2010年5月14日(金)
朝日新聞の2011年度の文化財保護助成は6月1日から申請受付、指定文化財や歴史遺産などが対象に
朝日新聞文化財団は国、又は都道府県、市町村の指定文化財並びに歴史遺産、及びそれに準じる芸術・学術的に価値のある文化財並びに歴史遺産の保護・活用などで助成金を必要としている事業を募集する。非営利法人が所有する美術・工芸品などの文化財や史跡・考古資料などの歴史的遺産の保存・修復・公開、これらの環境保全に関する事業や活動が対象になる。助成金は1件につき数十万円から数百 万円の予定。2011年度分の申し込みは6月1日から同30日まで。詳細は下記ページで。
JHK(情報保存研究会)のサイトに「JHK過去の質問箱」に寄せられた質問例への回答として、虫・カビの対策やデジタル化の費用など掲載
JHK(情報保存研究会 会長八木和夫)はウェブサイトの『質問箱』に過去の回答事例の一部を掲載した。図書の整理作業やカビが発生した図書のクリーニング、劣化の著しい公文書簿冊のデジタル化など6つの事例が公開されている。どのような作業をするのか、費用はいくら位かかるのか、など実際的な回答が載っている。『質問箱』はJHK会員企業に匿名で相談できるユニークなシステム。
2010年5月12日(水)
朝日新聞の記事:日中韓の国立図書館、電子化で連携 ネット横断検索
「日本、中国、韓国の3国の国立図書館は6月下旬にも協定を結び、各館が電子化した書籍をインターネットで検索し、読めるようにする共通の仕組みを作る方針を固めた。自宅のパソコンなどから自国語で検索しても、翻訳機能などにより、他国の蔵書を簡単に見つけられるようにする。」 → こちら
2010年5月11日(火)
【弊社のニュース】アルバイトを募集、資料修復と保存容器の両部門で3名
弊社ではアルバイトを募集します。6月から来年3月末まで。正社員への登用制度があります。業務は書籍・文書の保存修復処置と文化財等の長期保存容器制作。詳しい募集要項は下記に。
8月の国際図書館連盟(IFLA)サテライト会議、貴重資料と資料保存分科会の共催で、 DNA分析や炭素年代測定など
8月にウプサラ(スウェーデン)で開催される国際図書館大会(WLIC)サテライト・ミーティングでは貴重書・文書分科会(Rare Books and Manuscripts Section)と資料保存分科会(Preservation and Conservation Section)との共催で「古文書への新技術--保存と書物史における科学的調査法」(New Techniques for Old Documents Scientific examination methods in the service of preservation and book history)会議が開催される。DNA分析、ペーパー・コンサベーションでの非破壊分析、顔料の新しい同定法、炭素年代測定の紙への応用。古文書のOCR読み取りなど、他分野での技術の転用も含めた新しい技術が紹介される。プログラムは以下に。
New techniques for old documents - Scientific examination methods in the service of preservation and book history
2010年5月10日(月)
アメリカ図書館協会の資料保存ウィークで、一般利用者向けの資料保存広報ビデオのサイトを設営
アメリカ図書館協会(ALA) 傘下の全米の図書館が協力して毎年開催している資料保存ウィーク(Preservation Week)が今年も5月9日~15日に行われた。各種のイベントがそれぞれの図書館で開催される一方で、ALAの図書館蔵書技術サービス協会(ALCTS)は一般の利用者向けに資料保存の大切さを教える教育ビデオをストリーミングで視聴できるホームページを作成している。
◆英国図書館(BL)が作成した9つのビデオ Using the Collections
1. Caring for the Collections - Introduction
2. Using Books
3. Using Gloves with Collection Items (please also read our article on the use of gloves)
4. Using Books in Boxes and Using Other Types of Books
5. Using Folded Items
6. Using Rolled Items
7. Using Archive Material
8. Using Prints, Drawings and Photographs
9. Using Other Formats
◆George Mason University Libraries の蔵書のケアのための易しい5つのレッスン
◆Heritage Preservation/Heritage Emergency National Task Force による水害と火災時の煤に見舞われた資料の救助
Save Family Treasures from Soot
◆Kansas State University Library の閲覧者向けの「やっていいこと、わるいこと」
◆James Madison University Libraries の「食べ物・飲み物を持ち込むとゴキブリが」
◆Washington State University Libraries の「近代書籍のコンサベーション」
◆書籍などを含むさまざまなモノ資料への手当て Saving Nebraska’s Treasures
◆Digital Preservation Europe によるデジタル記録の保存についてのアニメ Digital Preservation and Nuclear Disaster: An Animation and Team Digital Preservation and the Aeroplane Disaster
◆Columbia University Libraries のシャーロック・ホームズ登場「書架の殺人」
2010年4月30日(金)
『正倉院紀要』最新号(第32号、平成22年3月)は「紙」の特集号、空気汚染の調査も
正倉院宝物特別調査紙(第2次)調査報告 まえがき …………… 杉本一樹 (1)
正倉院宝物特別調査紙(第2次)調査報告…………… (9)
古代料紙論ノート-『延喜式』にみる製紙工程をめぐって-………湯山賢一 (72)
正倉院文書料紙調査所見と現行の紙漉き技術との比較……増田勝彦 (85)
聖語蔵経巻管見- 調査報告にかえて- ………………赤尾栄慶 (96)
繍線鞋に関する一考察……………………田中陽子 (103)
正倉院における空気汚染調査- そのあゆみと最近の調査の結果-… 成瀬正和・中村力也(115)
正倉院紀要
2010年4月27日(火)
文化財保存修復学会第32回大会のプログラムから
今年6月12、13日に長良川国際会議場(岐阜市)で開催される文化財保存修復学会第32回大会の発表プログラムがこのほど公開された。このうち紙媒体関連の主な発表には、収蔵庫内の空気汚染物質の濃度指針、木材から放散されるギ酸・酢酸の定量法、ペーパースプリットマシンプロトタイプによる強化処理、文化財を収納する保存箱の環境評価法、書物から発生するガスの影響、IPM活動事例、シアノタイプの修復、コロタイプ印刷の耐オゾン性、経年劣化紙資料の加速劣化試験、竹紙の保存性、脆弱な劣化紙のリーフキャスティング、紙資料の展示用装丁---など。詳細は下記PDFで。
文化財保存修復学会第32回大会実行委員会「文化財保存修復学会 第32回大会」(セカンドサーキュラー)
昨年10月開催の「沖縄県の公文書管理-いま何をすべきか、何ができるのか]講演会とディスカッションのまとめ、オンデマンドの映像で
昨年10月30日に開催された「沖縄県の公文書管理 いま何をすべきか、何ができるのか-健全な地方自治のために、公文書管理者が目指すものとは・・・」の講演とディスカッションが資料(PDF)とともにオンデマンドの映像で、沖縄県公文書館のサイトに公開された。講演者は後藤仁氏(神奈川大学法学部教授)、パネリストは後藤氏の他、山城正也氏(沖縄県総務部総務私学課主事)・富永一也氏(沖縄県公文書館指定管理者(財)沖縄県文化振興会主幹)。
2010年4月23日(金)
4月15日開催の日本史研究会例会での2つのレジュメがサイトに、当日は Ustream での実況中継と Twitter でのコメントも
4月15日に開催された日本史研究会4月例会「地域歴史資料と歴史研究」での以下の2つの報告の資料(PDF)が同研究会のサイトに掲載された。
福島 幸宏氏(京都府立総合資料館) 「公文書管理法以降の歴史学の方向性」
松下 正和氏(神戸大学) 「大規模災害時における被災史料保全活動の現状と課題」
なお、この例会は Ustream での実況中継と、Twitter でのコメント寄稿という新しい試みが行われたことでも注目される → 日本史研究会によるイベントの中継ページ(実験中)
2010年4月22日(木)
米図書館協会ALCTSが資料保存ウィーク(5月9~15日)に専門家によるアドバイスをウェブ上で受けられるサイトを設置
アメリカ図書館協会(ALA)の蔵書と技術サービス協会(The Association for Library Collections and Technical Services=ALCTS) は5月9日から15日にかけての資料保存ウイーク(Preservation Week 2010)に、ウェブを通じて一般人や、資料保存に詳しい知識のない図書館員等に向けての、二つの相談窓口を設置する。専門家のアドバイスを直接、もらえる。
設置された窓口は、資料保存のための資材としてなにを、どこから入手すれば良いのかを問い合せる Archival 101: Dealing with Suppliers of Archival Products と、防カビおよび被害にあった場合の対処を教えるMold Prevention and Remediationで、相談費用は無料。ただし事前の登録が必要。
Free preservation webinars offered during Preservation Week, May 9-15
2月に開催された総務省の独立行政法人評価分科会の議事録、公文書の代替法の利点・欠点を22年度末までに検討し結論
2月25日に開催された総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会 独立行政法人評価分科会(2月25日開催)議事録が同省のサイトに掲載された。このうち、第5ワーキンググループによる内閣府国立公文書館関連の内容は以下の通り。
「まず、内閣府の国立公文書館についてでございます。国立公文書館に対しましては、勧告の方向性、2点、指摘しております。 1点目は、今度新たに公文書管理法が制定されましたので、また新しい業務が追加されますので、この施行までに既存の事務・事業について業務フロー等をきちんと見直ししましょうという指摘でございます。内閣府の方は、これに対しまして、公文書管理法が施行されるまでに従来の業務フローや事務処理手順を洗い出し、外部委託や非常勤職員の活用による一層の効率化、合理化の視点を入れ、無駄がないか徹底的な見直しを行うという回答でして、その旨を新中期目標に盛り込むということでございます。」
「それから、2点目でございますが、紙媒体の歴史公文書の保存方法として、マイクロフィルムともう一つ、デジタル、両方あるんですけれども、この辺のメリット・デメリットを平成22年度末までに検討して結論を得るという指摘をしております。これにつきましても、内閣府の方は、そこにありますように、マイクロフィルム化して保存することとデジタル化して保存することによる技術面、経費面におけるメリット・デメリットを、22年度末に、民間の専門家等の知見を十分に活用しながら検討し、結論を得るという旨の回答で、新中期目標に盛り込むということでございます。」
政策評価・独立行政法人評価委員会 独立行政法人評価分科会(2月25日開催)議事録
2010年4月19日(月)
Restaurator 最新号、カルシウムやマグネシウムのナノ粒子による非水性脱酸性化や超音波洗浄機によるクリーニングなど
図書館・文書館資料の保存修復のための季刊誌 Restaurator; International Journal for the Preservation of Library and Archival Materials の最近号(Vol. 31, No. 1, January 2010)から。
Changes in the Crystallinity of Cellulose in Response to Changes in Relative Humidity and Acid Treatment.
Mark Sandy,
Andrew Manning,
Fabrice Bollet
p. 1–18
紙媒体のセルロースの結晶化度が紙の酸性劣化と湿度変化による劣化とどのように関連しているかの研究。対象はクロマトグラフ用コットン・リンター紙、木材パルプ紙、ラフィア(ヤシ)紙で、異なった温度と湿度の組み合わせ下で加速老化、それぞれをあらかじめ塩酸で処置したものも対象にし、結晶度インデックスをX線分析で計測した。またクロマト用紙はFTIR分析でも結晶度インデックスを計測した。その結果、あらかじめ塩酸で処置して変化する相対湿度環境下で熱老化させたクロマトグラフ用紙は著しく結晶化度が上がっているのが判った。
Deacidification of Documents Containing Iron Gall Ink with Dispersions of Ca(OH)2 and Mg(OH)2 Nanoparticles.
Emmanuel Stefanis, Costas Panayiotou.
p.19–40
水酸化カルシウムあるいは水酸化マグネシウムのナノ粒子をアルコールに分散させた溶液を用いて行う脱酸性化が、没食子インク(Iron gall ink)が使用された文書や素描に対して与える影響についての研究。リグニン含有紙とセルロース100%紙に没食子インクを付与したサンプルを、摂氏25度、相対湿度50%の環境下で波長280nmの紫外線照射によって12日間劣化させ、Lab値(CIELAB 1976 colour space)と引張強度の変化を計測した。劣化の途中段階ではマイクロフーリエ変換赤外スペクトルによる計測も行った。水酸化カルシウムあるいは水酸化マグネシウムのナノ粒子は、酸化カルシウムと水による消和反応、もしくは硫酸マグネシウムと水酸化ナトリウムの均一気相反応によって生成し、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノールに分散させた。作成した分散液でサンプルの脱酸性化を行った後、その脱酸効果について、周期的に変動する相対湿度下における加速熱劣化試験と、加速紫外線照射試験によって調べた。その結果、上記の方法による非水性脱酸性化は、没食子インクが使用されている部分の紙に対して保護的な役割を持ち、少なくとも悪影響は与えないとの結論に至った。没食子インクが使用されている原稿、文書、素描に、この方法を適用することが可能だろう。
Analyses of Iron Gall and Carbon Inks by Means of X-ray Fluorescence Analysis: A Non-Destructive Approach in the Field of Archaeometry and Conservation Science.
Oliver Hahn
p. 41–64
考古計測学および保存科学分野におけ る、蛍光X線分析法を用いた没食子インク(Iron gall ink)とカーボンインクの非破壊的な分析。 歴史的な書写材料の化学的な組成を知る方法としては、マイクロ蛍光X線分析装置(micro-XRF) を用いた定性・定量調査が適している。この方法は、作品に使用された材料の来歴や年代などの解明の手助けになるとともに、コンサベーション処置の開発や検証にも役に立ちうる。
Technical Note: Ultrasonic Cleaning of Mud Encrustations from Flood Damaged Woodcuts
Eva Hummert,; Andrea Pataki-Hundt.
,p.65-74
洪水によって被害を受けたものは、泥の層で覆われ、様々なレベルでの変色が見られる。通常の洗浄方法では、乾燥して堆積した泥( ほとんどは鉱物由来)を除去できないが、洗浄槽の中で超音波発振器を使うことで、堆積した泥の層を除去することができる。さらに、非イオン界面活性剤( トリトンX-100)を含浸させたスポンジ(Blitzfix-Sponge)を使用し、部分的に物理的な洗浄を行うことで処置の向上がみられた。泥でひどく汚れた多色木版のクリーニングに適用し効果的だった。
