ほぼ日刊資料保存

必也正名乎

図書館やアーカイブ等の資料保存に関する世界のニュースを伝える、ほぼ日刊のページです。 土日・祝日は休刊します。 リンクも引用も自由です。

東京文化財研究所「海水で濡れた資料の殺菌くん蒸における発がん性物質発生のリスクについて」 を発表

東京文化財研究所はこのほど、「海水で濡れた資料を殺菌煉蒸することによる発がん性物質発生のリスクについて」を発表した。


海水で浸水した資料(主に海の塩の成分として塩化ナトリウムを含む)については、とくに濡れたまま煉蒸を行うと、原理的には、塩分に含まれる塩素と殺菌燥蒸剤の酸化エチレンまたは酸化プロピレンが反応し、クロロヒドリンのような人体毒性が強い物質(発がん性物質であることがはっきりしている物質、あるいは発がん性や生殖細胞変異原性が疑われる物質)の発生が懸念され、現在、殺菌煉蒸による影響の調査を実施、8月上旬に結果が判明するとのこと。

 

詳細は同研究所HPで紹介されている。

 

日本経済新聞【写真特集:東日本大震災】で大船渡への東文救システムの導入を報道

ウェブ版の日本経済新聞【写真特集】東日本大震災(7月18日付)で大船渡市への東文救システムの導入が8枚の画像付きで紹介された。導入日(8月14日)には日経の報道カメラマンが丹念に取材、また翌日(15日)にも訪問し重ねて取材した模様。プロのカメラの目が捉えた迫力のある写真特集になっている。

 

洗浄工程を取材する日経報道カメラマンの日奈田悠佑さん

 

 

東京文書救援隊の東文救システムが大船渡と宮城に導入

東文救の文書復旧システムが14日に大船渡市Y・S(ユース&シルバー)センターへ、15日に東北大学東北アジア研究センター内の宮城資料保全ネットワーク事務局に、それぞれ導入された。大船渡では、日経新聞が取材し15日に本紙に掲載された。それによると「紙の文書は写真より破れ易いため、洗浄・修復には慎重さが必要」、「(専門家の金野さんでも)1日30枚が限度だった。今後は市から派遣された臨時職員7人とともに、1日約200枚のペースで作業を進められるようになる」としている。

 

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大船渡市Y・S(ユース&シルバー)センターでの実演、指導の様子

 

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東北大学東北アジア研究センター内の宮城資料保全ネットワーク事務局でのスキル・トレーニング

 

欧州ブック&ペーパー・コンサベーション研究センターが New Approaches to Book and Paper Conservation – Restorationを上梓、書籍とペーパーのコンサベーションに関する学際的な研究成果を掲載

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欧州ブック&ペーパー・コンサベーション研究センター(European Reseach Centre of Book and Paper Conservation-Restoration)は、New Approaches to Book and Paper Conservation – Restorationを上梓した。今年の5月に同センター主催で開催された第一回コンファレンス New Approaches to Book and Paper Conservation-Restoration での発表を元に、改訂・編集を行ったもの。修復の基礎理念や美術史、保存科学や実践的な技術などにまたがる研究成果をまとめた47本の論文が掲載されている。内容の詳細と購入は下記のページから。

 

 

東京文書救援隊のブログに活動報告が掲載、東北4か所で東文救システム導入へ

東京文書救援隊はこの程、「活動報告:石巻文化センター、宮城ネット、大船渡総合福祉センター、遠野文化センターへの東文救システム導入へ」を掲載した。以下は同隊ブログから抜粋。

 

被災資料とその復旧作業の現状理解、東文救の活動趣旨と復旧システム説明のため、6月24日に石巻文化センターと宮城歴史資料保全ネットワーク(以下、宮城資料ネット)を安江(代表)と木部(事務局長)が、6月25日に上記2名と久利(救援隊スタッフ)が大船渡総合福祉センターを訪問しました。また別途、6月29日に遠野文化研究センターを安江と久利が訪問しました。以下、その簡単な報告です。

 

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背をアクリル板にした保存容器

 

