

アメリカ議会図書館(Library of Congress)はこのほど、デジタル情報として保存してある数テラバイト(1テラバイト=1024ギガバイト)のデータを一度に確実に移行する新しいツールを開発し公開した。すでにデジタル情報になったLCのコンテンツの80%が2008年中にこのツールを使って移行済みという。LCのサイトにはここのツールBagit の説明とともに、開発者による動画での紹介が掲載されている。
Bagit: Transferring Content for Digital Preservation
今年8月25日にミラノで開催されるIFLA(国際図書館連盟)総会の資料保存分科会オープン・セッションでの発表では、5つの発表が予定されている。なかでも、フランスのエヴリー大学とCentre de Conservation du Livreの研究者らによるアミノアルキル・アルコキシシラン(aminoalkyl alkoxysilanes)を使った新しい液相脱酸性化技術の発表が注目される。この物質をエタノールに溶かしたものを使うと、中和とアルカリ・バッファーの付与というこれまでの脱酸性化技術と同様の効果とともに、物理的強度の付与、すなわち紙力強化も同時に果たせる、というのが特徴とされる。
75th IFLA General Conference: PAC Open Session
表記のシンポジウムが7月26日(日)に、京大会館(京都市左京区)で開催される。
全史料協近畿部会 平成21年度広報特別事業シンポジウム 「市民社会の財産としての公文書・地域資料を考える」の開催
瀬畑源氏のブログ「源清流清」が、「公文書管理法成立後の課題」の連載を始めた。全8回の表題は以下の通り。
第1回 政令事項
第2回 公文書管理法の実効性
第3回 国会の公文書
第4回 国立公文書館等の規則の共通化(上)
第5回 国立公文書館等の規則の共通化(下)
第6回 国立大学法人の文書移管
第7回 地方公文書館設立運動の推進
第8回 歴史学的素養と行政法的素養
【連載】公文書管理法成立後の課題―第1回 政令事項 [2009年公文書管理法問題]


今年5月に開催されたアメリカ保存修復学会(AIC)のアーカイブ・コンサベーション・ディスカッション・グループ(ACDG)における発表では、ハーバード大学ウェイスマン保存センターの写真資料保存担当者によるThe Use of Inkjet Copiers to Transcribe Historical Inscriptions が行われた。その概要が、AICのサイトに掲載されている。
写真資料などが収められた包材(封筒など)には、手書きで、収納物の説明が記されていることが多い。元の封筒が酸性のため、新しくアーカイバル品質の封筒に入れ換えることが行われるが、元の封筒上の記録を写すことは容易な作業ではない。手間がかかることもあるが、元の字がはっきりと読めなかったり、母国語でない場合には判読さえ不能ということもある。
ウェイスマン保存センターでも膨大なネガ資料の封筒の入れ換え作業を行ったが、上記の問題を、元の封筒の記録をインクジェット・プリンターで新しい封筒上に転写することで解決した。プリンターは安価だが、スキャニングとコピーが一機種でできるのがポイントで、手差しで封筒を送れる機能が付いているのが良い。Epson Stylus CX6000 3-in-1 Inkjet Systemが選ばれた。
このプリンターは顔料インクを使うもので、その耐久性は Henry Wilhelm のサイトに詳しい。欠点は若干水溶性で、冠水したりすると字が滲む可能性があること。元の筆記が薄かったり、カラーインクのために上手くスキャンできない場合にはスキャナー表面にカラー・フィルターを置くことで解決したという。
Maximizing Efficiency: The Use of Inkjet Copiers to Transcribe Historical Inscriptions

linksouce:http://www.getty.edu/bookstore/images-sm/photopast-sm.jpg
フランスの文書やグラフィック資料のコンサベーションの専門国立機関 CRCDG(Centre de recherches sur la conservation des documents graphiques) の Bertrand Lavédrineらによる写真資料の保存のための本 Photographs of the Past Process and Preservation が8月にゲッティ・コンサベーション研究所から出版される。用語の解説から始まり、ポジ、ネガの両写真の歴史と制作プロセスを詳説、それらのコンサベーションに及ぶ。執筆は Lavédrine の他に Jean-Paul Gandolfo (École nationale supérieure Louis Lumière)、John P. McElhone(photograph conservator at the National Gallery of Canada)。これまでに出版された関連文献と比べても最も包括的かつ詳細で深い内容といえる。
