今日の工房 2017年

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2017年8月2日(水) 成城大学民俗学研究所様の所蔵する人形や郷土玩具の虫退治に、無酸素パック「モルデナイベ」が使われています。

成城大学民俗学研究所は、日本民俗学の創始者である柳田國男からの寄贈資料を集めた「柳田文庫・民俗学研究室」を基盤とし、昭和48年に設立されました。現在は、図書や文書資料にとどまらず、関連する様々なモノ資料も所蔵しています。

 

そのひとつが、日本各地から集められた人形や郷土玩具。民衆の生活に身近なワラ、木、土、布、紙などを材料としたものです。しかし、いずれも虫の餌や巣になりやすい素材で、特に木やワラは、収集時にすでに虫が潜んでいることもあるため、収蔵前の駆除は必須ということです。過去には外部に委託して燻蒸処置を行ったこともあったそうですが、民俗資料は数も種類も多く、収蔵時期も不定期のため継続が困難でした。

 

同研究所では以前、木製の人形に虫が出てしまったときには薬品では駆除することができず、弊社の無酸素パック「モルデナイベ」を使って駆除に成功しました。手軽に殺虫処置を行えることから常備品としてくれています。ただこれまでのサイズの「モルデナイベ」では小さくて、処置できない民具もありました。今回、新製品の大型サイズをすぐに導入していただき、大きなワラ馬(信州地方に伝わるワラでできた馬)の殺虫処置を実施していただいております

続きを読む

2017年7月26日(水)今年の夏の手ぬぐいはゴーヤ柄です。

毎年恒例となっている手ぬぐいの今夏バージョンは、ゴーヤ柄に決まりました。ゴーヤは夏バテ予防に効果的な野菜です。これからますます暑さが厳しくなりますが、この夏を元気にお過ごし下さい、というスタッフ一同の願いと一緒に、お客様の元へお届けいたします。

 

(柄の中にはゴーヤでできた顔が隠れています。ぜひ探してみて下さい。)

続きを読む

2017年7月19日(水)写真保存の第一人者 ラヴェンドリン氏の『写真技法と保存の知識』が出版に。

現在の写真保存における予防的保存の理論的な基礎を据えたベルトラン・ラヴェドリン氏 の主著『 Connaître et conserver les photographies anciennes(仏語タイトル)』の完全日本語版が『写真技法と保存の知識』として青幻舎から出版された。原書のフランス語版、英語翻訳版共にベストセラーとなっており、すでにスペイン語版、ベトナム語版が刊行されている。

 

著者のラヴェンドリン(Bertrand Lavédrine)氏はパリ自然史博物館・教授、フランス国立保存研究センター・所長(併任)。現在、国立民族学博物館客員教授。日本語版への翻訳は白岩洋子氏(紙本・写真修復家、白岩修復工房主宰)、監修は日本大学芸術学部教授 高橋則英氏(日本大学芸術学部教授)による。

 

本書では、 デジタル以前の主要な写真技法を網羅し、各技法の歴史・製作法・劣化とケアについて、わかりやすい図解と豊富な作成図版で一覧できる。第3部の「保存」には、保護包材、保管環境、展示、デジタル化–の項があり、写真の技法を判別した上で、 どのような劣化が起こり、 それに対しどのようにケアしていくかについて丁寧に解説されており、写真を長く保存するための手引書として真に役立つ一冊になっている。

 

 

(内容紹介 : 本書カバーより)

 

 「近年、初期写真への関心はコレクター、保存修復家、アーキビストだけでなく、家族アルバムや地域の写真の保存を望むアマチュアの人々の間でも高まっている。写真の歴史はわずか170年という短いものであるが、その歩みの中で数多くの技法が誕生してきた。本書はデジタル以前の写真を理解し保存するための総合的な入門書であり、写真の技法に関して役に立つ情報を集約した、類のない一冊であ る。筆者はそれぞれの技法—ダゲレオタイプ、アルビューメン(卵白)ネガ、ダイトランスファープリントなど一の歴史と発展、材料、劣化の原因やメカニズムを概説し、保存や取り扱い上の注意に関して具体的に助言している。

 

 本書はこの分野の近年の発展を開示し、包括的に解説した簡潔で理解しやすい一冊として、保存修復家、学芸員、コレクター、ディーラー、写真家、家族アルバムの持ち主、アーカイブや家族写真を長く大切にしたい人など、初期写真の保存に関する知識を求めるすべての人々に貢献することだろう。」 ※本書日本語版の翻訳にあたり、原文の内容を現在の状況に合わせて更新し、さらに本書の英語版も参照したうえで技術的な補足を付している。

