今日の工房 2016年 4月

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2016年4月27日(水) 日本郵船歴史博物館の方々の工房見学

日本郵船歴史博物館様から5名の方々が工房見学に来られました。今回、同館から当方が初めてお預かりしている資料の修理(主に洗浄・脱酸性化処置)の作業工程を、人、場所、材料とともにじっくりとご覧いただいたことで、ご納得・ご安心いただけました。合わせて保存容器部門もご案内しました。どちらの部門でも、熱のこもったご質問とご意見をいただき、弊社にとっても大変貴重な見学会となりました。

 

 

・日本郵船歴史博物館様の保存容器導入の事例

  「船体模型用アーカイバル容器の収納事例」

  「絵画84点用アーカイバル容器の収納事例」

 

見学をご希望されるお客様は、あらかじめお問い合わせください。ご希望の日程や人数等をお知らせいただければ、当方の予定と擦り合わせて、ご返答いたします。

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2016年4月20日(水) 早稲田大学演劇博物館の森律子等身大人形のコンテナ型保存箱。

早稲田大学演劇博物館様所蔵「森律子等身大人形」(資料番号04040)を収納するコンテナ型保存箱。森律子(1890-1961)は最初期のスター女優。コンテナの蓋は人形を出し入れする際に邪魔にならないように、前面はめ込み蓋になっている。身と蓋はマジックテープで固定する仕組みで、取り外しが簡単。足元の土台に合わせて固定用スペーサーを設置しており、人形本体が内壁に接触しない構造になっている。

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2016年4月13日(水) ステープルやクリップなどの鉄製の留め具を安全に外すには

金属製の留め具の中でも鉄製のものは、時を経て空気中の酸素と水分に反応することで錆びが発生し、留め具そのものだけでなく、接触する本紙が腐食したり、汚れてしまう。また、糸の代わりにステープルを使うワイヤーソーイング法で綴じられた本のように、本の構造全体が崩壊することもある。

 

これらを安全に除去するために、資料の状態に合わせてマイクロスパチュラ、ニッパー等の道具を使い分ける。市販の文具のリムーバーは、劣化状態によっては、除去する際に無理な負荷がかかり、さらに資料を傷めることがあるので、特に貴重な資料等には用いない方がよい。また、錆びて脆くなった留め具は粉状に崩れることがあるため、本紙を汚さないようにドライ・クリーニングも同時に行う。

 

 

ステープルの除去

 

ステープルの足と本紙の間にマイクロスパチュラを差し込み、ステープルの足を立ち上げて、本紙をひっくり返し、ニッパーで挟んでまっすぐに引き抜く。紙力が低下している場合は、間にポリエステルフィルム等を挟んで本紙を保護しながら作業を行うと、さらに安全である。しかし、中には、酸性紙化が進み脆くなった紙や、薄い紙束等、ステープルの足を立ち上げる際の負担に耐えられない資料もある。そのような場合はステープルの足を資料面ぎりぎりのところでニッパーで切断する方が、手早く、安全である。また、雑誌や小冊子等からステープルを除去する際は、一度に引き抜くのではなく、数ページずつめくりながらステープルの足をこまめに切断し、その都度本紙を外す作業を繰り返すと、本紙にかかる負担が軽減できる。

 

 

クリップの除去

 

紙力が十分な場合は、長い輪の方を親指で抑えつつ、短い輪の方を持ち上げて除去する。紙力が低下している場合は、クリップの両面にポリエステルフィルム等を差し込んで保護した上で行う。しかし、本紙と錆が一体化してしまっていたり、紙が脆く、フィルムを差し込めないほど劣化している際は、ニッパーでクリップの上部を切断した方が安全な場合もある。

 

 

ピンや鉄釘の除去

 

紙力が十分な場合はそのまま引き抜くことができるが、紙力が低下している場合は、本紙とピンの間にフィルムを挟んで、そっと引き抜く。また、太い鉄釘等は、しっかりと握れるペンチやニッパーを使用して、釘全体を左右にわずかに回転させながら慎重に引き抜く。その際、釘の頭が深く埋まっていて、引き抜く際に道具の先端で傷つける恐れがある場合は、厚い紙等で本紙を保護する。

 

 

対象資料に合わせて適切な道具や除去方法を判断するには、経験と慎重な姿勢が求められる。

 

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