今日の工房 2019年

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2019年12月26日(木)2019年も残りわずか、今年も大変お世話になりました。

いつも当社ブログをご覧頂き、誠に有難うございます。2019年も残りあとわずかとなりました。年内の営業は12月27日(金)正午まで、年明けは1月6日(月)より営業いたします。

 

今年1年を振り返ってみますと、ICOM(国際博物館会議)京都大会への初出展をはじめとして、講習会やワークショップなども初めてお声がけ頂いた内容・機関がいくつかあり、新たなご縁の繋がりを感じることができた年でした。また、社員研修もいくつか実施した中で、夏に訪問した「特種東海製紙三島工場」では、アーカイバルボードの製造工程を間近に見て、あらためて、多くの方々の高い技術力と豊富な知識、企業努力によって支えられていることをスタッフ全員が体感できたとても貴重な機会でした。

また、下半期では台風による水損被害に関するご相談が多く、今もお問い合わせが途切れることがありません。当社では各所と連携し、資材提供を通じて微力ながら文化財復旧支援に携わらせて頂いています。復旧にむけて活動されているスタッフ・職員の方々の疲労困憊は計り知れず、ご尽力に敬意を表するとともに1日も早い復旧復興を祈念いたしております。

 

来年2020年は干支の最初となる子年です。新たな気持ちでチャレンジし、成長を目指し、さらにより良い製品・サービスをみなさまにご提供できるよう、スタッフ一同邁進してまいります。来年も何とぞよろしくお願い申し上げます。

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2019年12月18日(水)国立女性教育会館での実技コースへの出講と弊社見学会を行いました。

11月27日(水)~29日(金)独立行政法人国立女性教育会館主催のアーカイブ保存修復研修が開催され、昨年に引き続き、実技コースと会社見学会を弊社スタッフが担当しました。

 

実技コースでは、資料の保存修復を実習形式で学んでいただくという趣旨にてらして、様々な書籍サンプルを用いて下記のような基礎事項を解説しました。

 

■綴じ方や本紙との接合方法などの製本構造。
■のりや接着剤の種類と製本での使われ方。
■表紙に使われる芯材料・表装材料などの種類とそれぞれの劣化の特徴。

 

また、ケーススタディとして、資料の劣化の傾向と保存対策を視点におき、いくつかの書籍モデルの事例をとりあげながら素材や形態別の劣化・損傷要因などを考察しました。

 

こうした講義の内容を踏まえて、製本実習ではリンプ・ペーパー・コンサベーション・バインディング(Limp-paper conservation binding)を作製しました。「保存製本:コンサベーション・バインディング」の要である、本への負荷が少なく、可逆性のある構造とはどういうものか、製本構造と使用素材が機械的にどのように関連するかを実習を通して体験していただきました。

 

当日のレジュメ

1.本の綴じ形態を知り、コンサベーション・バインディングを試作する

2.リンプ・ペーパー・コンサベーション・バインディングを試作する

 

2日間の実技コースの後は会社見学会を行いました。修理(コンサベーション)部門では、弊社でお引き受けしている様々な資料への手当ての事例をご覧いただきながら劣化損傷の要因と保存処置方針を固めていく工程などをご案内しました。アーカイバル容器製造部門では、技術的なことというよりは「どのような箱を作るか?」という考え方を中心に、資料の特徴と容器の形状を決める際の着眼点を紹介しました。その後、資料の採寸から保存箱の設計、カッティングプロッターを使ったパーツの切り出し、組み立てに使われる原材料や道具など、保存箱製作の実際の工程をご覧いただきました。

 

参加者の皆様より「館内で補修を行う際の基準やあり方について改めて考えることができた」、「資料の構造や作り方がわかり、修理を外注する際の判断の一助となる」などのご感想やご意見を頂きました。このような機会は、実際に現場で資料管理を担当する方々と問題意識を共有するうえでも大変貴重です。これからも、見て納得、聴いて役に立つ、実用性の高い資料の保存方法や良質なアイデアをご案内できるよう努めてまいります。

 

ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

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2019年12月11日(水)ポスターや図面をのばして収納。保管や運搬にも便利な「落し蓋」つき被せ箱。

ポスターや図面などを広げて保管したい場合、簡単なやり方としては、板に挟んで紐などで固定する方法が考えられます。
ただ、この方法で縦置きするにはしっかり固定しなければならないので養生の手間もかかり、枚数が多く厚みが出る場合は固定するのも難しくなります。

 

こうした時、弊社では「落し蓋」をつけて収納する方法をお奨めしています。この落し蓋は、箱の内寸法に合わせてボードの4辺を折り曲げ立ち上がりを設けた内蓋のような形状で、箱の側面につっぱるようにはまり、収納した資料を上から固定します。このような仕掛けでは落し蓋のはまり具合が肝になりますが、アーカイバルボードは通常の段ボールより硬く成形がしっかりできるため、ぴったりと箱に沿う落し蓋を作ることができます。

 

