中国古籍の修理 ― コンサーバターのために (9)
デヴィット・ヘリウェル
(福島 希 訳) 2009/01/08
<紙の修補>続き
3 特定の種類による損傷の修補
3.1 虫やネズミによる損傷
3.1.1 原因
虫やネズミの被害に遭うのは環境の悪い書庫が原因である。例えば、空気の循環が悪い場所や日光が充分に当たらない場所に本を置いておくと、遅かれ早かれ虫が発生する。これは特に湿度の高い中国南方地域で見られる。北方地域は乾燥しているので、この問題が生じることは少ない。しかし、本というのはネズミにも狙われやすいので、本を保管している場所に虫やネズミを発生させないように、最大限の注意を払わなければならない。そうしないと、どんなに良い状態の本でも、すぐに穴だらけになってしまう。その場合は、損傷の程度によって適切な修補の方法を採る必要がある。
3.1.2 準備
まず慎重に選んだ古い紙と均一な濃度の薄糊を作業台に準備する。糊用ボードを2つ用意し、1つは作業台の左上に、もう1つは自分の手元に置く。本を解体し、書葉の束を糊用ボードの右側に置く。本が非常にもろかったら、本に紙を被せておく。こうしておくと、不注意によって書葉が風で飛んだり、動いたりすることがない。
3.1.3 書葉の端にある虫損
書葉はテキスト面を下にして糊用ボードに置く。もし虫の糞が虫損部周辺に付いていたら、小さな刃物で削ったり、紙やすりで軽くこすったりして、テキストに損傷を与えないようにしながら除去する。そうすると、虫損箇所周辺の紙の繊維が見えてくるだろう。筆を右手に持ち、薄糊を薄く均等に付ける。この時の糊の量は多すぎないようにして、それを広すぎない範囲に付けなくてはならない。次に、糊付けした部分の上に左手で紙を置く。もし虫損がとても大きかったら、修補に使う紙の簾の目を書葉の簾の目に合わせるようにすると、修補が終わった時に、書葉が引きつれを起こすことなく平らに仕上がる。
3.1.4 縁用の紙
書葉の縁を修補する時は、色合いの調和を取るために古い紙の縁を使うと良い。長い間光が当たったことにより変色した本の縁は内側と同じような色合いではない。そのため、修補に使う紙が紙の内側に合った色であったとしても、それを縁の修補に用いると調和が取れず、資料の美しさを損なうことになるだろう。このことには充分に注意しなければならない。
3.1.5 書葉の中心にある虫損
虫損の修補に新しい紙を使用するなら、まず繊維を出すように紙の端を破る。虫損の周囲に薄糊を付け、左手に修補用の紙を持って糊を付けた部分に紙の縁を合わせて置く。その部分を右手の人差し指で押さえながら、左手で紙を破る。そうすると湿った縁に沿って紙が破れ、虫損箇所の修補ができたことになる。修補用の紙が厚くて簡単に破れないならば、湿らせた筆で虫損の形に沿って線を引いて破ると良い。5、6個の小さい虫損、もしくは、かなり大きい虫損を1つ直したら書葉を軽く持ち上げ、糊用ボードに貼り付いていないかを確認する。そして残りを修補してゆく。もし虫損が書葉全体にある時は、最初に中央部分を修補し、次に地部分、右部分の順で修補する。終わったら書葉を回し、再び右部分と地部分の修補をする。これが修補するのに最も適した順序である。1枚の書葉の修補が全て終わったら、裏返して修補した部分を右の手のひらでしっかり押さえ、作業台の左上に置いたもう1つの糊用ボードに移す。そして次の書葉に取りかかる。2枚目の書葉の修補を終えると1枚目の上に重ねるが、揃えては置かない。このようにして書葉を4、5枚ずつの束にしながら、冊の全ての書葉が終わるまで続ける。
3.1.6 留意点
虫やネズミによる損傷がある書葉を修補するとなると、貴重書を扱うことも多くなる。絶えず技術の向上に努めなければならない。修補の質がよくないと、元の損傷をより酷くしたり、再修補を困難にしたりする。「優れた職人を見つけられなければ、何もしない方が良い」と古籍収集家はよく言っていたものである。また、糊は適切な濃度に調整されていなければならない。厚い紙に薄すぎる糊、薄い紙に濃すぎる糊は適していない。もし濃すぎる糊を使った場合は、紙にすぐシワが寄り、平らにするのが難しくなる。しかし、薄すぎる糊には充分な強度がない。適切な濃度の糊の調整というのは、修補の質に直接影響を与える。