Restaurator; International Journal for the Preservation of Library and Archival Materials(Vol. 31, No. 1, January 2010)
2010年4月16日(金)
14日開催のシンポジウム「滅亡か、復権か-大規模デジタル化時代と本の可能性」がUSTREMで
4月14日に開催された東京都古書籍商業協同組合創立90周年記念シンポジウム「滅亡か、復権か-大規模デジタル化時代と本の可能性」 (於・東京都/一橋記念講堂)がUSTREMのVideoPlanningのチャンネルにアップロードされている。講演者は長尾真(国立国会図書館館長)、森野鉄治(大日本印刷株式会社常務取締役)、高野明彦(国立情報学研究所 連想情報学研究開発センター長・教授)の各氏。パネルディスカッションと質疑応答も。
USTREM:滅亡か、復権か-大規模デジタル化時代と本の可能性
また、佐藤翔氏(筑波大学 部署 図書館情報メディア研究科)のブログ「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」には当日の記録がテキストで収められている。
「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」 2010-04-14
瀬畑ブログ:「行政透明化検討チーム」の設置 [2010年公文書管理問題]
瀬畑源氏(一橋大学大学院社会学研究科博士課程)の4月14日付けブログ「源清流清」は枝野幸男・行政刷新担当大臣を座長とする行政透明化検討チームの設置について。
「行政透明化検討チーム」の設置 [2010年公文書管理問題]
2010年4月15日(木)
大和印刷(世田谷区)が書籍1冊を100円でスキャニングしPDFに変換サービスを19日から開始、OCRでテキスト変換も100円/冊
合同会社大和印刷(東京都世田谷区)は4月19日から廉価でのブック・スキャニング代行サービス「ブックスキャン」を開始する。書籍一冊あたり全ページを100円でスキャニングし、パソコン、iPad、Kindle などで読むことができるPDFフォーマットに変換する。また、OCRによりコンテンツをテキスト化するサービスも併せて行い、これも100円 /冊という。
BOOKSCAN
※スキャニングとOCRの精度、著作権処理等の記述はない。
2010年4月14日(水)
AIC本と紙グループの2008年度年報 (Book and Paper Group Annual 2008)の掲載論文紹介
アメリカ保存修復学会の本と紙グループ2008年度年報(Book and Paper Group Annual)は20にのぼる論文を掲載している。
Baker, Amy; Croft, Jean Ann; Taranto, Joseph; Welsh, James; "What lies beneath: treatment of canvas-backed Pennsylvania coal mining maps for digitization", p.1-7
炭鉱の採掘坑を記した大型地図700枚のデジタル化を前提にした保存手当て。キャンバス地で裏打ちされたものの安定化とクリーニング。ピッツバーグ大学(米ペンシルベニア州)により2007年から進められている。コンサベーション。デジタルデータは採掘坑の安全性、再採掘等に活用される。
Baker, Whitney; Dube, Liz; "A preliminary study of current book conservation and repair in research libraries: a survey of the landscape", p.9-11
大学図書館等を主なメンバーとする研究図書館協会(RLG)参加機関で行われている貴重書と一般書へのコンサベーション(ブック・コンサベーション)と補修の実態調査。どのような技術による、どのような処置が、どのような対象に行われているかが、ウェブを通じて、無記名で質問項目に答える形で行われた。
Bishoff, Liz; "Metadata for conservators (Abstract)", p.13
処置情報の記録化がデジタル的に行われてる現在、その画像やテキストの記録をアクセスしやすくしたり後世まで残すには、データと共にメタデータ(データに関する属性情報を記述するデータのこと)も保存することがコンサーバターにとって不可欠の仕事になる。
Dekle, Claire; Haude, Mary Elizabeth; "Iron-gall ink treatment at the Library of Congress: old manuscripts - new tools", p.15-26
アメリカ議会図書館(LC)のインク焼け処置グループ(PIT)による統合的・体系的な処置プロトコール。PITで開発された方法論とツール(インクの検査・特定と、それに即した処置の選択のフローチャート)の解説と18世紀の文書資料への適用事例。
Eells, Linda; Fitzgerald, Solange; Speroni, Lara; Sutherland, Jane; Vervoorst, Juergen;
"The National Archives C 104/3 "The Wool Sample Books" - Conservation- Digitisation-Historical and Scientific Research-Public Access (Abstract)" , p.27
アメリカ国立公文書館所蔵の、18世紀イギリスの染料と織物業者が作ったレシピ本(実物サンプル付き)へのコンサベーションとデジタル化。
Krueger, Holly H.; "Conservation of the Library of Congress' Gandhara scroll: a collaborative process", p.29-34
米議会図書館が所蔵する、インド仏教の源を示すガンダーラ王国の巻子資料(BC1~2世紀)へのコンサベーション手当て事例。同巻子は1990年代に発掘されたもので樺の皮でできており、著しく脆い。手当ては多くの関連専門家の協力を得て行われた。
Fiorini, Graziana; Maekawa, Luana; Stiberc, Peter; "Save the plants: conservation of Brendel anatomical botany models",p.35-45
フィレンツェ大学植物生態学部がもつ各種の植物解剖モデルへのコンサベーション。1860年代からドイツで作成された精緻なモデルはパピエ・マシェ(一種の紙粘土)、木材、プラスター、ゼラチンが材料。附帯記録とともに長く地下倉庫に保管されていた。
Owen, Linda; "Fire and paper: an examination of the materials and techniques of Lee Bontecou's soot drawings" p.47-53
アセチレン松明にかざして、そのススで描く画家 リー・ボンテクウ(Lee Bontecou)の紙媒体作品(1958年)の制作手法分析。
Paterson, Dan; "An investigation and treatment of an uncommon Ethiopian binding and consideration of its historical context" p.55-62
米議会図書館所蔵の、西洋の古代の製本方法を古代後も伝えてきたエチオピアン製本の状態調査と、歴史家、キュレーター等の協力による保存処置。
Porto, Stephanie; Shugar, Aaron N.; "The effectiveness of two cationic fixatives in stabilizing water- sensitive dye-based inks on paper" p.63-69
水に敏感な資料の処置の際の滲み止め法として、これまで使われてきたシクロドデカンやパラロイドB-72に代わり、テキスタイル製造や製紙分野で使われているカチオン系定着剤のCartafix GS と Cartafix NTCの紙媒体へのコンサベーションへの応用試験。対象はインクジェットで描いたものの水処置後の状態の変化を顕微鏡、分光測定、フーリエ変換赤外分光(FTIR)で調べた。
Schell, Laura; "Larger than life: discovery and restoration of an 1878 "Buffalo Bill" billboard" p.71-77
アメリカ西部開拓時代の有名人であるバッファロー・ビルの大型の興行看板絵(ポスター)への4年間に渡る処置事例。テキスト部の破損や画像部の損傷が著しく、脆くなっているポスターへの処置は4年間を費やした。
Smith, Theresa; "Historical bleaching of Ingres drawings at the Fogg Art Museum" p.89-96
フォグ美術館所蔵の画家アングルの素描に過去に行われた漂白処置の調査。1950年代に二酸化塩素ガスで漂白処置されたものが黒ずんでいるのを、処置記録とともに走査電子顕微鏡やX線蛍光分析で調べた結果、塩素が残留しているものがあることが判った。
Velios, Athanasios; "Hierarchical recording of binding structures (Abstract)" p.97
シナイ山にある聖キャサリン教会の図書館は中世の多くの貴重書を保有している。ロンドン芸術大学による4,500点の資料への精緻な調査。
Blaser, Linda; Peckham, Susan M.; "The Archives Discussion Group 2008: sharing information about environmental monitoring" p.99-114
アメリカ保存修復学会(AIC)アーカイブ資料分科会による環境モニターに関する討論の記録。「最良のシステムはどれか?」
Sheesley, Samantha; "Vortices and reveries: an innovative treatment of oversized three-dimensional paper objects"p.79-88
造形藝術家Karen Stahleckerの楮紙を主な素材にした大型三次元作品への保存手当て。他にスチールの輪, 木製の釘、ホットメルト接着剤、マジックテープなどが使われているが、これらが主材料である楮紙に悪影響を与え傷みがきていた。処置は実物の状態調査、モックアップ(見本)の作成などを経て、二段階の反応性接着剤システム、マジックテープ、磁石を使った可逆性のある手当てが開発された。
Reidell, Sarah; McCann, Laura; "Library Collections Conservation Discussion Group 2008: Digitization Project Case Studies" p.115-117
アメリカ保存修復学会(AIC)紙と本のグループ の図書館資料コンサベーション・ディスカッション・グループ(LCCDG)により2008年に行われた書籍のデジタル化計画についての公開討論記録。大学図書館等で行われているデジタル化の事例(規模、目的、資金、人員、業務の流れ、選別基準、コンサベーション等の流れ)を5人のパネリストが概説し討論。
Cuoco, Debra; Hamilton, Heather; "Alternative fabric supports for the Dacron lining technique for paper objects (Poster)"p.119-122
ダクロン(ポリエステル不織布)を裏打ちの養生用サポートとして使う大型紙媒体資料の裏打ち。大きなサイズにも適用できる、欠損部があり従来の紙の裏打ち・乾燥では引き攣れができるものも安定した乾燥ができる、反りが生じない--等のメリットがある。ただ、これが初めて紹介された時点でのダクロンの製品仕様、とくに表面の平滑性は、裏打ち紙(和紙)からスムーズに外せたが、現在入手できるものはやや難がある----。効果や外しやすさ等の良し悪しを比較した。
Fallon, Rosemary; Lockshin, Nora; "Which cracked first: the inkin' or the egg? Analysis and treatment of ink deterioration in the William Bache silhouette album" p.123-125
国立肖像ギャラリー(National Portrait Gallery)にある1803~1809年にニューオリンズで作られたシルエット(影絵)を集めたアルバムの保存手当て。
Hirano, Hanako (平野はな子); "Reconsidering the classification of foxing through photographic and historic analysis and presenting two case studies of the conservation treatment of foxed paper (Abstract)" p.127
画像と歴史的な分析によるフォクシングの分類法再考、および漂白法。
Albro, Sylvia; Biggs, Julie L.; Dekle, Claire; Haude, Mary Elizabeth; Karnes, Cyntia; Khan, Yasmeen; "Developing guidelines for iron-gall ink treatment at the Library of Congress (Independent submission. Article not presented at 2008 AIC meeting)"p.129-165
【上記のDekle, Claire; Haude, Mary Elizabeth:Iron-gall ink treatment at the Library of Congress: old manuscripts - new tools に述べた】インク焼け処置の詳細な手引き。
BCIN
2010年4月12日(月)
日本学術会議、『日本の展望--学術からの提言2010』を提言、分野別の「史学」では「学芸員、アーキビスト等の専門職としての確立」
日本学術会議はこのほど我が国の学術研究の目指すべき方向を、今後10年から20年先を見据えた長期的視野から検討してきた結果を、提言「日本の展望―学術からの提言2010」として取りまとめ、公表した。併せて、提言の基となった日本の展望委員会の「13のテーマ別・分野別作業分科会提言」及び「31の分野別委員会報告」をそれぞれ公表した。このうち史学委員会(委員長:小谷汪之東京都立大学名誉教授)による「史学分野の展望--国史を超えて人類の歴史へ」では、3章の「歴史学・考古学のさらなる発展のために」の4節として「学芸員、アーキビスト等の専門職としての確立」が提言されている。
(4) 学芸員、アーキビスト等の専門職としての確立
歴史学・考古学・美術史の研究成果を社会的に発信する拠点として、博物館・美術館が果たすべき役割は大きい。これらの施設に付託された社会的任務(高い学術・芸術的価値と時間的価値を集積した実物史資料の保管・修復・公開)を効果的に実現するためには、長期的な見通しのもとで、博物館・美術館が高い質と経済性を両立させて健全な運営を行うことのできるような体制を政策的に整備することが求められる。
博物館・美術館の機能にとって、学芸員その他の専門的技能者の存在は死活の問題である。しかし、学芸員や文化財保存作業を担当する技術者を養成するシステムが整備されていない。いくつかの大学や大学院に、養成コースが設置されているほかは、各博物館・美術館が個別に対応しているというのが現状であろう。さらに、大学や大学院の養成コースを出ても、その後に、培った専門技能をいかせる場が少ないことも問題である。養成課程修了後に、その実力に見合う待遇の職場を得られるような制度改革が必要である。
同様のことは各種の文書館や公文書館についても言いうる。古文書や公文書に精通したアーキビストを養成する大学院のコースを充実させ、その修了者が自己の能力を生かせるような場を保証することが求められている。
以上のような施策を行うためには、社会が学芸員やアーキビストを専門職として認知するようにならなければならない。歴史学・考古学の学界はそのための努力を強めるべきである。
「日本の展望―学術からの提言2010」
史学分野の展望―一国史を超えて人類の歴史へ―(PDF形式)
2010年4月9日(金)
【弊社のニュース】スタッフのチカラ「和紙のフォクシング--異なった場所に保管されていた同じ見本帖『手漉和紙』(昭和44年)を比較する」