落し蓋がしっかりとはまることにより、湿気による波状のうねりや折れ・擦れを防いだり、若干カールした資料もある程度安定させ伸ばしながら保管できます。また、縦にしても中身が動かないため、何枚ものポスターを平判のまま持ち運びたいといったお客様にもお使いいただいています。

 

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2019年12月6日(金)オリジナルの背表紙を生かして修理するための事前処置

革装丁本の背表紙は大気や光にさらされていることが多いため、よりレッドロットが進み亀裂や剥落が著しい状態になっているものが見られます。これらの革装丁本に対して、背表紙にある箔押しのタイトルや装飾を出来るだけ生かして修理を行いたい、というご相談をいただきます。

 

背ごしらえをし直す、表紙を再接合するといった構造的な修理を行うために、一時的に背表紙を取り外す場合がありますが、劣化した革は大変脆くなっているため、崩さずに現状を維持したまま取り外せるよう、あらかじめ養生の処置を行います。まず、革装部分には前処置としてリタンニング処置[※1]を行います。その後、でんぷん糊で和紙を貼って、ひび割れた表面を仮止めし養生します。乾燥した後、養生の和紙を支えに箔押しの状態を確認しながら、隙間にスパチュラを差し込んで取り外していきます。構造的な修理が完了した後は、背表紙を貼り戻し、養生の和紙はイソプロパノール水溶液で湿りを入れて取り除きます。欠失部分は染色した和紙で補い、オリジナルの背表紙を最大限生かして、見た目にもなじむように仕上げます。

 

レッドロットが著しく、オリジナルの背表紙が生かせない場合には、新規の背表紙を作成する修理も行います。

 

[※1]リタンニング処置: アルミニウムトリイソプロピレート、ベンジン、エチルアセテートを混合したリタンニング(re-tanning)溶液を塗布する処置。レッドロット現象が起きている革装部分に水分が入ると、黒く変色したり表面が硬く変質する。この前処置を行うことで、糊や水分のある材料を革装部分に使用してもシミや変色が残りにくくなる。

 

【関連リンク】革装丁本への保存修復処置事例

学習院大学図書館様所蔵「華族会館寄贈図書」資料に対する保存修復処置事例

立教大学図書館様所蔵 洋装貴重書に対する保存修復手当て ―3年間をかけて段階的に洋装本500点を― 

「表紙の外れた革装丁本は、どのように修理するのですか?」—ご質問にお答えします。

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2019年11月29日(金)社内の人材育成の一環で、ブック・コンサベーションのレッスンを行いました。

営業部門と修理部門スタッフのスキルアップを目的に、ブック・コンサベーションのレッスンを行いました。

 

座学により製本の歴史や製本形態・構造、綴じや構造上の違いによる損傷要因・素材について学び、書物に関する知識を深めた後は、コンサベーション・バインディング(conservation binding)の代表的な方法の一つであるリンプ・ペーパー・バインディングを作製しました。基礎知識の習得だけで終わらない、理論に裏付けられた考え方や修理技術の習得を心掛け、損傷した資料に対する処置方法や資料を取り扱う際の留意点を再確認しました。

 

営業部門のスタッフにとっては、その作業工程を経験してみないとわからないことも多く、今回の研修で、実際に見て、触って、体感的に学ぶことで、資料の多角的な見方を身に付けることができました。バリエーションに富んだ手法の中から目的に合った、的確な保存方法や処置方針をお客様へ提案できるように、今一度、共通項目を確認する有意義な場となりました。

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2019年11月22日(金)【写真油絵】を安全に保管する方法についてお客様よりご相談を受け専用保存箱を作成した。

ご相談を受けた写真油絵には、経年劣化の影響と見られる写真乳剤面の剥離が全体に広がっており、微量の風圧でさらに剥離が広がる恐れがあるほど深刻な状態だった。この剥離の進行を食い止めつつ、将来起こりうる劣化を視野に入れ、作品を取り巻く環境を整える予防的保存措置のため専用保存箱を試作し、その検証・評価を行った。

 

【写真油絵とは?】

 

写真油絵は白黒写真を油絵具で着色した絵画で、明治中期にごく一部の写真撮影技師によって製作されていた。その技法は写真印画紙から台紙の紙を削り取り、画像が写された乳剤面の薄い層に裏側から油絵具で着彩する繊細で高い技術を必要とし、継承者が途絶え失われてしまったために現存する作品数は非常に限られている。

 

保存箱の試作を行うにあたり、作品が保管される環境や条件に応じて、以下の2点を考慮しながら、個別かつ適切に対応することが必要だった。

 

・環境の温湿度変化による写真乳剤面の剥離、酸化性雰囲気による劣化の進行を防止すること。

 

・作品の出し入れの際に写真画像が擦れることなく、また、収納品への風圧防止策を施すこと。

 