虫損を修補する時は大きい欠損部から始め、次第に小さいものの修補をしていく。そうしないと紙にシワが寄って平らにするのが大変になるだろう。虫損同士が非常に近い位置にある場合は、1枚の紙で一度に修補するのが良い。それぞれを別の紙で修補しようとすると、修補紙が重なり合って部分的に厚みを増してしまうからである。
中国の書誌学では「シール」という言葉を、西洋の書誌学と同じようには使用しない。西洋では資料の真生性を示すとされる封蝋を「シール」と呼ぶ。これは例えば紐と共に文書に付いているものや、紙に直接付けられたものを表している。しかし、中国の書誌学では図書館の蔵書印のように、所有者を示すために本に付けられた赤い印章を表す。このような印章は通常、本における最初の章の最初のページにある。しかし、序文や章、冊の最初のページ全てに押されていることもある。印章が版面にあり、しばしばテキストにかかっている場合もある。古い本になると、1ページに6個もしくはそれ以上の印が押されていることがある。
印章の除去によってできた穴の修補をする時は、通常よりも一層注意深く紙の選択をしなければならない。印章は本の中で最も目に付く場所に付けられているため、修補に使用する紙と書葉の色合いの些細な違いが非常に目立つことになる。もし適切な紙が見つからない時は、書葉の綴じで隠れるような余白の一部を切り取っても良い。修補方法の1つとして、穴の周囲の繊維を小さな刃物で引き出し、修補用の紙と書葉の簾の目を合わせ、薄い糊を付けて修補するやり方がある。別の方法は、修補用の紙を書葉の簾の目と合わせるようにして穴の下に敷き、それをシナノキやポプラ、ヤナギ、または他の手に入りやすい柔らかい木でできた板の上に置く。定規で書葉を固定し、大きい針を使い、穴の縁に沿って細い線を引いていく。そうすると、穴と全く同じ大きさの修補紙を作ることができる。そして、まず修補紙と書葉を固定するために、紙片で表打ちをする。書葉を裏返し、薄い糊を穴の周囲と修補紙に付け、薄い棉紙の紙片で修補紙を留めたら、指で押さえて馴染ませる。再び書葉を裏返し、表打ちに使った紙片を取り除く。書葉にスプレーをし、濾紙に挟んで乾燥するまで2日間プレスしておく。この方法は書葉と修補紙の繊維が重ならないので、紙がうまく調和していれば、どこが修補箇所なのか分からなくなるだろう。
3.3.1 本を丸ごと乾燥させる
本が濡れた直後であれば、比較的開きやすいので解体する必要はない。台の上に本を平置きにし、竹べらで書葉を初めから終わりまで1枚ずつめくっていく。空いた作業台に本を1冊ずつ間隔を開けて載せ、日の当たらない風通しの良い場所に置いておく。本が9割方乾いたら、本を積み重ねて板で挟み、プレス機に入れるか、重石を上に載せておく。数日で本は平らになるだろう。
3.3.2 竹べらで書葉を剥がす
本が濡れてから長い時間を経ている場合は、書葉の大半が互いにくっついており、テキストが損傷する危険があるので、開くのは難しいだろう。このような場合はまず、その本が一般的なものか、それとも貴重で価値があるものなのかを確認しなければならない。一般的な本で紙力が低下していないなら、1冊ずつ手に取って両手で丸め、書葉をしなやかにした後、竹べらかピンセットを使って1枚1枚慎重にめくっていく。書葉から小さな断片が外れるようなことがあれば、その場で元あった箇所に薄い糊で付ける。このようにすると、テキストの文字は1つも欠けることがないだろう。本が貴重で価値がある場合、あるいは紙力が低下している場合は、両手で本を曲げるようなことは絶対にしてはならない。綴じを外して表紙と見返しを取り除き、書葉を1枚ずつ注意深く剥がしていく。
3.3.3 熱湯に浸けて書葉を剥がす
