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中国古籍の修理(10)

中国古籍の修理 ― コンサーバターのために (10)

デヴィット・ヘリウェル
(福島 希 訳)  2009/01/23

<線装>

「古籍」を広義で捉えるならば、文字の発明以降の三千年間に中国で生まれた全ての記録物が対象となる。記録物の中でも冊子状態のものは時代ごとに異なる綴じ方をされており、それぞれが特徴的である。傷んだ本を修補したり、綴じ直したりする時は元の特徴を保たねばならず、勝手に手を加えたり、損なうようなことをしてはならない。そのため、製本の中の1つの技術を適用する時は、時代背景等を考慮する必要があることを強調したい。しかしながら、宋代や元代の胡蝶装から明代の包背装、現代まで使われている線装に至るまで、基本となる技術には共通点が多く、とても似ている。したがって、通常の線装を一例として製本の方法と手順を紹介したい。

 

1. 基本的な綴じの技術

 

1.1 書葉を折る

書口をつないで書葉を修補したら、綴じる前に書葉を折る。テキスト面を下にし、天を左、地を右にして作業台に置く。両手で書葉の裏側の半分を持って折りたたむ。この時、書口が真っ直ぐになるように気を付ける。折り目は版心の中央を通り、ちょうど魚尾の真ん中にこなければならず、左右どちらかに片寄ってはいけない。だが、折り目が最初から片寄っている場合はその折り目に従って良い。折り目を変えようとすると、元の折り目が目立つからである。元の折り目に沿って書葉を折り、書口を両手で撫で付け押さえる。

書口を修補した場合は、折る前に修補箇所の小さな紙屑やゴミを手で払いのける。これらが書葉に入り込むと、修補箇所を馴染ませる際に書葉を傷める原因となる。

非常に古い書葉は折り目を付ける際に書口が裂けやすい。そのような場合は書葉が完全に乾くのを待たず、湿っているうちに折ると良い。そうすると、書口が傷んだり裂けたりする程にはもろくならない。

書葉を折ったら、右側に置いたプレス板の上に移動させる。全ての書葉を折り終えたら、番号を確認し、天地が逆になったり、順番が間違ったりしていないかを点検する。そして、一度に数枚ずつ取って、周辺に飛び出ている紙片や繊維などを切り、プレス板に順番に積み重ねていく。

書葉を折る時は、紙を汚さないように手をこまめに洗う必要がある。質の悪いインクで印刷された本、または赤い辺欄の本の場合はインクが落ちやすいので、書葉を折る際には特に気を付けなければならない。書葉を汚さないようにするために、書口の上に白い紙を1枚置いてその上から押さえると良いだろう。

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1.2 間紙を挟む

1.2.1 目的

修補した書葉や書口をつなぎ合わせた書葉は、表面に凹凸があったり厚さが不均一であったりする。こういった場合に、平らな間紙が書葉に挟み込んであると、叩いて紙を落ち着かせることができる。また、とても薄い書葉を折った際に、反対側のテキスト面が透けて見えてしまい、本文を読みにくくすることもある。このように、綴じる時に間紙を挟む必要が出てくる本も中にはある。間紙に最も適した紙は羅文紙と棉連紙である。滑らかで柔軟性があるからである。硬い紙や機械漉きの紙は書口が切れる原因になるので、間紙には決して使われない。

1.2.2 方法

間紙のための紙を書葉と同じ数だけ用意し、見開いた書葉よりも少し大きめに切っておく。それらを30~40枚に分け、端を少しずつ手でずらし、スプレーでお湯を噴きかける。全ての束をスプレーし終えたら厚めの紙の間に置き、平らにするために板でプレスをする。少し乾いてきたら、間紙を揃えて10枚くらいずつ、まとめて半分に折る。スプレーとフラットニングをする前に間紙を半分に折っておいても構わない。間紙の左下を左手で軽く押さえ、右の人差し指の爪側を使って手際よく束を扇形に広げて、1枚1枚を少しずつずらす(図4)。左手で束を押さえ、右手で間紙を1枚ずつ取って、作業台の右手側に置く。全て終わったら、軽く揃えて作業台の右手側に戻す。左側に書葉を置き、10枚程度の間紙の束を取って自分の前に置く。左手で書葉を開いて右手で間紙を挟み込む。書葉の束の上から、もしくは下から順に行っていくと良い。

図4

通常、間紙はちょうど半分のところで折り、折った側はできる限り書口に近づけて挟み込む(図5)。しかし、書口の修補がとても厚くなっている書葉は、間紙を挟み込んだ後に叩き均しをしにくい。このような場合は片側が数ミリ短くなるように折り、折った側を書脳側、逆側を書口に向けて挟む(図6)。最初の束の作業を終えたら書口を下にし、両手で支えて持ちながら作業台の上で揃える。作業台の正面向かい側に置いたプレス板にそれらを移動させ、次の束に取り掛かる。

図5、図6

 