保存箱の形状は、作品を物理的に安定した状態で平置き保管でき、強度面でより適しているシェル型とした。また、環境の温湿度変化による写真乳剤面の剥離の進行を防ぐため、保存箱の素材にはプルーフ加工のアーカイバルボードを使用し、身と蓋の内側に汚染ガス吸着シートGasQ®と3Fボードを貼り込む新きりなみ仕様にした。新きりなみ仕様は、写真材料に有害な汚染ガスを取り除き空気質を整えるためのガス吸着機能とともに、箱内の相対湿度を安定させる緩衝性を持ち、室内よりその変動幅を抑え、環境要因からくる収納物の劣化を最大限に抑制できる。

 

保存箱の構造は、破損や擦りキズ等の物理的損傷から作品を保護すると同時に、開閉の際に生じる風圧の影響を受けないような仕組みを検討した。

 

まず、蓋の開閉時に箱内部にどのように風が吹き込むかを検証した。ダミーの絵画表面に小さく断裁した薄葉紙を等間隔に並べ、箱の開閉を行った際の薄葉紙の動きを観察した。すると開閉で生じる僅かな風圧で薄葉紙が舞い上がったため、やはり風圧から絵画表面を保護する工夫が必要だと判断した。

 

耐風圧の仕組みとして、アクリル製の中蓋を箱内に設置する構造を検討した。中蓋は横から差し込み、静電気の影響がないよう絵画表面から十分な間隔を設けた。絵画表面の状態を目視しながら開閉でき、作品の出し入れも容易に行える。再度、薄葉紙を並べ風圧の影響を検証したところ、良好な結果を得た。

 

劣化した写真油絵に対して、ストレスを与えることなく安全に保管できる専用保存箱の設計仕様が固まった。

 

【関連リンク】
◆シェル型保存箱の用途例
2017年8月17日(水) 厚くて重い大型洋装本にはブックシュー構造のシェル型保存箱をお勧めします。

 

◆新きりなみ仕様の保存箱の用途例
2019年5月15日(水)NPOゲーム保存協会様からのご依頼でフロッピーディスクを長期保管するための専用容器を作成した。

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2019年11月12日(火)第21回図書館総合展がパシフィコ横浜で開催されています。期間は11月14日(木)まで。

資料保存器材は2019年11月12日(火)~11月14日(木)の期間中、パシフィコ横浜で開催される第21回図書館総合展にブースを出展しています。

 

今年も、国産の保護紙(長期保存用中性紙)を製造・販売する(株)TTトレーディング社と並びで出展し、「素材と品質~素材からアーカイバル製品」まで流れの中で展示をご覧いただけるブースとなっております。

 

アーカイバル容器部門では、ご好評いただいております「ドライクリーニング・ボックス」、無酸素パック「Moldenybeモルデナイベ®」、汚染ガス吸着シート「GasQガスキュウ®」、「新薄葉紙Qluminくるみん™」などの機能性保存用品のほか、さまざまな形状や用途のアーカイバル容器も多数出品し、導入事例も踏まえて紹介しております。また、開催期間中は修理部門のスタッフも常駐しております。資料修理に関する質問はもちろん、保存方法の悩み、費用や期間など、ぜひお持ちの資料の画像をご持参いただき、お気軽にご相談ください。

 

皆様のご来場をお待ちしております。
■ 株式会社資料保存器材 出展ブースNo.40

 

【第21回図書館総合展 開催概要】
会期:2019年11月12日(火)~11月14日(木)
会場:パシフィコ横浜 ホールD、アネックスほか

 

★入場無料、図書館・情報流通に関心をお持ちの方はどなたでもご来場いただけます。来場者情報登録のために「招待券」(企画一覧・フォーラム時間割表を兼ねる)を発行しております。「招待券」は会場入口においてありますので、手ぶらで来ていただいても大丈夫です。

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2019年11月7日(木)東京造形大学附属美術館様の所蔵品、絵本作家小野かおるの立体作品の保存箱を製作しました

作品はレリーフがほどこされた円盤の上にオブジェがのる構造で、円盤にはオブジェをはめ込み固定するための金属製の支柱がついています。円盤は木製の土台に樹脂や金属粉などを複合的に組み合わせて成形されたもので、重量が10kg程あります。オブジェは円盤から外され薄葉紙で養生・梱包し別置保管されていました。

 

現状は展覧会後の輸送梱包のまま、エアキャップと茶段ボール製に入れられ荷造り用の梱包バンドで括られている状態で、作品をアーカイバル容器へ入れ替え、重量のある作品の円盤を縦置きで保管したいというご要望のもと保存箱の仕様を検討しました。

 

保存箱は、台差し箱をベースにマジックテープ留め具をつけた縦置きでも蓋が開かないような構造にしました。箱内部には、文化財保護用のフォーム材 AZOTE® (プラスタゾート)を円盤の形に沿うようカットし、前後左右の要所で作品を固定できるように設置。縦置きしても作品の重量を分散できるような仕組みです。また、作品を取り出しやすいよう手を入れられる空間もつくっています。さらに内蓋には、プラスタゾートで作成したスペーサーに穴を開け、蓋を閉める際に円盤を押さえつつ金属突起部分が干渉しないよう工夫しました。円盤を内蓋でしっかり押さえられるので、振動により箱の中で動くこともなく、繊細なレリーフを守ります。