何らかの接着物質が含まれた水に本が浸った場合や、膠を含んだインクで印刷された書葉が濡れた場合、書葉同士がくっついて全体が固いブロックのようになることもある。このような時は乾いていても湿っていても、書葉を剥がすのが難しい。熱湯に3%の明礬(黒々としたインクの色合いを保護するため)と2%の広東膠(紙力強化のため)を加えた水溶液を作り、水溶液が完全に本に浸漬して書葉が開くようになるまで、2日間本を浸しておく。その後5、6枚ずつ濾紙に上げ、乾燥させる。修補が必要な書葉があれば、「虫やネズミによる損傷」で示した方法で修補する。
3.3.4 蒸して書葉を剥がす
上記の方法を試しても書葉を剥がすことができない時は、蒸気法を行う。まず熱湯に本を浸け、汚れのない紙で包んで竹製の蒸籠に入れる。数時間蒸すと、蒸気が書葉の間に充分に浸透して書葉をくっつけていた接着物質が緩む。肝要なのは、蒸気が浸透しているうちに書葉を剥がしていくことである。冷えるとすぐに書葉が再び固くなり、剥がせなくなるからである。この方法は薄い紙に対してはあまり効果がない。また、柔軟性を失った非常に古い竹紙にも不向きである。
適切な環境で本を所蔵していないと、時として紙が湿気を帯びて老けてしまう。書葉は開くけれども、紙力が落ちてテキストの一部が失われたり、軽く触れるだけで紙がもろく崩れ去ったりすることもある。そのような書葉には裏打ちが必要である。しかし、裏打ちの方法は虫やネズミによる損傷を受けた書葉に対するものとは異なり、使用する紙も違う。老けた書葉の裏打ちには、丈夫な棉紙の中でも薄いものを使う。まずは、糊用ボードではなく、油紙(またはポリエチレンシート)の上で、書葉に合った古い紙を用いて損傷した部分を修補する。ピンセットで書葉を注意深く持ち上げ、テキスト面を下にして油紙の上に置く。湿り気を与えるために軽くスプレーする。スプレーをする前に定規で押さえておくと、息や咳や風で飛ばされることはない。もし書葉にシワがあったり、角が折れていたりしたら、刷毛で少量の水を入れて平らに伸ばしておく。損傷箇所の修補には、書葉に合った紙と薄糊を使う。穴を修補する時は、穴の周囲によく重なるように通常よりも少し大きめの修補紙を置く。修補が終わったら、書葉全体に排筆で薄く均等に糊を塗り、書葉よりも少し大きめの薄い棉紙で裏打ちをする。両手で書葉の地部分を持って裏返して濾紙の上に置き、油紙を取り除く。書葉の上に別の濾紙を置いて両手で撫で付けたら糊用ボードの脇によけ、次の書葉も同じように処置する。
老けた紙に対する修補の別の方法は次のようなものである。作業台に油紙を固定し、濡らした布できれいに拭く。書葉のテキスト面を下にして油紙の上に置く。ピンセットを使って文字や辺欄の傷んだ箇所を整える。こういった書葉を修補する際は、排筆で糊を薄く均等に付ける。薄い棉紙を両手で持ち、書葉の天から地に向かって置く。濾紙で覆って棕櫚刷毛で撫でると、薄い棉紙が書葉にしっかり貼りつく。その後、書葉を油紙から外す。少しでも糊が油紙に残っていると、書葉を外しにくいので、その際は湿らせた刷毛で徐々に外していくと良い。
老けた紙が厚いものである場合は、文字が正しい位置にあるのか、辺欄が真っ直ぐ整っているのかを書葉の裏から判断することは難しい。このような場合は、まず濾紙の上にテキスト面を上に向けて置き、文字や辺欄をきちんと整える。その上に湿らせた油紙を載せて全体を裏返し、数回撫で付ける。濾紙を注意深く取り除くと、油紙に貼りついた書葉が作業台に残る。油紙は湿っているので、作業台に貼り付いて固定しているだろう。この後は上記の工程と同じである。
老けた紙への裏打ちに使用する糊は、薄糊である。また充分な量を軽く塗ることが大切である。力を入れて濃い糊を塗ると、刷毛で書葉が斜めに曲がったり、書葉の一部がちぎれたりする。充分な量を軽く塗れば、刷毛は書葉の表面を滑るように動く。湿気を受けてもろくなってしまった本の中には、裏打ちを適切に行なったにもかかわらず、テキスト面の紙の繊維が膨らんで紙全体がふかふかしたようになり、本の美観を損なっている場合がある。こういった時は2%の広東膠を薄糊に混ぜたものを、書葉の表面に排筆で塗れば解決できる。書葉が乾いたら、本来の柔軟性が戻り、完全に平らになるだろう。
