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スタッフのチカラ

『館内で本を修理する』(2)

『館内で本を修理する』 (2)

アルテミス・ボナデア
(伊藤美樹 訳)   2008/11/6

Ⅱ 基本情報

本の構造を理解するうえで、本の修理に使用する材料や正しい道具の扱い方は、有効な修理計画の重要な要素である。
本は様々な方法で構成されている。多くの修理材料は、適切なものを適切な箇所で使うことで正しく機能する。「正確な仕事のための正確な道具」の根本原理は、他の分野と同様に製本にもあてはまる。いくつかの専門道具とその扱い方の理解が時間と労力の節約に繋がる。

 

A.本の構造と構成

糸綴じのものも無線綴じのものも、本の本紙の束を本体(テキストブロック)という。本のカバーをケースと呼び、ケースは前表紙、背、後表紙で作られる。

1.本体の括

糸綴じされた本体の場合、ページは束にまとめられ、それぞれの束は半分に折りたたまれている。

括の構造

折りたたまれたページの1束は括と呼ばれ、通常4から8枚のシートからなっている。(折りたたまれた4枚のシートで1括16ページ仕立てとなる。)

括で綴じられた構造の本は、開きも良く、それぞれの括がしっかりと接合しているため、最も機能的である。

近年になり、同じ括構造だが、本体の括の折り端の背に小さい溝を刻み接着剤をさし、糸綴じの代わりにページを接着できるような技術が版元製本に採用されるようになった。こうした本は糸綴じのように見えるが、そうではない。本体の括の真ん中を開き、綴じ糸を探して見つからなければその本は接着剤で綴じられたものである。

2.本体から外れた本紙

本体には、接着剤製本、パーフェクト製本、ファンバインディングと呼ばれる、シートを糊づけしたものもある。これらの製本の工程では、速乾性接着剤が本体の背に塗布される。

速乾性の接着剤はもろく割れやすいものが多く、本を開いたときに背にひび割れが起こるのはこのためである。一度背の接着剤にひびが入ると、ページは次々に外れてくる。

さらに、こうした接着剤は本紙の接合の際、各ページにごく少量の接着剤しか塗布されていないことが多いので、すぐにページがバラバラになってしまう。

3.シングル、ダブル・ファン・バインディング

シングル・ファン・バインディングは、本体のページを一方向にあおり、あおった端に沿って接着剤を塗布する。この製本方法では、接着剤の細い線が背の断面だけでなく、各ページの内側のノドの余白部分にも浸透する。

シングル・ファン・バインディング

ダブル・ファン・バインディングは、シングル・ファン・バインディングから、もう1ステップ踏んだものである。ページを一方向にあおいで糊づけした後、反対方向にもあおいで接着する。したがって、背の断面や片側のノドだけでなく、両側のノドが接着されている。そのため、シングル・ファン・バインディングよりも強度がある。

ダブル・ファン・バインディング

いわゆる図書館製本は外部の業者が行うが、この製本でダブル・ファン・バインディングを採用する時には、柔軟性のある接着剤を用いて、ゆっくり乾燥させる。さらに通常は、接着した背にクロスや紙を貼り、補強するので、強度があり、本体も平らに開く。

図書館製本業者は製本過程を理解するための良い情報源である。製本業者は客からの注文として仕事をするので、彼らに対して技術の説明を納得いくまで尋ねるべきである。その修理は、図書館がコレクションのための明確な仕様書に沿って行われなければならない。

図書館製本での最低限のレベルを定めるため、業者団体である図書館製本協会(Library Binding Institute)は「図書館製本のための基準」(ANSI/NISO/LBI Z39.78-2000 Library Binding)の解説書を出版している。この冊子Guide to the Library Binding Institute Standard for Library Bindingは異なるタイプの製本や、図館製本の基準についてわかりやすく解説している。