 

 

以下は 青幻舎の案内 から。

『写真技法と保存の知識  デジタル以前の写真―その誕生からカラーフィルムまで 」

著者:ベルトラン・ラヴェドリン (フランス国立コレクション保存研究センター所長)
翻訳:白岩洋子(紙本・写真修復)
監修:高橋則英 (日本大学芸術学部教授/写真史・画像保存)
□ 判型:B5変
□ 総頁:368頁
□ 製本:並製
□ ISBN: 978-4-86152-617-6 C1072

定価:本体5,500円+税

続きを読む

2017年7月12日(水) 「第12回映画の復元と保存に関するワークショップ」で実習や講義を行います。

NPO法人映画保存協会主催による「第12回映画の復元と保存に関するワークショップ」が2017年8月25日(金)〜27日(日)に開催されます。弊社では、このうち25日の「ノンフィルム資料の保存と修復」と「ビネガーシンドロームの対策」での実習、26日の「映画保存のテクニカルソリューション」の講義を行います。

 

「ノンフィルム資料の保存と修復」では、映画に関連する紙媒体資料の長期保存のための手当てを、「ビネガーシンドロームの対策」では、劣化が進行している個々の映画フィルムへの対応とコレクション全体に対してできる取り組みを、実習やグループディスカッションを通して体験的に学んでいく講義を企画しています。参加者の方に実作業体験を通して今後の課題について理解を深め、参加者同士のネットワークの強化を目的としています。学芸員、司書、アーキビスト、研究者、技術者、学生、映画が大好きなすべての方々が対象です。

 

ワークショップの詳細と募集要項は、こちらです。

続きを読む

2017年7月5日(水)文化財向け保存容器を製作するアルバイトスタッフを募集

弊社では文化財や貴重資料を長期保存するための保存容器を製作するアルバイトスタッフを募集しています。ヘラやカッター、接着剤を使って箱を組み立てる仕事や、容器に収納する資料のサイズ採寸、納品の補助、資材の搬入や商品の梱包など、さまざまな仕事をお手伝いいただける方を募集しています。形や大きさの違う箱を一点ずつ手作業で完成させていく仕事ですが、ほとんどのスタッフが未経験から始めています。図書や博物資料の保存に興味のある方、手仕事や工作が好きな方はぜひご応募ください。詳しい募集要項は下記サイトをご参照ください。お問い合わせは担当(小林)までどうぞ。

 

◆募集要項◆ 文化財向け保存箱の製作アルバイトスタッフ募集(株式会社資料保存器材)

続きを読む

2017年6月28日(水) 明治期の国産リボン工場跡から発見された見本帳への手当て

洋装の浸透とともに、明治中期には一般にも普及したリボン。東京都台東区谷中にあった、日本で最初のリボン工場跡が2013年に解体・整地されました。工場はその屋根がノコギリの刃のような形状のために「鋸屋根工場」として、この地域の住民に親しまれてきました。 その後、リボン工場の建物は印刷工場として使われてきましたが、2013年の解体にあたり、 リボン工場時代のものと思われる洋書を中心とした1900年前後の繊維産業関係の文献資料や研究ノート、国内・国外製の多数のリボンを貼った見本帳などが発見され、これらの遺産の保存と継承を図る「谷中のこ屋根会」様が譲り受け管理してきました。今回の弊社でのリボン見本帳への処置は同会様からの委託です。

 

見本帳は、リボンを貼った二つ折りの台紙30枚を洋装本風のケースに収納したもの。リボンは織りの裏面を見ることができるよう、上辺のみ、あるいは4隅のうち3点のみで糊止めされている。そのため、開閉時にリボンが垂れ下がって折れた状態で挟まれやすく、繊維が脆弱になったリボンが、折れ目で破断しているものも見受けられる。

 

刷毛等で表面の塵、埃をクリーニングした後、接着剤が劣化して台紙から外れたリボンをデンプン糊で貼り戻した。リボンの折れは、わずかに加湿して折れを伸ばし、フラットニングした。リボン端のほつれは、糊差ししてほつれが広がらないよう止めた。処置後、台紙は二つ折りした中性紙のフォルダで挟んだ。フォルダは開閉時のリボンの垂れ下がりやリボン同士の接触を防ぐため、内側にも挟み込んだ。ケースは強度が低下しているため台紙の再収納はせず、革装部分に対して劣化した革表面の粉の剥落を抑えるレッドロット処置を行った。フォルダに挟んだ台紙を重ね、ケースを GasQシートに包み、まとめて保存容器に収納した。

