

弊社スタッフによる「インク焼け資料への保存修復手当て-効果の比較実験 Ⅰ」を掲載しました。明治期以降の公文書や原稿、手紙などに使われてきたブルー・ブラックインクには、インクに含まれる硫酸が紙の主成分であるセルロースの加水分解を引き起こし、また鉄イオン(特に二価、三価の鉄イオン)が直接、あるいは触媒となって酸化反応が起こり、セルロースを劣化させるものがあります。日本のインク資料に対して、海外で実際に行われている幾つかの処置法、更に近年注目を集めている非水性の処置法を試験し、その効果を比較、検討しました。今後、継続的に進めてゆくCSSのテーマのひとつです。
スタッフのチカラ:久利元昭「インク焼け資料への保存修復手当て-効果の比較実験 Ⅰ」

link souce: http://pubs.acs.org/appl/literatum/publisher/achs/journals/production/nalefd/2009/
nalefd.2009.9.issue-5/nl803800c/images/medium/nl-2008-03800c_0004.gif
米カリフォルニア大学の科学者らはこのほど一兆ビットの情報を10億年間安定保存可能なデバイスを開発したと発表した。アメリカ化学協会(ACS)の機関紙 Nano Letters(2009; 9/5)に掲載されている。このデバイスは 鉄ナノ粒子(径が毛髪の5万分の1)をナノサイズのカーボン・チューブに組み込み荷電させてチューブ内を極めて精密に往復させることで、現在のシリコンチップのように情報を保存でき、普通のコンピュータのハードウェアとして利用できるとしている。膨大な情報を保存できるだけでなく、理論値では10億年、安定した保存が可能という。
Nanoscale Reversible Mass Transport for Archival Memory
5月27日の衆議院内閣委員会は約4時間を費やし、公文書管理法案について集中審議した。質疑者は西村智奈美(民主党・無所属クラブ)、逢坂誠二(民主党・無所属クラブ)、吉井英勝(日本共産党) 、重野安正(社会民主党・市民連合)、上川陽子(自由民主党)。答弁者は小渕優子(少子化対策担当大臣 男女共同参画担当大臣 )、増原義剛(内閣府副大臣)、倉田雅年(総務副大臣)、並木正芳(内閣府大臣政務官) 、西銘恒三郎(国土交通大臣政務官)。すべての審議を衆議院インターネットTVのアーカイブで観ることができる。
衆議院TV
※左のカレンダーから「5月27日」を選択し、さらに「内閣委員会」を選択。

