケミストリーへの転換で環境負荷を大幅に低減

アメリカ議会図書館の保存修復のための試験研究部門 Preservation Research and Testing Division (PRTD) は国が押し進めるグリーン化のためのガイドライン Leadership in Energy and Environmental Design (LEED) に則したグリーン・ケミストリーもしくはグリーン・ラボへの転換を行ってきたが、化学薬品の使用量を可能な限り少なくすること、それに見合う新しい試験法の開発、新鋭試験設備の導入などにより、過去の10年間と比較して環境負荷率を50%低減できたと発表している。同部門は25年の歴史を持つが、2006年に抜本的な見直しに着手した。

Lab Renovation: Increasing Energy Efficiency and Reducing Environmental Impact

 

「読めない資料を読む」、巻いたものや束ねたものも、そのままCTスキャニングしてヴァーチャルに開く


source: http://www.youtube.com/watch?v=wQ8v69wJ3K4

米ケンタッキー大学コンピュータサイエンス学部の Brent Seales 博士らは、古代の巻物や束になった文書など、物理的には開閉が難しい資料をCT(コンピュータ断層撮影)スキャニングして層毎の画像として取り込み、ヴァーチャルに「開いて閲覧する」技術を開発した。実際の資料への適用に当たってはミシガン大学コンサベーション・ラボの Shannon Zachary, Leyla Lau-Lamb そして Cathleen Baker が協力した。28分の動画が Youtubeにアップロードされている。

 

※この情報は KEVIN DRIEDGER 氏のブログで教えてもらいました。
Michigan Conservators in Action



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