アメリカの製本家・ブックコンサーバターであり、製本で使う手道具の優れた製作者でもある Jeff Peachy のブログは、中に収納した書籍の背表紙が見えるように、容器の背にアクリル板を使ったシェル型の保存容器を紹介している。

 

東京文書救援隊が被災資料復旧の処置システム・マニュアルを公開、クリーニングから乾燥までのわかりやすい動画も


ドライ・クリニング工程

 

 


洗浄工程

 

 


乾燥・フラットニング工程

 

 

津波により汚泥や塩水を被った資料は、被災現場から緊急避難が行われ、カビの発生や拡大を防ぐために乾燥まで持ち込めたとしても、そのまま利用に供することは難しいものが大半である。これらの資料のうち、現物として「かけがえのないもの」については、物理的に泥を除去し、真水で汚れや塩分を洗い、乾燥させ、フラットにする必要がある。ここで紹介する東文救復旧処置法は、資料の解体から始まり、最後の乾燥・フラットニングにいたるまでの一連の工程をシステム化したものである。どこにでも手に入る機材を用い、専門家ではない方々でも資料を傷めることなく、効率的に復旧作業に従事できることを眼目に、当社が培った専門的な技術やノウハウを元にして若いスタッフが一致協力して作り上げた。非営利的な使用に限って無償で公開する。これから復旧作業に関わる被災地の方々や機関、すでに従事されている方々等に大いに活用していただきたい。ご不明な点があれば質問にお応えする。また、改良点があれば、ぜひご指摘いただきたい。 (株式会社資料保存器材代表 木部徹)

 

 

宮城と神奈川にも歴史資料保全ネットワークが発足へ

以下は宮城資料ネットのニュースからの転載(抜粋)です。

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–:茨城史料ネット–

このたびの震災をふまえ、茨城文化財・歴史資料救済・保全ネットワーク準備会
(通称:茨城史料ネット)が発足いたしましたのでご案内させていただきます。

 

他詳細につきましては、暫定事務局となっております茨城大学人文学部高橋修研
究室(水戸市文京2-1-1 Tel.029-228-8120  Mail.osm@mx.ibaraki.ac.jp)まで
直接お問い合わせください。

 

報道などでは取り上げられる機会が少ないようですが、茨城県でも甚大な被害が
出ております。震災後三ヶ月を経て文化財の消滅が懸念される状況です。多くの
方のご協力を、よろしくお願い申し上げます。

 

 

 

– 神奈川歴史資料保全ネットワーク準備会主催による緊急集会–

7月30日に横浜市で、神奈川歴史資料保全ネットワーク準備会主催による緊急集
会「大災害における文化財の救出・保全を考える緊急集会」が開催されます。東
日本大震災における文化財レスキューの活動報告と共に、近い将来に高確率での
発生が予想される南関東での大地震に備えた、神奈川県での資料ネット立ち上げ
に関する集会です。

 

多くの方のご参加をよろしくお願い申し上げます。また、回りで関心をお持ちの
方にご案内いただければ幸いです。

 

なおお問い合わせにつきましては、神奈川地域史研究会事務局のある関東学院大
学経済学部田中研究室(045-786-7833・直通)、ないしは神奈川大学日本常民文
化研究所(045-481-5661)まで直接お願い申し上げます。

 

東文救ブログ「緊急避難させた本や文書のカビの発生と拡大はどのように防いだら良いのか」

東京文書救援隊のブログに「緊急避難させた本や文書のカビの発生と拡大はどのように防いだら良いのか 」が掲載された。著者はアメリカ国立公文書館のコンサーバター Hilary Kaplan。

 

今、被災資料を持つ現場では、緊急避難はさせたが、すぐには真空凍結乾燥等の処置を適用できずにいる本や文書が膨大にある。自然乾燥(風乾)させるしかない紙媒体資料のカビの発生と拡大をどのように抑え、クリーニングなどに従事する作業者へのカビの悪影響をどう防ぐか。東文救文書復旧システムに組み込まれたドライ・クリーニング・ボックスとHEPA掃除機も、併せて紹介している。

 

 

