今日の工房 2017年 6月

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2017年6月28日(水) 明治期の国産リボン工場跡から発見された見本帳への手当て

洋装の浸透とともに、明治中期には一般にも普及したリボン。東京都台東区谷中にあった、日本で最初のリボン工場跡が2013年に解体・整地されました。工場はその屋根がノコギリの刃のような形状のために「鋸屋根工場」として、この地域の住民に親しまれてきました。 その後、リボン工場の建物は印刷工場として使われてきましたが、2013年の解体にあたり、 リボン工場時代のものと思われる洋書を中心とした1900年前後の繊維産業関係の文献資料や研究ノート、国内・国外製の多数のリボンを貼った見本帳などが発見され、これらの遺産の保存と継承を図る「谷中のこ屋根会」様が譲り受け管理してきました。今回の弊社でのリボン見本帳への処置は同会様からの委託です。

 

見本帳は、リボンを貼った二つ折りの台紙30枚を洋装本風のケースに収納したもの。リボンは織りの裏面を見ることができるよう、上辺のみ、あるいは4隅のうち3点のみで糊止めされている。そのため、開閉時にリボンが垂れ下がって折れた状態で挟まれやすく、繊維が脆弱になったリボンが、折れ目で破断しているものも見受けられる。

 

刷毛等で表面の塵、埃をクリーニングした後、接着剤が劣化して台紙から外れたリボンをデンプン糊で貼り戻した。リボンの折れは、わずかに加湿して折れを伸ばし、フラットニングした。リボン端のほつれは、糊差ししてほつれが広がらないよう止めた。処置後、台紙は二つ折りした中性紙のフォルダで挟んだ。フォルダは開閉時のリボンの垂れ下がりやリボン同士の接触を防ぐため、内側にも挟み込んだ。ケースは強度が低下しているため台紙の再収納はせず、革装部分に対して劣化した革表面の粉の剥落を抑えるレッドロット処置を行った。フォルダに挟んだ台紙を重ね、ケースを GasQシートに包み、まとめて保存容器に収納した。

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2017年2月1日(水) お客様での保存箱の組み立てが、より容易になるように、説明書の改訂と更新を行なっています。

弊社の保存箱には、お客様の手で組み立てていただく商品も多数あります。組立式保存箱は、組み立てて使用する時まで平たいまま保管ができるので場所をとらないというメリットもあり、ここ数年は特に多くのお客様にご利用いただいております。初めてご購入いただいたお客様にもスムーズに組み立てていただけるよう、商品に添える組立説明書をより分かりやすいデザインの物へ順次刷新しております。きれいに箱を組み上げていただくためのコツをイラスト付きで解説しています。

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2017年6月14日(水) 学習院大学図書館様所蔵の華族会館寄贈図書(漢籍・和装本)277点の修理報告書を掲載しました。

弊社では平成26年度から平成28年度までの3年間、学習院大学図書館様が所蔵するコレクション「華族会館寄贈図書」の保存修復処置をお引き受けする機会をいただき、処置を行ってきました。平成26年度は洋装本62点を対象とし、弊社HPにもその報告を掲載しております。今回は平成27年度から平成28年度までの2年間で行った漢籍、和装本277点に対する保存修復処置についての報告『学習院大学図書館様所蔵「華族会館寄贈図書」漢籍・和装本の保存修復処置事例』を掲載しました。

 

なお、このコレクションは同大学のデジタルライブラリーで公開されております。

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2017年6月7日(水) 大判の資料にも対応できる特注クリーニング・ボックス

資料に付着した塵埃やカビ残滓の、屋内での除去作業用にご好評をいただいておりますドライ・クリーニングボックス。お客様のご要望にお応えして、このほど一回り大きなサイズの製品を作りました。従来の定型品では対応が難しい資料サイズのドライ・クリーニング用ボックスを特注品としてお引き受けできます。ご相談ください。

 

従来品(幅580×奥行き450×天地445ミリ)に比べ、今回の製品のサイズは幅750×奥行き500×天地445ミリ。幅と奥行きを広くしたことで、大判の図書や雑誌などを見開いてクリーニングできます。

 

ドライ・クリーニングボックスの機能のポイントは、ボックス内で、奥の空気清浄機(HEPAフィルター装備)に向かって十分な気流が発生し、塵埃などが作業者側に来ないこと。今回の大きなボックスも定型品と同様に、気流が手前から奥へと流れているか、気流検査器で確認済みです。

 

空気清浄機とボックスを1つにまとめた梱包で出荷します。作業時に現場で梱包の箱から出して数分で組み立てて、作業を開始できます。

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