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almost daily news of preservation and conservation

図書館やアーカイブ等の資料保存に関する世界のニュースを伝える、ほぼ日刊のページです。 土日・祝日は休刊します。 リンクも引用も自由です。

2009年11月のアーカイブ

2009年11月24日(火)

広島県立文書館のサイト、インターネット講座「保存管理講座」として保存装備やカビの除去法等を掲載

広島県立文書館のサイトは、インターネット講座「保存管理講座」として以下を掲載している。現場でのノウハウが盛り込まれた内容になっている。

 ◆ 古文書の保存装備について
◆ 古文書の整理について  
◆ 古文書に発生したカビの除去方法

また、一般向けのリーフレットとして「古文書を取り扱う方へ」、「文書を所蔵している方へ」がPDFで掲載されている。


hdariyasjirusi(広島県立文書館)保存管理講座

2009年11月19日(木)

【弊社のニュース】 ボナデア著(伊藤美樹 訳)『館内で本を修理する』全文をPDFでアップロード




hdariyasjirusiアルテミス・ボナデア (伊藤美樹 訳) 『館内で本を修理する』 PDF(5.8MB)

2009年11月18日(水)

国会図書館カレントアウェアネス・ポータルの記事「Googleブックス訴訟の修正和解案、日本の作品は対象外に」

国立国会図書館のカレントアウェアネス・ポータルは11月16日付のニュースとして「Googleブックス訴訟の修正和解案、日本の作品は対象外に」を掲載している。

「対象となる書籍の範囲が縮小され、米国の作品以外で対象となるのは、米国著作権局に登録された作品か、カナダ、英国、オーストラリアの3か国で出版された作品に限定される。これにより、日本の作品のほとんどは対象外となる。」等、13日に提出された修正点をまとめるとともに、関連する情報のソースをウェブ・リンクで載せている。


hdariyasjirusiGoogleブックス訴訟の修正和解案、日本の作品は対象外に 

 

なお、上記のリンクとしては挙げられていないが、反Googleの旗手、ブルースター・ ケイルが率いる Open Book Allianceのサイトは、修正案が提出された13日当日に Is the Google Books Settlement Worth the Wait? を掲載、修正案は姑息な内容で、Google とそのグループの利益しか考えていないと非難している。

hdariyasjirusiIs the Google Books Settlement Worth the Wait?


2009年11月17日(火)

早川典子氏の講演「絵画修復に使われる糊と布海苔」、11月13日開催の国際研究集会『日本絵画の修復―先端と伝統―』から

東京文化財研究所主催の第33回文化財の保存及び修復に関する国際研究集会『日本絵画の修復―先端と伝統―』が11月12日(木)~14日(土)にかけて、東京国立博物館平成館大講堂で開催された。初日は「日本絵画修復の現状」をテーマに、絵画修復の理念や自然科学との連携についての発表に加え、海外における日本絵画の修復事例発表が行われた。二日目は「修復技術と材料をテーマとして、日本絵画修復に使用される材料についての確認や作業工程について、また、最新の試みに関しての発表がされた。最終日は「修復と自然科学」をテーマに、海外の美術館における絵画修復の現状、および九州国立博物館で行われている取り組みについての発表があり、最後に3日間の総括として総合討論が行われた。

全体のプログラムは →こちら

 

以下に早川典子氏による講演の概要を紹介する。

 

早川典子氏(東京文化財研究所)「絵画修復に使われる糊と布海苔」

日本絵画修復に使用される接着剤は、膠、小麦デンプン糊(新糊)、それを保管して作る古糊、布海苔に大別される。具体的な使用方法としては、表打ちには布海苔、剥落止めには膠、裏打ちには新糊や古糊、増粘剤として布海苔というように分けられる。これらは全て、可逆性を必要とする箇所に用いられる点で特殊な使われ方だと言える。しかし、使用技術が発展してきた一方で、経験や勘に頼った調製がなされ、材料自体の物性や化学構造については明らかになっていなかった。今回は古糊と布海苔を主に取り上げ、科学的な観点から得た成果を報告する。