資料全体にキャストする方法と、部分的にキャストする方法
弊社スタッフによる「リーフキャスティングの技術と歴史」を掲載しました。紙媒体のコンサベーションの現場で世界的に使われているリーフキャスティング(漉き填め)は、紙繊維の懸濁液を欠損部に流し込み、その部分で紙を漉き補填する技術。60年代に登場し、現在では紙力強化など他の方法との組み合わせも開発されている。この技術を内外の文献や関連情報を精査し、歴史的に跡づけたものです。
スタッフのチカラ:福島希「リーフキャスティングの技術と歴史」
紙パルプ技術協会は2008(平成20)年度に大学や官公庁研究機関が行った紙パルプに関連する研究の題目調査結果を発表した(紙パ技協誌、2009年5月号、p.86-93)。このうち『ほぼ日』関連は以下のとおり。
・東京大学大学院農学生命科学研究科生物材料科学専攻製紙科学研究室
「画像解析による古文書の表裏および抄紙方法評価法の開発と古文書の修復技術の構築」
・東京農工大学大学院共生科学技術研究院環境資源共生科学部門再生資源科学研究室
「脆弱化した図書・文書資料の非破壊劣化度評価と新規強化処理法の開発」
・東京芸術大学大学院美術研究科文化財保存科学専攻保存科学研究室
「紙の劣化と保存に関する研究(水洗処理の影響、竹紙、プルシアンブルーの影響)」
・高知県立紙産業技術センター
「ペーパースプリット法による大量強化処理法の開発」
朝日新聞文化財団は事業の柱として文化財保護助成を始めた。これまでの財北米芸術活動助に並ぶもの。国、又は都道府県、市町村の指定文化財並びに歴史遺産、及びそれに準じる芸術・学術的に価値のある文化財並びに歴史遺産が対象になる。今年の申請受付開始は6月1日から、〆切は7月21日。助成金は1件につき数十万円から数百万円の予定。詳細は下記HPで。
北米の123の大学図書館等で組織する研究図書館協会(ARL: Association of Research Libraries)はこのほど、デジタル時代の新しい資料保存の在り方をまとめた報告書「新世紀の始まりにおける蔵書の安寧な保護:ARLメンバー図書館での資料保存業務の現状と今後の役割」 “Safeguarding Collections at the Dawn of the 21st Century: Describing Roles & Measuring Contemporary Preservation Activities in ARL Libraries" を発表した。ARLのサイトからダウンロードできる。
ARLは研究図書館における資料保存の重要性に鑑み、1987年から各年度のメンバー図書館での関連業務の実態をアンケート調査して統計的にまとめたARL Preservation Statistics を毎年公表している。この調査においても、図書館製本やマイクロフィルムあるいは脱酸性化や代替化などの業務の実態は把握されていたが、アナログ資料とは基本的に異なるデジタル資料の保存や、研究・教育・学習のデジタル・ネットワーク環境下での変化をどのように資料保存業務の中に組み込んでいくのかといった課題には充分に応えられるものではなくなったいた。このため同協会は2006年に作業グループ(2006 ARL Task Force on the Future of Preservation)を立ち上げ、資料保存の重要性の再認識を周知させるとともに、新しい環境下での研究図書館における資料保存の在り方を探る調査と、これを元にした提言をまとめることにし、Lars Meyer (Emory University)を Visiting Program Officerとして招聘し委託した。主な目次は以下の通り。
Preface
Executive Summary
Introduction
A Working Definition for Preservation
Reshaping the Preservation Functions in Research Libraries
Creating Digital Surrogates
Collecting Web-Based Content
Collecting Machine Dependent Media
Traditional Core Preservation Activities
Environmental Conditions and Housing
Physical Treatment (Conservation, Binding, Deacidification)
Staff and User Education, Disaster Preparedness and Response
Reformatting
Partnering to Preserve Racing’s Rich History
Preservation Administration and Organization
The Networked Digital Environment
Digital Curation: An Emerging Concept