Photographs of the Past Process and Preservation
Getty Conservation Institute
350 pages, 7 1/2 x 9 1/2 inches 171 color and 164 b/w illustrations, 130 line drawings
ISBN 978-0-89236-957-7
$50.00
Photographs of the Past Process and Preservation

linksouce:http://www.getty.edu/bookstore/images-sm/digital-sm.jpg
デジタル印刷物を資料として長く保存する際の問題と方法を正面から採りあげた初めての本 The Digital Print Identification and Preservation が8月にゲッティ・コンサベーション研究所から出版される。デジタル・カラー・プリントは新しいアート・オン・ペーパーや芸術写真のひとつとして認知されつつあるが、一方でプリントやインクの技術の変化が早く、複雑で、それらを資料として後生に残すためには課題が多い。この本は、でデジタル印刷物の劣化、同定法、印刷法、保存方法を述べたもの。著者の Martin C. Jürgens はドハンブルグ(ドイツ)在住の写真専門のコンサーバター。
The Digital Print Identification and Preservation
Getty Conservation Institute
304 pages, 8 x 10 inches 227 color and 49 b/w illustrations, includes a removable identification poster
ISBN 978-0-89236-960-7
$60.00
英国立肖像画美術館(National Portrait Gallerry)はこのほど1630年から1950年にかけて英国内(グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国)で絵画の修復にたずさわった人の記録をデータベース化し、British picture restorers, 1630-1950として公開した。修復家の名前、いつ、どこで仕事をしたか、仕事の概要、どのようなコレクションを修復したか等を、さまざまな情報源を精査して集積した。また、絵画修復と関連の深い額縁製作業者や、絵具や紙の製造・販売業者の人名録とも連動させている。
British picture restorers, 1630-1950
図書館やアーカイブの資料保存のポータルサイトであり、関係者の意見交換の場としてメーリングリストDistListを提供してきたCoOL (Conservation Online)は、スポンサーのスタンフォード大学の経費削策により、22年間の支援がうち切られることになったが、このほど新たにアメリカ文化財保存修復学会(AIC)が支援し、AICのサイトで再出発することになった。 CoOLは22年の間に12万を越えるドキュメントを蓄積するとともに、メーリングリストでは世界91ヶ国から1万名近い関係者が意見を交換してきた。新しいアドレスが近く定まり次第、移行する。
CoOL Moves to American Institute for Conservation
アーカイバル容器のトップページをリニューアルしました。「資料からのアクセス」をテーマに、ホームページの見直しを行い「容器への収納例」というページを新たに加えました。また、新製品の「Renka」シリーズも誕生いたしました。Renkaも含め今後も新しい製品を発表してゆきます。
6月13、14日に倉敷で開催された第31回文化財保存修復学会での発表から以下の3つを紹介する。とりわけ「フォクシングの形状分類法の考察および修復処置に関する研究」は原因への一歩踏み込んだ解明と、修復への橋渡しを行っている意味で、特筆したい。全体のプログラムは→こちら。
[文責:木部]
フォクシングの形状分類法の考察および修復処置に関する研究 平野はな子ほか(東京芸術大学)