古糊について

古糊は古くから裏打ちに使用されており、「仕上がりがやわらかいこと、接着が強すぎないため本紙に必要以上の張力をかけないこと、再修理の際に確実に剥離すること、小麦デンプン糊よりもカビが生えにくいこと」が利点として挙げられる。一方で、化学組成が不明であることや有色であること、酸性であることが問題として挙がっていた。今回はまず、デンプンの分子量や老化度、生成初期の微生物変化や剥離強度試験により科学的に物性を確認した。その結果、デンプンの老化は冷所保存(4℃前後で最も老化が進む)、デンプンの低分子量化はカビ由来の酵素、酸性はデンプン分解物、中間生成物(単糖オリゴ糖など)の消失は微生物による消費にそれぞれ起因するものだと明らかになった。この結果を踏まえ、新糊を5℃に冷やしてαアミラーゼを添加、脱イオン水で洗浄・遠心分離を行う方法で、古糊によく似た糊の短期間での調製が可能となった。この糊に有機酸を添加することは、接着力だけに関して言えば有益であるが、酸性に傾くことや、そもそもその接着力が必要なものなのかを考える必要がある。さらに、古糊使用時に行う打ち刷毛についても検討したが、和紙、特に美栖紙と宇陀紙の組み合わせの場合、接着力が最も高まることが剥離強度試験において確認できた。対して、パルプ紙に打ち刷毛を行うのは全く効果がなく、むしろ接着力の低下が見られた。

布海苔について

布海苔は日本画修復において、増粘剤としてデンプン糊の粘度調整や、接着剤として表打ちに使用されてきた。ゲル化しにくく粘度が高いのが特長で、水を与えると容易に剥離する性質は、修復終了後に速やかに除去する必要のある表打ちには非常に有効的な材料である。しかし、粘度や濃度の調製が難しい点が問題だった。そこで、今回は調製方法を変えて、抽出液の粘度や乾燥後の水への再溶解性について検討した。調製方法として、加熱抽出の他に室温抽出を行った結果、低い粘度のものが得られ、加熱抽出したものに比べて再溶解性が高く、除去しやすいという成果が得られた。室温抽出法は加熱抽出法と比較すると、分子量が低い、接着力が高い、溶解度が高いという特徴があり、表打ちに向いていることが明らかになった。しかしながら、室温抽出と言っても、季節(温度)によって条件が異なってくるため、20℃前後を想定した抽出方法であることを断わっておきたい。

セルロースエーテルについて

最後に近年使用されつつあるMC、HPC、CMCなどのセルロース誘導体について簡単に触れる。これらの材料は分子量や溶媒によって、また湿度によっても接着力が変わってくることに注意したい。カビの抵抗性試験では、自然材料に比べて抑制が確認されているという利点があるものの、材料の物性をきちんと理解した上での使用が肝要である。

 

[文責:福島希]

※参考

hdariyasjirusi早川典子氏の論文等

 

英国の資料保存支援センター(PAC)が写真資料の保存のためのブックレットをPDFで公開

英国の資料保存支援センター(PAC: Preservation Advisory Center)はこのほど写真資料の保存のためのマニュアル Preservation of photographic material を作成し公開した。全19ページのブックレット。銀塩写真だけでなく、カラー写真、マイクロフィルム、X線フィルム、動画フィルムも対象にしている。目次は以下の通り。

 Introduction
What is a photograph?
History
Identification of photographic process
Causes of degradation
Handling
Housekeeping
Environment
Temperature and relative humidity
Conservation heating
Environmental targets
Cold storage
Cellulose nitrate film – a warning
Air purity
Light and display
Housing  
Conservation
Digitisation
Online resources
Additional Reading


hdariyasjirusiBooklet: Preservation of photographic material

2009年11月16日(月)

園田直子編『紙と本の保存科学』が出版、保存科学者とコンサーバター、図書館員・アーキビストらの共同執筆

園田直子(国立民族学博物館教授)編『本と紙の保存科学』(岩田書院)が出版された。図書館やアーカイブでの資料保存に役立つようにと、保存科学者だけでなく、コンサーバターや図書館員やアーキビストと共に、「それぞれの専門的な立場から執筆したもので、化学的な事項も含めた総覧的な内容になって」(はじめに、p.1)いる。目次は以下の通り。

 Ⅰ 紙の基礎知識
紙とは  大江礼三郎
修復材料としての和紙  増田勝彦

 Ⅱ 紙の劣化度判定
司書による紙の劣化度評価  村本聡子
ダブルフォールドテスト  村本聡子
紙の物理的性質の測定  岡山隆之
紙の化学的試験法   関正純
ローリングテスト--紙の劣化度判定の新しい可能性--  園田直子
アコースティック・エミッション法による紙の劣化度測定  岡山隆之
熱分解ガスクロマトグラフィーによる紙の劣化度測定  大谷肇

 Ⅲ 紙資料の保存処理
少量の紙資料を対象とした保存処理  金山正子
紙資料を対象とした大量脱酸性化・強化処理  園田・関・岡山
カビの発生した紙資料への対処  金山正子
虫害が発生した紙資料への対処  日高真吾