 

重さがあり、平置きで重ねて収納することが難しい作品も、縦置きできる構造にしたことで、収蔵庫に効率よく収納できるようになりました。

 

 

【関連リンク】

東京造形大学附属美術館様

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2019年11月1日(金)松竹大谷図書館様が所蔵する映画スクラップ帳のデジタル化に伴う解体・簡易補修を行いました。

公益財団法人松竹大谷図書館は、1958年に開館した演劇・映画専門の私立図書館です。歌舞伎や演劇・映画に関する資料約48万点を無料で一般公開しており、所蔵する資料の保存・活用、施設の保全・運営のための資金を募るクラウドファンディングプロジェクトを2012年より毎年継続して行っています。

 

2017年のクラウドファンディング「第6弾 歌舞伎や映画、銀幕が伝えた記憶を宝箱で守る-映画スクラップ帳の保存プロジェクト-」では、弊社がオーダーメイドで制作したアーカイバル容器を導入しています。

 

映画製作当時の記事や写真が貼り込まれた映画スクラップ帳は、作られた年代によって劣化状態に差があり、特に戦前から昭和27年までに製作された映画のスクラップ帳は、紙質が悪く、経年劣化によって表紙から内部まで傷みが進んでおり、保存が大変難しい状況でした。そこで、今回、今後の利用でさらに破損が進む恐れがあるスクラップ帳の中から、松竹京都製作作品を対象に、文化庁が進めている「アーカイブ中核拠点形成モデル事業(撮影所における映画関連の非フィルム資料)」に申請、これが採択され資料の保護と活用のためのデジタル化を行うことになりました。本事業で弊社はデジタル撮影する前のスクラップ帳の解体・復元、簡易補修といった処置のご依頼を受けました。

 

お預かりした映画スクラップ帳は、新聞の切り抜き記事や写真のほか、大型ポスターなども貼りこまれ、重なったまま貼られている箇所は情報が見えない等々–、そのまま撮影するには困難な状態でした。そこで、必要な見開き具合を確保するための解体処置と、重ね貼りの箇所は一度はがし位置をずらして再度貼り込み、閲覧可能な状態にする処置を行いました。また、撮影者が取扱いに支障がなく安全な撮影ができるよう、破損しやすい箇所を和紙で補強したり、利用による劣化防止のため簡易補修も行いました。

 

弊社でお預かりしている映画スクラップ帳の処置の様子を松竹大谷図書館武藤様、井川様が見学され「松竹京都映画スクラップの補修見学@資料保存器材工房」として、同館のクラウドファンディング新着情報でご報告しています。処置を終えた映画スクラップ帳は株式会社インフォマージュでデジタル化撮影を行い、さらに弊社で元のスクラップ帳の形態へ綴じなおす復元作業を行います。作製したデジタルデータは今後、通常の館内での閲覧や、Web公開などの活用を検討されているそうです。

 

【関連リンク】
組み立て式棚はめ込み箱

タトウ式保存箱

汚染ガス吸着シートGasQガスキュウ

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2019年10月25日(金)会社案内のパンフレットを作製しました

このほど新たに会社案内のパンフレットを作製いたしました。これまでホームページにのみ掲載していた、当社事業のご紹介を目的とした内容で、製品カタログやリーフレットをひとまとめに収納するためのポケット付きの見開きタイプになっています。

 

印刷用紙の選択やロゴエンボス、差し込み仕様など、当社の担当スタッフが打合せを重ねて厳選しました。中でも注目していただきたいのは、全体のデザインならびに撮影、印刷加工をご協力いただいた株式会社タイタン・アート様による見開きページのイラストとデザインです。私たちの日常の仕事風景が投影されており、当社にお越しになったことのある方はもちろん、「今日の工房」をご覧いただいている皆さまにもお馴染みのシーンや製品、機材が描かれています。当社の雰囲気を感じていただだけるような、私たち自身も見ていて楽しいパンフレットです。ぜひそちらも注目してご覧ください。

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2019年10月16日(水)文化財防虫防菌処理実務講習会に出展しました

10月10日、11日の2日間にわたり公益財団法人文化財虫害菌研究所主催、文化庁後援による「第39回文化財防虫防菌処理実務講習会」が日本教育会館中会議室にて開催されました。講習会では、文化財の保存と活用、文化財IPMと防災のあり方、各展示収蔵施設における文化財の保存管理、環境把握、虫・菌害の防除対策等をテーマとして計8つの講義が行われ、一般の文化財保存管理者をはじめ、文化財に関する生物被害防除業務に携わる100名以上の方々が参加されました。

 

機器展示の弊社ブースではアーカイバル容器空気清浄機付「ドライクリーニング・ボックス」無酸素パック「Moldenybe®モルデナイベ」汚染ガス吸着シート「GasQ®ガスキュウ」新薄葉紙「Qlumin™くるみん」を展示しました。また、弊社代理店IPMサポート株式会社の新商品「IPMトラップ※意匠登録出願中」を参考出品しました。IPMトラップは文化財害虫の侵入状況を調査するための粘着トラップです。従来の同等品に比べて組み立てが簡単、小型で設置しやすく、正面と側面がフラップレスのため害虫が入りやすい構造であることが大きな特徴です。記入欄もあるので設置場所、設置日時を書き込む事もできます。本製品のお問い合わせは下記まで。