Preserving Digital Content (Surrogate and Born Digital)
Web Archiving
Digital Repository Development
IDEALS
Third Party Strategies for Preserving e-Journals and Other Content
Library Collaborative Strategies
Digitization
Web Archiving
Shared Storage: Print
Shared Storage: Digital
Deacidification
Next Steps
Conclusion
以下、同報告書の重要な論点を整理した Executive Summary および本文を、若干の解説とともに紹介する。
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Executive Summary(p.7-9)から
報告書は次の3つのテーマを軸に、それぞれの背景と現状分析を行い、ARLが主導すべき提言を行っている。機能、ネットワーク、協力である。
まず、図書館における資料保存という機能の再構築が挙げられる。資料保存は図書館の一部門だけが担えばよいというものではない。一方、資料の属性が、たとえばアナログかデジタルへと変化すれば、それに応じて、資料保存部門と他部門との関係にも変化が起きる。資料の利用者のニーズに応え行くためには図書館は組織の不断の再編成を求められる。資料保存の役割と関連する業務に関する提言としては、役割の自覚と、役割を果たすためにはどの資料が重要かという優先順位付け、練り上げた政策と戦略、資料のライフサイクル全体での戦略的な行動の決定、有機的な連携の元での不安定なデジタル・メディア依存コンテンツへの対応、環境負荷を考慮した費用対効果の算出やリスク分析、貴重資料の利用増加に伴うコンサベーションへの対応、資料保存のための図書館製本という認識、デジタル化や代替不可の書籍などへの脱酸性化、職員への教育の徹底と防災・救助計画の立案、将来のデジタル化を前提にしたマイクロ化とコピー、デジタル代替物保存に対するコミュニティ全体の考え方の統一--である。
次は、ネットワーク化されたデジタル環境の構築。分散したデジタル環境下では図書館単独での制御は難しいが、デジタル・コンテンツの将来に向けての可能性と、その不安定さを考えあわせると、今以上の直接的な関与が必須になる。そこで提言としては、デジタル・キュレーション(生成から保存、媒体変換などのライフサイクルを意識してデータを管理すること)を図書館単独ではなく、キャンパス全体で、あるいは外部とのパートナーシップを持って遂行する、ボーン・デジタル・コンテンツの保存のための著作権処理と技術的なインフラ整備および長期的な人員の配置、デジタル・リポジトリの活用。これらとは別にサードパーティによる電子ジャーナル・コンテンツの保存に対応する図書館としての投資と資源再配置。
三つ目が資料保存のための図書館間の協力体制の構築。資料保存に求められている課題を考えれば、単独の図書館では解決できない。ローカルなレベルでは経済的にも技術的にも無理である。そこで、機関を跨ぐ形での協力体制を作るための国の強いリーダーシップ、同じ資料を別の機関が重複してデジタル化するといった無駄を除くための図書館間の情報のシェア、ウェブ・コンテンツ保存への取り組みへの機関間の同意、すでに分担保管されている書籍等に関して集められた知識に対する関与、維持・マイグレーション・最も優れた品質のコピー等に必要なデジタル保管の政策、同一資料への脱酸性化処置の重複をふせぐための情報センターの設置--を提言している。
結論として、ARLメンバー他が今後進むべき方向を提言している。すなわち、コミュニティが行き当たる課題に注意を向け解決へと導く機関内また機関を跨いでの今以上の協力・協業体制を作る、ARLは、図書館自らがどのような活動をしているのかという情報を互いにシェアするように働きかける、資料保存活動のための専門家を得るための道を探るとともに、専門家の能力を最大限活かせるようなパートナーシップを組む、ARLに属する全ての図書館は、自らに課せられた受託責任と使命に適合した資料保存活動の核になる業務を維持する、デジタル・データのような不安定なコンテンツとそれに関連する技術環境を継続的に追いかけるためのスタッフを養成する。
本文(p.11-53、Appendix を含む)から
デジタル化を背景に、北米の研究図書館での書籍等への直接的な処置業務がどのように変化しているのか示すグラフが、本文の Physical Treatment (物理的処置:コンサベーション、図書館製本、大量脱酸性化)に掲載されている(p.19-22)。このうち、コンサベーション(ここでは貴重書や貴重文書を対象にした物理的な処置を表す)と、大量脱酸性化処置の変遷を見る。
コンサベーション(Conservation)