フォクシングの発生原因については金属起因説や黴起因説などが有力とされており、その判断基準や形状分類は1984年にCainとMillerが発表した Proposed Classification of Foxing ※によっているものが多い。しかし、その分類法は言葉による表記のみで具体的かつ共通イメージを持つことが難しかったのだが、この研究においては素描や版画作品を対象にフォクシングの形状を画像として記録、比較を行った。その結果、CainとMillerが述べた分類の他に、紫外線光下において外周が紫外線を吸収、中央が蛍光反応を示すフォクシングが確認され、その形状から「ドーナツ(Doughnut)」と名づけられた。また、同一制作者により描かれ同一マット内で保管された作品にも関わらず、繊維組成の違いによってフォクシングの発生程度に差が出たことから、発生要因が当時の製紙方法の違いによるものであることを明らかにした。また、フォクシングが生じている作品に対して過酸化水素、水酸化ホウ素ナトリウム、サンブリーチ、キレート剤(EDTA)を使用して漂白等の処置を施した結果、「Snowflake」と分類された形状のものは他と比べて大幅な改善が見られないものが多かったが、その他の分類のものについては大幅な改善効果が見られた。
※原文は AIC Book and Paper Groupe Annual (Vol.1, 1982)に掲載された。現在は同GroupeがまとめたPaper and Book Catalog のFoxing にほぼ全体が紹介されている。
[文責:蜂谷]
災害等で固着した和本資料の展開方法について~簡易型真空凍結乾燥装置の応用と検証~ 荒木史ほか(石川県文化財保存修復工房)、中村晋也(金沢学院大学)、川本耕三(元興寺文化財研究所)、村田忠繁(九州国立博物館)
紙資料は、災害などによる冠水やカビの発生、虫糞被害などによって固着した状態になる。本大会の「被災した近現代歴史資料の救済のための簡便な真空凍結乾燥法の開発②」で報告されている装置を用い、紙質(劣化度合い)や固着状態の異なる和本資料の展開作業への応用を試みた。試料に滲み止め実験(B72アセトン溶液(2%)、B72アセトン溶液(30%)、フィキサチーフを使用)をした上で、真空凍結乾燥実験を行った。その結果、試料によって効果の大小はあるが、展開性の向上は確認された。しかし、水性のインク類が認められる資料に対しては、滲みによる汚染や消失の危険から、適用を控えた方が良いことが分かった。また、処理前と紙質・風合いが変化する試料もあった。劣化の著しい資料への応用、乾燥終点の見極め、充分な水分の浸透など、実施には充分な注意が必要となる。
和装本の保存方法における新案―平置き、縦置きに対応する保存箱の活用― 米倉乙世ほか(東京国立博物館保存修復支援技術者)、神庭信幸ほか(東京国立博物館)
東京国立博物館では2007年度から、所蔵する膨大な量の和装本の保管方法を従来の帙から簡易で機能性の高い保存箱に切り替えるプロジェクトをスタートさせた。和装本は平置きが原則であるが、積み重ねた場合、一番下になる本は上に積み上げられた本の重みで圧迫され、かなりの負担がかかる。その負担を軽減するために、考案したのが「新型保存箱」と「新型簡易保存箱」である。箱のサイズを大中小の三種類に限定し、厚みは最小限にとどめた。「新型保存箱」は、本とのサイズギャップをなくすため、箱内部に土手状の立ち上がりをつけ、さらに厚紙でつくった内側包に本を納める形にしている。「新型簡易保存箱」は、アーカイバルボードで製作するもので、接着剤の量を抑えられるほか、コンピューターと連動したマットカッターの利用で量産が可能である。この2つの保存箱により、従来の帙に比べてかなりの軽量化が実現でき、「新型保存箱」で約2分の1、「新型簡易保存箱」で4分の1であった。
[文責:福島]
第31回文化財保存修復学会での業者ブースから。
ひだか和紙有限会社(高知県高岡郡)は「文化財修復のサポートしての和紙」として塩素未使用の和紙を発表した。一般的な楮(こうぞ)和紙の漂白には塩素が使われているが、同社によるとその塩素が紙に残り、黄ばみや変色、絵の具の変化、劣化の原因になるとしている。同社は塩素が未使用で残留塩素がほとんどゼロの和紙の開発に成功したという。製品は以下の通り。
・典具帖紙 極々薄 3.5g/m2 原紙寸法 970mm ×640mm
・同 極薄 5g/m2 同
・同 極薄 7.3g/m2 同