 

IPMサポート株式会社
〒299-4502 千葉県いすみ市岬町中原422
TEL:0470-64-6824
FAX:0470-64-6825
email: t.hasegawa[@]ipm-s.co.jp

 

弊社ブースにお立ち寄りくださった方々に心より御礼申し上げます。

 

【関連情報】
『スタッフのチカラ』2015年12月2日 資料に付着した汚れやカビのドライ・クリーニング

 

『今日の工房』2014年09月26日 カビが発生した資料のクリーニング 

 

『今日の工房』2019年6月19日 共立女子大学図書館様の貴重書1900点のカビ被害のクリーニングから保存容器収納まで 

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2019年10月9日(水)先月の台風15号による被災資料への各地の資料保全ネットワークの活動について

2019年9月9日の台風15号により、千葉県を中心に大きな被害が出ております。被災されました多くの方々に心よりお見舞い申し上げます。また復旧・復興のためにご尽力されている方々に深甚の敬意を表し、一刻も早い復旧を祈念いたします。

 

千葉県内の文化財関係の被災状況については、千葉歴史・自然資料救済ネットワークのブログに情報が掲載されております。現在、各地の資料保全ネットワーク関係者、地域の大学・博物館・資料館・文書館などに所属する研究者によって状況調査が進められており、被害対応や緊急支援をはじめとした手立てを講じるとともに、各資料ネットワーク間で情報共有が図られています。

 

私どもでは、目下、情報を収集しているところですが、今後、緊急支援・一時保管などの事態が発生した場合には状況また要請に応じて可能な支援を実施できればと考えております。

 

【関連情報】

千葉歴史・自然資料救済ネットワーク 

神奈川地域資料保全ネットワーク

東京大学千葉演習林 

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2019年10月2日(水)企業史料協議会様主催 第13回資料管理研修セミナー「紙資料の保存、修理について」が弊社にて開催されました

9月20日、企業史料協議会様主催の第13回資料管理研修セミナー「紙資料の保存、修理について」が弊社にて開催されました。弊社での開催は2015年9月以来4年ぶりで、各機関よりアーカイブご担当者様など16名の方にご参加いただきました。今回は、修理(コンサベーション)、アーカイバル容器製造、営業の各部門がこれまでの経験をもとに「企業アーカイブにおいて資料に最適な保存対策を決定し、実践していく」過程において判断の一助となるようなプログラムをめざし、下記のような内容で見学会を行いました。

 

■修理(コンサベーション)部門

・近現代紙資料の劣化とその特徴
 新聞、原稿、ポスター、図面などを例に、劣化損傷の要因とその修理技術や保管方法について

 

・資料のデジタル化とそれに伴う処置
 台紙に貼られた写真、スクラップブックなどをデジタル化する過程で必要な撮影前と撮影後の処置について

 
・資料調査から処置への流れ
 保存処置方針の組み立てに必要な情報を得るため、まず資料全体を調査し、処置の方針を固めていく工程を紹介

 

■アーカイバル容器製造部門

・なぜアーカイバル容器が必要か
 長期保存のための容器に求められる品質、条件について

 

・アーカイバル容器を選ぶ際の考え方
 実際に容器を検討する際に、どういった点に配慮すべきかについて

 

■営業部門

・導入事例紹介
 企業アーカイブ様から多くご相談をいただく写真アルバムへの修理と資料整理に適した保存容器の事例
 それぞれのお客様の抱える問題やご要望に沿った過不足ない提案、導入までの経緯とその効果を紹介

 

質疑応答では多くのご質問をいただき、皆様の熱意、資料に対する真剣な思いがあふれるような会となり、私たちも大いに刺激を受けました。
また、資料保存について個々の処置にとどまらず「全体をどのようにとらえ進めていくか」という視点で見学会を行ったのは弊社にとって初の試みで、多くの学びを得ることができました。
この機会をくださいました企業史料協議会様、事例紹介をご快諾いただいた企業各位、参加者の皆様に心より御礼申し上げます。

 

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2019年9月25日(水)これから開催される講習会やワークショップで、弊社スタッフが講座を担当します。

これから開催される講習会やワークショップで、弊社スタッフが講座を担当します。

 

一橋大学社会科学古典資料センター
第39回西洋社会科学古典資料講習会

 

特定非営利活動法人映画保存協会
映画の復元と保存に関するワークショップ

 

独立行政法人国立女性教育会館
2019年度 アーカイブ保存修復研修(基礎コース)+(実技コース)

 

