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中国古籍の修理(13)

中国古籍の修理 ― コンサーバターのために (13)

デヴィット・ヘリウェル
(福島 希 訳)  2009/03/09

<線装>続き

2. 特別な保存技術

中国の製本技術には長い歴史があり、時代ごとに特徴的な形式がある。本を綴じ直す時は、オリジナルの形式や外観を必ず残すようにしなければならない。損傷した古い本に間紙を挟んだり、トリミングしたり、見返しや表紙を取り替えたりすると、一見したところ新しい本のように見える。だが、それは時代の特徴的な形態をないがしろにしており、古籍としての価値や書誌学的な価値が失われることになる。そのため、非常に古い時代の本や、書誌学的に特に価値の認められる貴重な本に関しては、その特色を常に残すようにするべきである。本文や辺欄を復元しようと考えてはならない。古くて貴重な本の場合、1つの滲んだ文字や辺欄の断線が、版を同定するために非常に重要と証拠になるかもしれない。そのため、修補する時は文字を復元したり、辺欄に修正を加えたりしてはいけない。初版のように見えるからである。天祿琳瑯として知られる、宮廷図書館が蔵書している宋、元、明代の多くの貴重書は、清代において再製本された際に文字や辺欄を復元する形で修理された。これにより古籍としての価値を失っただけでなく、版を同定しにくくなったと言える。こういった破壊的な処置は避けなくてはならない。

オリジナルの外観を残して修理するのは、非常に骨の折れる難しい仕事である。作業に取り掛かる前にはその本に関する情報を可能な限り頭の中に入れ、偏った判断で処置方針を決めないようにする。そのためには、修理技術を完全に習得するだけでなく、印刷についての若干の知識や、各時代の特色について理解する必要がある。こうして初めて、オリジナルの外観を保った古籍の修理ができるだろう。

作業工程は下記に記したが、本のオリジナルの状態を保持することは、通常の修理作業よりもかなり難しく、多くの時間と労力を必要とする。しかしながら、通常の修理とは違う要となる作業は僅かである。そのため、この修理作業に対する総合的な説明は省略する。

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2.1 間紙

貴重書の中には地小口に表題が刻まれていることがあるが、修理ではこれを残すようにする。このような表題は、版や来歴の同定に使用されるからである。例えば、寧波にある明代に創設された天一閣が所蔵する多くの本の地小口には、表題が記されている。文字の形態や表題の位置から、その本が天一閣で収集したものであるかどうかを判断できる。そして、本の表題の上または下に印章があることもある。これは本の内容や著者と密接な繋がりがあることが多く、最も文書的に価値がある。このような本を修理および再製本する時は、表題を残すように最大限の注意を払い、トリミングややすりがけをしてはならない。

書葉の天および地にかなり近い位置に印章がある本や、地小口に表題がある本に間紙をする場合は、新しい本のように見えるため、決してトリミングを行わない。また、通常の方法で間紙を挟むことも避ける。オリジナルの状態を守るために、次のように作業を進める。書葉にスプレーして水分を与えてフラットニングをした後、正確に二つに折り、書葉の束をカッターボードの上に置く。書葉と同じ枚数だけの間紙を用意し、書葉の手前に置く。間紙は紙1枚とし、書葉よりも少し小さめに切っておく。本が数冊から構成されている時は、一度に全ての間紙を切っておく必要はない。冊の大きさは必ずしも同じではないため、冊ごとに合わせて切ると適切な大きさの間紙となる。間紙を裁断した後の手順は、通常の方法(「間紙」の項を参照のこと)と同じである。折った書葉に間紙を挟んで、書口で整える。間紙は書葉よりも若干小さいので、間紙の端が表に出ることはない。地小口に表題が刻まれていても、冊を一度プレスにかけると表題が明瞭に見えるようになる。この方法で間紙を行う時は、本に合った色合いの紙を必ず選ばなくてはならない。

 

2.2 書口と角の修補

袋綴じの貴重書の書口が裂けている時は、オリジナルの外観を損なわないように、損傷した箇所だけを紙片でつなぐ。そうすると、修補を最小限に留めることができる。紙片の色合いを書葉に近いものにすると、修補箇所が目立たない。書口の損傷程度が軽い場合、紙片でつなぐ前に修補する必要はない。書葉の天地からはみ出さない長さの薄めの棉紙に糊を薄く塗って書葉をつなぐと、冊のオリジナルの外観が保たれる。修補が終わったら、本のトリミングは行わず、書口の天地に飛び出した、損傷箇所を修補した紙をハサミで切り落としてから、目の細かい紙やすりで軽くやする。

本は長年にわたって利用されると、四隅が擦れて丸みを帯びてくる。これは見た目が良くないばかりか、本の物としての価値を下げることになる。このような場合は、オリジナルの外観を保持することを念頭に置きながら、欠損箇所の補填を行う。まず、書口と書口の天地の損傷箇所を書葉と色合いの似た紙で修補した後、書口をつなぎ合わせる。角の欠損箇所を復元する際、書葉よりも少し厚めの紙を使うと叩いて馴染ませやすい。また、書葉の四隅全てではなく、2ヶ所だけを復元する。角だけが非常に厚みを増すため、冊を綴じる時に叩いて馴染ませるのが難しくなるからである。修補箇所が乾いたら、書葉を二つ折りにして叩いて馴染ませ、冊を束ねるために紙縒りで綴じる。カッターボードの上に置き、別の板をその上に載せ、左手で押さえ付ける。よく切れるカッターを右手で持ち、書葉から飛び出した修補紙を切る。2枚のプレス板で本をしっかり挟み、目の細かい紙やすりで軽くやする。

 

