今日の工房 2016年 8月

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2016年8月24日(水) 虫損がひどい資料へのリーフキャスティング(漉き填め)による修理

和紙基材の資料に見られる代表的な損傷に、シバンムシや紙魚(シミ)などによる虫喰い=虫損がある。ひどいものになると文字の判読はもちろん、丁をめくることも難しい。無理に開けば紙片が絡まって破損したり、島抜けになって文字が欠落してしまったり、そもそも、固着した虫糞によってページがくっついて開かない、ということもよくある。これらを、安心して取り扱えるように修理する。

 

まず、本紙を一丁ずつに解体しドライ・クリーニングする。無理に開いたりせず、島抜けしそうな箇所については、あらかじめ和紙で養生補強して、欠落しないように紙片同士をつないでおいた方が、この後の工程を安全に進めることができる。ドライ・クリーニングは、表面のチリやホコリ、泥よごれやカビを払うだけでなく、こびりついた黒い虫糞を除去することがポイントである。黒い虫糞が残ると、文字が読みづらくなるなど仕上がりを左右するため、除去には時間はかかるが丁寧に行う。

 

そして、サクション(吸い込み)型のリーフキャスティングで、紙の繊維分散液を充填していく。溜め漉きに、流し漉きの動作を組み合わせた独自のキャスターにより、和紙の繊維を絡ませながら欠損部にしっかり埋め込む。紙の厚みや虫損の多さなど、その都度本紙の性質を見て液量を決めるため、一見システマチックな工程に見えても、作業者には経験と、的確で素早い判断が求められる。

2016年8月17日(水)「映画の復元と保存ワークショップ」で具体的な事例を紹介します。

8月26日から8月28日まで、「第11回映画の復元と保存に関するワークショップ」が開催されます。1日目は各所での施設見学や実作業体験、2・3日目はIMAGICA 東京映像センター第一試写室を会場に、講義やトークセッションが行われます。

 

弊社は協賛企業として機器展示を行います。ブースでは、本イベントのテーマに沿って、映画フィルムや古いビデオ、音声テープ、磁気ディスク、レコード等のアナログ視聴覚資料専用のアーカイバル容器のほか、無酸素パック「モルデナイベ ® 」を利用したフィルムの冷凍保存に特化した収納キット等を展示します。見た目からは分からない様々な機能を備えた実際の製品に触れて頂く事ができますので、是非お立ち寄り下さい。

 

また、イベントの名物ともなっている「ライトニングトーク」では、汚染ガス吸着シート「GasQガスキュウ®」の紹介のほか、視聴覚資料をどのように整理し、保管ではない「保存」に向けてどのようにケアしていくのか、弊社によるお客様での具体的な事例を交えながら紹介します。

 

 

関連情報

 

 『今日の工房』 2016年7月13日(水) SPレコードを保存するには

 『今日の工房』 2016年3月9日(水) ゲームソフトのフロッピー、テープ、CDを保存するには

◆  『今日の工房』 2016年2月24日(水) 映像フィルムの劣化要因「ビネガーシンドローム」と、劣化の進行を低減できる保存容器。

2016年8月3日(水) 無酸素パック「モルデナイベ」は工房でも加湿や修理用の材料の保管などに活用しています。

薬剤を使わずに防カビ・殺虫ができる無酸素パック「モルデナイベ」。カビや虫が発生した時だけでなく、図書館・アーカイブズ・資料館・美術館・博物館様での書籍や文書、博物資料や美術品などのモノ資料の新規受け入れ時にも活用して頂いております。また処置対象の数量にあわせて、1袋単位での小規模な処置にも、大型袋による大規模な処置にも対応できます

 

画像は弊社の工房での使用例。左から、ホコリやカビが酷い和書を外箱の桐箱ごと無酸素パックして処置したり、超音波加湿器で加湿したガスバリア袋内の中で、劣化して乾燥が進んでいる革装丁本の柔軟性を戻したり、同じく巻きクセのついた資料を入れて、フラットニング(平坦化)するための加湿チャンバーとして使っています。また、修理用の皮革など、環境の変化や虫カビに弱い材料を収納しておくためにも使っています。

ページの上部へ戻る