講座をお引受けするにあたり、時には主催者様を工房にご案内して、弊社の行う仕事全般をご覧いただきながら打ち合わせを重ねます。昨年に引き続きご依頼いただいた研修やワークショップも、より充実した内容をお届けできるようアンケート結果や事前にお寄せいただいた資料保存に関する質問や悩み事を参考にブラッシュアップしていきます。実際に手を動かして作業していただくワークショップの材料も十分な数を揃え準備中です。
それぞれの講座ごとに、参加者の皆様が普段抱えていらっしゃる資料保存に関する疑問や課題の解消に役立つ時間となることを目指しています。
皆様、どうぞご参加ください。

 

 

【過去に開催された講習会、ワークショップ等】

2018年12月19日(水)国立女性教育会館での保存修復研修の満足度は100%との評価を頂きました。

 

2018年10月10日(水)私立大学図書館協会の和漢古典籍研究分科会で補修実演講座を担当しました。

 

2017年12月7日(木) 国立女性教育会館主催の保存修復研修実技コース後のアンケートで、さまざまなご感想、ご意見をいただきました。

 

2017年9月6日(水)映画の復元と保存ワークショップで「ノンフィルム資料の保存と修復」実習を行いました。

 

2016年12月7日(水) アーカイブ保存修復研修では、金属腐食による小冊子の綴じ直しやハードカバー本の表紙の付け直しを実習していただきました。

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2019年9月18日(水)修補の際は、色々な厚みの和紙を使い分けています。

修補の際は、本紙の厚みによって使用する和紙の厚みを調整しています。例えば、重量のある本の背ごしらえや、厚みのある表紙の欠損箇所の補填には厚手の和紙を用いたり、破れの修補を行う際には、薄手の和紙を使用することで修補箇所に厚みが出ないようにしています。

 

また、紙力が低下した資料で表面に文字が記載されている場合は、文字情報を生かしつつ、取り扱いに支障が出ないように極薄の和紙を使用して表打ちや裏打ちを行うなど、本紙の厚みだけではなく、目的によって使い分ける場合もあります。この他にも、数種の和紙を貼り合わせて必要な厚みを出したり、本紙の質感によっては、楮以外にも、雁皮や三椏を原料とした和紙を使うこともあります。

 

数ある和紙の中から、本紙の厚みや質感、損傷具合、利用用途などに応じて最適なものを選択しています。

 

【関連情報】
『今日の工房』2019年8月22日(木)明治大学平和教育登戸研究所史料館様が所蔵する終戦時に書かれた女学生の日誌の修理とデジタル化を行いました。

 

『今日の工房』2018年7月18日(水)紙力が著しく低下したものの薄葉紙での裏打ちは、噴霧器での糊さしと不織布の補助で。

 

『今日の工房』2017年9月20日(水)本紙の破れを修補するときの道具・材料とセッティング

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2019年9月12日(木)日本初開催の国際博物館会議「第25回ICOM京都大会2019」に出展・参加しました。

9月7日、 第25回ICOM(国際博物館会議、以下ICOM)京都大会2019 が閉幕いたしました。国内では初開催となり120の国と地域から4,590人の参加者が集まりました。

 

先週お伝えしました通り、弊社はALOZ日通商事 様と日本通運美術品事業部 様とのコラボブースを出展しておりました。お越しくださいました皆さま、誠にありがとうございました。

 

今回、弊社はアーカイバル容器と機能性保存用品の2つを軸にブースを展開いたしました。

 

保存容器については「日本の職人技」をアピールすべく、マグネット留め具付きの棚はめ式保存箱や軸受け付きの巻子台差し箱など、丁寧な造りと細部にまでこだわったものを展示いたしました。

 

保存用品のコーナーでは、活性炭の使用が主流である欧米では類のない汚染ガス吸着シート「GasQ®ガスキュウ」の性能比較展示を行なったり、美術品梱包・運搬に特化した専門家による仏像梱包のデモンストレーションと併せて新薄葉紙「Qlumin™くるみん」をご紹介いただくなど、ICOMならではの企画展示をすることができました。

 

国際会議というだけあり、来場者にはアジアや欧米など外国からいらした方々が多くお見えになりました。このような機会で新たなご縁が生まれるのは喜ばしいことです。はるばる遠方からいらしたお客様にとっても何か「気づき」を得る機会となったならば幸いです。私共も自分たちの活動を紹介し海外の専門家と交流することで様々な新しい発見があり、海外展開の可能性が広がりました。

 

最後になりましたが、ICOMへの出展、コラボブースの実現にはALOZ日通商事様、 日本通運美術品事業部様の多大なるご協力をいただきました。
ここに御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 

Thank you for visiting our booth at ICOM2019 Kyoto. The Museum Fair and Exhibition was a great success and it gave us the opportunity to showcase our full latest products. We were so happy to see so many people coming to our presentation and we appreciate everyone stopping by our exhibition booth during the conference.