続きを読む

2017年2月1日(水) お客様での保存箱の組み立てが、より容易になるように、説明書の改訂と更新を行なっています。

弊社の保存箱には、お客様の手で組み立てていただく商品も多数あります。組立式保存箱は、組み立てて使用する時まで平たいまま保管ができるので場所をとらないというメリットもあり、ここ数年は特に多くのお客様にご利用いただいております。初めてご購入いただいたお客様にもスムーズに組み立てていただけるよう、商品に添える組立説明書をより分かりやすいデザインの物へ順次刷新しております。きれいに箱を組み上げていただくためのコツをイラスト付きで解説しています。

続きを読む

2017年6月14日(水) 学習院大学図書館様所蔵の華族会館寄贈図書(漢籍・和装本)277点の修理報告書を掲載しました。

弊社では平成26年度から平成28年度までの3年間、学習院大学図書館様が所蔵するコレクション「華族会館寄贈図書」の保存修復処置をお引き受けする機会をいただき、処置を行ってきました。平成26年度は洋装本62点を対象とし、弊社HPにもその報告を掲載しております。今回は平成27年度から平成28年度までの2年間で行った漢籍、和装本277点に対する保存修復処置についての報告『学習院大学図書館様所蔵「華族会館寄贈図書」漢籍・和装本の保存修復処置事例』を掲載しました。

 

なお、このコレクションは同大学のデジタルライブラリーで公開されております。

続きを読む

2017年6月7日(水) 大判の資料にも対応できる特注クリーニング・ボックス

資料に付着した塵埃やカビ残滓の、屋内での除去作業用にご好評をいただいておりますドライ・クリーニングボックス。お客様のご要望にお応えして、このほど一回り大きなサイズの製品を作りました。従来の定型品では対応が難しい資料サイズのドライ・クリーニング用ボックスを特注品としてお引き受けできます。ご相談ください。

 

従来品(幅580×奥行き450×天地445ミリ)に比べ、今回の製品のサイズは幅750×奥行き500×天地445ミリ。幅と奥行きを広くしたことで、大判の図書や雑誌などを見開いてクリーニングできます。

 

ドライ・クリーニングボックスの機能のポイントは、ボックス内で、奥の空気清浄機(HEPAフィルター装備)に向かって十分な気流が発生し、塵埃などが作業者側に来ないこと。今回の大きなボックスも定型品と同様に、気流が手前から奥へと流れているか、気流検査器で確認済みです。

 

空気清浄機とボックスを1つにまとめた梱包で出荷します。作業時に現場で梱包の箱から出して数分で組み立てて、作業を開始できます。

続きを読む

2017年5月31日(水) 耐水性を付与できるシクロドデカンを線状に資料に含浸して水性処置をする。

耐水性が無く処置中に滲む恐れがあるインクは、昇華性のシクロドデカンを塗布し、養生してから、洗浄や脱酸性化処置、裏打ちやリーフキャスティング等の水性処置を行う場合がある。

 

シクロドデカンは元々は固体だが、熱を与えると液体になる。この状態でインク等のうえから塗布・含浸し乾かして再び固体にし、部分的に耐水性にした後に洗浄等の水性処置を行う。全ての処置を終えたあとに放置しておくと、固体のシクロドデカンは気化(昇華)して資料から抜ける。

 

これまでは、手作りのホット・ブラシ、電熱線を中に組み込んだプレートなどを使ってきたが、必要以上に線が太くなったり、層の厚みがまだらになり昇華スピードのコントロールが難しいことなどから、つど改良を行っていた。今回、シクロドデカンの塗布によく利用されるKistka(イースターエッグの装飾に使用するワックスペン)と比較してみたところ、これまでより繊細な線が引けるので、必要な箇所にのみ塗布することができた。昇華スピードの調整については今後も引き続き課題ではあるものの、処置の精度が向上する点は期待できそうである。

 