紙パルプ技術協会の機関誌『紙パ技協誌』(2009年4月号、2009年6月号)は飯田清昭氏(国立科学博物館産業技術史センター平成19年度主任調査員、元紙パルプ技術協会専務理事)による「技術革新が新聞用紙とその製造技術を如何に変えてきたか--新聞用製造技術の系統化調査」を連載している。特に「その2」(6月号)からの「本論」では、戦後の原料パルプ開発と製紙法の現在までの変遷を丁寧に跡づけ、これまで得られなかった新しい知見が盛り込まれている。例えば、新聞用紙生産における各パルプ(KP、SP、GP、RGP、TMP、DIP ※)の使用量の変遷がそうである。これを見ると、1980年代央からDIPすなわち古紙をリサイクルして脱インクしたパルプの含有比率が飛躍的に多くなり、現在では70%を占めるまでになったことが判る。一方、70年代までは最も含有比率が高かったGPが現在では5%程度しかないことも判る(p.64)。
※KP:クラフトパルプ、GP:グラウンドウッドパルプ、RGB:リファイナーグラウンドウッドパルプ、TMP:サーモメカニカルパルプ、DIP:ディンクドパルプ)
「その1」(4月号、p.42-51)
紙の基本的な製法は、A.D. 105年に中国で発明されたとしている。原料は草木類や衣類のぼろで、手すきで紙にした。この技術が、産業革命により木材を原料とし、機械力で抄紙する近代的な製紙産業に発展する。さらに1920年代に、記録の媒体であった紙に、包装及びテイッシューの用途が加わり、大型装置産業として発展した。しかし、大型化したゆえに環境との折り合いが問題となる。製紙産業は、炭素の循環(森林--製紙[紙のリサイクル]---消却[二酸化炭素]---森林による吸収)を組み込んだ数少ない持続型の産業である。日本の紙・板紙生産量は、最近の中国の急増により世界第三位になったが、依然として有数の製紙国である。国内での原料、エネルギーに乏しい日本が、国際競争力を長年担ってきた背景には、それを可能にした持続的な技術開発があるはずである。その歴史を、主要な紙である新聞用紙の生産を通して調査することで、特質を明らかにし次世代の技術開発に役立てることにした。「その1」は基礎技術の解説、次回の「その2」から本論に入る。
「その2」(5月号、p.61-72)
第二次世界停戦で壊滅状態になった後、新聞用紙の需要はGDPの伸びに合わせて増加し続けた。また、新聞社は技術革新とコストダウンから、オフセット印刷の導入、軽量紙への転換を進めた。製紙産業は、これらの品質要求の変化へ対応しながら、需要を満たす原料の開発とコスト削減のための生産性の向上を積極的に進め、輸入紙にたいし国内市場を維持してきている。それらの技術開発の一つが原料開発の歴史で、まず赤松(多量のピッチがトラブルになる)をGP(グラウンドウッドパルプ)に使いこなしたことから始まり、広葉樹の利用、輸入チップの使用、古紙(脱インクパルプ)の使用により、伸び続ける原料需要を満たしてきた。これは日本独特の技術対応であり、その努力が製紙産業の持続を可能にした。次回(その3)は生産性を向上させた抄紙紙における技術革新を紹介する。
イスラム手稿資料に関する世界的な研究組織 Islamic Manuscript Association は今年7月24~26日に英国ケンブリッジ大学で第5回イスラム手稿資料コンファレンス Islamic Manuscript Conference を開催する。今回のテーマは「デジタル化と電子的な配布システムにによる資料へのアクセス」。この一方で、イスラム文化財への将来に渡るアクセスを保証するための現物保存もテーマになる。詳細は下記ページで。
Fifh Islamic Manuscript Conference
同協会のホームページには第1回(2005年)から第4回(2008年)までの発表文がPDFで掲載されている。このうちコンサベーション関連は以下の通り。
<2008 Conference Papers>
Some further considerations on early Islamic book bindings.
Marco Di Bella
The Practice of Sizing in Middle-Eastern Paper Manufacture and its Relation to the Conservation of Islamic Manuscripts.
Helen Loveday
<2007 Conference Papers>
Islamic Manuscript Conservation and Its Vocabulary & Hand Tools Used in the Production of Islamic Manuscripts.
Nil Baydar & Paul Hepworth
<2006 Conference Papers>
Islamic Manuscripts of Western Sumatra. Problems of Investigation and Preservation.