 Ⅳ 紙資料の管理
紙資料保存のための環境整備  園田直子
紙資料の保管・収納法  青木睦


『本と紙の保存科学』
ISBN 978-4-87294-574-4
2009年10月25日発行
A5判、本文216頁
岩田書院
2,800円

 

 

【書評】

複数の著者による共同執筆のためか、各論を比較すると、その密度に差があるのはいたしかたないのかもしれないが、せっかく執筆するのならば納得できる科学的なデータや事例が出そろってからでも良かったのではないか(岡山「アコースティック~」)、実用化に結びつけるためには事例が少なすぎ、他の事例をいくつか重ねてから見せて欲しかった(園田「ローリング~」)というものもある。また、一般の工房での少量脱酸性化処置やインク焼け処置を紹介するならば、紙幅を増やしていま少し踏み込んだ専門的な内容と問題点の指摘にしないと、他の保存科学者による論のレベルとの開きが目立つ(金山「少量の~」)、屋内の温湿度管理では、Tim Padfiled やカナダ文化財研究所(CCI)の研究者による相対湿度の変動場幅許容と consevation heating の導入に象徴される新しい考え方や「基準」が広く注目されるようになっているので、これらの学問的な整理紹介が欲しかった(園田「紙資料保存のための~」)。一方、内外の研究成果を目配り良く概観して保存容器への収納の意味と方向性を明確に示したもの(青木「紙資料の~」)は、読者としての図書館員やアーキビストがなるほどと納得できる論になっている。

教えられたことも多々ある。「紙資料を対象とした大量脱酸性化・強化処理」(園田ら)では、かつて模索されたが、いまはもはや復活はするまいと思われるDEZ法などの過去の技術と、今現在実用化されているもの、開発中のものも、丁寧に紹介しており、大量脱酸性化技術の変遷がわかる(p.139-167)。同じく強化処理についてもバイエルン州立図書館のフリース法を詳しく紹介しており、これもコンサベーションの現場からするとありがたい。また、増田「紙修復材料としての和紙」では、「和紙を使う側ですぐにでもできることは使用材料のリスト、できればサンプルを付した修復報告書を作ることが有効ではないだろうか」という提言があり、考えさせられた。その通りだと思う。実は、ある時点までは弊社もこれをこころがけた報告書を顧客に提出していたのだが、大半の顧客先(図書館やアーカイブ)では紙媒体での報告書を保存し管理してゆくシステムが無く、紙媒体の元になるデジタル記録を渡すしかないようになっており(これすらも長期に保存しアクセス可能なのか疑わしいのだが)、まさかこれに実物の補修紙をペーストすることもできず、結局は顧客から要望があったときだけサンプルを提出している。ただ、報告書の記録というのは、私どものものではないのはもちろんだが、修理した資料そのものに常に寄り添うものであって、厳密に言うと、それを伴ってはじめて「修理した資料」の全体ということなのだから、今後は顧客にもアナログでの報告書の保存をお願いすることにした。今さらであるが、心して取り組みたい。

総じて本書は、保存科学者とコンサーバター、図書館員やアーキビストが膝を突き合わせて問題の解決に取り組んでゆく記念的な第一歩として評価したい。

以下はないものねだりであるが、かねてから大事だと思ってきたことなのでここに記しておきたい。

ひとつは大江「紙とは--6.5 紙の劣化」で言及されている劣化原因についてである。一般に、というよりも世界の紙の科学者も、私どものようなコンサーバターも、近現代の紙の劣化は紙中に作られる酸が主因で、これが触媒になって水が関与した形でのセルロースの加水分解を引き起こす、と認識している。いわゆる酸加水分解説である。 しかし大江の見解は、酸が主因ということでは同じだが、その劣化メカニズムについては全く異なる。「保存中の紙の水分は通常7~9% 程度で、ほとんどの水は吸着・結合水であって遊離水は少ないから、加水分解作用よりも硫酸基による脱水作用が褐色化、脆弱性の原因ではなかろうか」(p.33)。この大江の見方は、管見の及ぶ範囲だが、海外の保存科学者による数多ある論文でも指摘されたことはない。少なくとも大江の見解を受けて試験なり実験した論文を見たことがない。そこで要望というのは、この辺りを日本の保存科学者に取り組んでもらうことはできないだろうか、ということである。これは、「リグニン分を多く含む紙の場合には、まず着色などを伴うリグニン成分の劣化が進行し、その結果、セルロース分子の劣化はかえって抑制される可能性すら考えられる」(大谷「熱分解~」、p.126)と並んで、研究レベルでのインパクトと、資料保存の現場での対策に影響する興味深い展開が期待できるのである。なお大江の酸脱水角質化説は、安江「蔵書劣化の謎を追う  スロー・ファイヤー探偵団の冒険」で丁寧に説明されている。