保管環境が異なるところに置かれていた同じ和紙見本帖( 計4冊 )の特定の和紙に発生したフォクシングの形態を調査・比較し、同一の和紙であっても保管環境の違いによって発生の有無、その形態の違いが出てくることを確認した。
蜂谷伊代「和紙のフォクシング--異なった場所に保管されていた同じ見本帖『手漉和紙』(昭和44年)を比較する」
2010年4月7日(水)
米議会図書館(LC)が蔵書リカバリー室を新設、災害発生へ即座に対応できるノウハウや設備を拡充
アメリカ議会図書館(Library of Congress)の資料保存部門のサイトが、昨年10月に新設されたコレクション・リカバリー・ルーム(Collections Recovery Room)を紹介している。災害が発生したときに迅速に対応出来るノウハウをスタッフに教育する機能とともに実際的な災害対応が可能な設備を備えている。
LCは昨年(2009年)冬に水害による被害を受けたが、それを事例としてリカバリー・ルームの業務を画像とともに紹介している。同ルームにはLCのコンサベーション・スタッフが、湿ったりカビが発生した蔵書を収めてリカバリー・ルームにまで搬送する袋や、カビ等による二次被害の発生を防ぐための乾燥設備や間紙、汚染された蔵書を隔離し調査したりカビや汚れ、虫などを掃除するスペースが備わっている。
Conservation Division's New Collections Recovery Room
2010年4月6日(火)
【弊社のニュース】『ほぼ日』ページの右欄にを設置しました。新聞等のメディア報道へのリンクです。
今月(2010年)4月から「公文書管理」に関連する国内の新聞やサイトでの報道をフォローするコーナーを設けました。各メディアの本文へのリンクが貼られています。
2010年3月30日(火)
仏文化省、リュミエール兄弟のカラー写真「オートクローム」のサイトを立ち上げ、CRCC等の保存科学者も協力

