今日の工房 2006年

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2006年07月10日

植物染料や化学染料等、幾種類もの色材で染めた修補用紙の褪色性と物理的劣化を試験する。オーブンでの加熱による擬似的な経年変化を見るとともに、屋外での長期の紫外線暴露試験、大気汚染物に対する耐性試験を行う。

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2006年07月04日

既存の大量脱酸性化法により処置された酸性紙の試験。中和滴定法による紙中のアルカリ残留量と、pHストリップ簡易電極法による pH(水素イオン濃度) を測定し、自然経時劣化後の残留量とpHの変化を見る。

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2006年06月23日

1960年代に発行された文庫本。半世紀経過した酸性度は同等(pH5.0台)が、リグニン含有紙は全体が茶褐色に変り、耐折強度も低下している。一方は白色度も強度も充分に保持している。経時した酸性紙=強度低下ではないという例。

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2006年06月13日

わら半紙にガリ版で刷られた戦中の公文書。洗浄・脱酸性・抗酸化、補填や裏打ちの後の、最後の行程。細かくゲタを入れた本体は、開きやすい構造になる。本体と表紙を合わせ、ドリルで貫通坑をあけて平紐で綴じあげる。

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2006年06月05日

革装幀を「革」でではなく、「和紙」で治す–。欧米では、和紙の薄さと強靱さ、食いつきの良さを活かして、80年代から普通に行われている方法である。ヒンジ部とともに表紙の「革」の部分も、和紙を使ったとは思えないレベルに修補できる。

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2006年05月29日

基礎体力強化月間のテーマで、セロファン・テープの天然ゴム系粘着物残滓を除く。炭酸カルシウム粉末で囲み、窪みに、溶解パラメータを合わせた混合溶剤を入れてしばらく置くと、溶けた残滓が炭カルに移行し、除去される(右の部分)。

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2006年05月23日

SOx などの汚染ガスを吸着する保存容器の開発。密閉した瓶の中で、杉、桐、合板等を入れて測る。材木からはどれも酸性ガスが発生し、検知紙が黄緑に。開発中の吸着紙を入れたものは、材木からのガスを吸着し元の青色が維持される。

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2006年05月16日

ロール・エンキャプシュレーション法。資料の一端に和紙足を付け、フィルムを融着し、フィルムの他の三辺はシールせず巻き上げ、平紐輪で止める。一見脆弱な感じを受けるが、保護性は極めて高い。英国図書館の敦煌文書でも使われている

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2006年05月09日

他の紙を貼り付けると必ず反ってしまう資料、例えばトレーシングペーパー等への「反らない裏打ち法」を目的にしたCSS。微小点接着法で目処がつき、加速老化試験でも、通常の裏打ちと比べての反りの抑制を確認する。報告は >>

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2006年04月27日

基礎体力強化月間のCSSのテーマ。水性処置の際に水に溶けてしまうインクの滲み止め。昇華性を持つシクロドデカンを、手作りのホット・ブラシとプレートを使って、さまざまなインクの書写部に塗布し、昇華後の効果を顕微鏡で確認する。

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2006年04月20日

数年越しに開発中の新しい非水性脱酸性化技術。特にリグニンを含有していて変色が著しい近代の新聞や藁半紙媒体、竹紙に。スプレー法での試験では、既存の Bookkeeper法 (右) に比べて、表面の粉っぽさが大幅に抑制されている。

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2006年04月12日

巻子本の修復。傷んだ元の裏打ちを慎重に外し、虫食い等の欠損部を補修後、新しい裏打ちを施す。専用の保存容器を作り完成。

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2006年04月06日

お客様の現場に出かけての収納作業。100本近い巻子をドライクリーニングして保存容器に収納する。巻子専用に作ったクリーニング装置は、形状に沿って撓むネットと、先端に柔らかいブラシを着けた掃除機。清潔に作業を進行できる。

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2006年03月24日

平安時代の絹織物を入れる大型の保存箱を三人がかりで作る。芯材にはハニカム構造の板を使い、外壁はpH 8.0台の弱アルカリボードにしたが、絹と接する内壁は全て無酸・無アルカリ・無サイジングの厚紙を貼る。

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2006年03月19日

図書館等でよく見かける背が片方だけ切れた本。本体が前小口寄りに凹んでいるために、そのままでは接着が難しい。ホロウ・チューブを入れた後に、凹みに合わせた丸棒を前小口にかませて、伸縮性のある包帯で巻いて密着させる。

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2006年03月13日

額装された中国の拓本への手当て。市販のガムテープとベニヤ板で封じ込められた画仙紙は変色が著しく、酸性度はpH4.0台にまで低下していた。洗浄して酸と着色物を洗い流し、中性マットによるフレーミングを行った。

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重量が5㎏以上ある本を再製本する。元表紙は普通のくるみ製本で接合されているが、接合部の脆弱さを補うために、ヒンジのクロスを本のミミに縫いつける。ブリタニカ百科事典の第2版で採用されたといわれる。

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2006年02月28日

アフガニスタン国立公文書館からのアーマスミさんとアベーデさんを迎えて。小麦粉からデンプンをとり沈糊に。文書の裏打ち、炭酸カルシウム+沈糊を塗った段ボール紙での箱づくり-等々を。最良ではないが、決して最悪ではない方法を共に探る。

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2006年02月16日

新聞の折り目の裂けを極薄(6g/m3)の和紙で補修する。裂け目に糊を引きながら和紙を置いて行き、最後にスパチュラでおさえて貼り付ける。根気の要る作業である。

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2006年02月10日

公文書の簿冊を綴じる。オリジナルの簿冊は丁の背に接着剤を塗り込めたハードカバー製本だが、解体してマイクロ撮影をした後は、丁に接着剤を使わず、糸だけで綴じる。将来再び解体の必要がでてきても、綴じ糸を切るだけで一枚ずつの丁になる。

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