Irina Katkova

linksouce:http://www.archives.gov/global-pages/larger-image.html?i=/press/press-releases/2009/images/nr09-88-letter-l.jpg
http://www.archives.gov/global-pages/larger-image.html?i=/press/press-releases/2009/images/nr09-87-half-l.jpg
アメリカ国立公文書館(NARA)の所蔵品のひとつだったが断片だけが残されて所在が不明だったリンカーンの手紙がこのほど里帰りした。この手紙は1863年11月にリンカーンが当時の財務長官に当てた手紙で、他の文書とともに公文書館が所蔵していたものだが、元の手紙の折り目のところで分断し、本文が書かれたところが無くなってしまっていた。NARAのホームページは、この手紙をコレクションとして保持していたLawrence Cutler 氏からの寄贈による里帰りを伝えるとともに、同館のコンサベーション部門での精査報告を掲載している。
National Archives Announces Homecoming of Long-Lost Lincoln Letter

国際公文書館会議(ICA)のホームページに掲載された日本のポスター
東京大学経済学部資料室はこのほど、同大学経済学部図書館所蔵のマイクロフィルムの状態調査と、それをもとにした環境整備や修復等の研究をまとめた『マイクロフィルム状態調査報告書』を刊行した。厳密な標本調査法をもとにした2回にわたる調査とともに、そこで浮かび上がった問題に対する環境整備等の具体的な対処や、これまで世界的にも指摘されることのほとんどなかったPETフィルムの劣化の現象と原因の究明、さらには劣化画像の修復の試みなど、野心的な研究成果が盛り込まれた。
平成17年に、従来から指摘されてきたビネガーシンドロームを生じるTACベースだけでなく、500年安定して保存できると言われてきたPETベースのフィルムにも固着や剥離が確認されたことに衝撃を受けた資料室は、この現象についてメーカーやラボ、研究者に意見を求めた。回答はフィルム自体の問題というよりも保管環境等の管理に問題があったからではないかというものだったが、であるならばどのような環境下ならば劣化が生じるのかについては満足のいく内容ではなかったことから、同室では調査ととにも劣化の再現実験やフィルム自体の構造調査、保管環境の酢酸濃度の低下実験などを繰り返し行った。
「一般的にマイクロフィルムは500年という、紙に次ぐ寿命を期待されている。しかしこの数値は、実験により導かれた予測値であり、管理を徹底した場合の期待値なもである。つまり紙と異なり実績を伴わない理論値であり妄信してはならない。この理論値に対し実績値を示し得るのは、モノとしてのマイクロフィルムを保存し続けてきた保存・利用機関以外にあり得ない。この意味で、本書が技術・開発側と保存・利用側の意見交換の懸け橋になればと考えている。」(p.1、序から)
報告書は3つに分かれている。「本篇」は、総説として今回の調査で判明した事項を加えつつ、マイクロフィルムの特性について利用と保存の観点から論じている。従来の常識をなぞるのではなく、現場での「実績値」を背景にした解説は、日本語で読むことができるもっとも充実した内容といえる。そして平成17年度と19年度の2回の調査結果が示される。
劣化状況調査結果(表Ⅲ-4、p.52)によるとほとんどの調査項目(銀鏡化、酢酸臭、ベースの湾曲、フェロ化、固着、画像剥離)で異常なし(-)判定が95%以上だった。「この数値だけ見れば、状態はさほど悪くないという印象をあたえるかもしれない。しかし、ビネガーシンドロームに代表される、周囲に感染していくタイプの症状が厳然としてある以上、異常がわずかでも見いだせれば、速やかに対処する必要がある。」( p.42)
「附編」には、調査で使用する試薬や機器の現場での工夫や、フィルムの識別法、統計的な信頼性のある標本調査法の解説、フィルムを保管してきた環境の履歴等が示される。
これらとは別に「個別研究」として外部の研究者や業者の協力を得た、収蔵庫の空気清浄、PETフィルムの異常現象の観察と原因究明のための実験報告、劣化8ミリフィルムの修復技術のマイクロフィルムへの応用、PETベースフィルム劣化への考察 --が示される。
これまで国内で行われた同種の調査レベルを超え、今後、新たに調査に取り組もうとする他の保存・利用機関のための優れた「教科書」に仕上がった。