「映画の父」と呼ばれるフランスのオーギュスト&ルイ・リュミエール兄弟が1907年に世界で初めて実用カラー写真として発売したオートクロームのサイトができた。フランス文化省が作成したが、原資料の保存と修復については国立研究機関 Centre de Recherche sur la Conservation des Collections(CRCC)の写真の保存科学者 Bertrand Lavédrine らが全面的に協力した。サイトには写真の歴史の中での位置づけ、オートクロームの歴史、リュミエール兄弟の家族について、技術の解説、時代的な背景などのページがある。
La photographie des couleurs, Autochromes Lumière
※参考
『ほぼ日』 2009年6月25日(木) Lavédrineらによる 『古い写真--その制作プロセスと保存』が8月に上梓、最も本格的なコンサベーションの指針
【弊社のニュース】「寒川町寒川文書館における公文書劣化防止事業」を掲載

弊社では、短期の雇用・就業機会の創出を目的とする緊急雇用創出基金事業の一環として、寒川文書館が行うマイクロ化後の歴史的公文書への保全措置を請け負った。
酸性紙の文書保存箱465箱分の公文書を長期的に保存するため、劣化要因となる金属類の除去、損傷部分の簡易な修補、綴じ直しが主な作業内容になる。更に、これまでの酸性の文書保存箱から弊社製のアーカイバル容器314箱への入れ替え作業も行った。弊社からの監督者1名、ハローワークを通じて採用した作業員6名で、期間は11月12日から3月26日までの計71日間だった。
2010年3月29日(月)
【弊社のニュース】和書「往来物」への保存修復処置- 東京学芸大学附属図書館様所蔵資料「望月文庫」を主として

東京学芸大学附属図書館様が所蔵するコレクションのうち、特に傷みの著しい貴重書資料への保存修復処置をお引き受けする機会を得た。対象となったのは、同大学図書館の「望月文庫」のうち江戸~明治期に出版された「往来物(おうらいもの)」を主とした資料である。「望月文庫」の概要およびコレクションに保存修復処置を施すに至った経緯、実際に弊社で行った処置の報告、保存修復処置後の資料を見た図書館員の方々の感想をまとめて掲載する。
和書「往来物」への保存修復処置 - 東京学芸大学附属図書館様所蔵資料「望月文庫」を主として -
2010年3月26日(金)
日図協『資料保存のための代替』が上梓、理論・歴史・マイクロとデジタルの比較・アーカイブ資料の代替保存・事例・文献案内