もうひとつは「劣化の下限強度」について、しっかりとした解説と論とが欲しかった。書物の本文紙としてどの程度まで劣化していても許容できるのか。紙の寿命を知るために比較加速劣化試験をして結果が出ても、その劣化させた、あるいは劣化するであろう本文紙は、閲覧という使用に耐えるということなのか、そうではないのか、物差しが必要ではないか。いわゆる "So-what? "問題である。岡山は「紙の加速劣化試験によりある程度の物理的性質が半分になる期間をその紙の寿命とするといっても、強度のような性質の場合、元の強度の高い紙でその数値が半分になっても実用上問題にならないことが多い。したがって、半減期を求めるよりも閲覧に耐える下限値を設定し、これに到達するまでの時間を算出するほうが寿命の評価としては妥当である」(岡山「紙の劣化度~」)としながらも、これ以上は展開しておらず、残念である。実はこの下限強度については、大江や岡山らの「劣化の評価法」(『平成3, 4, 5年科学研究費補助金試験研究 (B)(1)研究者報告書 各種セルロース材料による劣化紙の補強方法の開発』、1994)において引裂き強度試験の数値として提示され、この本のなかでも園田が「加速劣化試験に基づいて、閲覧可能な下限強度として紙の引裂強さが 150mN に達するまでの時間を求めたところ、この処理(DAE法による脱酸性化;)による紙の延命効果は2.5~3.2倍と推定された。」(p.153)と言及しているのだが、「150mN」 の一般向けの解説はぜひとも欲しかった。

最後に、大変な作業になるのだが、巻末に索引を!!  

 

[文責:木部]

hdariyasjirusi岩田書院のHP

hdariyasjirusi入手はこちらからも → 地方出版、少部数の本★新刊案内

 

NPO書物研究会が12月に米フォルジャー・シェイクスピア図書館から F.モーリー氏迎えて書物修復の講演とワークショップ開催

NPO法人書物の歴史と保存修復に関する研究会と奈良県立図書情報館の共催による第3回シンポジウム「歴史遺産としての古典資料の保存修復」が12月5、6日に奈良県立図書情報館で開催される。米フォルジャー・シェイクスピア図書館修復室長のフランク・モーリー氏を迎え、講演、パネルディスカッション、ワークショップが予定されている。詳細は下記ページで。


hdariyasjirusi第3回シンポジウム 「歴史遺産としての古典資料の保存修復」 

 

IADAの国際シンポジウムが来年5月にプラハで、テーマは Out of Sight-Out of Mind?

ドイツ語圏のペーパー&ブック・コンサーバターを中心にした組織 IADA (Internationale Arbeitsgemeinschaft der Archiv-, Bibliotheks- und Graphikrestauratoren)の国際シンポジウムが来年5月にプラハで開催される。チェコ国立図書館、同国立アーカイブ、同国立博物館との共催。テーマは Out of Sight-Out of Mind? (目に見えないものはいずれ心からも消える?、去るものは日々に疎し?)で、紙媒体の作品や資料の保管、保管環境、保存容器、デジタル化、リスク管理等での発表が予定されている。


hdariyasjirusiIADA Symposium 2010 ’Out of Sight—Out of Mind?‘

 

 

2009年11月11日(水)

米議会図書館のプリザベーション・トピック講演会、NICTの福永氏が「テラヘルツ分光の保存科学への応用」を、完全非破壊で観察可能

アメリカ議会図書館の資料保存部門はプリザベーションに関する専門的なトピックをとりあげる講演会 Topics in Preservation Series (TOPS) を年に数回開催しているが、11月18日は日本の 独立行政法人情報通信研究機構(NICT)電磁波計測研究センターに所属する福永香氏による「テラヘルツ分光とイメージング技術の保存科学への応用:革新的な非破壊検査方法」(Terahertz Spectroscopy and Imaging Techniques for Conservation Science: Innovative non-invasive observation methods)が行われる。

テラヘルツ波は光と電波の中間にある電磁波。さまざなま電磁波が物質の非破壊分析に用いられているが、X線などの既存技術では金属以外の物質の部構造を非破壊・非接触で観察することができない。しかし、テラヘルツ波を用いた分光イメージング技術を駆使することで完全に非破壊に、不透明な物質であっても内部構造を観察することができるという。本年2月に画家ジョットの絵画技法を、この技術を用いて解明したことで世界的に話題になった。

