中国古籍の修理 ― コンサーバターのために (14)
デヴィット・ヘリウェル
(福島 希 訳) 2009/03/27
<その他の製本技術>
1. 金鑲玉
金鑲玉は中国製本の中でも最も洗練された構造を持っており、主に貴重書の保存のために用いられる(写真15、16参照)。金鑲玉という言葉の起源は非常に古い。一説によると、古代の印が割れた際、その修理に金を使用したという。褐色化した古い書葉を翡翠で作られた印に例え、書葉を縁取る新しい白い紙を金に例えることで、この種の製本を金鑲玉と表現するようになった。
長年にわたって利用された貴重書は、書葉が損傷を受けている。以下のような場合は、金鑲玉を用いると良いだろう。例えば、書葉の辺欄外の余白が非常に狭く、注釈が天地の縁に接していたり、書葉の大きさが揃っていなかったりする場合や、書葉をトリミングすることができない手稿本の場合である。金鑲玉の利点は、入紙が書葉の天地および書脳の外側にもあるため、書葉を保護する機能を持つことである。書葉の大きさが揃っていなくても、過度にトリミングすることなく同一の寸法にできるので、オリジナルの外観を崩すことなく本を保存できる。
まず、損傷した書葉を修補する(「紙の修補」の項を参照のこと)。辺欄近くにある綴じ穴は、必ず修補する。そのままにしておくと、綴じ直した際に目に付きやすく、見た目を損なうからである。修補が終わったら、書葉にスプレーしてフラットニングした後、二つに折ったものを叩いて馴染ませる。そして辺欄揃えを行い、一端が尖った紙縒りで一時的に中綴じをする。最後に天地を手作業でトリミングするが、書脳は切ってはならない。天地が既に整っている時、あるいは天地の縁の近くに注釈がある時は、辺欄揃えをしたり、トリミングしたりしてはならない。ハサミを使ってトリミングするか、やすりを使って整える。以上の準備ができたら、次の作業に取り掛かる。
写真15 |
写真16 |
金鑲玉というのは本質的には入紙の手の込んだ形なので、質感が柔らかく、柔軟性がある羅文紙や棉連紙を使用するのが最も望ましい。通常の入紙の場合、紙の厚みはそれほど問題にならないが、金鑲玉は入紙に使用する紙の厚みが書葉と全く同じでなくてはならない。
本の寸法を測ってから、作業台に全紙を広げ、何枚の入紙が切り出せるか考える。入紙は折り込み部分を考慮し、書葉よりも四方に3、4センチずつ大きくする必要がある。紙のオモテ面(滑らかな面)を確認し、同じ面が揃うようにして30~40枚ずつ束にして置いておく。そして、水分量が多すぎたり、少なすぎたりしないように気を付けながら均一にスプレーする。水分が多いと直ぐに使用することができず、少なくても紙のシワを伸ばしきれない。また、均一にスプレーしないと輪染みができる可能性がある。その後、紙を丸めて水分が万遍なく浸透するまで10分ほど放置する。紙を広げて伸ばし、プレス板を載せてフラットニングする。乾燥したら端をトリミングして、全ての紙を同じ寸法にする。1枚の入紙を二つ折にし、同じく二つ折にした書葉に合わせて、どのくらい入紙の天地に余白を持たせるか検討する。普通は地よりも天を若干広くする。例えば、綴じ終えた時の天の余白を2センチとするなら、地は1.5センチにすると良い。この段階では、綴じ終わった時の余白の数値の少なくとも2倍の余白を取っておく必要がある。書葉の地と書脳の角に沿って入紙にピンで穴を開け、印を付けておく(図38)。書葉を外して入紙を広げ、残りの入紙の束の上に載せる。上に載せた入紙の印を基準とし、残りの入紙全てにピンで穴を開ける。この穴は入紙に書葉を貼り付ける際の目安を示している。
入紙の上に書葉を1枚ずつ糊付けする作業である。始める前に下敷きとして濾紙を作業台に載せておく。本から紙縒りを外し、書葉の束を作業台の手前右側に置く。入紙は濾紙の向こう側に置く(図39 )。濾紙の上に入紙を1枚載せる。書葉を開き、入紙の上にオモテ面を上に向けて置き、ピンを使ってきれいに整える(図40 )。別の入紙と書葉を取って同じ手順を繰り返し、入紙と書葉が交互に重なった束を40~50枚作る。定規を書口に置き、重石や何か重いもので押え、束の片側をめくり上げて定規の上に載せる。入紙と書葉を1枚ずつ下におろす。書脳の裏面に2ヶ所糊を付け、入紙に貼り付ける(図41)。全ての書葉の片側を貼り付けたら、反対側も同じようにする。全ての束の貼り付けを終えたら、作業台に端に移動させ、板で重石をしておく。これを全部の冊が終わるまで繰り返す。