東京大学経済学部資料室編集『マイクロフィルム状態調査報告書』
平成21年3月、
東京大学経済学部図書館発行、A4版、124pp、非売品。

弊社はこのほど、「シンプルで使いやすく、よりお求めやすい価格」をコンセプトにしたアーカイバル容器の新シリーズ「Renka」を開発し、第一弾とし「ファイルボックスR」と「カードホルダーR」を発売しました。
このうち「ファイルボックスR」は、市販のドッチファイル形式のバインダーや封筒が収納できる、組み立て式のファイルボックスです。組み立てが簡単で、底部分を2重にして強度を持たせました。取っ手はプラスチック製で持ちやすく、埃やゴミの入らない構造です。見出しが書き込める仕切り板2枚が付いています(組立説明書付)。
書誌事項等を記入したカードを入れる「カードホルダー」は、これまでは弊社アーカイバル容器のオプション品として、単独購入が出来ませんでした。「カードホルダーだけ購入したい」という多くのご要望を頂き、この度、新製品「カードホルダーR」として発売いたしました。お好みの場所へ簡単に取り付けられるように、裏側にアーカイバル品質*の両面テープを付けました。現在お使いのアーカイバル容器へも簡単に取り付けられます。 *PAT(ISO18916:写真活性度試験)をパス
特定非営利活動法人(NPO)文化財保存支援機構は東京国立博物館と共催で「文化財保存修復専門家養成実践セミナー」を開催する。今回は2回目の第一年目に当たる。文化財の保存修復に求められる適正な材料の選定、仕様の設計、価格の設定などの、現場に即した実践力を養うことで、国内外で活躍できる専門家を育てるという。講座の監修は神庭信幸(東京国立博物館)、増田勝彦(昭和女子大学)、三輪嘉六(九州国立博物館)ほか。受講時間数は110時間でこれを2ヶ年で振り分ける。第一年目は8月31日から9月11日までの間の10日間。定員は30名、参加費用はJCP会員が60,000円、非会員が80,000円ほか。募集〆切は7月25日。なお、昨年の1回目の同講座(新規募集はなし)の第二年目は8月3日から。詳細は下記ページで。
平成21年度「文化財保存修復専門家養成実践セミナー」(レベル1・前期)(1ヵ年目)受講生新規募集のお知らせ
博物館、アーカイブ、図書館などの屋内環境が資料に与える影響を研究する国際的なグループが昨年4月にウィーン美術史美術館(kunsthistorisches Museum)で開催した第8回会議(8th Indoor Air Quality 2008 Meeting)での発表予稿集がIAQのホームページに掲載された。全部で54の口頭・ポスター発表が行われたが(タイトルはこちら)、このうち図書館・アーカイブ関連の発表を紹介する。予稿集のため、試験結果などが当日発表になったもの(脱酸性化処置後の大気汚染ガスの影響、保存容器の内部環境など)があるが、これらは除いた。なお、これまでのIAQ会議での発表は、詳細がIAQのホームページに掲載されている。
The Evaluation of the Indoor Air Quality of Four Storage Rooms of the Royal (National) Library of the Netherlands J. Havermans, H. Abud Aziz and H. Porck
オランダ国立図書館の4つの書庫の大気の質の評価。外気のVOC(揮発性有機化合物)と書庫のとは異なったパターンがあり、ホルムアルデヒドは資料そのものから発生している。資料からの放散物は書庫の大気の質に著しい影響を与えている。外気からの大気汚染物は蔵書に悪い影響を及ぼしており、NOXは国の規準の25ppbを越えているところもあった。
A New Particulate Deposition Monitor: Investigating the Synergistic Effects of RH and Dust K. Hallett, P. Brimblecombe, H. Lloyd and D. Thickett

新しく開発されたポータブルな大気粒子堆積モニターによる英国の10の機関での塵埃汚染状況。書庫の相対湿度(RH)と堆積には相乗効果あり。
Emission Rates of VOC from Paper versus Cellulose Degradation: an Integrated Approach to Paper Characterisation O. Ramalho, A.-L. Dupont, C. Egasse and A. Lattuati-Derieux