 

hdariyasjirusiTerahertz Spectroscopy and Imaging Techniques for Conservation Science: Innovative non-invasive observation methods

 

※参考

hdariyasjirusi福永香
hdariyasjirusi出願特許:独立行政法人情報通信研究機構「テラヘルツ分光による文化財の検査方法」

 

来年1月に保存修復学会主催「文化財をまもる--文化財のまもり手を育てる」講演会を開催

文化財保存修復学会は来年1月16日(土)に東京国立博物館講堂で「文化財をまもる--文化財のまもり手を育てる」講演会を開催する。

「文化財の保護は未来永劫に続く活動であり、保存修復専門家の後継者育成は避けて通れない重要なテーマである。 講演等によってその歴史や現状、課題に迫り、同じ文化を背負っている同時代人とともに考え理解を深めることは有意義である。 これから文化財保護の世界を目指す若い世代に情報発信することでさまざまな指針を与えることを目的とする。」(案内から)


hdariyasjirusi「文化財をまもる--文化財のまもり手を育てる」

 

 

2009年11月10日(火)

国立国会図書館、「大量脱酸性化処理済資料の安全性に関する調査」の入札を公告

国立国会図書館の一般競争入札のページは、11月5日付広告として「大量脱酸性化処理済資料の安全性に関する調査」を掲載している。入札日は12月15日、履行期限は平成22年(2010年)3月19日。詳細は→こちら(PDF)

 

【弊社のニュース】 緊急雇用基金事業に伴う短期パートを募集、神奈川県寒川町文書館での公文書の劣化防止で26日から

国の緊急雇用基金事業としての寒川町文書館(神奈川県)の所蔵する公文書への劣化防止作業を、今月末から行う短期パート人員を募集しています。詳細は→こちらに

 

 

【弊社のニュース】 10月30日に開催された画像保存セミナーの参加報告、殺菌・静菌効果を有する酵素濾紙のエア・フィルタリングなど

社団法人日本写真学会主催の画像保存セミナーが10月30日に東京都写真美術館ホールで開催された。今回は、画像技術と図書館の資料保存、デジタルファクシミリの制作、殺菌・静菌効果を有する酵素濾紙、写真原板の概念、写真記録に関するガイドライン策定の取組み--など、広範囲なテーマがならんだ。これらの発表のうち、「画像技術と図書館の資料保存 -Looking backward and forward-」( 資料保存研究者・元国立国会図書館副館長 安江明夫)、「文化財保存へのアプローチ:気相中で殺菌・静菌効果を有する酵素濾紙」(日揮ユニバーサル(株) 磯前和郎)の概要を掲載した。


hdariyasjirusiスタッフの力 島田 要「平成21年度 画像保存セミナー参加報告」

 

 

2009年11月6日(金)

英ICON初の大会が来年の3月に、紙媒体では「洗浄」、「接着剤」、「和紙での革装丁の補修」などで発表が

2006年に英国内の文化財保存修復団体が大同団結して発足したICON(Institute of Conservation)による初の大会 CF10 - Conservation in Focus 2010 が来年3月25-26日に カーディフ(ウェールズ)で開催される。テーマごとの、あるいは文化財ごとのセッションが設けられるが、このうち Book & Paper と Photographic materials グループでは以下の発表が予定されている。

Evaluating cross-disciplinary working: the application of textile conservation adhesive techniques for book conservation
Caroline De Stefani, Arthur Green, Cordelia Rogerson

Discussion about the conservation of leather bindings with Japanese tissue,
Aline Leclercq and Malaurie Auliac • Discussion Forum

Washing artworks on multi-layer supports
Nicholas Burnett

Think Oversize! A critical review of the mounting, installation and storage of six very large contemporary works of art on paper,
Joan Weir

Cold Gelatine
Erika Kotze, Monica Matthews, Philippa Sterlini

Conservation of Glass Plate Negatives – Creating a Stable Future
Jenny Hodgson

Conserving a large collection of convict photographs at the National Archives, Ireland: A reflection on treatment approach and pointers for future practice
Louisa Cole

 

hdariyasjirusiCF10 - Conservation in Focus 2010

 