日本図書館協会はこのほど『資料保存のための代替』(監修:安江明夫、日本図書館協会資料保存委員会編集企画)を刊行した。同委員会に設置された保存管理チームによる成果。同チームは保存管理の重要な一翼を担う代替(電子式複写、マイクロ化、デジタル化)について文献研究、セミナー等を行ってきた。従来、資料の代替といえばマイクロ化が主な手段だったが、デジタル・インターネット環境下では技術、活用、目的そのものも再検討が必要になっている。
本書では、図書館やアーカイブズの資料保存においてマイクロ写真技術とデジタル技術をどのように理解し、どのように適用すべきか、また紙資料以外のメディア(レコード、カセット、映画等の視聴覚資料、さらにはボーン・デジタル記録)の代替にどう取り組むきかを6人の執筆者による本論で述べる。テーマごとの丁寧な文献案内付き。
1. 代替保存--これまでとこれから-- 安江明夫
2. 代替保存の選択肢 竹内秀樹
3. 文書館にけるマイクロ化とデジタル化 新井浩文
4. ベッテルハイム史料の修復とデジタル化--琉球大学の事例 高橋輝
5. 代替保存における意思決定プロセス--大学図書館の事例 小島浩之
6. デジタル時代のマイクロフィルムの役割 楢林幸一
付録:文献案内 村本聡子
『資料保存のための代替』
監修:安江明夫
規格:日本図書館協会資料保存委員会
発行:日本図書館協会
2010年3月15日初版
A5版、131頁
ISBN: 978-4-8204-0922-9
定価:1,800円
「機械漉き洋紙技術は和紙製造の省力化にどのように導入されたか」、稲葉(藝大)・加藤(東文研)らの科研報告まとまる
平成20~21年度科学研究補助金による特定研究として進められた「和紙から機能紙への技術革新」の研究報告書がまとまり、このほど出版された(非売品)。研究代表者は稲葉政満(東京藝術大学大学院美術研究科教授)、同分担者は加藤雅人(国立文化財研究機構東京文化財研究所保存修復科学センター)。概要(p.3)は以下の通り。
和紙製造技術は、長繊維である楮などを使用して良質な紙を製造する優れた方法である。短繊維を用いて大量生産する技術として進歩してきた機械漉き洋紙製造技術が、和紙製造の省力化にどのように導入されたかについて研究した。
粘剤を用いた機械漉き和紙は1895年に円網抄紙を用いて初めて製造された。しかし、楮は長繊維であるために、機械漉きすることは難しく、本格的な楮紙の製造は1995年に高知で開発された懸垂式短網抄紙機が導入されて以降である。本抄紙機はロータリースクリーン(後にロータリースクリーン)が絡んでしまった楮繊維束を取り除き、抄紙網部をゆっくりと横揺すりすることで良好な紙の地合を実現し、薄くて均一なシートを称しできるようにした。本気は廉価でありながら、操業性がよい。
戦後画仙紙に移行した西島と因州では、手漉き工程の省力化のために流動式の手漉き装置の開発と導入を行っている。これは、画仙紙の場合、紙が薄く一度の組み込みで紙層を形成することが可能なこと、繊維長の短いものを主として使うためと考えられる。津山の中尾、美濃の後藤らが開発した装置を元に、西島ではセーコー式、因州では半自動式そして、紙床(湿紙を伏せるところ)への移行などまで自動化した機械(大野・松木園式、中小企業事業団式)が開発されている。ただし、全自動の機械は装置が複雑になりすぎ、シンプルな装置としての半自動式が実際には使われている。
技術革新の解釈の手法として中森の伝統産業の類型化手法により越前和紙襖紙と小間紙産業の近年の技術革新と社会受容についての分析をおこなった。
機械(省力)化は良質な和紙を、安価に供給することを可能としたが、生活様式の変化や各種の新材料の市場への投入により、和紙の売れ行きは低下している。そこで、和紙製造法で開発した技術を用いて、化繊紙そして機能紙への技術革新が行われた点についても検討した。
パラパラとめくるだけでスキャニングする超高速スキャナ---東大の石川・小室研究室の研究成果をIEEEサイトが紹介
IEEE(電気・電子分野における世界最大の学会)のサイトは、カメラの下で本をパラパラとめくるだけでコンテンツをスキャニングできるシステムを紹介する動画を掲載している。動画では200頁の本が1分でスキャニング可能としている。東京大学の石川正俊教授らの研究室の成果。1/1000秒の動きを捉えるカメラによりページの変形把握と文字・絵のデータ取得を同時に行い、デジタルデータにする。照明は普通のものとレーザラインプロジェクタのものを用い、照射された光で三次元形状を測定することで、変形した形状も補正し、データとして保存できるとしている。
Superfast Scanner Lets You Digitize a Book By Rapidly Flipping Pages
2010年3月25日(木)
【寄稿】内田夕貴「アーカイブ資料の保存と利用のために ―英国NROのコンサベーション部門の仕事とそのスタイル・人々―」

内田夕貴氏に「アーカイブ資料の保存と利用のために ―英国NROのコンサベーション部門の仕事とそのスタイル・人々―」を寄稿していただいた。内田さんは現在、イギリス東部ノーフォーク州の州都、ノーリッチにあるアーカイブセンター内にあるノーフォーク・レコードオフィス(NRO)のコンサベーション部門で働いている。海外のアーカイブに正規のコンサーバターとして奉職した初めての日本人であろう。
「このエッセイでは職場での仕事とそのスタイル、人々について私の視点からお伝えしたい」」とし、機関の歴史、アーカイブ利用者へのサービスや教育、アーカイブ資料のコンサベーション--等々を報告している。アーカイブの使命である資料の利用を促進させるためにこそコンサベーションがあること、そのためにコンサベーション部門が他の部門と一体となって日常的な業務を進めていること、アーカイブツアーに代表されるような、未来のアーカイブ利用者である子供たちを含めた一般市民へのパブリックサービスを効果的に行っていること、その手法--等々が語られる。
「アーカイブを通して文化を見たときに、その国が文化的に本当に豊かなのかどうかは、周縁にある地域や小規模のアーカイブの状態とそれを守っている人々の意識の中にこそ見えるものである」という内田さんの言葉と、プロ意識に裏付けられたアーキビストの日々の実践の紹介は、日本のアーカイブのこれからを考えている方達、とりわけ市や町のアーカイブを運営するアーキビストには大いに参考になるのではないか。
【寄稿」】内田夕貴「アーカイブ資料の保存と利用のために ―英国NROのコンサベーション部門の仕事とそのスタイル・人々―」
2010年3月16日(火)
国会図書館の大型デジタル化図書と雑誌1,800万コマは紀伊國屋書店が落札、続く1,960万コマは5月に入札へ
国立国会図書館の調達情報の落札者等の公示(政府調達案件)のページは78「戦前期刊行図書の原資料からの電子化一式 約1,200万コマ (予定)」、79「戦前期雑誌の原資料からの電子化一式 約600万コマ (予定)」を掲載している。どちらの案件も落札者は株式会社紀伊國屋書店。
※参考:国会図書館が蔵書電子化(日経産業新聞記事のクリップ)
また、一般競争入札の公告のページでは、これに続く戦前刊行図書(約35万コマ)と雑誌(約1,925万コマ)の入札情報を掲載している。入札日は5月18、19日。
2010年3月15日(月)
英国資料保存支援センター(PAC)が書籍資料の傷みの原因と症状と保存手当てをまとめた小冊子 Dameged Book をPDFで