※参考: Hilary A. Kaplan and Kathleen A. Ludwig : Efficacy of Various Drying Methods

“Health & Safety for Museum Professionals” 専門家のための究極の参考書が上梓

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アメリカ保存修復学会(AIC)自然史コレクション保存協会(SPNHC)はこの程、“Health & Safety for Museum Professionals” 「博物館の専門家のための健康と安全」を出版した。博物館で働くコンサーバター、コレクションマネージャー、学芸員、保存管理者などを対象に、業務上の安全及び健康に関する注意事項、予防策、改善措置などが、各分野の専門家によって書かれている。一貫性のある予防・改善策を可能にするためのアプローチが最新の知見に基づき紹介されており、この分野における包括的な解説書となっている。章立ては以下の通り。

 

Part 1: Principles of Safety and Health – fire protection, occupational hazards, and waste management.

 

Part 2: Specific Hazards (particulates, chemical hazards, and toxins, physical, mechanical, and electrical hazards, and radiation).

 

Part 3: Museum Work (facilities management, emergency salvage, collections management, fieldwork, conservation and restoration, and exhibit protection and maintenance).

 

 

下記サイトで購入できる。

PaperConservationの最新号、運搬や取り扱いの影響、インク焼け処置での水性接着剤による有害化合物の移動と抑制効果

 

 

ドイツ語圏を中心にした紙媒体資料のコンサーバターの組織 Internationale Arbeits-gemeinschaft der Archiv-, Bibliotheks- und Graphikrestauratoren(IADA)の機関誌 PaperConservation最新号(Vol,12, 2011, No.2)は、以下の記事を掲載している。

 

 

ART WORKS WITH AN UNFIXED PAINT LAYER ON PAPER: Guidelines for Handling and Transport.

 

接着剤が使われていない顔料や多孔質顔料(チャコールやパステル)で描かれた絵画作品は、振動に対して非常に弱い。このようなタイプの作品は美術館側にとっても特に取り扱いに注意が必要とされている。National Gallery of Denmarkにおいて、美術作品が日常受ける振動レベルをデータロガーで計測した結果、ゴムタイヤの台車と空気タイヤとでは明らかに振動に差があることが分かった。また垂直な状態での作品の運搬は、水平で行うよりも顔料の損失が多い傾向があった。直接的なダメージを避けるために最も良い方法は、前面にガラスのついた額に入れるかマッティングを行うことである。

 

 

 

RENDERING THE INVISIBLE VISIBLE: Preventing Solvent-Induced Migration During Local Repairs on Iron Gall Ink.

 

水分を多く含む水性接着剤を用いてインク焼けを部分的に処置すると、二価鉄イオンや酸のような見えない有害な化合物を運び、インクの腐食を広げることになる。これは、処置から数年後に見られる腐食プロセスであるため、この危険性は過小評価されがちである。メチルセルロース、KlucelG、ゼラチン、デンプン糊、メチルセルロースとデンプン糊の混合溶液、RepaTexG5がテストされた。これらを、3つの方法(紙片上にブラシで塗布、和紙を通してブラシで塗布、再加湿型接着ティッシュ)でテストした。各指示薬紙(バソフェナントロリン(二価鉄イオン)、メチルレッド(酸)、塩化コバルト(水分))の上で処置することで、化合物の広がりを確認した。各種接着剤と塗布方法の比較として、中でも二価鉄イオンのマイグレーションの可視化に対してバソフェナントロリン指示薬紙は効果的であった。結果、水分量の多いものや、エタノール96%のKlucelGでさえ、二価鉄イオンがインク線上から移動した。再加湿型接着薄葉紙を使った方法では、同じ厚みの接着材層が得られ、含水量も制限できるため、唯一良い結果が得られた。

 

 

国際博物館会議(ICOM)コンサベーション部会グラフィック・ドキュメントWGの2010年コンファレンスの予稿集から

2010年10月にコペンハーゲンで開催された国際博物館会議(ICOM)コンサベーション部会のうち、紙媒体等の作品や資料のコンサベーションのWGの予稿集が同会議のサイトに掲載された。このうち本紙『ほぼ日』関連の発表は以下の通り。

