中国古籍の修理 ― コンサーバターのために (15)
デヴィット・ヘリウェル
(福島 希 訳) 2009/04/09
<その他の製本技術> 続き
2. 毛装
毛装は、書葉の天地に注釈があり、トリミングできない手稿本に通常用いられる。
まず書葉を修補し、修補箇所を叩いて馴染ませた後、プレスする。二つ折りの表紙をために、紙を裁断して半分に折る。広げた状態のウラ表紙を表面が上になるように目打ち板に置く。その上に、表紙の折り目と書口の小口を揃えて書葉の束を置く。またこの時、書脳側が手前になるように配置すると良い。それからオモテ表紙を広げた状態で表面を下にして書葉の上に載せ、折り目と書口を揃える。その上から定規を置いて固定する(図45)。書脳の縁からの幅が同じになるように、紙縒りで綴じるための穴を2ヶ所、計4個開け、両端が尖った紙縒りを差し入れる。冊全体を引っくり返して紙縒りを結んだら、端を、やや濃い糊で貼り付け、金槌で数回軽く叩く。広げていた表紙を折り目に沿って戻し、糊付けする。こうすると、表紙によって紙縒りを隠すことができる。
紙縒りで綴じる際、二つ折りにした表紙の上から綴じることも可能だが、その場合は紙縒りが隠れない。表紙を広げた状態で綴じるのとは異なり、単純に冊を書口で整え、二つ折りにした表紙の上から穴を開ける。オモテ側から紙縒りを差し込んでウラ側で結び、金槌で結び目を叩く。
書脳の縁近くに文字があって綴じられない場合は、その部分を折り返す。そして、本の縦と同じ長さで適切な幅にした紙片を準備し、折り返した書葉の折り目の裏側に糊で貼り付け(図46)、綴じにはその紙片に利用する。この方法によれば、文字が隠れることはないので、本を読むのに差し支えない。
3. 巻子
巻子は紙媒体の製本形態の中で最も古い形であり、後漢末(3世紀)から宋の初頭(10世紀)まで使用され続けた。巻子の製作が全盛となるのは7、8世紀の隋と唐である。巻子は以下のように修補され、仕立てられる。
まず、ピンセットを使って傷んだ巻子を広げていく。3~4枚の書葉を1つのセクションとして解体するが、1つのセクションが2メートル以上にならないようにする。長い漆塗りの裏打ち用テーブルに薄い紙を載せ、その上にセクションの1つを画面を下にして広げる。裏から排筆で湿り気を入れ、紙の表面を完全に平らにする。巻子が裏打ちされていたら、ピンセットを使って裏打紙を除去する。紙が傷んでいて、裏打紙をピンセットで持ち上げるのが難しい場合は、右手の中指で少しずつ擦り取っていく。慎重に行えば、本紙表面のテキストを傷つけることはない。傷んだ部分は調和する紙で修補する。分離した幾つかの書葉で1セクションが成り立っている場合は、濃い糊を使い、適切な幅でこれらを繋げる。右手に排筆を持ち、本紙の裏面に薄糊を左から右に向かって塗る。本紙の天地よりも2センチ大きいサイズで棉紙や似た種類の紙を何枚か切り、1枚ずつ丸めておく。左手でそのロールを持ち、右手で棕櫚刷毛を持ち、右から左に向かって裏打紙を広げながら巻子に裏打ちしていく。棕櫚刷毛で裏打紙をしっかり撫でる。本紙が裏打紙よりも長い場合は、何枚かの裏打紙を余白でしっかり糊付けして繋げる必要がある。裏打ちが終わった巻子は、7~8時間乾燥させるため、裏打ち用テーブルから脇へ移動する。そして、すこし湿りを加え、四辺に細く薄い糊を塗り、伸展させるために仮張り板に張り付ける。
仮張り板で伸ばしている間、部屋の温湿度を適切な数値に維持しておかなければならない。部屋の温度が高すぎると紙は破れてしまい、部屋の湿度が高すぎると、紙が乾きにくくなる。また、仮張り板はドアや窓の近くに置いてはいけない。すきま風が紙の乾燥を促進しすぎ、紙が破れる原因となるからである。冬期は室内温度を15~17度、湿度を50~60%に保つべきである。この室内環境であれば、紙が破れることなく、徐々に乾燥する。