関連情報

今日の工房2015年07月30日(木)ソースパン、包帯、編み棒などの「日用品」も修理で活用します。

続きを読む

2017年5月24日(水)あらゆるサイズのガラス乾板に対応できるように専用フォルダーを品揃えしました。

弊社ではこのほど、ガラス乾板のあらゆるサイズに対応できるように専用フォルダー(中性紙製4フラップ・フォルダー)の品揃えをしました。素材は国際標準化機構(ISO)の定める写真活性度試験(PAT:Photographic activity test)をクリアしており、長期に安心してご使用いただけます。

 

ガラス乾板を保存する上で最も大切なことは、膜面(乳剤面)を外的な劣化要因からまもること。たとえば、包材が膜面に対し不均一に接した状態では、空気(酸素)や湿度の影響の差が劣化の差となって、画像濃度の低下に繋がるため、劣化を抑制する包材や間紙は周辺にできる限り隙間がなく、膜面に均一に密着させることがポイントになります。

 

包材に収納する際の基本的な手順は、ガラス乾板を元の包材から取り出し、埃や汚れを柔らかいブラシで拭き取った後、一枚ずつガラス乾板フォルダーに包んで、損傷の無いものは膜面に圧が掛からないように立てて保存できる専用の箱に収めます。

 

弊社のガラス乾板専用フォルダーは以下のように、一般的な規格サイズとともに変形サイズも品揃えしています。また、サイズ指定の特注品も作成できます。

 

内寸サイズmm 外寸サイズmm 通称
47×62×3 48×63×3.5
84×62×3.5 85×63×4
82×106×3 83×107×3.5
84×109×3 85×110×3.5 手札
84×122×3.5 85×123×4
104×130×3 105×131×3.5 4×5
122×122×4 123×123×4.5
123×123×4 124×124×4.5
130×181×3.5 131×182×4 5×7
162×162×4.5  163×163×5
164×215×3.5  165×216×4
168×216×3.5  169×217×4  6×8
205×256×4  206×257×4.5
255×306×4  256×307×4.5  8×10
310×100×3  311×101×3.5  天文写真乾板用
121×165×3  122×166×3.5  5×7小

 

なお、適正な包材へ収納後のガラス乾板の保管環境は、ISO規格に基づいた日本工業規格(JIS)によるJIS K 7644:2004 写真―現像処理済み写真乾板―保存方法(ISO 18918:2000 Imaging materials−Processed photographic plates−Storage practices )に準拠した環境が推奨されています。許容されるRHレベルは、20%〜50%、好ましくは40%未満。RHは60%を超えてはならず、大きな変動は避ける。推奨温度は15℃〜25℃(20℃以下が好ましい)。過酸化物、硫化水素、オゾンなどの反応性化学物質は保存環境中から除去する—というもの。

 

 

関連情報

ガラス乾板保存箱 縦置き型(組み立て式)、フォルダー

 

ガラス乾板保存箱 平置き型、フォルダー

続きを読む

2017年5月17日(水)東大史料編纂所プロジェクト編『文化財としてのガラス乾板』が刊行

東京大学史料編纂所附属画像史料解析センタープロジェクトおよび科研費等による、久留島典子・高橋則英・山家浩樹編 『文化財としてのガラス乾板』(勉誠出版)が刊行された。先駆的にガラス乾板の調査・分析・保全を続けてきた東京大学史料編纂所の実例(東京大学史料編纂所所蔵ガラス乾板の保存とデジタル技術による復元プロジェクト)のほか、同様の取り組みを進める諸機関の手法をまとめたもの。

 

本書では、ガラス乾板の保存と活用に必要な事柄を、基礎から応用まで、カラー図表をふんだんに示しながら具体的に紹介されており、初心者から実務者にとっての総合的なガラス乾版保存の入門書となっている。巻末付録には用語集のほか、写真関連規格、写真感光材料の標準寸法、保存用品、参考文献などの写真資料の整理・アーカイビングに必要な情報が充実している。

 

目次は下記の通り。

 

はじめに 山家浩樹

 

総論 
第1章 ガラス乾板の歴史と保存の意義 高橋則英  
第2章 写真と歴史学―東京大学史料編纂所の活動を中心にして 谷昭佳  
第3章 写真史料を保存へ導くために 白岩洋子

 