 

THE HYPERSPECTRAL IMAGING PROJECT AT THE NATIONAAL ARCHIEF OF THE NETHERLANDS
R. Padoan, M.E. Klein, B.J. Aalderink, G. de Bruin, Th. A.G. Steemers

 


COLLECTION ASSESMENT: DETERMINATION OF THE PAPER CONDITION WITH SURVENIR
Dirk Lichtblau

 

ENVIRONMENTAL ASSESSMENT WITHOUT LIMITS  AT THE NATIONAL ARCHIVES
Kostas Ntanos and Sarah VanSnick

 

MONITORING AQUEOUS PAPER CONSERVATION TREATMENTS BY  ION CHROMATOGRAPHY
Kirsi Perkiömäki and Ulla Knuutinen


IRTF MICROSCOLPY APPLIED TO THE DETECTION OF GELATINE IN PAPER ARTEFACTS
V. Rouchon, E. Pellizzi and K. Janssens

 

A NEW METHODOLOGY FOR WET CONSERVATION TREATMENTS OF GRAPHIC ART ON PAPER WITH A RIGID POLYSACCHARIDE GEL OF GELLAN GUM
Silvia Sotgiu and Simonetta Iannuccelli

 

DEACIDIFICATION AND  STRENGTHENING OF ACIDIFIED BOOKS AND  DOCUMENTS: A new, fast and safe method (Papercare process) for conservation of our paper based cultural heritage
John Havermans and Stefan Blankenborg

 

 

THE USE OF ABSORBING CHARGES IN CONSERVATION PAPERS AND PAPER BOARDS: A COMPARATIVE STUDY OF THEIR CAPACITY TO PROTECT THE COLLECTIONS FROM UNDESIRABLE POLLUTANTS
V. Rouchon, J. Barthez, I. Desloges, E. Mauret, P.  Foggia, G. Grevillot and C.
Vallières

 

THE INTERACTION OF COLLECTION SURVEY, PRESERVATION PLAN AND IMPROVEMENT OF STORAGE  FACILITIES
Marie Vest

 

DEVEOPING COLLECTION MANAGEMENT TOOLS AT THE NATIONAL ARCHIVES
A. E. Bülow, J. Ahmon and K. Ntanos

 

TREATMENT OF FUNGI IN BOUND VOLUMES
M. B. Castaneda, W. Baatz, S. Eyb-Green, A. Potthast, U. Henniges and  Katja
Sterflinger

 

LE TRAITEMENT DES ENCRES FERRO-GALLIQUES: POSSIBILITES ET QUESTIONS – THE TREATMENTS OF IRON-GALL INKS: POSSIBILITIES AND QUESTIONS
Gersten Tatiana

 

GELS FOR SOOT REMOVAL ON PAPER
Riin Rohtla

 

THE USE OF AVSORBI NG CHARGES IN CONSERVATION PAPERS AND PAPER BOARDS: A COMPARATIVE STUDY OF THEIR CAPACITY TO PROTECT THE COMMECTIONS FROM UNDESIRABLE POLLUTANTS.
V. Rouchon, J. Barthez, I. Desloges, E. Mauret, P. Foggia, G. Grevillot and C.Vallières

 

 

7月2,3日に釜石市で東日本大震災水損資料復旧プロジェクト報告会

人間文化研究機構内チーム国文学研究資料館」と全国歴史資料保存利用機関連絡協議会は7月2日(土)、3日(日)に釜石市で東日本大震災水損資料復旧プロジェクト報告会を開催する。震災により被災した文化財や公文書等の救助復旧の促進を図るため、参加者・会員に対し被災公文書等の救済活動に係る知識と技術の共有することを目的として開催する。詳細は以下に。

【弊社のニュース】 ドイツ芸術アカデミー等の「エア・ストリーム乾燥法–大量の湿った紙媒体を早く、平らに乾燥する」全訳を掲載

今回の大震災で被災した紙媒体資料の復旧に役立つ「エア・ストリーム乾燥法–大量の湿った紙媒体を早く、平らに乾燥する」を掲載した。原文は Eva Glück, Gerhard Banik, Ernst Becker, Michael Kühner : Air-Stream Drying of Paper, Restaurator, Vol.32, Issue1, 27-38 (2011)。