仮張り板に巻子を張り付ける際は、1つの辺に4~5センチ程の僅かな隙間を残しておき、そこから息を吹き入れ、巻子の中央部(つまり糊付けされていない部分)は仮張り板から少し浮かせておく。こうすることにより、乾燥後、仮張り板から巻子を剥がしやすくなる。巻子を仮張り板で2~3日間乾燥させたら、竹べらを使って丁寧に剥がす。そして、継ぐ部分をカッターで真っ直ぐにトリミングしてから、濃い糊を使い、適切な順番でセクションを繋ぎ合わせていく。これで完全に平らな状態の巻子ができあがる。継ぎ目が乾くまで待ち、トリミングボードの上に巻子を置く。1枚の紙を本紙の地の縁に合わせて置き、40センチ毎に針で跡を付ける。これをガイドにして、長い定規とカッターで真っ直ぐにトリミングする。定規の上に重石か金属製の物を載せて押さえにすると良い。地を下にして巻子を巻き、作業台の上で巻子を整える。天の縁近くに針で穴を開けてから、トリミングボードの上で巻子を広げる。針の穴に合わせて定規を置き、地の時と同様の方法で天もトリミングする。再び巻子を巻き、天地の小口を紙やすりで滑らかにする。最後に、再び巻子を広げ、巻末に軸を付ける(図47)。この軸は地軸と呼ばれ、紙の端から1センチずつ出す。巻子の始めには30センチくらいの長さの紙を貼り付ける。これを裱、もしくは護首と呼ぶ。非常に細い竹ひごを護首の端に貼り付ける。竹ひごの長さは巻子の天地の長さと揃える。この竹ひごは天軸と呼ばれる。綿の平紐か絹の紐を天軸の中央部に取り付け(図48)、紐の端には骨製か竹製の留め具を付ける。表題や巻子の番号が記された題箋は、護首の裏側で天軸の横にあたる位置に貼り付ける。
本紙自体の紙力が低下していない時は、上記のように裏打ちをする必要はない。傷んでいる部分を調和する紙で修補するだけで、裏打ちは行わない。天地をトリミングする必要もない。修補した部分を叩いて馴染ませ、本紙の端から飛び出した修補紙をハサミで切り、上記のように巻子の形態に仕上げれば良い。非常に古い巻子の場合は、裏打ちを外さないということも特に重要である。裏打紙を取り去るには、裏側にあるテキストを傷つけたり、不鮮明にしたりする危険を冒すからである。かつて、紙の厚みを半分に除去することはテキストの命を取ることだと言われていた。より詳しく説明するなら、古い時代の巻子から古い紙の層を除去し、新しい紙の層に替えるということは、オリジナルの外観を変えるということである。これを行なえば、巻子をトリミングして物理的に寸法を小さくすることにもなり、損失は一層大きくなる。
4. 折本
折本は巻子が発展した形態である。以下のように修補する。
まず書葉を継ぎ部分で外し、折本を解体した後、調和する紙で損傷箇所を修補する。修補箇所を叩いて馴染ませ、ハサミを使って天地に飛び出た紙を切り落としたら、全ての書葉をやや濃いめの糊で再び継ぎ合わせる。元の折り目に沿って書葉を折り、白い無地の見返しを前後に付け、四辺を折った表紙を合わせる(「表紙を作る」の項を参照のこと)。
本紙の紙力が低下している場合は、損傷箇所の修補に加えて裏打ちをする必要がある。その方法は巻子と全く同様である。
5. 蝴蝶装
蝴蝶装は紙縒りや糸を使わず、書脳の縁の糊付けのために、僅かな糊を使用するだけである。硬い表紙を付けることもある。この製本形態の利点は、版心が本の内側になるので、磨耗しにくいところである。書口および天地が損傷したとしても、本を解体することなくトリミングすることができる。また、本を開いた時に書葉全面を見ることができる構造となっているため、挿絵や地図などで書葉全面に印刷されたものに最適であると言える。蝴蝶装は宋代と元代の古い版本に対して一般的に用いられていた。製本方法には幾つか種類がある。以下に記述する。
まず書葉をテキスト面が内側になるように版心に沿って半分に折り、同じように折った見返しを書葉の束の前後に付ける。書葉の裏側から見ながら辺欄を揃える。紙が厚くて辺欄が確認しにくいようなら、地で整える。書葉を整えた後は、プレスしておく。折った書葉を揃え、書脳部分を避けてプレス板を置き、重石か他の重い物を載せて固定する。プレス板ごと冊を作業台の端まで移動させ、左手で書葉の折った縁を持ち上げ、右手に持った棕櫚刷毛で書脳に約1ミリ幅で濃い糊を少量付ける。あるいは、書背に対して棕櫚刷毛を上下左右に動かして、糊が書脳に浸透するまで均一に塗布する方法もある。それから冊全体をプレス板に入れ、書背に紙片をしっかり貼り付ける。紙片はそれぞれの冊に対して貼り、乾燥したら表紙を合わせる。プレス板に複数の冊がある時は、1枚の紙片で一度に貼り付けることも可能である。乾燥後にカッターで冊を切り離せば良い。表紙の付け方は包背装と同じである(「包背装(ソフトカバー)方法1」の項を参照のこと)。
書葉を折った後、冊の束にして見返しを付け、書葉の折りが手前に来るようにして作業台の上に置く。折った縁の部分は除いて冊の半分ほどを覆うようにプレス板を置き、重石を載せて固定する。左手で書葉を持ち上げ、折った縁に薄い糊を3、4ヶ所、等間隔に点付けする。そのようにして全ての書葉を貼り付ける。その後、方法1と同じ方法で表紙を合わせる。