4.本体のオーバー・ソーイング

図書館製本業者がファン・バインディングを採用する前に最も一般的だったのがオーバー・ソーイングである。

括の折りは切り落とされ、糸綴じのステッチによって括どうしが綴じ合わされる。

オーバーソーイングの切り落とし

綴じ糸が本文に接近しているので、ページのめくりが制限される。

オーバーソーイングでのめくり

オーバー・ソーイングは強度のある製本であるが、本紙は綴じ糸の進行方向に抗うようにめくられるので、繰り返しめくることによりにページが破れることがある。オーバー・ソーイングされた本は、本の内側の余白が切り落とされていたり、オーバー・ソーイングの糸による損傷を受けているので、再製本の対象にはならない場合がある。

とても重い本や、オーバー・ソーイングの綴じ糸が走るのに十分な広いノドのないものは、オーバー・ソーイングするべきでない。図書館製本業者は資料をオーバー・ソーイングする際、図書館からの許可を必要とすることが普通である。

5.本体の綴じ:角背、丸背、バッキング

角背の本体
角背の本は、背を平らに仕上げる製本である。角背の本の背表紙は、クロスで覆われた表紙の一部のことであることが多い。

角背の本体の背は、徐々に凹んでくる傾向がある。これを防ぐには、本体の背の丸み出しやバッキングをすると良い。

角背

本体の丸み出しとバッキング
本体の平らな背を肩(shoulder)と共に丸く形作るため、丸み出しとバッキングが行われる。

丸み出し
丸みだしとは、本体の背をおよそ3分の1の弧に形作ることである。丸み出しは、本体のページが糸綴じや無線綴じによって接着された後に行われ、背に軽く接着剤を塗り、指や専用のバッキング・ハンマーを使って形を作る。

丸み出し

バッキング
バッキングとは、背にライニング素材を貼る前に、本体の背の両サイドに肩を作ること工程のことである。

バッキング・ハンマーを使って、飛び出した肩が表紙ボードに沿うようになるまで、括や糊付けられたページの折り目を叩いて、中央から左右へたたいて形作る。肩の大きさは表紙ボードの厚みによって決められる。

さらに表紙ボードと背との間に溝を作ることで、綴じ糸や接着剤による本体の背のふくらみを分散させ、時が経っても本体の丸みを保つようにできる。

バッキング

6.くるみ表紙(ブック・ケース)の構造

本体がどのようにして組み立てられているかにかかわらず、近代の本は通常2段階の工程で作られている。

本体は本紙をそれぞれ接合した後、背を寒冷紗という布のライナーで覆い、その上からさらに紙のライナーが貼られる。

くるみ表紙は、前表紙、背、後表紙からなり、本体とは別の工程で構成される。本体と表紙は、本体の寒冷紗と見返しが表紙に接着剤で貼られて接合される。見返しは寒冷紗を覆い、寒冷紗が表紙の内側で本体を支えている。

くるみ表紙の構造

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B.紙とクロス

1.紙

様々な種類の紙が印刷や製本に利用されているが、修理によく利用されるのは、無塗工紙と塗工紙と中性紙(無酸紙)の3種類である。

無塗工紙
無塗工紙は最も一般的な種類の紙であり、植物や木の繊維をシート状にしたものである。もともとは麻や綿のボロ布から作る、手作りのもの。これらの昔ながらの紙は、劣化につながる化学的なものをほとんど含んでいないので、傷みが少ない。

1860年代、木から採れるセルロース繊維を紙にする技術が発達した。この種の紙は大量生産できるが、非常に害のある化学薬品を含んでいるため、綿や麻でできた紙よりもずっと早くもろくなってしまう。

塗工紙
精緻な印刷面を作り出すために、それに適した粘土鉱物を紙に浸み込ませる。19世紀終わりに登場したこのような加工紙は、網版画印刷に向いていた。残念ながら、この種の紙はあまり強くなく、水による被害を受けやすい。

画像を印刷したページが塗工紙に印刷される一方で、他の本紙は無塗工紙に印刷されることが多い。塗工紙は括の一部になったり、無塗工紙のページに貼り込まれることがある。

無酸紙
酸性、アルカリ性のものさしがpH(水素イオン指数)である。pH1から14の幅があるが、pH7.0以上に調整されている紙を無酸紙という。どんな原料の繊維でも無酸紙にすることができる。塗工紙も無塗工紙も無酸紙にすることができる。

