

国立国会図書館資料保存課の村上直子さんがフランス国立図書館とカナダ国立図書館・文書館で資料保存に関する研修を受けることになった。出発は9月。研修の様子を逐次伝えるためのブログもこのほど立ち上げた。
フランス国立図書館及びカナダ国立図書館公文書館における資料保存業務に係る研修
瀬畑源氏のブログ「源清流清」は7月26日に京都で行われたシンポジウム「市民社会の財産としての公文書・地域資料を考える」(全史料協近畿部会主催)の感想を掲載している。
27日付の産経新聞ニュースサイトは、「昨年のフィルム出荷量は、10年前の1割近くに激減し、遺跡写真に最適なフィルムの入手にひと苦労の状態で、半永久的な保存が不可欠な文化財写真が危機にさらされている」と報じている。
ミシガン大学の特別貴重書図書館はイスラム関連資料をデジタル化し、インターネットで公開するとともに、その目録化を世界中のイスラム専門研究者に依頼する新しい試みを始めた。
同図書館が持つ所蔵するイスラム関連資料は1,250点。デジタル化は館内で行われているが、この目録を作成する作業が進んでいなかった。一般的には専門のカタロガーを雇い入れ目録を作るのだが、同図書館ではすべてのデジタル画像を先にインターネットで公開し、興味を持つ世界中の研究者から書誌情報を集めて目録を作るという。
University of Michigan's Islamic Manuscripts collection going online
ペンシルベニア州フィラデルフィアにある地域保存修復センター Conservation Center for Art and Historic Artifacts (CCAHA)のサイトはこのほど、南北戦争時の隊員名簿(Muster Roll)へのコンサベーション処置を静止画像のスライドに収めたコンテンツ THe Pennsylvania Civil War Muster Roll Project を掲載した。
この兵隊名簿はペンシルベニア州立アーカイブが所蔵する資料で、1861年から1865年にかけての南北戦争に召集された362,000人の兵士に関する公文書。度重なる利用により酷く傷んでいる。
折り畳まれたものを開き、とりあえず平らにして、表面の汚れをクリーニング・スポンジなどで除去した。そしてインクの水や溶剤に対する溶解性を試験し、水に敏感なインクの部分に昇華型の滲み止めシクロドデカンを含浸し撥水性を持たせた後に、カルシウム水溶液の浴槽に入れ洗浄処置をした。
洗浄後に、古い補修テープを除き、一度合体されていたピースの接合部の古い糊を除き、補修とともに新しい糊で再接合した。裏面の全面を非常に薄い楮紙で裏打ちした。極薄の和紙を使用したことで、裏面の字も読むことが出来る。
フェルト上で軽い重しをして乾燥させた後に、ポリエステルフィルムによるエンキャプシュレーション処置をし、アーカイバル・フォルダーに収納した。
Conservation Center for Art and Historic Artifacts (CCAHA)
東京文化財研究所は11月12日(木)~14日(土)に東京国立博物館(台東区)で第33回文化財の保存及び修復に関する国際研究集会「日本画の修復--先端と伝統」を開催する。「日本のオーソドックスな修復技術を、その材料、行程などの面から確認し、また現在における新たな試みを検討し、さらには世界各国における日本絵画の修復の現状を確認したい」(ファーストサーキュラーのチラシから)。
詳細は9月上旬に配布されるセカンドサーキュラーで。
第33回文化財の保存及び修復に関する国際研究集会 日本絵画の修復 ―先端と伝統―
東京藝術大学美術学物紀要(第46号、平成21年1月)は稲葉政満と加藤雅人による「ライデン国立博物館所蔵 シーボルト和紙コレクションの紙質調査」を掲載している(p.33-122)。
7. まとめ(p.49)
オランダ・ライデンの国立民族学博物館所蔵のシーボルトコレクションおよびブロンホフコレクション中の和紙約400点の紙質を調査し、結果をデータベースとしてまとめた。大阪で購入された126種と、先に調査したパークス和紙コレクションと合わせ、生産地がわかっているまとまった和紙資料で江戸時代の和紙全体を見渡して調査しうるものの基本的なデータが揃ったことになる。/スキャナーにより紙の画像を取り込み、これに画像処理を行い、簀の目を得た。これは簀の目測定帳でほぼ同じ値が得られることが確認でき、簀の目測定帳よりも広範囲の紙のデータが取得できた。/簀の目の数に地域性が表れていることがあり、繊維の粗さとの関連性が示唆された。
埼玉県文化財保護協会、埼玉県教育委員会、埼玉県立歴史と民俗の博物館の共催による第54回文化財講習会「文化財としての行政文書の保存と活用」が8月4日(火)~6日(木)に埼玉県立歴史と民俗の博物館(さいたま市大宮区)で開催される。