図4:製本された資料に対する物理的な処置の対象数の推移

図5:保護容器の採用数と、製本されていない一枚物の処置数の推移
図4と5によると、貴重書や特別コレクション等へのコンサベーションは、2003年以降、処置数が減少傾向にある一方で、保護容器の採用数が増加しているのが判る。「おそらくはコンサベーションや大量脱酸性化処置に振り分ける資源が減少してきたことを補うかたちで、保護容器により資料の安定化を図るというトレンドの表れではないか」(p.19)。
大量脱酸性化処置(Deacidification)

図6:ARL傘下のL大学図書館での書籍やパンフレットへの脱酸性化処置数の推移
大量脱酸性化処置はそれほど盛んに実施されているわけではない。その理由としては、CLIRの2007年の論文によると、費用が高い、資料を館外に持ち出さねばならない、資料によっては処置で悪い影響がでる、長期的な効果がまだ明確ではない、総合的に見てコスト的に見合うのかどうかに確信がない---。
今回の調査にあたっては脱酸性化を資料保存戦略のひとつとして検討するための資料保存のエキスパートからなる小グループが組織され、次のような意見が提出された。すなわち、図書館数が減少していくことは、一般蔵書をオリジナルのフォーマットで残す使命があることを意味する、資料保存の活動を特別なコレクションやユニークな所蔵資料、視聴覚資料、デジタル・アーカイブに集約することが活発になっている、デジタル化を、保存のためにというばかりではなく、旧来おこなわれてきた製本等にかかる支出を使って推進することも活発になっている、脱酸性化処置が必要な資料は現在も新たに蔵書に組み込まれている、脱酸性化の効果と長期的な影響についてより厳密な研究が必要である---。
物理的な処置の懸案事項(Physical Treatment Concerns)
処置の費用は場合によりさまざまだが、総じて費用対効果は良好である。また、特別コレクション、とりわけ閲覧や展示の頻度が多い資料にはこうした処置は必須である。とはいえ、資料保存や蔵書構築の担当者が指摘するのは、特別コレクションの構築を求められれば、その舵取りをしなければならず、他方ではコレクションへのアクセス拡大を求められるといった緊張である。また、貴重な現物資料の購入費を犠牲にしてまでデジタル・コンテンツを購入することやコレクションのデジタル化が行われることへの懸念もある。
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なお、ARLは報告書に関する議論を著者のMeyeと交わすウェブ・キャストを、この夏にサイトに設置するという。
[文責:木部]