2.3 表紙と見返しの修補

貴重書の場合、オリジナルの古籍としての特徴は全て保存されなければならない。損傷の有無にかかわらず、表紙や見返しが本文と同じような古い年代のものであるならば、本文と共に保存されるべきである。半分が欠失していたり、ほんの僅かな文字しか残っていなかったりしても、表紙や見返しは決して捨ててはいけない。収集家の印章や署名のある表紙は特に価値がある。例えば、清代の咸豊と同治の時代に活躍した李文田(1834‐1895)が残したコレクションには貴重な本が沢山あるが、印章が残されているものは数少ない。しかし、元は李のコレクションであったと判断できる署名が多くの表紙に記されている。また、清代後期の李慈銘(1830‐1894)の越縵堂コレクションは清代の版だけで構成されており、製本方法は全て同じである。李慈銘による注釈が書き込まれた本も多数ある。また、沢山の本の表紙にも署名していたが、書体にあまり特徴がなかったため、署名が見落とされ、表紙が捨てられることが多かった。オリジナルの外観を保存するためには、まず表紙を外して修補した上で、裏打ちをしなければいけない。表紙を外してから、表紙の裏側に薄糊を使って裏打ちをし、伸展させるために仮張り板に張り付ける。乾いたら、表紙として再利用できる。古い表紙を裏打ちする時は、丈夫な棉紙を使用するのが良い。絹の表紙の場合は表紙を取り外した後に、ニス塗りの板に縦糸と横糸を正しく整えながら水張りする。そして、余分な水を濾紙で吸い取ってから、しっかりと板の間でプレスする。絹の裏に濃い糊を均一に塗り、紙で裏打ちをして仮張り板に張る。乾燥後に表紙として再利用する。表紙に傷みや欠損がある場合は、表紙に合った紙で修補する。表紙の欠損部が大きくて修補が難しい時は、色の合った質の良い紙で作った表紙を新しく用意し、古い表紙を本の中に納めておく。欠損の多い見返し紙も同じようにする。

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2.4 表紙の周辺を折り込む

貴重書の場合はオリジナルの外観を保存することを考え、決してトリミングをしてはいけない。しかし、冊の角が磨耗して、やや丸みを帯びている場合は、書葉の形に合わせて若干丸みを持たせるようにして表紙の角を折る。この処置はかなり難しい。まず、表紙の角周辺にハサミで幾つか切込みを入れてから、内側に折り込む。折り込む時は、角の形に合わせて正確に折るように気を付ける。角以外にも、元々真っ直ぐにトリミングされていないような天地や書脳に対しても同じことが言える。このような場合は表紙を直線的に折らず、曲線に合わせて切り込みを入れ、それに沿って表紙を折らなければならない。そうすると、冊の形に合った表紙ができる。

 

2.5 角裂

本に角裂がある場合は、角裂に用いられている絹は外して保存しておく。本の修理が終わったら、それを再利用する。絹に傷みや欠損が見られたら、色の合った古い素材で修補する。オリジナルの絹を用いた角裂は地に使い(書棚に平置きにした時に見えるように)、修補した角裂は天に使う。オリジナルの角裂に何か文字が残っている時は、傷めることがないよう慎重に裏打紙を外す。そして本を綴じ直す時に元の位置に戻す。

 

2.6 題箋の修補

表紙に貼られている題箋は、欠損の有無にかかわらず、修補しなければいけない。題箋に表題だけが書かれ、章番号が無い場合は、修理した本の最初の冊に欠損の少ない題箋を貼り、損傷が著しい題箋は最後の冊に貼り付ける。しかし、題箋に章番号や冊番号が書かれていたら、それに対応する冊に貼らなければいけない。

 

2.7 綴じ穴開けと綴じ

貴重書を綴じ直す際は、綴じに使用する糸選びには細心の注意を払う必要がある。決して新しい白い糸を使用してはならない。オリジナルの本の色と調和しないからである。これを避けるために、黒茶か、ドングリのヘタを煮出した水溶液に糸を漬ける。乾燥後はクリーム色になり、本の色とうまく調和する。冊を綴じる時は、オリジナルの綴じ穴を必ず使うようにする。オリジナルの綴じ穴が直線上に並んで開けられていない場合は、表紙を付ける前に紙縒りで綴じ穴を1、2個塞ぎ、紙縒りの端を切って、叩いて落ち着かせる。表紙を付けた後、残ったオリジナルの綴じ穴と直線上に並ぶ、適切な位置に綴じ穴を開け、綴じる。4個の綴じ穴を全て開け直すことは避け、書脳の損傷を最小限にする(上記「綴じ穴開け」の項を参照のこと)。

 

2.8 套の修理

本にオリジナルの套が残されており、その表装裂が傷んでいる場合は、修補に使えるような類似の素材を探す。套の内張り用の紙に損傷がある時は、同一の紙、もしくは修補に適した似た紙を探す必要がある。本を再び綴じ直し、套の修理が終えた後、套が大きすぎた場合は厚い紙を内側に貼り付けるか、内側の羽に薄手の板紙を貼り足すと、中の本をしっかりと固定することができる。套がきつすぎた場合は、スプレーで水分を与え、適切な大きさになるまで金槌で叩く。

肖振棠は夾板や木匣の修理については書いていない。おそらくこれは本のコンサーバターの仕事というよりも大工の仕事になるからであろう。しかし、夾板は時間の経過と共に縮むことがあるので、注意しなければならない。特に過度に乾いた状態で本が保管されている場合は、夾板の幅が本の幅よりも小さくなり、紐が本に食い込むようになる。そのような時は夾板を外し、新しいものに取り替える、もしくは四合套に入れ替える。夾板自体に価値があったり、銘が記されていたりする場合は、オリジナルを保管しておく。

 

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