3.5 もろい紙
本が煙や熱にあたったり、むきだしのままで書棚や机に置かれて長い間外気に晒されていたりすると、触っただけで壊れるくらいに紙がもろくなる。深刻な場合には、書葉がまるで乾燥した煙草の葉のようになる。このような損傷を修補する場合は、もろさの程度によって異なった方法が用いられる。
3.5.1 少しもろくなっている場合
もろさを取り除くために書葉に水を与える。水を与えると紙は柔らかくなり、損傷のある書葉に対して軽微な修補を行うことができる。繰り返しになるが、書葉を水に浸す前にはインクのチェックを必ず行なわなければならない。
3.5.2 非常にもろくなっている場合
老けた紙に裏打ちをする場合と同じ方法で行うことができる。まず書葉に合った紙で修補を行い、それから裏打ちをする。裏打紙は薄くて質の良い棉紙を使う。作業には漆を塗った裏打ち用テーブルが最も適しているが、それがない場合はニスを塗った板を作業台に載せて使っても構わない。作業台が手狭で充分な空間がない時は、書葉を開いて1枚ずつ紙に挟んで重ねていく。ニス塗りの板の上に縦10センチ、横幅は書葉よりもやや広く、強度のある紙(油紙またはポリエチレンシートでも良い)を置き、その上に書葉を載せる。下に敷く紙は常にきれいにしておく。紙片の表面に少しでも糊がついていると簡単に書葉に貼り付き、裏打紙を持ち上げてしまうからである。排筆で書葉に薄く均等に糊を塗り、裏打ちをする。両手で下に敷いた紙ごと書葉を持ち上げ、乾いた紙を上に載せる。その上に別の乾いた紙を置き、両手で撫で付ける。
もし書葉がひどく損傷を受けていたら、似たような紙で書葉全体を裏打ちし、乾燥したら書葉の裏側から表面の凹凸や不均一さを埋めるようにして、損傷箇所に紙を当てていく。
書葉の周辺はもろいが中央部分は傷みがない場合は、書葉全体に裏打ちする必要はない。薄糊と棉紙の紙片を用い、周辺部分だけを裏打ちすれば良い。周辺にのみ紙の層ができることになるため、書葉が乾いた時に中央部分との厚みの差が出るが、間紙(「間紙を挟む」の項を参照のこと)の技術を使って、二つ折りにした書葉に白い紙を挟み込むと、書葉を平らにプレスしやすい。書葉全体に裏打ちするより間紙を挟む方が良いのは、裏打ちが書葉を薄めの厚紙のように丈夫で堅くするのに対し、間紙はより柔軟性を持たせるからである。そのため、大体において間紙は裏打ちよりも好まれる。
破れたり裂けたりした書葉は、棉紙の紙片と薄糊で修補する。書葉が幾つもの断片になっていたら、まず全ての断片をテキスト面が上になるようにして置き、位置を確認しながら紙片で仮留めをする。修補をした後、書葉を再び引っくり返し、表側から紙片をはずす。紙片が乾いて簡単に外せなかったら、スプレーで軽く水を入れる。このようにすれば、書葉を歪ませることなく、つなぎ合わせることができる。
本の一部が失われている場合は、他の版の書葉で補うが、新たに補う書葉が原本よりも小さい場合がある。原本と同じ大きさにするために枠貼法か縁貼法を用いる。
3.6.1 枠貼法
辺欄に沿って折り目を付けてから、書葉の四方の余白部分を喰い裂く。左手で書葉を押さえ、右手で左から右に向かって裂いていく。四方全てを同じようにして喰い裂く。手の代わりに小さなペーパーナイフで裂いても良い。決して刃物で紙を切ってはいけない。引き出した繊維が紙の縁にあることが重要であり、それによって修補箇所が目立たなくなるからである。書葉を刃物で切ると、縁が鋭角に切れるため繊維が引き出されず、修補箇所がはっきり分かってしまう。書葉全てを喰い裂いたら、テキスト面を下にして糊用ボードに置き、薄い糊を書葉の四方の縁に付ける。その上に原本の書葉より少し大きく、同じ色合いと厚さの紙を載せる。原本の書葉の縁に沿って、湿らした筆で線を引いていく。大きめの針を使い、湿った線の内側を取り除く。そして厚い紙を乗せて両手で撫で付けると、書葉の裏側の縁にしっかりと紙が接着する。残りの書葉も同じように処置する。この方法は非常に多くの古い紙を必要とするため、古い紙が不足している時には適さない。
