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中国古籍の修理(16)

中国古籍の修理 ― コンサーバターのために (16)

デヴィット・ヘリウェル
(福島 希 訳)  2009/04/23

<その他の製本技術> 続き

6. 包背装

書脳が狭くてうまく足付けをすることができないは、綴じるのが難しい。そのような場合に包背装を用いる。この製本にはソフトカバーのものとハードカバーのものがあり、以下にその作り方を述べる。

6.1 ソフトカバーの包背装 方法1

包背装は蝴蝶装とは全く異なる形態である。テキスト面を外側にして書葉を折るので、版心が書口にあったり、見返しを付けたりするからである。書葉を辺欄で整えた後、冊をプレス板に挟んで完全に平らになるまで、しっかりとプレスする。目打ち台に冊を載せ、辺欄の外側にあたる書脳の天地と中央から約1.5センチ離れた所にそれぞれ2個ずつ穴を開ける。長さ10センチ、幅4センチにした棉紙の紙片で両端が尖った紙縒りを3本作る。紙縒りをそれぞれ冊の穴に差し入れ、冊全体を裏返して紙縒りをしっかり引きながら結ぶ。金槌で結び目を叩いて平らにする。冊をトリミングし、小口をやすって滑らかにする。書脳が作業台の縁から出るようにして冊をプレス板に挟み、重石を載せる。冊と同じ長さの白い紙片を用意し、濃い糊を書背に付けて紙片を貼る。もしくは、一度に全ての冊に糊を付けて、1枚の紙片を貼り付けても良い。この場合、糊が乾いた後にカッターで冊を切り離せば良い。その後は次のように作業を進める。

表紙の紙を裁断する時は、本よりも四辺全てを1センチずつ大きくしておく。書背だけでなく、オモテ表紙とウラ表紙も1枚の紙から作成し、切り離さないでおく。もし紙が反ったり、シワが寄ったりして平らにならない場合は、スプレーしてプレスに入れる。そして、片方の表紙の書口を1センチ折り返す。

プレス板に冊を載せ、書口を手前にして置く。見返しの端に均等な間隔で3、4ヶ所糊を付ける。表紙を両手で持って書口で合わせながら貼り付けたら、上にプレス板を置き、何か重い物で重石をする。その後、冊をプレス板ごと回転させ、地が手前になるように置く。そして、プレス板を三分の一ほどずらし、地の縁に沿って表紙に折り目を付ける。折り返す際、書口の折りが重なった部分はハサミで切り落とす(「表紙作り」の項の「四辺を折り込んだ表紙」および、図16を参照のこと)。それから少量の濃い糊で見返しの地にしっかりと糊を付けて貼る。特に書脳部分は折った部分をしっかりと糊付けるようにしなければならない。そうしないと、最終的に表紙を書脳に貼り付けた時に空洞ができてしまう。再びプレス板ごと冊を回転させ、天を手前にして上記と同様に表紙の貼り付けを行う。今度は書脳を手前にして置き、縁に沿って折り目を付ける。書背を包むように折っておくが、まだ糊付けはしないでおく。冊をそのままの状態にしておき、冊全体の三分の一に被るように書口にプレス板を置く。表紙を持ち上げ、濃い糊を書脳と紙縒りに付けて表紙をしっかりと貼り付ける。長方形の石槌で書脳に沿って表紙をならしてから、冊全体を引っくり返す。糊を見返しの天と地に3ヶ所ずつ付けて、表紙を貼る。そして最後に書口の縁に合わせて折り目を付け、角の重なった折りの部分はハサミで切り、濃い糊で書口を貼り付ける。表紙を付け終えたら長方形の石槌で全ての折り目をならし、プレス板に冊を挟んで重石を載せ、平らにする。次の冊も同様の方法で行う。

6.2 ソフトカバーの包背装 方法2

表紙の紙はオモテ面を内側にして二つ折りにする。この時、どちらか片方が少しだけ大きくなるように折る。大きくする幅は、その冊の厚みによって決める。書脳を手前にして冊を置き、見返し紙の書脳の縁近くに濃い糊を右手の中指で3、4ヶ所付ける。天地を折り込む時に表紙を持ち上げるため、あまり天地に近い位置に糊付けしてはならない。幅の狭い方を下にして表紙を取り、天地の折り返し幅が均等になるようにして折り目と書脳の縁を合わせ、しっかり糊付けする。そして、1冊目の上に2冊目を置き、同じように表紙を糊付けする。全ての冊が終わったら、本全体を引っくり返して脇に置く。再び1冊目を手に取り、手元に置く。折った表紙を広げ、書背を包みながら反対側に持っていく。左手で表紙を持ち、書背に沿って右手で折り目を付ける。プレス板を上に置き、小めの重石を載せる。天地のどちらかが手前に来るように置き、冊の三分の一が見えるようにプレス板をずらす。冊の小口に沿って表紙に折り目を付ける。それからもう片方の折り返しも同じように手前に持ってきて、折り目を付ける。重石を動かし、冊を引っくり返し、反対側の表紙も同様に折る。表紙の折りを全部広げ、天地を折り込む。折り込みの書脳の天地部分はしっかりと糊付けするように気を付けなければならない。そうでないと、綴じ終えた時に書脳の天地に空洞ができることになる。表紙を持ち、作業台の端に書脳を合わせ、冊の三分の一を覆うようにして書口の上にプレス板を載せる。書脳に濃い糊を少し付け、見返し紙の書脳の縁近くにも軽く糊を付ける。表紙を持ち、書背に添わせるように包んでから、プレス板で押える。書脳の上に厚紙を置いて、しっかりと貼り付けるためにプレス機でプレスする。最後に、書口を手前にして冊の三分の一が見えるようにプレス板をずらす。書口に沿って表紙に折り目を付けてから完全に折り込み、両角をハサミで斜めに切り落とす。見返しの天地、書口に2ヶ所ずつ糊を付け、表紙をしっかり貼り付ける。冊を引っくり返し、反対側の表紙も同じように作業する。プレス板で冊を押えて脇に置いておく。残りの冊も同様に作業し、全ての冊が終わったら、プレス板を載せて糊が乾くまで重石を載せておく。