英国の資料保存支援センター(Preservation Advisory Centre)はこのほど書籍資料さまざなな傷みの原因と症状を同定し、それに対する保存手当てを簡潔にまとめた小冊子 Damaged Book を上梓した。PDF形式で、同センターのサイトから無料でダウンロードできる。
書籍はさまざまな素材(紙、革、木材、クロスなど)が複合してあるのが普通であり、その構造も一括のパンフレット類からいくつもの括がs綴じ合わされたものまで多様であり、古書から現在までの素材や構造を同定することは簡単ではない。このパンフレットは傷みの原因と症状を述べ、それぞれに対する保護法のうち館内でできる保存手当てを簡潔にまとめている。その際に、資料価値、稀少性、傷みの程度、利用のされかたを考慮することが強調されている。また、専門家でなければ解決できない問題の相談先も紹介している。
'Damaged books' guidance booklet (PDF)
2010年3月10日(水)
英国図書館のヘレン・シェントンが4月にハーバード大学図書館へ移籍、副館長として資料保存を踏まえた新しい大学図書館構築へ

英国図書館のコレクション・ケアの責任者として、同図書館だけでなく、英国全体の資料保存の牽引役を果たしてきたヘレン・シェントン(Helen Shenton)が3月末に英国図書館を離れ、新たにハーバード大学図書館に副館長として迎えられることになった。ハーバード大学のロバート・ダーントン(Robert Darnton)館長のたっての要請を受けてのもの。シェントン女史はハーバード大学の73におよぶ図書館群が進めるアナログ/デジタルの両分野でのバランスとのとれた図書館政策を指揮することになる。
シェントン女史は1998年にビクトリア&アルバート博物館から英国図書館に移籍、2002年に同図書館の蔵書を総合的にケアするという新しいコンセプトを提示し、初のコレクション・ケア部門長として、本と音声資料のコンサベーションに特化したセンター・フォ・コンサベーション(Centre for Conservation)を設置、一方で1億5千画像に及ぶ大規模な代替プロジェクト、各国に分散されていた貴重書「シナイ写本」をデジタル的に一元化する国際プロジェクト--等々を推進した。
今回のハーバード大学への移籍は、世界的な歴史学者であり、最近ではグーグルと図書館の関係について先鋭的な論文をいつも発表しているロバート・ダーントン館長の強い要請を受けてのもの。同図書館が打ち出した21世紀の新しい大学図書館ビジョン作りに専念することになる。
Helen Shenton New Deputy Director of Harvard University Library
British Library's Helen Shenton Is HUL's New Deputy Director
2010年3月9日(火)
ICCROMと東京文化財研究所共催のJPC2010は8月末から18日間のコースで、参加者を公募へ
ICCROM(ICCROM (International Centre for the Study of the Preservation and Restoration of Cultural Property)と東京文化財研究所が海外のペーパー・コンサーバターを対象に定期的に開催している国際セミナー JPC(International Course on Conservation of Japanese Paper)の今年の参加者公募が始まった。セミナーの機関は8月30日から9月17日まで。人数は10名。
International Course on Conservation of Japanese Paper
2010年3月1日(月)
岩田書院、『劣化する戦後写真』と『写真保存の実務』を上梓
岩田書院はこのほど写真資料の保存に役立つ新刊書を2点、上梓した。
このうち『劣化する戦後写真 写真の資料化と保存・活用』(全国歴史資料保存利用機関連絡協議会編)は、第Ⅰ部で、写真の専門家ではない調査者が写真資料を調査するときの概要を、第Ⅱ部で、保存・管理・活用する側からの尼崎市立地域史料館の事例報告を、第Ⅲ部で、実際に起こりうるであろう問題点をQ&A方式にまとめたもの。
また『写真保存の実務』(大林賢太郎著)は2007年1月に開催された全国歴史資料保存利用機関連絡協議会の研究例会「劣化する戦後写真」での報告を元にして、最新の成果を加えて書き下ろしたもの。調査票の作成から保全の方法まで実務に則した内容。
2010年2月24日(水)
英国物理学会(IOP)が5月にデジタル印刷と写真の保存修復で国際コンファレンスを開催
英国物理協会(Institute of Physics)は5月に第4回国際コンファレンス「デジタル印刷物とデジタル写真のプリザベーションとコンサベーション」を開催する。コンピュータ上で作成され紙等に出力された記録や写真は将来の長期保存の対象になるものが含まれる。今回のコンファレンスでは、インクや紙などの印刷基材の現状と共に、その保存と修復における課題と技術について論じる。
4th International Conference on: Preservation and Conservation Issues in Digital Printing and Digital Photography
2010年2月23日(火)
【弊社のニュース】 スタッフの力:全史料協近畿部会第104回例会 「行政文書を文化財として取り扱う」 参加報告
2月2日に京都府立総合資料館で開催された全国歴史資料保存利用機関連絡協議会近畿部会例会「行政文書を文化財として取扱う」の参加報告を掲載しました。
久利元昭:全史料協近畿部会第104回例会 「行政文書を文化財として取り扱う」 参加報告
2010年2月22日(月)
英ノーザンブリア大学が『紙媒体上の印刷:その技術、歴史、コンサベーション』を上梓、インキュナブラからデジタル印刷物までを網羅
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英ノーザンブリア大学は、Printed on Paper: The Techniques, History and Conservation of Printed Media を上梓した。2007年に同大学とアメリカ文化財保存修復学会(AIC)との共催で開かれた開催された国際コンファレンス Printed on Paper での発表を元に、改訂・編集を行ったもの。ヨーロッパで紙の上の印刷が行われた最初期のインキュナブラ(揺籃本)から、現在のインクジェット等のデジタル印刷物までを包含し、その技術、歴史、そしてケアやコンサベーションまで、保存科学や美術史などにまたがる学際的な研究成果をまとめた25本の論文が寄せられている。内容の詳細と購入は下記のページから。
Printed on Paper: The Techniques, History and Conservation of Printed Media
Edited by Jane Colbourne, Northumbria University and Reba Fishman Snyder, Pierpont Morgan Library.
£35.00 ISBN 978-09561206-3-2
Paperback, 290x210 mm. 228 pp.,136 colour ill.
School of Arts & Social Sciences Academic Press Publications
2010年2月19日(金)
カナダCCIが来年10月に接着剤とコンソリデーションをテーマに6日間のシンポジウムを開催、発表者を募集
カナダ文化財研究所(CCI)は2011年10月に国際シンポジウム「接着剤とコンソリデーション--研究と応用」(Adhesives and Consolidants for Conservation: Research and Applications)を開催する。接着剤とコンソリデーション(固定材としての接着剤の使用)はあらゆる文化財のコンサベーション分野で必須の材料であり工程だが、6日間に及ぶ今回のシンポジウムは内外から集う科学者とコンサーバターにより新しい研究と応用の現状の発表講演とともに、文化財保存修復機関へのツアー、実践的なワークショップが予定されている。口頭・ポスター発表を公募する。
2010年2月17日(水)
米NEDCC、地域基金による古地図のコンサベーションの事例

linksouce:http://www.nedcc.org/about/images/news.chnh4.jpg, http://www.nedcc.org/about/images/news.chnh5.jpg
米国の非営利地域資料保存修復センターのNEDCC(Northeast Document Conservation Center)のサイトは1860年に作成されたニューハンプシャー州サリバン郡の地図へのコンサベーション事例を掲載している。手当ての費用は同郡の歴史協会が音頭をとり、地域基金(local fund)として集めらられ、NEDCCに持ち込まれた。
処置は、表面に塗布されている黄変したワニスをエタノールで除去し、洗浄後に脱酸性化された。また以前の布裏打ちが剥がされ、和紙で新たに裏打ちされた。別の亜麻布でされマウントされた地図は、ポリエステルフィルム・エンキャプシュレーションされ、吊り下げて鑑賞することができるようになった。
Successful Local Fundraising for Conservation
2010年2月15日(月)
IPI、動画フィルムの歴史と技術と保存法が一目でわかる大型(120×90センチ)のポスターを作成し頒布へ