現代を代表する欧米の製本工芸家21人へのインタビュー集 The Theread That Bind が来年1月に出版

アメリカの製本工芸家 Pamela Train Leutz による欧米の製本工芸家へのインタビューをまとめた The Theread That Bind が来年1月に Oak Knoll 社から出版される。Jan Sobota, Don Glaister, Eleanore Ramsey, Tim Ely, Monique Lallier, Daniel Kelm, Priscilla Spitlerら、現代を代表する工芸家20人へのインタビューと、Don Etherington 【次の記事を参照】 への特別インタビューが収録される。


hdariyasjirusiTHE THREAD THAT BINDS: INTERVIEWS WITH PRIVATE PRACTICE BOOKBINDERS.
Leutz, Pamela Train
6 x 9 inches - Hardcover, dust jacket - 328 pages -
ISBN 9781584562764
Price: $ 55.00

エザリントンの講演「わが60年のオデッセイ:製本とコンサベーション」のストリーミング・ビデオ

10月16日に米シラキューズ大学図書館で開催されたドン・エザリントン(Don Etherington)の講演 A Sixty-year Odyssey in Bookbinding and Conservation が同図書館のサイトにストリーミング動画として掲載された。約30分のビデオ。現代のブック・コンサベーションの考え方や技術の先導役の一人であるエザリントンが、その60年を歴史を回顧する。

エザリントンは13歳で製本の道に入った。ロンドンのCentral School of Arts and Craftsで学びながら製本業者 Harrison’s & Companyで徒弟奉公をした。その後、London School of Printingで製本工芸家のEdgar Mansfield と Ivor Robinson に学び、BBCそしてRoger PowellPeter Waters の工房でコンサーバターとして仕事をする。そして1966年のフィレンツェの洪水による書物と文書の救助に Waters らとともに参加し、19667から~69年まで、Biblioteca Nazionale in Florence で被災した資料のコンサベーションの指導と技術者の育成に力を入れる。1970年にアメリカ議会図書館に招かれ、Watersらとともに、現在の同館のプリザベーション部門の基盤を据える。そののち、テキサス州立大学の付属機関 Harry Ransom Humanities Research Center でトップクラスのコンサベーション部門を作る。Information Conservation, Inc.の経営に参画、民間での新しいコンサベーションの業務を始める。主要な著作は、アメリカ議会図書館時代に部下の Matt Roberts と共に編集・執筆した製本とブック・コンサベーションのための事典 Bookbinding and the Conservation of Books: A Dictionary of Descriptive Terminology(1982)。同書は現在は検索可能な電子テキストになり、ウェブ上で公開されている。 


hdariyasjirusiDon Etherington: "A Sixty-year Odyssey in Bookbinding and Conservation"

2009年11月5日(木)

保存修復学会通信のシュースター・石井「East meets West」、今年8月にドイツで開催された日本の装こう技術講習会について

文化財保存修復学会の通信(132号、10月23日発行)はシュースター・石井律子氏(在ドイツ・バイエルン州立図書館修復研究所)による「East meets West」を掲載している(p.3-4)。石井氏らが企画し、日本から尾立和則氏を迎えて今年8月に開催された日本の装こう技術の基礎を教える講習会をきっかけに、「このような講習会が今、ヨーロッパでどのような意義を持つのか」を考えた好エッセイ。

紙作品の修復と装こうにおける日本の伝統技術はヨーロッパでも60年代から知られ、日本の素材や道具も好んで取り入れられてきた。また、修復技術の講習会もたびたび行われている。

日本の伝統技術を海外に伝えるという意味では、2つの違った目的がある。ヨーロッパ人が自ら東洋作品を修復するためなのか、ヨーロッパの作品を修復するためなのか? 前者については、講習会で習っても実際に活かせる機会はほとんどないので、むしろ軽微な修理法と保存対策を優先させたい。しかし後者の目的には講習会は有効である。

だが、積極的に受け入れてきたにもかかわらず、依然として素材や道具の使用への不安や、応用段階で長所短所を見極められず、また誤解や意味のない伝説が一般常識のようになっているのはなぜか? 理由として、技術と方法の「根拠」と、素材の「特質」について知らされていないことが挙げられる。経験から学ぶシステムを持つ「伝統技術」では「理由は説明出来なくとも知っている」ことがある。このため西欧人に対してある種の諦めを感じてしまうのも故なしとしない。しかし、一方、学んだはずの技術も活用することはできてはいない。「ディテールが欠けた大まかな理解で自己満足せざるを得なかったため、解らないところはある種のこじつけで補ってしまった」。