別の書葉のマウント方法は次の通りである。ウラ面を上にした書葉と入紙の束を作る。書葉1枚の上に入紙1枚を重ねて束を作り、上記のように書葉の左右の辺欄の外側に糊を付け、入紙に貼り付ける。
3つ目の方法は、書葉を1枚取るごとに糊を付け、入紙を書葉の上に載せ、両手で中央から外側に向かって撫でる。これを繰り返す。この方法は上記2つの方法より時間がかかるが、書葉を貼り付ける時に歪みにくい。
4つ目の方法は糊を使わず、入紙の表裏も関係ない。100枚程度の紙を置き、下記で述べるように小口を折って真っ直ぐにし、書葉を中央で折る。この方法は糊を使う必要はないが、入紙を少し大きめにカットしなければならない。また、書葉を完全に真っ直ぐに置き、折り込む時は入紙の上で書葉が曲がらないように正確に行わなければいけない。この方法は紙が粗い場合により適している。紙が滑らかな時は、特に慎重に書葉と入紙が歪まないように注意する。
書葉の周囲に飛び出した入紙が書葉と同じ厚みになるように、入紙の四辺全てを書葉の縁に合わせて折り込む。そのために、まず40~50枚のマウントした書葉を糊用ボードの上にオモテ面を下に向けて置く。上半分を覆うようにプレス板を置き、何か重い物で押える。重石を載せていない側をプレス板の上に折り返す。そして、幅10センチ、長さ30センチの暗色の紙片を糊用ボードの上に載せる。紙片が暗色でなければならないのは、書葉の縁を分りやすくして入紙を正確に折り込むためである。書葉と入紙を1枚ずつ下におろし、書葉の地の縁に突き合わせるようにして正確に入紙の端を折り込む(図42 )。この時、入紙の折り込みが書葉の縁に重ならないよう注意する。書葉の縁と折り込んだ入紙の縁は揃っていなければならない(図43 )。次に、折り込んだ入紙の上に暗色の紙片を載せ、次の書葉と入紙をおろして入紙を折り込む。この工程を束が終わるまで繰り返す。地を全て折り込んだら、糊用ボードを回転させて今度は地の部分に重石を載せ(この時点で地の位置は向こう側である)、同じように天の縁を折り込む。
今度は糊用ボードが縦長になるように配置する。書脳を折り込む前に、既に折った天地の入紙に書脳の幅の半分くらいまで切り込みを入れておき(図44A)、折った時に厚みが2倍にならないようにする。まず片側の書脳を全て折り(図44B)、次にもう片側の書脳を同じ方法で折り込む。全ての端を折り込みが終わったら、束の上に糊用ボードを置き、書葉を折る準備が整うまで脇に置いておく。
それぞれの束の折り込みが終えたら、折り込んだ部分をもう一度押えて均し、書葉の中央と同じ厚みになっているか確認する。もし書葉よりも入紙の厚みがある時は、冊の中央が凹んでいる。そのような場合は、入紙の折り込みを数枚ごとに開くと、厚みを調整できる。入紙が書葉よりも薄い場合は、冊の中央がかなり厚くなっている。同じ厚みにするためには、入紙の折り込み数枚ごとに厚めの紙片を貼り付けると良い。これで冊全体の厚みが完全に同じになる。
作業台に糊用ボードを置き、テキスト面を上に向け、天が左側にくるようにして書葉を置く。作業台の手前側に汚れのない白い紙を敷く。両手で書葉を持ち、書口の縁がちょうど作業台の縁にくるまで手前に引く。作業台の縁に凹凸がある場合は、角がきちんと出た板を作業台に載せて使い、書葉の真ん中に折り目を付けると良い。中指を書葉の下、親指と人差し指を書葉の上に置き、作業台の縁(もしくは板)を利用して、書口の元の折り目と同じ位置に折り目を付け、二つ折りにする。作業台の上で折り目をならしたら、右側に置いたプレス板に載せ、残りの書葉も同様に折り目を付けていく。
1.5.2 方法2
裏面を上にした書葉を糊用ボードに置く。作業台の手前側に汚れのない白い紙を敷く。その上に書葉を置き、中指を書葉の上、親指を下に添えて書口の折り目に沿って折り返す。折り目を付けた書葉は右側に置いたプレス板の上に異動させる。
いずれの方法を採るにせよ、折った書葉は30~40枚ずつ天地を持ち、作業台の上で書口を揃える。引きつれを起こして平らにならない書葉と入紙があれば、糊付けした書脳の縁を骨ピンや大きめの針を使って外す。それから再度揃えると、書葉と入紙はあるべき位置に納まって平らになるだろう。その後の叩いて馴染ませる作業や、製本を完成させるための残りの手順は、「線装」で既に述べた通りである。
※実際の製本例を掲載しました。
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