演題は、①文化財としてみる近代行政文書(文化庁美術学芸課文化財調査官 地主智彦) ②埼玉県行政文書の重要文化財指定 (県立文書館公文書担当課長 太田富康)③行政文書にみる鉄道史 (立教大学教授 老川慶喜)④行政文書の保存と管理(県立文書館主任学芸員 新井浩文) ⑤埼玉県における市町村行政文書の保存と活用(白岡町教育委員会 板垣時夫) ⑥アーカイブズとしての行政文書(国文学研究資料館主幹・教授 高橋実)。
参加費は1,000円。7月31日(必着)までに埼玉県文化財保護協会へ電話で申込。 申込・問合 埼玉県文化財保護協会(埼玉県教育局生涯学習文化財課内)。
詳細は下記の案内(PDF)で。
イラクのアルビール(Erbil)に設立された国立文化財保存研究所(National Institute for the Preservation of Iraqi Cultural Heritage)の図書館の蔵書構築のため、副本等として持ち、拠出しても良いという世界の図書館や博物館に対してい寄贈を呼び掛けている。AICのサイトには希望する文献のリストが挙げられている。
Conservation book donations sought for Iraq

東京国立博物館が推進している予防保存対策(プリベンティブ・コンサベーション)の一環としての両開き棚はめ込み式保存箱の導入事例を掲載しました。

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1969年7月20日にアポロ111号は人類史上初めて月面に着陸、歩行した。しかしその模様を撮影したビデオフィルムはすでに劣化し、一部の動画は消滅したと言われてきた。米NASA(航空宇宙局)はハリウッドの映画フィルム専門修復業者に委託し、その修復に成功した。費用は23万ドル。担当した企業は Lowry Digital of Burbank社(カリフォルニア州)で、これまでにも「カサブランカ」、「スター・ウォーズ」などの映画の修復を手がけている。
NASA refurbishes video copies of moon landing
今年3月に開催されたアメリカ国立公文書館(NARA)主催の第23回資料保存シンポジウム Digitizing for Preservation and Access: Past is Prologue での各講演者による発表資料(PowerPointファイル)がNARAのサイトに掲載されている。NARAや米議会図書館、大学図書館や地域のアーカイブでのデジタル化の考え方や事例とともに、デジタル化のための資料に対する準備をどのように行うかについて、Archival and Preservation Preparation for Digitizing としてウィスコンシン大学アーカイブの責任者とNARAのコンサーバターが報告している。
Digitizing for Preservation and Access: Past is Prologue
カナダ文化財研究所(CCI)が主催する大型シンポジウム “Adhesives and Consolidants for Conservation: Research and Applications”が再来年(2011年)10月17~22日にオタワで開催される。案内は下記ページに。
図書館・文書館資料の保存修復のための季刊誌 Restaurator; International Journal for the Preservation of Library and Archival Materials の最近号(May 2009, Vol. 30, No. 1-2)から、『ほぼ日』関連論文を紹介する。
Application Issues of the Bathophenanthroline Test for Iron(II) Ions. Johan G. Neevel
バソフェナントロリン指示薬紙(bathophenanthroline indicator paper)は、資料に使われているインクが、二価鉄イオンを含む没食子インクであるかどうかを判別するためのものだが、紙のコンサバターは、洗浄や、フィチン酸による抗酸化などの様々な処置によって、二価鉄イオンが除去、あるいは無力化されているかどうかのチェックにも使用している。そこで、没食子インクやその他の化合物に対する指示薬の影響を調べたところ、pHがほぼ中性域(pH=6)において、バソフェナントロリンはインクやフィチン酸化合物を破壊することなく、安全に適用できることが分かった。バソフェナントロリン指示薬紙は、フィチン酸を使った処置後の、二価鉄イオン除去効果のチェックにも使うことができる。
※参考:インク焼け資料への保存修復手当て-効果の比較実験 Ⅰ
Stabilising local areas of loss in iron gall ink copy documents from the Savigny estate Sonja Titus, Regina Schneller, Enke Huhsmann, Ulrike Hähner,Gerhard Banik