今回の講習会は技術の「根拠」と素材の「特質」をよりよく知ってもらうことに重点を置いた。尾立氏の指導は的確かつ論理的で、参加者の理解と納得が伝わってきた。講習会後のIADAによる評価調査でも「優秀」とされた。今後の課題は、この「インテグレーション」をもっと具体的に進めて行くことだ。「実例や実験を充実させて、彼らがこれまでに抱えていた疑問が、経験を通じて解消できるようなプログラムの組み立てにすることも考えている。

 

[要約文責:木部]

 

※文化財保存修復学会の『通信』は毎月発行されているが、紙媒体だけで、同学会のHPでは見ることができない。それでも、『通信』に掲載される「地域スタッフ情報」はデジタル化されてアップロードされていた。しかし2008年9月以降の更新は行われていない。特に海外スタッフである山崎、石井両氏からの情報は質が高く有益であるが、紙媒体でしか最近のを読めないのは残念である。以下は余談。技術の「根拠」も素材の「特質」も一向に明らかではない日本の実演イベントに出たばかりなので、石井さんのエッセイに思うところがあった。ちなみにエッセイのタイトルは East meets West であって、逆ではない。「企画の勝利」だろう。

 

 

47 Newsの記事 「官民で書籍検索制度目指す 米グーグルの攻勢に対抗」

47Newsのサイトは4日付の共同通信の記事として「官民で書籍検索制度目指す 米グーグルの攻勢に対抗」、「日本文芸家協会、国立国会図書館などは4日、「日本書籍検索制度提言協議会」を発足させた。国会図書館が進めている蔵書デジタル化を利用した日本独自の大規模な書籍検索システムを官民共同でつくり、この分野で攻勢を強める米検索大手グーグルに対抗する。」としている。


hdariyasjirusi官民で書籍検索制度目指す 米グーグルの攻勢に対抗

 

 


IFLA(国際図書館連盟)とインドのIGNCAIの共催で来年2月に新聞のデジタル化国際コンファレンス

IFLA(国際図書館連盟)の新聞分科会は来年2月25~28日にインドのデリーで新聞のデジタル化に関する国際コンファレンスDigital Preservation and Access to news and views.を開催する。現地のndira Gandhi National Centre for the Arts (IGNCA) との共催。


hdariyasjirusiIFLA International Newspaper Conference 2010

2009年11月4日(水)

国立公文書館の『アーカイブズ』が公文書管理法で特集号、制定を受けての自治体の取り組みや歴史研究者らの知見を

国立公文書館の機関紙『アーカイブズ』(009.19, Vol. 37)は全頁を「特集:公文書等の管理に関する法律」としている。菊池光興氏(国立公文書館前館長)による法律制定までの経過の回顧、秋池武(群馬県立文書館長)による地方自治体の取り組み、高埜利彦氏(学習院大学文学部長)、中野目徹氏(筑波大学大学院教授)ら歴史家による歴史研究にとっての意義、高山正也(国立公文書館館長)、尾崎護(公文書管理の在り方等に関する有識者会議座長)、朝倉敏夫(読売新聞専務取締役、有識者会議委員)、御厨貴(東京大学先端科学技術研究センター教授)ら4氏による座談会、制定までの国会質疑の記録、そして関連する論文や報道も掲載した充実した内容になっている。目次は以下の通り。

 公文書等の管理に関する法律の制定までの経過を回顧して 菊池 光興・2
公文書等の管理に関する法律成立にあたってのメッセージ
「公文書等の管理に関する法律」地方自治体の取り組みに向けて 秋池 武・7
待望の法律公布に思う 高埜 利彦・9
「公文書管理法」と歴史学研究 中野目 徹・11
公文書管理法の意義と課題 三宅 弘・13
座談会「公文書等の管理に関する法律制定と今後の展望」 出席者:朝倉 敏夫、尾崎 護、
御厨 貴、高山 正也、司会:山崎 日出男 ・15
「公文書等の管理に関する法律」について 中原 茂仁・32
公文書等の管理に関する法律(本則、附則、附帯決議) ・42
国会質疑 ―第171回国会における公文書管理法関連― 平成21年3月~7月 ・58
公文書管理・公文書館に関する提言・意見書、論文・著書、講演・報告、報道等 ・196

下記ページから全文をPDFでダウンロードできる。


hdariyasjirusiアーカイブズ 第37号 特集:公文書等の管理に関する法律

 

Restauratorの最新号、先端的な技術を使ったインク焼けの分析や加湿フラットニングによる紙の変化など

図書館・文書館資料の保存修復のための季刊誌 Restaurator; International Journal for the Preservation of Library and Archival Materials の最新号(Vol. 30, No.3, 2009)は以下の論文を掲載している。