米国 Image Permanence Institute(IPI)はこのほど、無声時代から今日までの動画フィルムの歴史と技術およびそれぞれの保存方法を一覧できる大型のポスター Knowing and Protecting Motion Picture Film Poster を作成し、販売を始めた。価格は50ドル。
Knowing and Protecting Motion Picture Film Poster
フリッツ・ラングの『メトロポリス』完全版がベルリン映画祭で公開、2008年に発見された幻の30分の修復処置を終えて

BBCのサイトは、11日から開催されているベルリン国際映画祭でフリッツ・ラング監督のSF映画『メトロポリス』(1927年初公開)の完全版が公開された、と報じている。2008年にブエノスアイレスで、これまで消失したと言われていた30分の部分を含む完全版が発見され、2年間を費やして修復処置が進められていた。
Berlin film festival showing for restored Metropolis
※参考
「ほぼ日」2008年7月10日(木) フリッツ・ラングの映画『メトロポリス』、消失したとされていた幻の30分のパーツを加えた完全版への修復作業が開始
2010年2月12日(金)
林原生物化学研究所が東文研と岡墨光堂と共同で「新古糊」を開発し市販へ、酵素利用で2週間で製造
特種紙商事の「ブログもんじょ箱」は㈱林原生物化学研究所(岡山市中区)が、(独)東京文化財研究所(東京都台東区)、㈱岡墨光堂(京都市中京区)と共同で古糊(ふるのり)を開発し、「林原・新古糊」(商品名)として販売に乗り出したと報じている。価格は250gアルミラミネート袋入が10,000円、20gアルミラミネートチューブ×10本が10,000円。詳細は下記ページから(林原生物化学研究所のプレスリリースへのリンクあり)。
「新古糊」を新発売 林原が文化財の修復に 10年かかる古糊をわずか2週間で
※関連文献
Characterization of Furunori (Aged Paste) and Preparation of a Polysaccharide Similar to Furunori
枝野幸男内閣府特命担当大臣が公文書管理を担当
国立公文書館のページは、2月10日付で枝野幸男内閣府特命担当大臣が任命され、公文書管理を担当する大臣となったと伝えている。
2010年2月10日(水)
東北芸術工科大学文化財保存修復学科の卒業・修論口頭発表会が12日に、東洋絵画修復や保存科学で5件
東北芸術工科大学美術史・文化財保存修復学科は2月12日(金)に同大学本館407号室で卒論・修士論文の口頭発表会を開催する。「美術史上の作家や作品・損傷してしまった修復作品・後世に残すべき文化財に真摯に向き合った研究成果を一同に開陳し、大方のご意見を仰ぎます」。美術史で9件、西洋絵画修復で5件、東洋絵画修復で3件、保存科学で2件、大学院で2件の発表が予定されている。問い合わせは下記に。
美術史・文化財保存修復学科教員準備室
電話:023-627-2000(代表) 023-627-2023(直通)
※お知らせのハガキは本日(10日)届きました。
ポルトガルで6月にパーチメントと紙媒体の記録物保存のための科学と修復で国際セミナー
ポルトガルのコインブラ大学アーカイブと同大学化学科(Chemisty Department and the Archive of the University of Coimbra)は6月7~9日に「記録物を保存する--その科学と修復」国際セミナー(International Seminar Preserving documents – science and restoration)を開催する。パーチメントと紙媒体の記録物のコンサーバターと保存科学者が集う。プログラムとアブストラクトが近々、公開される。
International Seminar Preserving documents – science and restoration
2010年2月9日(火)
英国資料保存支援センター、23日に「保存・修復・デジタル化の優先順位付けはどのよう行われているか」でセミナー
英国資料保存支援センター(Preservation Advisory Centre)は2月23日に英国図書館(BL)でセミナー Prioritization for preservation, conservation and digitization を開催する。国立図書館、国立アーカイブ、大学図書館で資料保存に携わり、コレクションの保存管理、コンサベーション、デジタル化を行ってきた担当者が、優先順位付けをどのように行っているかを発表し、知恵を分け合う。リスクアセスメントの方法、アセスメント調査法などを説明すると共に、これらを元にした適切な優先順位付けとはなにかが話しあわれる。後にポストスクリプトが公開される。詳細は以下のページに。
Prioritization for preservation, conservation and digitization
2010年2月5日(金)
Restaurator 最新号は紙媒体の漂白の特集、光や科学薬品による処置を新しい視点で
図書館・文書館資料の保存修復のための季刊誌 Restaurator; International Journal for the Preservation of Library and Archival Materials の最新号(Vol. 30, No.4, 2009)は「漂白」の特集号。概要は以下の通り。
Bleaching
Hans U. Suess
紙、織物の生産において漂白はかかせない工程であり、特に工業生産規模での繊維漂白は、いくつもの化学薬品を使用するため非常に重要である。理論上では、漂白にはほとんどすべての酸化、還元化合物を使用できるが、しかし実際は、技術的な慣習によってほんの一握りの化合物が適用されている。工業的に重要な化学物質は、酸素、二酸化塩素、過酸化水素、亜ジチオン酸ナトリウム、そしてオゾンである。 漂白過程におけるこれらの化学反応についてはイラストで説明している。 また、漂白後の変色と、光に対する安定性を改良する可能性が示されている。
Bleaching in Paper Production versus Conservation
Irene Brückle
コンサベーション分野における紙漂白と、製紙工程におけるパルプ漂白の、その類似性と違いについて。最も古いコンサベーション分野における漂白方法は光漂白であり、テキスタイルと紙の漂白には共通するルーツがあると考えられている。織物、紙の伝統的な光漂白方法には、酸素、オゾンまたは過酸化水素を使う現代のパルプ漂白に通ずるものがあると考えられる。これらの化学物質は、太陽光にさらされているという要因で作用し、空気と水の存在によって漂白が引き起こされる。非常に小さな量が形成され、漂白効果を与える。 紙の光漂白は化学薬品を必要としないが、これはまさに化学介入と同じことである。
Bleaching Revisited: Impact of Oxidative and Reductive Bleaching Treatments on Cellulose and Paper
Ute Henniges and Antje Potthast
5つの酸化漂白(次亜塩素酸カルシウム、二種類の濃度の過酸化水素(0.5 %と3 %)、光漂白、および過マンガン酸カリウム)と、2つの還元漂白(水素化ホウ素ナトリウム、tert-butylaminoborane(TBAB))を比較。これらの漂白効果は、純セルロース(ワットマン濾紙)と、2種類の古紙(18世紀の印刷本の紙と、手槁の紙)に対して調査を行った。漂白作用を評価するため、明るさ、分子量、カルボニル基とカルボキシル基のパラメータが調査された。漂白後のほかに、加速劣化した後も分析が行われ、その結果、テストした漂白法すべてにおいて明るさのパラメータが増加したことから、それらは効果的な漂白法であることが確かめられた。 酸化漂白について、酸化セルロースの機能性を増加させる傾向がある。しかし、処置のほとんどの間は著しい違いが全く見られず、また、すべての酸化処置はセルロースに何らかのダメージをもたらしていた。2つの還元漂白については、カルボニル基の量は減少し、分子量が安定するなかでセルロースを部分的に維持していた。なかでも水素化ホウ素ナトリウムは、明らかに効果的な還元剤である。
Bleaching Paper in Conservation: Decision-Making Parameters
Irene Brückle
コンサベーションにおいて、漂白を行なうのに伴う処置方針の決定は、漂白方法の「選択」とその「過程」という2つのパラメータが、処置のゴールを定める。技術的にふさわしい処置を考えるということは、漂白による様々なリスクを減らすとともに、紙の色に対して審美的な考慮をするためにも重要なことである。処置を行う前に、コンサーバターは処置のゴール、リスク、結果を見通しておくということを念頭に置かなければならない。これは、処置方針を決定する際の重要な基礎である。意思決定のパラメータは、漂白の知識や、物質の構成、漂白剤、処置の準備、使用する道具、手段、漂白にかかる時間など、意思決定のファクターを考慮したもとで処置の効果を見通すためのものである。
[要訳文責:蜂谷伊代]
Restaurator Vol. 30, No.4, 2009
『国立国会図書館月報』が前フランス国立図書館館長とのグーグル等のインターネットの課題の対談と講演、オランダ国立図書館の資料保存も
『国立国会図書館月報』(586号、2010年1月)は資料保存関連の以下の記事を掲載している。9月に国会図書館で開催されたジャンヌネー 氏の講演と対談、10月に開催されたヘンク・ポルク博士(オランダ王立図書館専門サービス・資料部付保存科学者)による講演のまとめ。PDFで『月報』の全文がダウンロードできる。
国立国会図書館 館長対談 第13回 前フランス国立図書館長 ジャン-ノエル・
ジャンヌネー 氏 文化の多様性と知の伝承 p.4-10
インターネットと文化 チャンスか危機か p.11-13
オランダにおける資料保存研究 王立図書館からの報告 p.24-27
参考:当社のスタッフによるポルク氏の講演概要は以下に
国立国会図書館主催「第20回 保存フォーラム」におけるポルク博士の講演
2010年2月3日(水)
『図書館界』の矢野「資料保存」がこの10年の動向を140の文献を元に紹介、アーカイブまでも含めた見晴らしの良いレビュー
日本図書館研究会機関誌『図書館界』(Vol. 61, No.5, January 2010)は図書館界のこの10年(2001年以降)の動向を紹介しているが、「資料保存」として矢野正隆(東京大学大学院経済学部研究科・経済学部資料室)によるレビューを掲載している(p.542~p.533)。各紙誌やウェブ上に発表された論文や記事などの参照文献は140に及ぶ。図書館界だけでなくアーカイブ界の関連文献も丁寧に集め、6項目で整理されている。
資料の「保存」とは長いスパンでの利用の保証であり、ならば収集や整理と同じく、日常業務の中に組み込むべきものであること、技術的な解決策を優先させるのではなく、総合的な政策の見地から判断することが図書館員やアーキビストの役割であること---という視点が一貫しており、「資料保存の10年」が見晴らせる。章立ては以下の通り。
はじめに
1. 資料の現状把握と保存計画
2. 環境管理
3. 現物保存
4. 代替保存
5. 収蔵スペースと共同保存
6. 災害対策
むすび
直子ブログ、フランス国立図書館での「和紙で革装本を補修する」