link source: http://e-jhk.com/weblog/wp-content/uploads/2009/04/bookkeeperplant2-300x224.jpg
株式会社プリザベーション・テクノロジーズ・ジャパン(PTJ)はさいたま市に設立した「ブックキーパー大量脱酸プラント」のユーザー向けの見学説明会を6月17、18日の両日、開催する。現在、参加申し込みを受け付け中。詳細は下記ページで。
ブックキーパー大量脱酸プラント見学会のご案内 ㈱プリザベーション・テクノロジーズ・ジャパン

Inaのロボットによる保管システムと、延べ100kmの棚に収められた動画記録のデジタル化に取り組むBBC
国際図書館連盟(IFLA)資料保存分科会の機関誌 International Preservation News の最新号(NO.47, May 2009)は特集「視聴覚資料の保存:動画編」(Preservation of Audiovisual Collections; Moving Images)として、欧米各国機関での動画保存の事例等。また、資料保存クロニクルとしてマレーシアとシンガポールの図書館・アーカイブでのコンサベーションとプリザベーションの紹介が掲載されている。なかでもフランスの視聴覚資料の保存のための国立機関 Institut National de l'Audiovisuel(Ina) の充実した施設と計画、そして英国BBCのさまざまな動画メディアごとのマイグレーション戦略と方法の周到さが目を引く。目次は以下の通り。
Video Archiving and the Dilemma of Data Compression Dietrich Schüller (Phonogrammarchiv, Austrian Academy of Sciences) 5
Presto – PrestoSpace – PrestoPRIME Daniel Teruggi (Institut National de l'Audiovisuel, France) 8
Preservation of Broadcast Archives – a BBC Perspective Richard Wright (BBC Research & Development, UK) 13
La stratégie de sauvegarde et de numérisation des archives de l’Institut National de l’Audiovisuel, 1999-2015 Dominique Saintville (Archives de l'Institut National de l'Audiovisuel, France) 18
Preserving Digital Public Television: Is There Life After Broadcasting? Nan Rubin (NDIIPP of the Library of Congress, USA) 26
Long-term digital preservation of a new media performance: "Can we re-perform it in 100 years?" Viliam Šimko, Michal Máša (CIANT International Centre for Art and New Technologies, Czech Republic) and David Giaretta (STFC, Rutherford Appleton Laboratory, UK) 32
KEEP: L’Europe veille à ses documents électroniques Jean-Philippe Humblot (Bibliothèque nationale de France) 35
Technical and normative scenarios in the medium and long term for libraries audiovisual collections Henri Hudrisier (Paris 8 University)and Alain Vaucelle (ARTEMIS, TELECOM SudParis) 36
Chronicles of Preservation: Conservation and Preservation in Malaysia and Singapore Aurélie Bosc (Bibliothèque nationale de France) 39
International Preservation News, No 47 - May 2009

弊社は先に、人と防災未来センター様(神戸市中央区)から「神戸新聞」1995年1月16日~31日発行分(計28点79枚)をお預かりし保存修復手当て(コンサベーション)を行いました。このほど完成したのを機に、同センター様のご快諾を得て、処置記録を掲載しました。解体、粘着テープ除去、、ドライ・クリーニング、スポットテスト、洗浄、破損部修補、脱酸性化、加湿、フラットニング、足付きフィルム・エンキャプシュレーション、平綴じ製本という、新聞資料への一連の処置です。
阪神・淡路大震災の記録を残す:「1995年1月16日~31日付け 神戸新聞」への保存修復手当て
『ほぼ日刊資料保存』の「カテゴリーからの記事へのアクセス」に「コンサベーションのための評価試験」を掲載しました。1950年代から2003年までの海外の文献一覧(約300)に、アブストラクトやウェブ上の原本へのリンクをつけました。
カテゴリーからの記事へのアクセス「コンサベーションのための評価試験」