本書で利用する無酸紙は、コピー用紙と修理用和紙である。

2.クロス

製本用のクロスは、ボードなどに貼りやすいように薄い紙が裏貼りされたもの。裏貼りの紙によってクロスが支えられ、伸縮が抑制され、折り目がつけやすくなる。

クロスには主に3つの種類がある。
・糊付きのクロスは、デンプン糊が施してある。このタイプのクロスは、サイズド・クロスとも呼ばれる。
・アクリル、ピリキシリンやビニール含漬クロス。
・プラスチック加工のクロス

さらに強いクロスには、膠で固めたクロスもある。

3.紙とクロスの目

紙やクロスには織物の生地にもあるような目(繊維の流れ)がある。目が修理にどんな影響を与えるか理解することが重要である。

紙やクロスの目が本の背に平行に走っていれば、カバーやページはめくりやすく、無理なく開いた状態を保つことができる。これを縦目という。

縦目の本

本の背に直角な紙の目で製本された紙は、横目という。

横目の本

現代の出版業者は、無駄なく1枚の紙にたくさん印刷するために、紙を逆目に使うことがある。

目が本の背に直角に通っていれば、本はめくりにくく、手でしっかり押さえていないと開いておけない。

逆目に印刷された本は、閲覧者が本を無理に開けたり、コピーをとったりすることで、より損傷を受けやすい。

ページや本の表紙が修理される場合、修理材料の目は常に本の背に平行に通っていなければならない。

紙やクロスの目の決定
紙やクロスにはすべて繊維の方向(目)がある。紙は折り曲げテスト、裂きテスト、水を使うテストによって目の方向を知ることができる。

クロスの目は、通常、ミミや生地端に平行に通っている。クロスのミミが切り落とされていたり、目の方向が不明な場合は、折り曲げテストや、裂くテストによって決定できる。

折り曲げテスト
目を確認する最も簡単な方法は、紙やクロスをそれぞれの方向に曲げること。

紙やクロスの2つの向かい合う端を、折り線を付けるのでなく、折り曲げてみる。軽くそっと押さえると、反発が感じられる。

折り曲げテスト

そして、もう片方の向かい合う側の端を折り曲げてみる。

一方向にもう片方よりも強い反発が感じられる。その反発は、逆目に曲げられているため、紙やクロスがその方向に曲げて欲しくないことを示す。

反発なく曲がるのは、紙やクロスが正目であることを示す。

後々のため、紙の目の方向に印をつけておくと良い。

裂くテスト
目を調べるもう一つの方法は、紙やクロスを裂いてみる方法である。

紙やクロスは正目に沿って簡単にまっすぐ裂ける。

裂くテスト

 

逆目で裂こうとすると、紙やクロスは裂きにくく、正目の方法へ向けて曲がって裂ける。

紙やクロスの角を裂き、その角に鉛筆で小さく正目の方向に印をしておくと、使う度に目を確認する手間が省ける。

水を使うテスト
目の方向を確認するのが特に難しい場合、水を使うテストを行う。このテストは資料の修理に使用する紙にのみ適切であり、対象になる本紙には不向きである。

大きな紙の角に沿って4インチの直線をひく。この線は目に沿っていなくても良い。そして、その線の2分の1を含む、その角を四角く切り取る。

水を使うテスト 水を使うテスト

その四角く切った紙を濡らし、台に乗せておく。水分が紙の繊維に吸収されると、四角い紙は丸まりだす。向かい合って丸まった2辺が繊維方向に平行である。正しい目の方向を角に記しておく。

水を使うテスト

もとの大きな紙に丸まった四角い紙を戻し(鉛筆の線を合わせる)、大きな紙に正しい目を記しておく。はじめの鉛筆の線は目に沿ってなくてもよいことを忘れずに。

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