6.3 ハードカバーの包背装

初期の包背装には硬い表紙が使われており、その形態は現代のハードカバー製本に似ている。16世紀に作られた物の一例として、大規模な百科事典である『永楽大典』が挙げられる。

紙縒りを通す前に、書脳が見えるようにオモテとウラの見返しの折りを広げる。5、6センチ幅で本の天地と同じ長さの丈夫な綿布を用意し、1つは書脳のオモテ、もう1つはウラに貼る。その時、布幅の半分が書脳から飛び出すように貼り付ける。乾燥したら、布の上から6個の穴(つまり1対を3ヶ所)を天地と中央に開ける。3本の両端が尖った紙縒りを冊のオモテ側から通して、ウラ側で結ぶ。(これらの紙縒りを作る時は絹糸を数本縒ったものを芯にして巻いて作り、紙縒りの強化としても良い)そして、結び目を金槌で叩いて平らにする。開いていた見返しを戻し、綿布に薄い糊で貼り付ける。書脳から飛び出ていた布は書脳の縁に沿って折り返す。次に本と同じ寸法の厚紙を2枚切る。厚紙の厚みは冊の大きさと厚みによって決める。紙やすりで厚紙の縁をやすって滑らかにしておく。綿布に濃いめの糊を付け、厚紙を書脳の縁に揃えるように置き、貼り付ける。書背に濃い糊を塗り、紙片を貼っておく。オモテ表紙とウラ表紙を1枚の紙から切り出す。2枚の表紙は繋がるようにし、四辺は冊より1.5センチずつ大きめにする。書脳が乾燥したら、上下5センチは避けながら再び濃い糊を塗る。それから表紙を2つに折って書脳で貼る。書背の天地に飛び出た部分はハサミで2ヶ所に切り込みを入れ、両面に糊を付ける(図51)。この部分は折り込んで書背に貼り付ける。2枚の厚紙の全面に濃いめの糊を塗り、棕櫚刷毛で撫で付けて表紙を貼り付ける。厚紙から飛び出ている表紙は厚紙の縁に沿って折り返し、貼り付ける。角の重なった部分はハサミで切り落とす。糊が乾いたら、厚紙よりも若干小さく切った裏打紙を厚紙の内側に貼る。その後、厚紙の上下に濾紙を置き、冊全体をプレス板に挟んで重石、あるいは何か他の重い物を載せておく。糊が完全に乾燥するまで、重石やプレス板、濾紙を動かさずに数日間待つ。(図52はこの製本の複雑な構造を図解したものである)

図51 図52

6.3.1 留意点

ハードカバーの包背装は書背が完全に真っ直ぐになるように裁断しなくてはならない。そうしないと、綴じ終わってから表紙や書葉をめくった時に、平らに開かず、本が読みにくくなるだろう。

表紙に糊付けする時は素早く行い、塗り終えたら直ぐに重石を載せる必要がある。糊を塗っている間に厚紙が伸び、乾燥中に再び縮むので、書葉と同じ寸法にならないばかりか、平らにもならないからである。

 

<最後の確認事項>

個々の修補作業を評価する基準となる項目を挙げておく。

・糊は適切な濃度で、相応に使われているか。
・修補紙の色合いや厚みは適切か。
・修補した書葉は完全に平らになっているか。また、劣化している書葉のテキストが裏打ち後に損傷していないか。
・書葉の折り目は真っ直ぐか。折り目が全て書口で揃っているか。
・書口を傷めることなく、書葉を叩いて馴染ませてあるか。
・辺欄が揃っているか。冊を重ねた時に書口は完全に揃っているか。
・テキストを切ることなく、冊を真っ直ぐ裁断しているか。
・幾つもの冊から本が成り立っている場合、全ての冊の大きさが揃っているか。天地逆のものがあるとしても、冊の端が揃うか。
・やすりがけの後に油分や凸凹を残していないか。
・角裂は糊浮きすることなく、しっかり貼り付いているか。
・冊の寸法は調和が取れているか。冊が全て同寸法になっているか。
・四辺を折った表紙を付けた場合、四辺全てが真っ直ぐ折り込まれているか。
・綴じ穴は斜めにではなく、真っ直ぐに開けられているか。
・綴じ糸は適切な色と太さか。糸が縒れていないか。
・「金鑲玉」の場合、冊が完全に均一な厚みであるか。書口においても均一であるか。
・包背装の場合、しっかりと糊付けがされているか。平らであるか。
・蝴蝶装の場合、糊が適切に使われているか。糊離れを起こして冊が分解することなく、書葉をめくれるか。

 

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