第Ⅰ部 ガラス乾板の保全と活用  
第4章 ガラス乾板の史料学―整理保存と調査による研究資源化の実際 谷昭佳
第5章 ガラス乾板の取り扱い 竹内涼子・高橋則英
第6章 ガラス乾板用保存箱の製作 谷昭佳・高山さやか・竹内涼子
第7章 ガラス乾板の劣化例証 竹内涼子
コラム1 ガラス乾板の「膜面返し」とコロタイプ印刷 谷昭佳(文責)・高山さやか(作図)  
コラム2 ガラス乾板の劣化について―ガラスの組成分解について 山口孝子  
コラム3 損傷したガラス乾板の処置と修復 三木麻里

 

第Ⅱ部 ガラス乾板の情報化
第8章 ガラス乾板のデジタル情報化―デジタル撮影とメタデータの作成 高山さやか
コラム4 ガラス乾板のスキャニングについて―京都国立博物館の取り組みから 岡田愛
コラム5 ガラス乾板に関するデータはどこに向かうのか 山田太造

 

第Ⅲ部 ガラス乾板蓄積の経緯とその背景
第9章 東京大学史料編纂所における歴史史料の複製とガラス乾板 井上聡
コラム6 日本史研究におけるガラス乾板の意義―保阪潤治コレクションから 木下聡
第10章 博物館と文化財写真―奈良国立博物館におけるガラス乾板整理の経験から 宮崎幹子
コラム7 東京大学経済学部資料室所蔵のガラス乾板―横濱正金銀行資料から 小島浩之
コラム8 文書館におけるガラス乾板の蓄積と公開 新井浩文

 

附録 用語集
・写真関連規格一覧
・写真感光材料の標準寸法に関する一覧表
・参考文献一覧
・ガラス乾板に関する情報・画像を公開している国内の主な機関
・保存用品取り扱い業者一覧

 

おわりに 久留島典子

 

掲載図・写真の所蔵・出典一覧 執筆者一覧

 

 

『文化財としてのガラス乾板 写真が紡ぎなおす歴史像』 久留島典子・高橋則英・山家浩樹 編 (勉誠出版)

続きを読む

2017年5月10日(水)修復業務アシスタントを募集しています。

現在弊社では、修復業務アシスタントのアルバイトを募集しております。近現代紙資料(図書、雑誌、和装本、洋装本、新聞、地図、図面、写真など)への処置に伴う資材の準備、撮影、などのほか、経験や技能に応じて実作業に関わっていただくこともあります。このほか、保存容器の作製、調査、社外での出向作業などのお手伝いをお任せすることがあります。慎重な手作業のほか、資料の梱包や搬送に伴う作業など、内容は様々です。募集概要は、こちらをご確認ください。ご不明な点は、担当者(伊藤、高田)へお問い合わせください。

続きを読む

2017年4月26日(水) サイズの異なるガラス乾板を一箱にまとめて収納する。

何種類かのガラス乾板を 一箱に収納する場合、箱の中に仕切りを入れ部屋を作り、乾板のサイズに合うように各部屋に上げ底やスペーサーを入れる。乾板はサイズに合ったフォルダーに 1枚ずつ包み、それぞれの部屋に入れる。ガラス乾板は壊れやすいため、ひとつの部屋に違うサイズのものを一緒に入れてしまうと、箱が傾いた時などに力のかかり方が不均一になり、破損の原因となる。また、上げ底やスペーサーがない箱の場合は詰め物を入れるなどして、乾板が箱の中で動かないような工夫をするとより安全に保管できる。

続きを読む

2017年4月19日(水) 少量のデンプン糊を電子レンジで作る。

工房では毎日の作業用に、かなりの量のデンプン糊を使うため、鍋で糊を炊くが、防腐剤を含まないデンプン糊の保存期間は冷蔵庫で一週間程度。傷みやすいデンプン糊を必要な分だけごく少量作りたい場合に、電子レンジを使う。深さのある耐熱ガラスの容器にデンプン粉(5 ~10g程度まで)と水を1:5で入れ、ダマが残らないように混ぜる。電子レンジ600wで加熱し、10~20秒ごとに取り出してよく混ぜる。様子を見ながら合計加熱時間5分程を目安に、この工程を繰り返す。水に取って冷やし、漉して完成。用途に応じて濃さを調整して使用する。

続きを読む

2017年4月12日(水)専図協主催「館内でもできる簡易修理」セミナーの受講者へのアンケート結果を掲載しました。

2017年3月2日に開催された専門図書館協議会主催「平成28年度 資料保存セミナー(関東地区) 館内でもできる簡易修理」に参加された受講者の皆様への、受講後のアンケートの集計結果がまとまりました。このほど専門図書館協議会様から弊社サイトでの紹介をご快諾いただきましたので、以下に掲載いたします。なお、総数51のご意見の中から、4つの質問項目に対して、内容が重複するご意見を除き、取捨選択させていただきました。同セミナーの参加者は25名、アンケートの回答者は23名でした。

 

1.   全体としての感想は

 

大変良い 20

まあまあ良い 2

普通 1

 

2.受講して、あなたが最も興味深く学んだ(印象に残った)ことはなんですか?