linlsource:http://f.hatena.ne.jp/images/fotolife/i/i-008/20091230/20091230124524.jpg
http://f.hatena.ne.jp/images/fotolife/i/i-008/20091230/20091230173903.jpg
フランス国立図書館で資料保存の研修をしている村上直子さん(国立国会図書館資料保存課)のブログは同図書館での「革装本」の和紙での補修を紹介している(2010-01-18付け、2010-02-01付け)。それぞれのコメント欄もどうぞ。
フランス国立図書館及びカナダ国立図書館公文書館における資料保存業務に係る研修
2010年2月2日(火)
国立公文書館が和装本の修復業務の非常勤職員を公募、募集期限は2月5日
カナダ文化財研究所(CCI)が保存のためのパンフレットをオンラインで提供、紙媒体関連も多数

N11/10 Encapsulation (1995) フィルムエンキャプシュレーション法
カナダ文化財研究所はこのほど、同研究所が1991年から紙媒体で無償頒布していたパンフレット CCI Notesをデジタル化し、html とPDFのフォーマットとしてオンライン化したと発表した。各分野にまたがる専門的な研究成果を元に、一般向けに書き直し、マニュアルのように使えるものとして評価が高いCCI Notes はこれまで紙媒体としか入手できず、版元切れのものもあった。100におよぶ Notesには以下のような紙媒体関連(Paper and Books)のものも含まれる。
N11/1 Making Protective Enclosures for Books and Paper Artifacts (1996)
本や文書等の紙媒体記録の保護容器
N11/10 Encapsulation (1995)
フィルムエンキャプシュレーション法
N11/2 Storing Works on Paper (1995)
紙媒体文化財の保管
N11/3 Glazing Materials for Framing Works on Paper (1996)
紙媒体文化財の額装のためのグレージング材料
N11/4 Wheat Starch Paste (1993)
でんぷん糊
N11/5 Matting Works on Paper (1997)
マッティング法
N11/6 Removing Paper Artifacts from Their Frames (1993)
額装からの外し方
N11/7 Basic Care of Books (1995)
本のケア
N11/8 Display Methods for Books (1994)
本の展示
N11/9 Framing Works of Art on Paper (1995)
アート・オン・ペーパーのフレーミング
また、分類としては他の分野になっているが、保管庫の温湿度管理、光の制御、災害対策、棚の適切な塗料の選択、写真資料の保存法--等々、見逃せない Notes が揃っている。ただ、なにぶんにも最も古いものは1991年に遡り、どれも最初の出版時のままの内容をそのまま載せてていて、アップ・ツー・デートされてはいないことは注意したい。
なお、やや専門的な内容をまとめた Technical Bulletins (紙媒体、有償)にも、紙のpHの測り方、洗浄水の質、アーカイブの温湿度管理--等々がある。
都立中央図書館企画展「未来へ、本が読み継がれるために 図書資料の保存・修理」、今日から2月20日まで
期間:2010年2月2日(火)~2月20日(土) 時間:10:00~17:30
場所:東京都立中央図書館 4階 企画展示室
展示概要: ・都立図書館における資料を守るための取組 ・修理・製本に使う道具の紹介 ・江戸時代の和装本の修理のいろいろ ・資料の「敵」とその対策(日本図書館協会提供「利用のための資料保存」パネル展)
入場料:無料
問合せ先:東京都立中央図書館 資料管理課
〒106-8575 東京都港区南麻布5-7-13 電話 03-3442-8451(代) 内線6211
2010年2月1日(月)
元英国博物館の保存科学者オディ博士が自分の蔵書を売りたて
元英国博物館の保存科学者であり、保存用のモノの長期安定性試験として名高いオディ試験の開発者であるWilliam Andrew Oddy 氏が、1965年から2005年にかけて集めた保存科学関連の蔵書の引取先を公募している。蔵書リストが氏からもらえる。下記で。
Conservation and archaeometry library for sale
『情報の科学と技術』2月号は資料保存特集号、弊社スタッフの「近代の紙媒体記録資料の保存修復技術」も掲載
(社)情報科学技術協会会誌『情報の科学と技術』の最新号(Vol. 60, 2010, No. 1)は「特集:資料保存:メディアの劣化と対策」。弊社のスタッフによる「近代の紙媒体記録資料の保存修復技術」も掲載されている。
特集:「資料保存:メディアの劣化と対策」の編集にあたって 41
資料保存の考え方 --現状と課題-- 小島浩之 42
デジタル情報保存のリスク: 記録メディアの劣化・陳腐化とファイルフォマットの陳腐化 大島茂樹 49
保存環境とIPM(総合的有害生物管理) 木川りか 55
近代の紙媒体記録資料の保存修復技術 木部徹 61 (PDF 3.2MB)
コンピュータゲームアーカイブの現状と課題 後藤敏行 68
できることから始めてみよう:京都大学の図書館における資料保存活動 山崎知恵、天野絵里子 75
『情報の科学と技術』誌は発行後、アブストラクトだけが下記のHPに公開されるが、概ね3ヶ月後には全文公開される(無料)。著作権は著者にあり、配布も自由であることから、上記の弊社スタッフによる論文をPDFで当サイトに掲載する。なお、いくつかの論文へのレビューは後日、掲載したい。 [木部]












2010年3月29日(月) 日図協『資料保存のための代替』が上梓、理論・歴史・マイクロとデジタルの比較・アーカイブ資料の代替保存・事例・文献案内



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