今日の工房 2015年 4月

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2015年04月30日(木) 鉄線で綴じられた(wire sewing)本の修理

ワイヤー・ソーイング(wire sewing) で綴じられた資料の修理。この度処置した資料は昭和女子大学様の所蔵するトルストイ著「戦争と平和」。本体を綴じている金属が腐食し、綴じはバラバラに外れている。金属を除去し、傷んだ本紙の背を和紙で補修した後、麻糸で全体を綴じ直す処理を行う。綴じの支持体にはテープ状に切った不活性不織布を使用した。それぞれのテープの幅をオリジナルの綴じ穴の間隔に合わせてカットできるので、元の綴じ穴を活かせるし、十分な強度があるが綿や麻のテープよりも薄いため、背表紙やヒンジ部(表紙との接合部)に段差が出来にくく、すっきりと仕上げることができる。

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2015年04月24日(金)内外ニュース&レポート編 英国図書館での伝統的なイスラム式手漉き紙のワークショップ

英国図書館(BL)のコレクション・ケア部門のブログは、このほど同図書館で開催された4日間の伝統的なイスラム式手漉き紙ワークショップの様子を伝えている。中国で発明された製紙技術は8世紀にイスラム圏にまず伝わり、その後に西洋へという歴史があるが、今回のワークショップは手漉き紙研究の第一人者 ティモシー・バレット(Timothy Barret)らを講師に迎えたコンサベーションの専門家向けのもので、原料や道具などが昔のそれに倣っておこなわれている。

 

主な原料は亜麻と大麻。漉き簀は竹ひごを馬の毛で編んだもの。漉き枠の左右は簀から湿ったシートを外しやすいように、はめ込み式で取り外しができる。束ねてプレスし水切りと乾燥が行われたシートは滲み止めのサイジングが施され、再び乾燥、その後にフラットニングと、表面の平滑化のためのメノウ石による磨きが行われる。

 

なお同ブログでは、伝統的なイスラム式の手漉き紙の技術がいまだ色濃く残っているのはインドであるとして、その動画を紹介している(7:15ごろから)。 http://youtu.be/9HdUXD-RhcI

 

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2015年04月22日(水) 人が乗っても潰れない組み立て式ガラス乾板保存箱

新しい仕様の組立式ガラス乾板用保存箱の耐荷重テスト。従来の完成型の製品に比べ40%以上価格をダウンし、使用ボードの厚みも約半分になっていますが、弊社男性スタッフが乗っても変形することなく形状を維持できる堅牢な構造になっています。棚やキャビネット内で箱を積み重ねて保管しても問題の無い保護性があり、容器サイズもコンパクトなため省スペースで収納ができます。

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2015年04月15日(水) 日本航空史を語るグライダー部品用の大型保存箱を東京文化財研究所に

東京文化財研究所 保存修復科学センター 近代文化遺産研究室様からのご依頼を受け大型保存箱を作成した。収納される資料は、同研究所と財団法人日本航空協会様との共同研究「航空資料保存の研究」のため、研究所に収蔵されているグライダーの部品類(水平尾翼、主翼の一部、方向蛇)。日本の航空史を物語る貴重な資料として現在調査・保存処置などを実施している。

 

全長が3メートルを超える長尺の箱は歪みが生じないよう堅牢な作りに。また巨大な湾曲形状の翼をしっかり支えられるように弾力のある綿布団を作成し土台に組み込んだ。絵画や木製彫刻、陶芸品などの美術工芸品の収納・保管に使う綿布団は、外部からの衝撃や振動を和らげるだけでなく、立体面のカーブ、凹凸など、ものの形状に合わせ包み込むように支えるため、箱内部で文化財を安定させる。コットンライクな柔軟性とクッション性を持ち、部分的に入れるだけでも充分に固定できる。綿と表面の不織布は不活性の100%ポリエステル製。緩衝材としての機能を維持しつつ、文化財の長期保存に適した素材を使用している。

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2015年04月08日(水) 最適な姿勢で修理作業を行うためのカウンターチェア

修理の作業は立ったり座ったり、前かがみになったりと様々な体勢で行う。その体勢に最適な高さや位置を保つために、弊社では専用のカウンターチェアを導入している。高さが自由に変えられ、座面の回転も容易なので動作がスムーズになり、作業の効率化に繋がっている。

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2015年04月01日(水) 2双の屏風をコンパクトに収納。東洋大学井上円了記念博物館様向け保存容器の事例

東洋大学井上円了記念博物館は、東洋大学内に設置され、大学の歴史資料を保存展示しており、学祖井上円了の建学の精神を学内外に広める役割を担っている。今回、質も損傷度合いも悪い木箱に収納されている屏風用に、アーカイバル容器の製作依頼があった。屏風サイズに合わせるだけでなく、新収蔵庫のデッドスペースを有効活用するという命題もあった。

これまでは、屏風1隻につき1箱を作製していたが、2双まとめて収納できるようにした。資料の取り出し及び現状確認が容易にできるよう、蓋は前面パネル式とし完全に取り外せるようにした。また、地震などの振動で勝手に開くことがないよう、マジックテープでの固定式とした。上げ底にもすることで、地面から吹き上げられた埃の侵入を大幅に抑えることができる。

元から備え付けられた什器のように、周りとの違和感もなく、資料にも隙間にもピッタリの保存容器ができた。元の木製の箱が排除されたことで環境も整備され、また、スペースも生まれたことでよりよい収蔵庫環境となった。

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