没食子インク焼け資料の局部的な安定化の手法。インクに含まれる添加物の影響で、水に可溶性でありながらインク焼けが生じている資料に対し、ゼラチンでコーティングしたBerlin Tissue(楮と三椏を主原料とした極薄の紙 2g/㎡)を使い、物理的に安定させる。これは、海外ではよく知られている再加湿型接着ティッシュ(極薄の和紙などに、デンプン糊やメチルセルロースといった接着剤を塗布し、乾燥させた紙)の手法を応用したもので、ティッシュをあらかじめ作成し、サクションテーブルを使って資料に接着させる。この方法であれば、最小限のリスクで極めて緻密な処置や処置前の養生をインク焼けの部分へ行うことができる。
Remoistenable Tissue Preparation and its Practical Aspects. Andrea Pataki
再加湿型接着ティッシュ(remoistenable tissues)に最適な接着剤の選択。ゼラチン、デンプン、セルロース・エーテル、各種の化学系など、水その他の溶剤に可溶な接着剤の扱い易さ、柔軟性、濃度、透明性、適用後の反りの程度を基準に選択。用紙のBerlin Tissue に対して接着剤は、小麦粉デンプン糊とメチルセルロースもしくはゼラチンの混合したものが最適だった。布海苔あるいはJunFunori® はこの用途に関しては不適だった。
※参考:Adhesive Pre-Coated Repair Materials
Conservation of the Correspondence Letters of Ludwig Börne and Jeanette Wohl. Barbara Hassel
フランクフルト・マイン大学図書館が所蔵する Ludwig Börne と Jeanette Wohl との往復書簡へのコンサベーション事例。ドキュメンテーション、手紙を綴じた冊子の解体、数種の接着テープや接着剤残滓の除去、和紙+デンプン糊またはKlucel®による物理的補修そして再収納まで。大半が水性処置ができないものだった。手紙が保持する内在的な特徴(intrinsic features)にどのように配慮するかが議論された。
Goethe- and Schiller-Archive, Weimar: Guidelines for the Preservation and Conservation. Bernhard Fischer
ドイツ文化省の支援によるゲーテ/シラー・アーカイブ(ワイマール)の往復書簡保存修復プロジェクトは、プロジェクトに限定した課題以上の、至上の価値を持つ文化財をいかにして保存してゆくべきかという課題を提出した。アーカイブはこのための一連の基準、それも将来まで責任ある保存を実行できる基準を策定した。保管のあり方、閲覧室での資料の取り扱い法、予防的そして治療的なコンサベーション法などあらゆる場面が考慮された。2009年1月に開催されたプロジェクトに関する学会では、これらのガイドラインが討議され、国際的な共感を得て出版物として結実した。
Scientific conservation: Transfer of scientific research on ink corrosion to conservation practice – does it take place? Gerhard Banik
インク焼けを安定化させるというあらゆるアプローチは、手稿を構成する物質や予想される阻害要因の反応を説明する複雑な科学的な研究に関連づけられなければならない。水性処置は、隣接する別の部分の紙の劣化に対する水の影響を考慮せずには実行できない。科学的な研究の成果をリスクの低い介入的な処置法へと移行させるには、すでに定番になっているフィチン酸カルシウム+炭酸水素カルシウム液による処置法で明らかなように標準化を必須とする。しかし成功例は、この100年の歴史を見ても、これひとつを数えるのみである。ゆえに科学的なコンサベーションは、化学や物理学のエキスパートとの協力による充分な科学教育をうけたコンサーバターの指導のもとでの応用研究へ、力を注がねばならない。応用研究に当たっては化学と物理学は補助学問としての役割を持つ。
[要訳文責:久利、木部]
Restaurator, May 2009, Vol. 30, No. 1-2