 

津波により泥や塩水を被った文書や書籍などを、再び利用できるように復旧するためにはさまざまな問題がある。資料を解体し、一枚ものにした後に、乾いた泥を物理的に除去し(ドライ・クリーニング)、真水で汚れや塩分を洗い流す(ウェット・クリーニング)ことができたとしても、その次のステップである乾燥を首尾よく仕上げるのは簡単ではない。まして、それが大量にある場合には、たくさんの吸い取り紙を接触させ、水を吸い取ったら、新しい吸い取り紙に取り替えるという作業を延々と繰り返す必要がある。さらに、乾燥後の仕上がりをフラットに保つように調整していくのは、専門家にとっても難しい。

こうした問題を解決するのがエア・ストリーム乾燥法(air stream drying of paper)である。

 

大量の湿った紙を、一枚づつ段ボールでサンドイッチし、これを積み重ねた束(スタック)の段ボール波板の隙間に強制的に空気を流す。すると絶えず新しい乾燥した気流が、濡れた紙の湿気を均一かつ急速に水蒸気に替えながらスタックから外部に送り出し、乾燥させる。長くともワンサイクル4時間ぐらいで乾燥が終わる。中途の吸い取り紙の交換も不要である。

 

 

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この革新的な乾燥法は1988年に米国のコンサーバターの R. Futernick が提案し、90年代には米国の一部の工房で使われるようになった。そして2000年代に入り、ヨーロッパのコンサベーション機関でも採用するところが出てきた。救援隊の構成メンバーである株式会社資料保存器材も同様である。そして、今年(2011年)になり、シュトゥットガルトの Staatliche Akademie der Bildenden Künste はエア・ストリーム乾燥法の科学的な裏付けを行い、Restaurator 誌 に Air Stream Drying of Paper として発表した。今回、著者らの快諾の元に、以下に全訳を掲載した。著者の一人であり、ヨーロッパの紙媒体の保存科学の指導的役割を果たしている Gerhard Banik 氏からは、翻訳許諾とともに、「今回の大震災の被災資料の救助に役立ててもらえたらことのほか嬉しい」という言葉が添えられたこともお知らせしたい。

 

 

 

 

なお、弊社も構成メンバーである東京文書救援隊は、被災した紙媒体資料の復旧システムを、スキル・トレーニングと合わせて、現地の方々へ提供するボランティア活動を進めている。同システムは救援隊の構成メンバーである株式会社資料保存器材が専門的なペーパー・コンサベーションの仕事で培ったノウハウそして特許技術を組み合わせたものであるが、このシステムの最も重要な最後の工程がエア・ストリーミングによる乾燥である。先人たちの成果を踏まえ、どこでも手に入る身近な資材による簡易な乾燥ユニットを作った。近々に公開するシステム全体の詳細なマニュアルと動画の中で、この乾燥ユニットも紹介する。

 

【弊社のニュース】保存修復の世界的なメーリング・リスト ConsDistlist に「海水の被害を受けた紙資料の救助」について投稿しました

文化財の保存修復に関わる世界の関係者のためのメーリング・リスト Conservation Distlist に、当社のスタッフが、海水に漬かった紙媒体資料の救助について、Paper damaged by seawater のタイトルで投稿しました。

 

塩を含んだ紙の問題、その除去法を論じた文献は、保存修復のための文献データベースである AATABCIN を検索しても、皆無です。それほど、今回の津波で被災した書籍、文書等への塩の影響は未知といえるでしょう。そこで弊社のスタッフが、塩を含んだ紙は、含まない紙と比べて、経時したときにどのような違いが出てくるのか、また、紙中から塩を抜くにはどのような方法が有効なのか—-、この2点を問いました。おそらく、以前に Distlist に投稿した「被爆資料の取扱い」に関する時と同じように、多くのコンサーバターや保存科学が応えてくれると思います。