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2019年9月5日(木)第33回日本看護歴史学会学術集会に出展致しました。

8月31日(土)、9月1日(日)の2日間、日本赤十字看護大学広尾キャンパスにて第33回日本看護歴史学会学術集会が開催され、当社はブース出展致しました。

 

この学術集会は、看護の歴史の研究と交流を目的として、日本看護歴史学会が設立された1987年から毎年行われているそうです。今回の学術集会では、会員数約350名中、245名が参加され、講演や交流セッションでは様々な討論が熱心に行われており、参加された方々の熱意を感じることができました。

 

当社は初めての出展で、これまで接点がなかった方々とお話をすることができました。当社のことを知っている方は少なかったのですが、「寄贈を受けた資料にカビが生えていたが、どうしたらよいか?」、「破損してしまった本は直すことはできるのか?」「資料を移動する際はどのようなことに気を付けたらよいか」など具体的な相談もいただき、事例を交えながら説明を致しました。

 

お立ち寄りいただいた皆様に御礼申し上げます。

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2019年9月2日(月)第25回ICOM(国際博物館会議)京都大会2019が始まりました。

9月1日から第25回ICOM(国際博物館会議)京都大会2019が始まりました。国立京都国際会館をメイン会場に、世界141の国と地域から3000人を超える博物館の専門家が一堂に会し、ミュージアムとミュージアムの専門職が抱える様々な課題をテーマに議論が交わされます。9月1日(日)~ 9月7日(土)の本会議期間中には京都市内各所でイベントも開催されます。

 

また、京都国際会館会場では9月2日(月)~4日(水)の3日間にわたりミュージアムや文化に関わる多彩な企業・団体およそ200ブースが出展する「ミュージアムフェア」が開催され様々なパフォーマンスやワークショップ、セミナーが行われます。

 

今回、資料保存器材はミュージアムフェアに参加し、弊社製品の代理店となるALOZ日通商事日本通運とのコラボブースを出展しています。貴重な美術品や文化財の梱包から国内外輸送まで手掛けるプロフェッショナルな技術と日本の高品質な文化財保護用資材をご覧ください。

 

国立京都国際会館イベントホールE04ブースにて、皆さまのご来場をお待ちしております。

 

Are you at #ICOM2019 in Kyoto? drop by our booth E04 in the event hall, for conference specials & to chat with us! We are confident that this ICOM meeting will be precious opportunity for all of us to share information and experience.

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2019年8月28日(水)社員研修としてアーカイバルボードの製造工場「特種東海製紙三島工場」に行ってきました。

株式会社TTトレーディング特種東海製紙株式会社のご協力のもと、弊社製保存容器に使用しているアーカイバルボードを製造している特種東海製紙株式会社三島工場とPam(Paper and Material)を見学させていただきました。三島工場ではアーカイバルボードなどの保護紙以外にも、通帳用紙・医用包材・食品包材などの特殊機能紙、ファンシーペーパーや高級印刷紙などの特殊印刷紙が製造されています。

 

はじめに、特種東海製紙株式会社三島工場管理部の方から会社概要をご説明いただき、製紙工場内部を見学するための準備を整えた後、大小様々な抄紙機が稼働する工場内へ。製造・品質管理部の方々のご案内で、パルプ原料の調整工程から大量の水を使う抄紙工程、プレスパートと呼ばれる乾燥工程を経て品質確認、加工、梱包される工程を見学しました。工場内では安全面や効率面などでも色々な工夫がされていました。また、工場内で使われた水はきれいに浄化され河川に戻すという仕組みだそうです。ここで除去された汚泥物は工場内で燃やし、その熱を利用して発生させた蒸気は紙を乾燥させるために使われ、燃やされた汚泥物の灰は、レンガやブロックとして再生され建設資材に使われるそうです。洋紙の製造工程を真近に体感できたとても貴重な機会でした。工場スタッフの方からご教示いただいた中で、特に感銘を受けたのは紙の品質管理についての解説でした。

 

『特殊紙の品質は一般紙に比べよりクリーンである事が求められます。高品質な紙の製造には水質のきれいな水が不可欠です。三島工場では紙を製造する全ての工程で使用する水に、工場内の地下を流れる富士山の伏流水を使用しています。50年以上をかけて地下でろ過された伏流水は、不純物が極めて少ない(キレイ過ぎて飲用としては味気ない程)高純度の状態で取水され、三島工場で製造されている特殊紙の品質を支えています。』

 

特殊機能紙を製造する抄紙機は、クリーン棟と呼ばれる異物や虫の侵入を防ぐための設備を完備した施設で稼働しており、作業員の出入りを最小限に抑えるため製造工程がオートメーション管理されています。”特種”な美しい紙がうまれるためのタネは、きれいな水と徹底した衛生管理に秘密がありました。

 

続いて特種東海製紙Pamを訪問しました。特種東海製紙Pamでは創業以来製造されてきた様々な特殊紙が収蔵・展示されており、こちらは営業部の方々の解説でご案内いただきました。時代のニーズに応じて開発された特殊紙や貴重な紙製品、多彩なファンシーペーパーの美しさに触れながら、紙づくりの高い技術と品質について学ぶことができました。普段、紙だったと気が付かないほど無意識に紙製品に囲まれていることも実感できました。

 

見学に際し、ご協力いただきました特種東海製紙株式会社社員の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