セルロースの化学的な劣化は酸化や加水分解によって生じる。この結果、VOCが発生するが、その程度を高分子(重合体)と分子(単量)の2つのレベル間の相関関係で把握することで、コンサベーションのための非破壊的な事前の診断に貢献する。角度光散乱検出器付きサイズ排除クロマトグラフィー(SEC/-MALS)等を使い、様々なVOC(フルフラル、ホルムアルデヒド、ギ酸、酢酸、バニリン等々)の中には、発生程度が加速劣化した場合の程度とリニアなものや、より複雑に関係するものがあることが判った。
Study of Old Library Dust, Trinity College Dublin S. Bioletti and R. Goodhue

アイルランド最古の図書館で、ケルズの書などの至宝を見るために年間50万人以上の観光客が訪れるトリニティ・カレッジ図書館での塵埃の調査。建物や資料のクリーニングのための年間予算200万ポンドを有効に使うのに活かす。
Identification of Fungi associated with Foxing on Paper, Based on Analysis of the Sequences of the Internal Transcribed Spacer (ITS) Regions A. Michaelsen, F. Pinzari and G. Pinar
フォクシング(紙に発生する茶褐色の点や斑模様)の原因のカビを分子レベルで解析、非破壊で高感度・高速にカビ被害を検知できる新しい方法の開発。
8th Indoor Air Quality 2008 Meeting
英国国立公文書館(The National Arcives, UK)は1日、イングランドおよびウェールズの全国にまたがり、維持および保存すべきさまざまな記録物の保存戦略 National Collections Strategy の最終バージョンを発表した。スポーツや文化的なイベントの記録、個人やコミュニティの生活や活動を伝える記録、公や私あるいは慈善団体の記録が収まるべきところに収められ、正しく保存され、容易に利用できるようにするための国家戦略である。このために国立公文書館は、他の機関と協力し、分野やテーマや形式を包含したアーカイブ戦略を展開するための支援と指導を行うとしている。
National Collections Strategy published
国際図書館連盟資料保存分科会(IFLA-PAC)はチェコ国立図書館、同国立文書館と共催で、10月29~31日に、図書館・文書館・博物館資料への「水害」をテーマとした国際コンファレンス“Water Impact on Library, Archival and Museum Materials”を開催する。それぞれの機関レベルや地域レベルでの防災計画、被災した場合の資料や施設の救助対策(乾燥、クリーニング、生物被害の対策、保管)、国際的な協力体制の構築などについての発表文を募集している。

弊社スタッフによる「リグニン含有紙に対する漂白効果試験 I」を掲載しました。長期に保存されてきた新聞や公文書には、マイクロ化やデジタル化の際に、鮮明な画像を得るのに妨げになるほど茶褐色に変色しているものもあります。このような資料の地の紙の白色度を上げる場合、どのような方法が効果的かをみるため、新聞資料に対して、過酸化水素による酸化漂白、水酸化ホウ素ナトリウムによる還元漂白、および水性と非水性の脱酸性化処置を適用ました。今後、継続的に進めてゆくCSSのテーマのひとつです。
スタッフのチカラ:蜂谷伊代「リグニン含有紙に対する漂白効果試験 (Ⅰ)」

link source:http://www3.ns.sympatico.ca/pertelote/belgian.jpg
14世紀から16世紀央にかけてベルギーで編み出され現物が存在しているにもかかわらず、その製本法が長く謎とされていたシークレット・ベルギー製本(Secret Belgian Binding)の製本法を、著名な製本工芸家でありコンサーバターでもあるヘディ・カイル(Hedi Kyle)女史が解明し、マニュアルをウェブで公開している。カイルは日本でも本の保護包材のカイル・ラッパーの発明者として知られている。
The Secret Belgian Binding
瀬畑源氏(一橋大学大学院社会学研究科博士課程)のブログ「源清流清」が5月27日と29日に衆議院内閣委員会国会で行われた公文書管理法案の審議内容と問題点を詳細に報じている。
関連:市民のための公文書管理法制定を求めるネットワーク
上記HP内の富田健司氏(芳賀町総合情報館)「公文書管理法(案)と地方公文書館制度」