 

⚫︎資料の修理自体をメインとするのではなく、資料の今後ことを考えた修理や管理者・利用者の用途を考えた修理をすることが頭になかったので(根本的なことですが抜けておりました…)、改めて資料保存について考える良い機会になりました。講師のお二人の経歴を伺えてよかったです。お二人のお人柄にも癒されました。

⚫︎修理の講座は初めて参加したが、最初から最後までの工程をひととおり実習できたのは、大変勉強になった。講師の説明もわかりやすく、質問にも丁寧に答えていただき、さすがプロだなと感じました。参加してとても良かったです。

⚫︎とても有意義な時間で、あっという間の1日でした。身近なモノを代用して、ドリルの台なども作ることが可能だったり、今までこうしたらいいのか、と思うことがなかった作り方も教えていただけて、とても良かったです。本のしめ機がなくてもホータイで代用できるなど、身近な道具がいろんな道具になることがわかってとても良かったです。

⚫︎(和紙や不織布等を除いて)図書館に普段から備えてあるものを用いて、資料の補修が出来る点が非常に興味深かったです。今までは補正テープを貼る段階までの修理にとどまっていたが、今回教えていただいたことを取り入れていきたいです。

⚫︎ ホチキス針の処理方法。今まで一気に引き抜くものと思っていたが、針を短く切りながら抜く方法はより資料に優しいと思った。

⚫︎ 背の構造を理解できたことで、修理のポイントがつかめた(ボンドをつける場所、つけてはいけない場所がわかりました)。

⚫︎ とても有意義な時間で、あっという間の1日でした。身近なモノを代用して、ドリルの台なども作ることが可能だったり、今までこうしたらいいのか、と思うことがなかった作り方も教えていただけて、とても良かったです。本のしめ機がなくてもホータイで代用できるなど、身近な道具がいろんな道具になることがわかってとても良かったです。

⚫︎ 館内手当て時に綴じ穴をあける際、目打ち(木づち)を使用していたが、紙の劣化が進んだ資料にはドリルの方が損傷が少ないということ。

 

 

3.他にききたかった(不足していた)ことがありましたら、お書きください。

 

⚫︎ 接着剤を使用する時、市販のものを使う時は「弱アルカリに近くなるように調節したほうが良い」と言われたが、具体的にどのようにすれば市販品を使えるようにできるかも教えていただければと思いました。

▶︎ 当方の工房では市販の「ボンド」(ポリビニルアセテート)を使うのは書籍の構造部などの修理で、強い接着力を必要とする場合のみですが、この場合は水酸化カルシウム水溶液(アルカリ性)をつくり、これで酸性の「ボンド」を溶いて中性域にしたものを使っています。ただ、貴重な資料ではなく、一般的な書籍の館内修理には、「ボンド」をそのまま水溶きしたものを使っていただいて結構かと思います。

⚫︎ 糊、ボンドを使用するので、ウエットティッシュの持参をご案内していただけるとよかったです。

⚫︎ 持ち物に、エプロンとマスクがあった方が良いと思いました。

 

 

4.   今後、研修会で取り上げて欲しいテーマ

 

⚫︎ 引き続き、形態の違う図書の修理講習会を開いていただけるとうれしいです。とじ直し作業も興味があります。時間と技術が必要とのことですが。

⚫︎プロの方の修理を見学してみたいです。

▶︎ ご要望があれば適時、弊社の工房見学会を行なっております。 「2016年2月3日(水)アーキビスト養成のための資料保存手当て実習講座と工房見学会を実施しました。」  
⚫︎簡易修理だけでなく、応用的な修理の実習が可能でしたら、是非開催していただきたいです。