カナダ文化財研究所(CCI)はこのほど、博物館・図書館・アーカイブの所蔵資料を安寧に保存するための新しい温度と相対湿度のガイドライン Environmental Guidelines for Museums - Temperature and Relative Humidity (RH) を発表した。従来の温度・相対湿度に対する考え方は、相対湿度は50%で、この場合には温度は15~25℃内にというように、一定の目標値を定めたものだったが、現実的にはこれを維持することは難しかった。今回のCCIのガイドラインは、ある数値を理想的な目標として定めるのではなく、コレクションを物理的化学的な安定度別に3分類し、それに応じた設定値(set point)を作り、その値を基準に実際の温度・相対湿度が短期・長期で変化(fluctuation=上下変動、gradient=勾配変動)してゆく際の幅を見て、制御レベルの良し悪しを5段階(AA、A、B、C、D)に分ける--というもの。概要は以下の通り。
1. 一般的なコレクション(閲覧・出納ルームあるいは、物理的には中位あるいは高位の脆弱性を持つが化学的に安定なコレクションの所蔵庫)
制御システムの設定値:相対湿度50% RH、温度15~25℃内
| 最大上下変動と勾配変動 | 制御レベル | |
| 短期(季節未満)*の変動幅 | システム設定値の季節調整 |
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| ±5% RH ±2℃ |
RHは変動なし 温度は上昇・下降ともに5℃ |
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| ±5% RH ±2℃ |
RHが上昇・下降ともに10% |
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| ±10% RH ±2℃ |
RHは変動なし 温度は上昇5℃、下降10℃ |
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| ±10% RH ±5℃ |
RHは上昇・下降ともに10%R 温度は上昇10℃(ただし30℃を越えな い)、下降はRH制御を維持するのに 必要な低さまで。 |
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RHは年間通じて25~75% の範囲、温度は稀に30℃を越えるが、通常は |
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| RH75%以下を維持 |
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*短期の変動とは季節毎の調整による変動未満のあらゆる変動をいう。ただし、あまりにも短く、変動に敏感ではない資料や容器に収められているものには影響を与えないこともある。 |
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2. アーカイブや図書館資料で、化学的に不安定なものの冷凍・低温保管
| 制御システムの設定値 | 最大上下変動と勾配変動 |
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±10% RH |
| 低温保管 10℃ 30–50% RH |
低温保管は、冬季のセットバック時にだけ達成できたとしても、 湿潤の被害を受けないのであれば、常に有益である。 |
3. 金属製コレクション【略】
Environmental Guidelines for Museums - Temperature and Relative Humidity (RH)
オランダ文化財研究所(ICN)は三ヶ月に一度のペースで文化財保存修復に関する定期セミナー Picture Meetings を開催しているが、本日(9日)の「コンサベーション・ドキュメンテーション」をテーマにしたセミナーをウェブキャスト(webcast: オンラインで配信されるストリーミング形式のセミナー)で世界に配信する。開始時間は現地の午前9時、日本時間では午後5時ぐらいになる。プログラムなどの詳細は下記ページで。

フランスの国立研究機関 Centre de Recherche sur la Conservation des Collections(CRCC) はこのほど各種の文化財に被害を及ぼすカビのデータベースを公開した。
文化財に発生するカビは、文化財だけではなく、毒性を持つものはヒトにも被害を及ぼす。このデータベースは各種のカビについて形態学、生物学、生理学、バイオ化学、毒物学、病理学の観点から解説している専門家向けのもの。温度が27℃と37℃での形態を様々な文化財(紙媒体を含む)ごとに顕微鏡で見た画像で示している。現時点ではカビの種類は20程度だが、300近いカビのデータベースに発展させる計画である。
MYCOTA : base de données sur les contaminants fongiques du patrimoine culturel