3.6.2 縁貼法
原本に似た紙を選び、原本の書葉を広げた幅と同じ長さで、適切な幅紙を取った紙片に切っておく。書葉の余白部分を喰い裂き、テキスト面を下にして糊用ボードの上に置く。この際、書葉を大体10枚ずつの束にして、下から上に向かって約3ミリ程度ずらして並べる。白い紙を束の上下に置き、不要な部分に糊が付かないようにしておく。ずらして置いた書葉の縁に糊を薄く塗り、上下の紙を取り除く。用意しておいた紙片を取り、下の書葉から順に貼り付けていく。全ての縁に貼り終えたら、汚れのない紙を上に乗せて両手で撫で付ける。書葉を回して、同じように他の縁にも貼り付ける。天地の縁に貼り終えたら、左右の縁に取り掛かる。最初の束の処置を終えたら次の束以降も同様に行い、書葉全てが仕上がるまで作業を続ける。縁貼法は枠貼法に比べて紙の節約になるだけではなく、作業時間も短く済む。短所といえば、貼り付けた紙片の角が修補後に書脳部に見えることである。
両面に文字のある書葉を修補する方法は、片面だけに文字のある書葉を修補する方法とは全く異なる。後者は表の文字に影響を与えることなく裏面から修補できるが、前者の場合は表と裏に違いがないからである。書葉の端周辺の文字がない所であれば、薄い紙の紙片を使って修補することができる。しかし、文字の上に損傷があったら、修補紙は文字を覆い隠すので判読しづらくなる。この問題は、1枚の書葉を2枚に裂き、それぞれを通常通りに修補したり、裏打ちしたりすることで解決できる。
書葉を裂く方法は大きさにより異なる。書葉よりも少し大きく、きめが粗い無地の白い布を2枚用意する。その布の全面に棕櫚刷毛で濃い糊を塗る。2枚の布に書葉を挟み、さらに上下に濾紙を置いて、きれいな棕櫚刷毛でしっかりと全体を圧着させる。糊が乾いたら両手で布を引き剥がす。そうすると書葉は2つに裂け、2枚の布にそれぞれ貼り付いているだろう。洗浄槽に布を浸漬すると書葉が剥がれるので、それをニス塗りの板に移して湿った刷毛で表面の糊を除去する(または初めに刃物で擦り取っておく)。その後は通常通り、2つに分かれた書葉を修補する。修補が乾いたら2枚を再び1枚にしなくてはならない。2枚の書葉を裏合わせで置き、片側を定規で押える。上の書葉の定規を置いていない側を持ち上げ、下の書葉に薄糊を塗る。そして上の書葉を下ろす。同じように反対側も行う。最後に書葉を2枚の紙の間に置いて棕櫚刷毛でしっかり撫で付ける。
書葉を1枚に戻したくないのであれば、薄い紙で裏打ちを行う。乾いたら袋綴じにする。
それほど損傷していない書葉や一枚ものの資料は裂くことが可能だが、非常に古くて損傷した紙に対してはこの方法を採ってはいけない。古い紙は書葉を裂いたり糊を洗い流したりする時に損傷を受けやすく、そうなると修補が大変難しくなるからである。
破れが生じている書葉の修補は、破れが進行したり、断片が失われたりする前に、速やかに修補しなければならない。小さな破れが幾つかあるだけで損傷が広範囲にない場合は、本を解体せずに修補する。作業台の上に冊を置いて損傷のある書葉の下に紙を敷き、破れた箇所を合わせる。書葉が動かないように軽く左の親指と人差し指で押さえる。右手で刷毛を持ち、破れに沿って1センチ幅で書葉の裏側に薄糊を塗り、1センチ幅の棉紙の紙片を貼り付ける。不要な紙で書葉を覆い、右手で修補箇所を撫で付ける。修補した書葉の上下に紙を置き、書口が適切な位置でしっかりプレスされるように確認する。そして板を冊の上に置く。修補箇所が乾いたら、冊の端からはみ出ている紙片を切り落として整える。このような応急的な処置は、本格的な修補を前提としたものであり、次に本を解体する際は、より適切な処置を行なうべきである。
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