IT-Supported Long-Term Risk Analysis for the Savigny Estate at Marburg University Library
Ulrike Hähner, Bernhard Seeger 

長期間におよぶインク焼け資料の劣化評価を、機械学習(machine learning) とデータマイニング(data mining)で行い、資料ものの劣化とともの劣化を導く環境要因の影響もシュミレーションすることで処置決定に活かすという。


Survey of Historical Manuscripts Written with Iron Gall Inks in the Slovak Republic
Jozef Hanus, Alena Maková, Michal Čeppan, Jarmila Mináriková, Emília Hanusová, Bohuslava Havlίnová

スロバキア国立図書館、同公文書館等に収蔵されている15~0世紀のインク焼け文書170点の状態調査。調査をもとに、pHが酸性域にある資料(42.5 % が 5.1 – 6.0、 41 %が4.1 – 5.0)は、文書の下敷き(paper support)を交換する。状態レベルが3の劣化がひどい文書は.2.5 %に過ぎず、これよりも良好な2レベルの文書が全体の55.9 %を占めた。また、文書の65%が鉄イオンを含み、銅イオンは7%を占めた。インクの変色度も調査した。


The Impact of Conservation Pressure-Flattening on the Dimensions of Machine-Made Paper
Salvador Muñoz-Viñas

ペーパー・コンサベーションによる紙の平面の歪みを抑える処置は、紙を濡らすか湿らせるかした後に、強制的な抑制条件を作り乾かす。濡らしてのフラットニングでは圧力をかけて行われるのが普通である。加圧フラットニングによる紙の寸法変化を見たところ、機械漉き紙では元々の横方向(CD: ロールが紙を巻き取るのと逆の方向)で0.25~1%拡大し、縦方向(MD: ロールが紙を巻き取る方向)で0.30%縮小していた。製紙段階での紙へのストレスに因る。変化は経時した紙の方が大きく、いわゆるメカノ・ソープティブ・クリープ(荷重が作用しているときの湿度変動に伴う変形)に倣う。また、圧が大きいほどCDの拡大が大きくなり、CDが小さくなる。加圧が小さくなればこれらの逆になる。.


Techniques d'Hyperspectral Imaging dans le domaine visible (420 – 720 nm) pour analyser les encres contenues dans des documents historiques(Visible (420 – 720 nm) Hyperspectral Imaging Techniques to Assess Inks in Historical Documents)
Douglas Goltz, Michael Attas, Edward Cloutis, Greg Young, Paul Begin

ハイパースペクトルイメージングによる二つの歴史的文書のインクの同定。


Advantages and Disadvantages of Various Techniques for the Visualization of Watermarks
Peter Meinlschmidt, Volker Märgner

歴史的な紙の製造地と時代を知るのにメーカーの透かし模様から判別する方法があるが、模様のさまざまな可視化法を比較し、熱輻射と遠赤外線による新しい方法を提唱。紙の厚みの障碍なく可視化でき、作業者の安全も保てるという。

 


hdariyasjirusiRestaurator(Sep 2009)

2009年11月2日(月)

Jeff Peachy の「書籍展示用クレイドルを組み込んだ夫婦函」、保護と展示を両立


linksouce: http://jeffpeachey.files.wordpress.com/2009/10/cradle2.jpg?w=499&h=281

アメリカの製本家・ブックコンサーバターであり、製本で使う手道具の優れた製作者でもある Jeff Peachy のブログは、書籍を展示する際に使うクレイドル(V字型の支え)を、クラムシェル(二枚貝)型の夫婦函に組み込んだ "drop spine box with an integral cradle" を紹介している。安定した保護と、展示という目的を両立させるもの。シンプルな構造で、製作図解付き。

 

hdariyasjirusia drop spine box with an integral cradle

 

10月にコペンハーゲンで開催された第12回「手稿本のケアとコンサベーション」研究集会での発表アブストラクトがサイトに掲載

10月14~16日にコペンハーゲン大学で開催された第12回「手稿本のケアとコンサベーション」研究集会(Care and conservation of manuscripts 12)での各発表のアブストラクトが、同研究集会のサイトに掲載された。手稿本に用いられた色材や顔料の非破壊分析、パリンプセプト(パーチメントのページに新たに上書きするために削られた元のテキスト部)の非破壊解読、デジタル化の可能性と限界、ウェブによるネットワーク化、ボックス・バインディング等を含むコンサベーションの事例等など、これまでにない多面的な研究が発表されている。発表全文は後日出版される予定。


hdariyasjirusiProgramme

 

 

 

 

 



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