 

またこれとは別に国内でも企業あるいは研究機関で、東京文書救援隊の活動をサポートするかたちで、本格的な実験や試験が始まっています。

 

今後、国内外での情報や成果を公開していきます。

 

 

英国の資料保存アドバイザリー・センター(PAC)、パンフレット「資料の利用時に気をつけてもらいたいこと」をPDFで

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英国の図書館やアーカイブ等の資料保存活動を指導しサポートする  Preservation Advisory Centre はこのほど、資料を取扱う時に利用者に気をつけてもらいたいことを簡潔にまとめた7頁のパンフレット Using Collections をPDFで出版した。

 

取扱ミスによる資料の損傷は、その時はすぐに気づかなくとも、度重なるとやがて決定的なダメージとなり、その修復に余計なコストがかかる。また、アクセスを阻害する原因にもなる。資料を扱う誰もが、良い状態で次の世代に資料を引き継ぐ責任を持つ。一般的な指針は次のとおり。

 

● 全ての利用者がコレクションのケアに責任をもっている

● 全ての利用者が、どのように資料を扱えば良いのかという情報とアドバイスをもらう権利を持つ。

● 閲覧室や調査室は資料を取り扱うための充分な設備を持たねばならない。

● 清潔な手で扱う。ハンドクリームやローションはご法度。手袋着用は対象に依る。

● 資料表面に塵埃があるもの、カビが付着しているものは閲覧室等に持ち込んではならない。

● 脆弱になっているオリジナル資料は代替物(ハードコピー、マイクロフィルム、デジタルメディア)を提供することで保護できる。

 

そして、書籍及び綴じられた冊子形態のもの、文書や手紙、地図、巻いたもの、プリント作品や描かれたもの、写真、パピルス媒体、地球儀に対しての個別の取扱い上の注意点を上げ、最後に閲覧室や調査室でのアドバイスが挙げられている。

 

CBSのドキュメンタリー番組で「A visit to the Vatican Library」、ローマ法王庁のバチカン図書館を訪問

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linksource:http://www.cbsnews.com/2300-18560_162-10007347-2.html?tag=page

 

アメリカ3大ネットの1つ、CBSのドキュメンタリー番組「60 Minutes」で、『A visit to the Vatican Library』と題した動画を見ることができる。世界的に貴重な歴史、神学、美術関連の蔵書を誇るローマ法王庁のバチカン図書館は、特定分野の専門家や研究者を対象にのみ閲覧が許可されているが、この動画ではインタビュアーの解説とともに館内の壁画や彫刻、貴重なインキュナブラ、手稿、修復処置室が紹介されている。

 

「我々は、誰もが直接に見たことのない場所を訪問しようとしている。ローマ法王の図書館—比類なき歴史的コレクションの宝庫であるバチカン図書館は、カトリック教会が、哲学や科学における人間精神の新しい思想を受け入れた時、いわゆるヒューマニズムの時代に設立された。ある意味で、図書館は、‘西洋文明の屋根裏’となっている。」

 

東京文化財研究所と大阪市立工業研究所がPVAを分解する酵素液を開発、近く実用化も

   図:合成樹脂除去のイメージ

linksource:http://www.asahi.com/culture/update/0615/images/TKY201106150671.jpg

 

東京文化財研究所と大阪市立工業研究所が、PVA(ポリビニルアルコール)を分解する酵素液を開発し近く実用化するという記事が、6月16日(木)の朝日新聞に掲載されている。

 

「国宝を含む美術品、建造物の修復に使われた合成樹脂が劣化し、かえって絵画などが見えづらくなるなどしている問題で、東京文化財研究所と大阪市立工業研究所は合成樹脂を分解する「特効薬」を開発した。近く実用化される。

問題の合成樹脂は接着剤などに使われる「ポリビニルアルコール」(PVA)。顔料がはがれるのを防ぐ効果があるため、1940年代以降、多くの国宝や重要文化財の美術品、建造物などの修復で使われた。」

 

 

 