4世紀に作られ、完本の形で現存する最古の聖書でありながら各国に分散していたシナイ写本 Codex Sinaiticus を統合し、完全な高精細画質でデジタル化し公開するプロジェクトがこのほど完了、英国図書館のサイトで公開された。オンラインで800に及ぶ全ページとともに断片もすべて見ることができる。英国図書館、ロシア国立図書館、聖キャサリン教会(エジプト)、ライプツッヒ大学図書館(ドイツ)との共同作業による。サイトにはコンサベーションの報告も掲載されている。
The world’s oldest bible reunited online
Codex Sinaiticus
Conservation
7日のNHKテレビのニュースは「100年前、明治の実業家、渋沢栄一を団長にした経済人らの使節団が、アメリカの産業の現場を視察したときの様子などを撮影した未公開の写真が大量に見つかりました。」と報じた。下記のサイトで動画で見ることができる。
明治の経済使節団 未公開写真
Chinese book doctor treats patients
※再度見たいときはブラウザの「再読込」でページを更新してください。
杜偉生氏
After long obscurity, it's prime time for China's "book doctors"
IIC(国際保存修復学会)の機関誌 Reviews in Conservation の最新号(Vol. 54 No. 9) は The uses of cyclododecane in conservation を掲載している。化学物質シクロドデカン(Cyclododecane)は常温では固体だが60℃付近で溶解、常温で再び固体に戻る。しかし放置しておくと、昇華(固体→気体)し残留しないという特徴を持つ。可逆性が完全に保たれているといえる。
この特徴を活かした様々なコンサベーション分野での応用が1995年から始まった。紙媒体のコンサベーションでは主に滲み止めとして使われてきた。撥水性を合わせもつシクロドデカンを溶融し、水で滲んでしまう箇所に塗布し固化、その状態で洗浄などの処置を行った後に放置し、自然に昇華させる。溶融温度が低いために充分な浸透性が得られない場合があるなど、まだ課題があるものの、他のコンサベーション分野(壁画、絵画、セラミック、テキスタイル、金属)では、シクロドデカンを一時的な接着剤やコーティング剤として使う例が報告されるようになってきた。例えば考古学で現場からモノを移動しようとするが崩れる懸念があるという場合にシクロドデカンを塗布して一時的に養生するという使い方である。
今回の論文は、コンサベーション分野での多用な使用法の調査と紹介、化学物質としての安全性の評価などを網羅しており、現時点で最良の水準といえる。
Rowe, Sophie and Rozeik, Christina. "The uses of cyclododecane in conservation" (abstract)



フランスの国立研究機関 Centre de Recherche sur la Conservation des Collections などの研究者達はこのほど、紙媒体資料(本や文書)が時を経て劣化してゆく際に発生する揮発性有機化合物(VOCs)を補足し、経時(強制劣化期間に拠る)とともにその量がどのように変化してゆくかを数値として把握する研究を発表した。保存科学のE-ジャーナル "e- PRESERVATION Science"最新号(2009, 6, p.53-59)に、EMISSION RATES OF VOLATILE ORGANIC COMPOUNDS FROM PAPER として掲載されている。
発生するVOCを本などの紙の劣化の指針にするという研究はこの4、5年の間に欧米では盛んに行われるようになり、英国図書館は国内の主要図書館や近隣諸国機関との連携の元に共同プロジェクトを推進している。今回のフランスの研究者達の成果は、二種の異なるサンプル紙(コットン紙と機械パルプ紙)を強制劣化させた後に、発生するVOCを吸着する特殊なセルを紙の表面に当て、非破壊的に補足し、液クロやガスクロで分析、経時とともにその発生量がどのように変化してゆくかを数値的に明らかにした。発生するガスの種類とその量を表3(上掲、Step2 がコットン紙、Step3が機械パルプ紙)で見ると、フルフラール(furfural)と酢酸(acetic acid)が突出して多いことが判る。なお、これまでの研究によると、フルフラールは酸性劣化の、酢酸は酸化劣化の、それぞれ指針になるのではとされている。
e-PRESERVATION Science
※参考: 今年3月に開催されたIFLA(国際図書館連盟)資料保存コンファレンス In and Out Air Strategies Conference での英国図書館の研究者らによる発表では、同図書館の新聞書庫は棚長 33キロメートル、資料重量 5,300トン、そこから発生しているVOC量は年間 1.4トン、全てが揮発するのに 3,800年かかるという。