資料の保存と活用に関連した専門業者の団体であるJHK:情報保存研究会はこのほどサイトを一新した。セミナーなどのおしらせや、会員企業からの積極的な情報発信のコーナーを設ける一方で、好評な「JH{K質問箱」もより使いやすいフォーマットに改めた。質問箱は、図書館やアーカイブの現場で行き当たる資料の保存と活用に関連したあらゆる疑問をJHK当て問い合わせると、メンバー企業から回答がJHKに寄せられ、まとめた形で質問者に返信される。メンバー企業には匿名で質問が送られ、質問者の所属やメールアドレス等も一切、知らされない。専門家の知恵を活用できるユニークなシステム。

写真資料の保存の研究機関として世界的に知られる米Image Permanence Institute(IPI)はこのほど、15世紀の木版画から現在のインクジェットによる画像まで、その特徴と製作技術をデータベース化した Graphic Atlas を公開した。顕微鏡による拡大、遮光による表面や、断面のイメージを動画も駆使してわかりやすく解説している。ユーザーは手持ちの印刷画像の視覚的な特徴とデータベースとを見比べることで同定ができる。IPIが2006年から構築してきたもの。
デンマーク王立芸術アカデミー付属保存修復学校(Conservation School of the Royal Danish Academy of Fine Arts)は、博物館等の保管環境研究の第一人者 Tim Padfield とデンマーク国立博物館の Poul Klenz Larsenらによる「博物館・アーカイブでの省エネルギー保管環境の制御」(Workshop on low energy climate control in museums and archives)ワークショップを10月26-30日に同学校で開催する。
保管環境の適正な制御は博物館・アーカイブの資料の長期保存の要といえるが、コンサーバター、学芸員、アーキビスト、現場で実際に設備やシステムを扱うエンジニアなどの間で、認識のギャップが著しい。今回のワークショップは、保管環境制御においてこれまでの通念に疑問符を投げかけ、抜本的な認識の改定を提言している Tim Padfield による「省エネルギー保管の有効性」を中心に、具体的な建物を対象にした訓練も交えて、5日間のプログラムが組まれている。詳細は下記で。
Workshop on low energy climate control in museums and archives
国際図書館連盟(IFLA)のコア・プログラムの一つPAC(Preservation and Conservation)の事業として今年(2009年3月にフランス国立図書館で開催された“In and out Air Strategies. From Climate Change to Microclimate. Library, Archives and Museum Preservation Issues”コンファレンスの短いレポートがPACのサイトに掲載された。このコンファレンスは資料保存のための関連の深い4つのテーマ(Air、Water、Fire、Earth)ごとに定期的に開催することになっている。今回のは、図書館・アーカイブ・博物館の内部と外部の大気環境について2日間にわたり、4つのセッションで、地球規模での環境の変化、カトリーナ台風の被害からの教訓と後の対策、資料の保管環境内のVOC(揮発性有機化合物)の影響、大気制御と自然の換気の管理、、低酸素保管の有効性などについて11の報告とディスカッションが行われた。報告の全文を含む詳細は近い将来にPACのサイトに掲載される予定である。
英国図書館(BL)がメロン財団から69万5千ドルの助成を受け、2005年から進めてきた The Identical Books Project,が終了し、3月23、24日に「紙媒体のコンサベーション研究の最前線」(Advances in Paper Conservation Research Conference)として成果発表のコンファレンスが開催された。その短いレポートが英国図書館のサイトに掲載されている。
Identical Books Project とは英国図書館を中心に国内6つの法定納本図書館が協力し、それぞれが所蔵する書籍資料のなかから同じものを400点選出、これが通常の保管環境の下で経時と共にどのように劣化して行くかを研究するプロジェクト。その成果発表会として開催された今回のコンファレンスには内外からの16人の発表者と、100名余の聴講者が参加した。初日は英国および欧州の図書館やアーカイブ、そして保存科学分野での研究の現状が紹介された。2日目は紙そのもの、本、それらを取り巻く環境に焦点が当てられ、紙から発生しているVOCを観察することによって劣化状態を非破壊的に測る方法、保管環境の様々な計測法、近赤外線による非破壊劣化計測プロジェクト(SurveNIR)、Identical Books Project,の成果などが発表された。予稿集は近日中に、Project,の全データは9月に、英国図書館のサイトに掲載される予定である。
Advances in Paper Conservation Research Conference
アジア文化財保存修復会 / Paper Conservators Asia Unlimited ( PCAU ) は国際交流基金助成を受け、2005年から2007年までの3年計画でネパールの首都カトマンズにあるアサ古文書館が所蔵する劣化の激しい約1,200点の泥封印付巻物型貝葉写本 / Rolled Palm Leaf Manuscript ( 以下RPLM ) の保存修復・デジタル化事業を実施した。弊社はこのプロジェクトを、保管用のアーカイバル容器の製作と提供というかたちで支援しました。『ほぼ日』この事業の簡潔な報告を寄せてもらいました。