1.2.3 1枚の紙を挟み込む

紙を折る手間を省くため、上記の方法で使用した紙と同質の2枚の紙を挟む方法もある。叩き均しが特別難しくない普通の本は、紙を1枚挟み込むだけでも構わない。折る手間が省けるばかりか、紙の節約にもなる。1枚の紙を挟み込んだ書葉の書口を叩き均しできない時は、書口まで差し込む間紙と書口から1、2ミリ手前で揃える間紙を作る(図7)。後者の間紙は少量の糊で書脳側に軽く貼り付けると、書口で揃えた時に動かない。こうすると、書口が他の部位よりも厚くなることを防ぐことができる。

図7

本に間紙を挟むと、天地の余白が同じ厚みではなくなる場合がある。厚みの違いが大きい時には、その本のことを「棺型」と表現する。中国の棺は頭の部分に厚みがある楔形をしており、その形に似ているからである。これは手漉きの紙を使用しているのが原因と考えられる。手漉きの紙というのは、天地の厚みが異なることが度々生ずるからである。また、印刷時には厚みが均一になるように、印刷前の紙の束の天地を時折逆に変えて刷るのだが、これが忘れられることがある。さらに、修補や裏打ちをする時、紙の厚みに充分注意しなかった場合でも、天または地が厚くなる。

この問題は、天地の半分の大きさの間紙を本の最も薄くなっている部分に1~4書葉ごとに逆側と同じ高さになるまで必要に応じて挟み込むことで、簡単に解決できる。挟み込む時は、間紙自体にも紙の厚みの違いがあるために、天地を時々逆にしながら挟み込むように注意する。そうすると本の天地の厚みが同じになる。

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1.3 書脳への足付け

1.3.1 2つの方法

書脳が狭すぎると、綴じた時にテキストが読みにくくなる。最悪の場合では、綴じることもできないだろう。また、不釣合いに縦長になり、見栄えが悪くなる本もある。適切な幅にするために、書脳部分を広げるべきである。それには2つの方法があるが、間紙を入れる本と通常の本とでは方法が異なる。

書脳を広げる際は、まず元の綴じ穴を書葉と類似の紙で修補しなければならない。そうしないと、新たに綴じ直した部分に元穴が隠れないため、見た目がよくない。また、書脳の角の補強になり、見た目も整うので本の角を覆うと良い。一見すると足付けしたことが分からなくなる。しかし、書葉と全く同じ色合いの間紙を挟んだ場合は角を覆う必要はない。

 

1.3.2 間紙を入れる本の足付け

間紙は、足付け分だけ書葉よりも大きめに裁断する必要がある。もし書脳を1センチ広くしたいなら、間紙を書脳より2センチ分長くする。30~40枚程の間紙の束を用意し、書脳を手前にして置く。書口部分には板を載せ、その上に重石を置いて、間紙の束を固定する。書脳側から全ての書葉と間紙を一緒に持ち上げ、板の上に捲り上げる。そして、1枚の書葉と間紙それぞれの片側を戻す。その際、書葉の下に色紙を敷いておくと、間紙の上からでも書葉の縁が見やすくなる。書葉の縁に合わせて間紙を折り返し、間紙と書葉のもう半分を下ろした後、色紙をその上に移動させる。次の書葉と間紙の片側を下ろし、同じように間紙を折る(図8)。このようにして、束の全てを折り終えたら、束全体を引っくり返し、間紙のもう半分も同様に折っていく(図9)。その後、広くした書脳部分が本と同じ厚みになっているか、手の感触で確かめる。書脳の折った部分が本よりも厚くなっている時は、ちょうど同じ厚みになるまで、数枚に1枚の割合で間紙を開く。本の方が厚い場合は書脳の折った部分の上に、糊で数ヶ所点付けしながら紙片を貼っていき、同じ厚みにする。また、間紙が1枚だけの時はその厚みに応じて、おそらく全ての間紙に対して紙片を貼り付ける必要があるだろう。代替策として、通常よりも間紙を幅広く切っておき、それを2回折る方法がある。まず幅の3分の1を折り、それから残りを折ると書葉の縁に合う。

図8、図9

 

1.3.3 通常の足付け

広げた状態の書葉を10枚程度、テキスト面を下にして糊用ボードに置く。それらの左右が約3ミリずつずれるように広げ、一番上を紙で覆う。そして縁に糊を薄く塗る。書葉の縦の寸法と同じ長さで、書葉と類似の紙片を用意する。この時、書脳を1センチ広くしたいのなら、折り返すことを考えて紙片の幅を2センチにする。それぞれの書葉の縁に紙片を1枚1枚貼っていく(図10)。束全てに貼り終えたら、紙を上に載せて両手で撫で付ける。その後、書葉を1枚ずつばらしてから別の糊用ボードに移す。次の書葉の束も同じように処置する。糊が乾燥したら書葉を折り(図11)、間紙を入れた書葉と同様の工程を行なう。紙片を貼っていない方の書葉の縁に合わせて、紙片を折り返す(図12)。紙片を貼り付ける際は、必ず片側だけに糊を付けるように注意しなくてはならない。折り返す側の書葉にも糊が付くと、後で叩いて均すのが難しくなるだろう。

図10、図11、図12

 

 

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