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2019年8月22日(木)明治大学平和教育登戸研究所資料館様が所蔵する終戦時に書かれた女学生の日誌の修理とデジタル化を行いました。

明治大学平和教育登戸研究所は戦前に旧日本陸軍によって開設された研究所で、現在は明治大学生田キャンパス内の一画に資料館として、当時の登戸研究所の活動や研究内容を中心に公開しています。

 

今回修理のご依頼を頂いた資料は、群馬県立前橋高等女学校に在学中、登戸研究所で研究開発した風船爆弾の製造に動員された女学生の日誌で、弊社へご依頼頂いた経緯や資料の概要について、資料館のご担当者様より、ご依頼の経緯と資料の概要について、以下のようなコメントをいただきました。

 

[ご依頼の経緯、資料の概要]
原蔵者の方は、昭和19年に2年生だったそうなので、終戦時の年齢は15,6才位でしょうか。当時は学校へ行っても、勉強はほとんどできず、毎日農家の手伝いや軍需工場に動員されていました。この原蔵者の場合、ある日突然、学校自体が風船爆弾の工場となり、女学生が分担してつらい作業をさせられることになったそうです。

 

今回修復していただいた史料はそうした動員作業など当時の学校生活について記した日誌3冊のうちの一冊です(他の2冊は紙質はよくないものの比較的状態がよい)。ノートにその日の作業内容や感想などを書き、学校の先生に渡して報告していたそうです。ところどころ、赤ペンの書込みがありますが、赤ペンは先生が記入したものだと言う事です。

 

補修した史料は8月15日前後の日誌で、この時期風船爆弾製造作業はしていなかったようですが、終戦当時の状況や女学生の心情が記されている貴重なものです。風船爆弾は登戸研究所で研究開発したもので、直径10mの和紙製気球に爆弾を付けてアメリカ大陸を攻撃する兵器です。その和紙の貼り合せなどには、日本全国の女学生などが動員され、学校が製造工場になった所も多かったそうです。

 

約一万発が打ち上げられ、一割位がアメリカ大陸に到達したと推定されています。風まかせで飛ぶので、多くは砂漠や山に落ちて山火事程度の被害しか与えられませんが、山に不時着した風船爆弾にたまたまピクニックに来ていた子供達が触れて6名の犠牲者が出ています(アメリカ本土ではこの戦争による唯一の犠牲)。

 

原蔵者は8月15日に敗戦を知り、くやしい気持ちを激しい調子でこの日誌に綴っています(「悔しさと敵愾心で胸がかきむしられる」「血も涙もないヤンキー」「きっと仇をとる」など)。軍国主義の教育を受けた当時の女学生としては、一般的な心情だったようです。ですが、十数年前風船爆弾に関するテレビの取材を受けた時、自分たちが作った風船爆弾で子供を含む6名の方が亡くなったことを初めて知り、大変なショックを受けたそうです。以後、自分は戦争の被害者というだけはなく加害者でもあると、風船爆弾製造に動員された時のことを積極的に後世に伝えるようとされています。

 

今回修復した日誌はこの「8/15」の記載があるため、あちこちへ持ち出して見せたり、読み聞かせたりしていたようです(取材をうけたテレビ番組でもボロボロの状態なのに丸めて、当該箇所を示す様子が写ってました)。そのため元々3冊の中でも一番紙質が悪かったのにさらに状態を悪化させてしまったのかもしれません。そのため、今回この日誌の修復をお願いした次第です。

 

[資料の状態]
形態はパルプ紙を基材としたA5サイズのノート。ほとんどが鉛筆書きによるものだが、所々に赤ペンによる書き込みが見られる。酸化・酸性化による紙力の低下が著しく、特に全ページにわたって見られる水損による染みの箇所の傷みが顕著で、既に欠失している箇所も多数あり、現状は頁を捲るのも困難な状態である。

 

[処置概要]
今後の利用や展示などへの活用を踏まえ、取扱いに支障がなく、閲覧可能な状態になるよう処置を行い、デジタル撮影(担当は株式会社インフォマージュ)もあわせて行った。具体的には資料の紙力強化をはかるため、一枚の本紙に対して表打ちと裏打ちの両方を行った。その際、文字情報をできるだけ阻害しないよう、極薄の和紙(3.6 g/m2)を用いて行った。また、酸性劣化の進行を抑制するため、Bookkeeper法による非水性脱酸性化処置を行った。

 

デジタル撮影は処置後に行ったが、元々本紙の文字が鉛筆書きで薄く、本紙の茶褐色化により現状でも読みにくい状態ではあったが、処置後はさらに表打ちにより文字が読みにくい状態となったため、デジタル画像上で文字を強調する画像加工も行った。

 

処置後の資料は、原本は資料館様で保存され、加工データからのコピーは原蔵者様にお渡ししたとのことです。

 

原蔵者の方は思い入れのある日誌がボロボロになっていくのを気にしていらっしゃったそうで、処置後の資料を見て、大変きれいな状態になり、コピーも大変読みやすいとご満足いただいたとのご感想いただきました。

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