この方法の利点は版心を傷めないこと、かつ本を平らに開きやすいことである。難点としては、糊を極少量しか使用していないため、方法1よりも構造としての安定性に欠け、壊れやすい点が挙げられる。清代の本の収集家である黄丕烈(1763-1825)がこの方法でよく製本していたので、現在ではこの製本方法を一般的に「黄装」と呼ぶ。
これは実は線装である。本を開くと蝴蝶装のように見えるが、書脳と地小口からは線装のように見える。この製本が最初に使われたのは、清代の康煕(1662-1722)に印刷された画譜『芥子園画伝』である。最近では商務印書館が、明代の小説『三国志演義』の複製本を作るのにこの製本形態を採っている。
まず書葉の修補を行った上で、スプレーをしてフラットニングをし、乾燥させる。その後、本文を内側にして書葉を折る。書葉と同じ色、同じ厚みの紙を選び(若干厚くても良いが、薄くてはいけない)、書葉と同じ長さで5センチ幅の紙片にする。折った側を右にした書葉を10枚程、糊用ボードに並べる。書葉の束を1枚ずつ左にずらし、5ミリ間隔でずれて重なるようにしておく。一番上の書葉に紙を載せるが、その時に端を5ミリほど出しておく。書葉の折り目にやや濃いめの糊を付け、先ほど用意した紙片をそれぞれの折り目に貼る。束の一番下から上に向かって貼り付けていく(図49)。貼り付けたら束の上に紙を置いて右手で撫でると、書葉と紙片はしっかりと貼り付く。書葉を1枚ずつ外して別の糊用ボードの上に移し、次の束も同じように作業する。
全ての書葉に紙片を貼り付けたら、7、8枚で束にして、それぞれの束ごとに濾紙を挟んで糊用ボードの上に重ねる。束の上にプレス板と重石を載せておく。書葉が乾いたら、揃えて並べ、貼り付けた紙片を書葉の縁に突き合わせるようにして折り曲げる(図50)。間紙を入れない場合の書脳の足付けと同じ方法で作業をする。この方法は既に述べた通りである(「書脳の足付け」を参照のこと)。次に折り曲げた紙片を叩いて落ち着かせてからプレスをし、紙縒りで中綴じをして(貼り付けた紙片に通す)、トリミングをしたら、ひとまず作業が終わる。その後、角裂と表紙を付け、外綴じを行なうと、一見したところ普通の線装と区別が付かないだろう。
蝴蝶装で仕立てるには本が小さすぎる場合は、金鑲玉の綴じ方を適用すると、この問題を解決できる。この製本構造は、中国の製本技術を示した典型的なものであり、オリジナル形態を保持しながら再製本を行う良い例である。方法は以下の通りである。
本の書葉と同じだけの紙を裁断する。金鑲玉装にするため、四辺全てを書葉よりも大きくする必要があるスプレーをしてフラットニングした後、30~40枚の束に分け、地で合わせて二つ折にする(これは「金鑲玉」の項で既に述べた通りである)。修補した書葉を開き、テキスト面を下にして糊用ボードに置く。書葉の中央に薄糊を細く線状に引く。できる限り細く、できる限り少なめに引くのが良い。書葉の中央の折り目と地に揃えて紙を貼り付ける。書葉全てに紙を貼り付けたら、束の上にプレス板を載せて乾くまでプレスをする。書葉の四辺全てに対して紙片を用意する。紙片の幅は、入紙のはみ出し部と同じ大きさにする。テキスト面を下にした状態で、40~50枚の書葉の束を糊用ボードに載せる。書葉の上半分をプレス板で押え、下半分をめくり上げてプレス板の上に載せる。1 枚ずつ下に戻し、書葉の縁が分かりやすいように暗色の紙片をガイドとして挟む。飛び出した入紙の裏側の3、4ヶ所に薄糊を付け、ガイドに合わせて紙片を貼る。地全てに紙片を貼ったら、本の向きを変えて天も同じように作業する。書脳に当たる両側も同様である。四辺全てに紙片を貼り付けたら、束の一番上に板を置き、書葉が乾くまで重石を載せる。本文を内側にして書葉を折り、金槌で軽く叩いて落ち着かせる。書葉を地で揃え、本をプレスに挟む。その後は上記のように綴じる(「蝴蝶装 方法1」の項を参照のこと)。本が乾いたら、綴じた端をプレス板で押え、隣り合った入紙の書口に3箇所ほど糊付けして軽く貼り付ける。これにより本を開いた時に紙片が見えなくなる。本をトリミングして表紙を付ければ完成である。
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