※朝日新聞(紙版)の記事によると、同酵素液にはPVAを参加させて分子を小さくする酵素「第2級アルコールオキシターゼ」などが含まれているとのこと。PVAで補修された絵画の表面に吹きつけると、顔料や金箔を損ねずに数十分でPVAが除去できるという。東京文化財研究所は今月下旬にも、修復中の霧島神宮(鹿児島県)で酵素液を使う予定だとしている。

【弊社のニュース】紙を安全に洗うためのクリーニング・ポケット法、東日本大震災での被災資料復旧に弊社特許を無償提供

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紙を洗う—これはコンサベーションにおける最も重要な処置の一つである。変色や染みなどが軽減されるほか、経年や利用によって紙の中に生成され、それ自体が劣化の原因にもなる水溶性の酸性物質が流れ出る(Kosek. 2011)。また、乾燥時に新たな水素結合が生じることで、紙の強度が戻るなどの効果もある(van der Reyden. 1992)。紙の「洗濯」は、紙の見た目を綺麗にするばかりでなく、紙の劣化に関わる根本的な問題への対処とも言える。

 

このように、洗浄は様々な利点を有しているが、処置におけるリスクもある。その一つとして、水を含んだ紙は極端に強度が低下し、不用意に扱うと破れや歪みが生じてしまうことが挙げられる。そこで、洗浄を行う場合、資料をポリエステルやセルロース系の不織布、またはナイロン製のネットなどのサポート材に挟んで処置するのが一般的である(Harnley, et al. 1990)。しかし、この方法を用いたとしても、資料を安心して洗浄できるほどしっかりとした保護にはならず、取り扱いには細心の注意を払う必要がある。また、酸性劣化やカビの影響で紙力が著しく低下した紙や、図面・ポスターなどの大型資料に対しては、取り扱いの難しさから、洗浄処置を行えないこともあった。

 

上記の問題を解決し、安全かつ効果的な洗浄方法を実現するため、弊社では「クリーニング・ポケット法」を開発し特許を得ている(特許第4721042号)。以下、その概要を述べる。なお、公開にあたり、非営利目的での使用であれば、クレジットを明示する条件で、技術を無償提供することにした。公的機関における使用は勿論のこと、今回の東日本大震災によって津波などの被害を受けた被災資料のうち、この方法が適用可能なものには、洗浄法の一つとして有効活用していただきたい。

 

東京文書救援隊ブログが白岩洋子氏の「水害にあった写真の救出方法」最新版を掲載

 

 

東京文書救援隊のブログはこのほど、紙本(アート・オン・ペーパー)と写真の修復家である白岩洋子氏の「水害にあった写真の救出方法」を掲載した。

 

白岩氏は今回の震災直後に被災地の岩手県大船渡市に入り写真の救出に尽力、いま現在も支援を続けている。この被災現場での実践を踏まえて、表記の救出マニュアルを作成した。

 

【弊社のニュース】 文化財保存修復学会第33回大会での弊社の発表「空気汚染ガス吸着性を持つアーカイバル容器 -小環境における空気汚染ガス低減試験-」を掲載

6月4日/5日に奈良県新公会堂で開催された文化財保存修復学会第33回大会での弊社の発表「空気汚染ガス吸着性を持つアーカイバル容器 -小環境における空気汚染ガス低減試験-」の要旨・発表ポスターを掲載した。

 

以下本文から。

 

「空気汚染ガスに対する一つの「緩和」手段は保存箱に収納し資料を保管することである。紙媒体資料を含む多くの収蔵物は保存箱内で保管されていることから、保存箱が室内空気汚染ガスからどの程度資料を保護できるかについて、問題が提起されている。ガス吸着機能を備えた、文化財のための保存容器の独立した研究は乏しく、吸着素材においては、吸着できるガス種が限られていること、納得できる試験データがないこと等の問題がある。 

 

本研究では、VOCsなどの室内空気汚染ガスの吸着機能を持つ素材として選定した2種の素材と当社のアーカイバル容器との組合せで、吸着性能の把握を目的に基礎的な試験を行い、室内空気汚染ガスに対する“保護資材としてのアーカイバル容器”の効果と有用性について検討した。」