行き場のない橋(bridge to nowhere)
link source; http://images.salon.com/news/feature/2005/08/09/bridges/story.jpg
Internet Archive(IA)の総帥ブルースター・ ケイル(Brewster Kahle)の Economics of Book Digitization がOpen Content Alliance のHPに掲載されている。「誰にでも開かれたパブリックなデジタル図書館」という旗を掲げて過去7年間、インターネット上での「蔵書」の構築に腐心してきたケイルに言わせると、Google のブック検索(Google Book Search)の仕事は、一見IAと同じように見えるが対極にあるものだという。以下は抄訳。
本のデジタル化の経済学(Economics of Book Digitization)
本のデジタル化にはまだ残された課題があるにしろ、その経済学はきわめて明快である。にもかかわらず無理解がはびこっている。7年以上にわたりこの仕事に 従事してきた立場から、本のデジタル化のもっとも基本的な事実を述べておきたい。
コストというと、大方の関心が、スキャニング(撮影とその後のデータ処理)にどのぐらいかかるのかに向けられる。だが、実際最もコストがかかるのは、スキャニングではなく、それを元に図書館を作ることだ。それは これまでのアナログ図書館を作るのと同様に、地道に、泥臭く、一個ずつレンガを積み重ねてようやく成し得る図書館(brick-and-mortar libraries)なのであって、スキャニングしたデータをアップロードすれば、あとはクリック一発でOKの図書館 (click-and-mortal libraries)ができるのではない。
現実のアナログ図書館は、蔵書の構築、管理、維持に毎年巨額の費用を投じている。そのことを考えれば、本当の価値、そしてコストは、本そのものに、図書館そのものに在る、といえる。こう した視点が見落とされ、過小評価されてはいまいか。
スキャニングのコストに限定すれば数字を並べるのは簡単だ。
中国のミリオン・ブックス・プロジェクトでは本一冊あたり約6ドル。
Google図書館プロジェクトは10ドル以下、たぶん5ドルぐらいだろう。
比して、我らがInternet Archiveではページあたり10セント、一冊あたりだと30ドルかかる。
Internet Archiveはいかにも高い。だが、スキャニングされた画像は最高の品質を誇る。内輪褒めではないかというのならば、実際にウェブ上で確かめてほしい。このような当初の品質の確保とともに、我々の「コス ト」には、新しい技術に基づいた定期的なデータの最処理と継続的な維持保存の コストが含まれているのである。
例に挙げた3つのプロジェクトは、可読できるページ画像を作り、検索のための光学的文字読み取り(OCR)でのテキスト化を行い、PDFやオン・スクリーンでの閲覧ができる形式にする というのには違いはない。
こうしてスキャニングされた本はどのぐらいの数になるのだろうか。
Googleはすでに700万冊をスキャニングした。その「コスト」は最小でも3500万ドル、最大では 7000万ドル程度と思われる。
中国(政府)はすでに140万冊、900万ドルを投じているが、聞くところによるさ らにこの夏には新たに300万冊の計画をスタートさせる。
インド(政府)は60万冊から100万冊をスキャニング済みだが、コストは明らかではない。
アメリカ(政府)はまだ、おそらく10万冊に満たない。この意味ではアメリカ (政府)と他国(政府)との間には「スキャニング・ギャップ」がある。
スローン財団、マイクロソフトそしてヤフーは、我々Internet ArchiveとKirtas が60万冊をスキャニングするために1400万ドルを拠出してきた。現在、130万冊近いパブリック・ドメインの本を archive.orgのウェブ(全文検索が openlibrary.orgで可能)に載せている。
いずれにしろ今後、ハーバード大学図書館並の、あるいは議会図書館(LC)並のデジタル図書館を構築するには、高品質のスキャンのためにプロジェクト一回につき300万ドルが必要になる。
さて、300万ドルの値札が付いたこの商品は高いのか廉いのか? モノは考えようである。 連邦政府の巨額な予算が浪費され、最後はゴミ箱行きになったものがどれほどあるか(2億3千100万ドルの"行く当てのない橋"!)。
全米の図書館システムは年間120億ドルかけて運営されている。うち、出版 物購入費は30~40億ドルだ。例えばコーネル大学図書館の年間予算は 5,500万 ドルである。
もし全米のトップ100の図書館が資料購入費の5%をデジタル化に回したならば、 1,000万冊の蔵書を持つデジタル図書館が5年で建つ。
Internet Archiveは今や300万冊の蔵書を持つ。これらは誰もがどこからでもアクセスできる開かれたパブ リックなデジタル図書館だ。Googleの、個人が、ウェブ上と はいえ、ある特定の場所(Googleのウェブ・サイト)からしかアクセスができない図書館ではない。
我々のコミュニティを活性化できる図書館と出版のシステム--この夢のために意義ある仕事を分かち合い、弛まず進めていくならば、私たちは偉大なる何かを実現できるのだ。
Economics of Book Digitization
※2009年5月1日の記事のように、Google ブック検索ではパブリック・ドメインの著作物であるにもかかわらず、スクリーン上で閲覧はできてもPDF化されているわけではなく印刷も不可というものが本当に多いです。
(抄訳文責:木部)
米ロチェスター工科大学(RIT)が所蔵するミドルトン・コレクション(Midddleton Collection)がキルタスブック社(KirtasBooks)によりオンデマンドでデジタル化され、RITとKirtas から販売されることになった。このコレクションは英国の世界的な製本・修復家であり製本史家であるバーナード・ミドルトン(Bernard C. Middleton)が収集した製本の技術と歴史に関する文献で、書籍約2,000点と膨大なエフェメラ(一時的な筆記物と印刷物)から成る。質量ともに世界でもっとも優れたものと言われている。RITとKirtas によるこの共同事業でユニークなのは、あらかじめデジタル化するのではなく、ユーザーの求めに応じてコレクションの文献をデジタル化し、廉価で販売するところ。
※思い立って、ミドルトン「製本技術の歴史」(The Development of Bookbinding Techniques)の日本語訳を掲載しました。主著のひとつである A History of English Craft Bookbinding Techniques (初版1963年)の超々ダイジェスト版というべきもので、原文は1984年にシドニーで開催された展示会のカタログへの寄稿です。ミドルトンさんに翻訳権を頂戴し、1986年に拙訳、『コデックス通信』創刊号と第2号に掲載しました。ほぼ四半世紀も前のことです。ちなみにこのコレクションには私が贈った日本の本も含まれているはずです。(木部)

1981年にアメリカ議会図書館のコンサベーション部門が総力を挙げて作成・出版し、その後の図書館・文書館資料への保護容器の導入を決定づけた Boxes for the Protection of Books: Their Design and Construction の1994年改訂版が、このほどGoogle ブック検索対象本になった。資料の保存手当てにおける容器導入の意義から説き起こし、資料の形態や貴重さに即した様々な保護容器の作り方を詳説したもの。全文(224頁)を無料で閲覧できる。ただしGoogleブック検索では、原本が政府刊行物でパブリック・ドメイン著作物であるにも関わらず、印刷することができない。
Boxes for the Protection of Books: Their Design and Construction
2008年9月から先月(2009年4月)まで16回にわたって翻訳・連載した「中国古籍の修理 ― コンサーバターのために」全文をPDFにしアップロードしました。
「中国古籍の修理 ― コンサーバターのために」 PDF(2.42MB)