⚫︎ 和装本や和紙などの、紙質が特殊なものの扱いを聞いてみたいと思います。虫喰いなどの補修現場をみてみたいとも思います。

⚫︎ 背ラベル(Bコート貼付)のはがし方、再補修の仕方を教えていただけたら実務に有用です。ご検討いただければ幸甚です。

⚫︎ ソフトカバーの資料の簡易処置など。のど見えやページの脱落したものの処置なども集せて処置したい。

⚫︎ カバーが切れてきたときの補修方法。表紙全体でなく、1部だけ破損した場合の補修方法。

続きを読む

2017年4月5日(水)大きな額装作品を縦置きで保管する、留め具付きの台差し箱

大型の台差し箱を縦置きで保管するには、蓋を平紐などで縛る必要があるが、資料を出し入れする度に紐を結び直す手間がかかる。留め具にボアテープ(面ファスナー)を使用すると蓋の開閉が簡便になり、身とピッタリ固定ができる。

 

箱の中で資料が動かないよう、内寸をタイトに設計した。そのため箱の中にスペーサーを取り付け、作品を取り出す手掛かりを設けた。箱の壁にはボードが二重になる補強を加えており、高さが低い薄型の箱でもたわまない堅牢な構造になっている。

続きを読む

2017年3月29日(水)工房はいま、繁忙期真っ只中です。

おかげさまで、例年同様、工房はいま繁忙期真っ只中です。ご注文いただいた保存容器やお預かりした資料は順次お客様の元へ発送、ご納品に伺っております。修理部門では、ご納品と併せて、次年度案件の資料のお引取も相次いでおり、すでに工房内は資料で溢れています。

続きを読む

2017年3月22日(水) 書架に収納する大型雑誌用ファイルボックスをブリヂストン美術館様に

公益財団法人石橋財団ブリヂストン美術館様が収集している海外の美術雑誌の多くは大判で薄く柔らかいため、書架にそのまま立てて並べると自重で湾曲してしまう。当初利用されていた一般的な事務製品は、大型本を支える強度がなく、また、箱の手前の壁が資料の下半分を隠してしまい、本のタイトルや管理用ラベルが見えづらく、出し入れに手間がかかっていた。そこで強度のあるアーカイバルボードを使い、資料をしっかりと支えられる構造にした。手前の壁がなくなることで資料の背がすべて見え、出し入れも安全に行うことができるようになった。

続きを読む

2017年3月15日(水)和装本(四つ目)を仕立て直す。

和装本の修理の行程は、綴じを解体して一丁ずつ本紙を修補することと、修補後の綴じ直しに大別される。綴じ直しは、元穴や元表紙が問題なく再使用できたり、本紙の状態が良好であれば、さほど難しい工程ではない。しかし、損傷状態によっては綴じ穴を新しく設けたり、表紙を新しくする仕立て直しをすることも多い。綴じ穴の位置やちりの具合を調整する仕立て直しの作業は、資料の「顔」を決める重要な工程といえる。
 
まずは本紙を中綴じする。修補後の本紙を折り直し、丁を揃えながら元の順番通りに重ねる。重ね終えたら、目打ちで綴じ穴を開けて、紙縒りで中綴じを行う。周辺に残る補修紙については化粧裁ちを行う(薄手の資料であればカッターなどで、厚いものは断裁機を使用する)。角裂(かどぎれ)は、あらかじめ修補または新しく用意しておき、中綴じと化粧立ちの後に付け直す。
 
次に、表紙の四辺を折り込む「表紙掛け」を行う。中綴じした本紙と、表紙の内側を、軽く糊付けして固定したあと、表紙の背、天地、小口の順に、ヘラで筋を付けながら折り込み、最後に、折った紙が重なる四隅を斜めに切り落とす。本紙をきちんと保護できるよう、表紙が出過ぎたり内に入りすぎたりしていないか、指先で確認しながらちりの具合を調整する。その後、表紙と見返し紙の小口を糊で貼り合わせる。
 
最後に、題箋やラベルを元の位置に貼り戻した後、元糸を参考にして、似た色合いと太さの糸で外綴じを行って完成させる。

 

 関連情報
今日の工房2015年9月9日  和装本の綴じ直しに使う絹の糸と布
今日の工房2005年10月11日  ボーディングで紙縒りを作る
スタッフのチカラ2015年5月20日  シリアス染料による補修用和紙の染
スタッフのチカラ2011年5月27日  馬込家文書に対する保存修復処置事例
スタッフのチカラ2010年3月29日  和書「往来物」への保存修復処置

続きを読む
ページの上部へ戻る