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スタッフのチカラ

『館内で本を修理する』(5)

『館内で本を修理する』 (5)

アルテミス・ボナデア
(伊藤美樹 訳)   2009/01/23

Ⅲ. 本の修復道具と技術<続き>

B. 本の修理方法 <続き>

 

4. 本の採寸

本はどれも真四角でも真っ平らでもないので、その正確な採寸は容易でない。製本修理においては、定規よりも短冊状の紙を使った採寸が実用的である。

 

本の高さ(天地)の採寸

天地方向に短冊状の紙をあて、1点か2点(短冊の両脇)に印をする。サイズの始めと終わりを示すための矢印も付けておく。

本の天地の採寸

背の幅(つか)の採寸

背の採寸には2通りある。
ひとつは、背の肩から肩に沿った長さを測る方法。

背に沿って幅を測る

もうひとつは、テーブルに本を平らにのせ、おもて表紙から裏表紙への垂直方向の長さを小口側から測る方法。

小口側から厚みを測る

必ず本の一番厚いところを確認し、背の幅を測ったのか、小口の幅を測ったのか、明らかにしておくこと。

短冊で採寸すると、利用する紙やクロスに正確な寸法を置き換えることができる。くれぐれもそれぞれの寸法を混同しないように名前をふっておくこと。

裁断線には鉛筆で印をするよりも、針先で印をする方が簡単で早い場合がある。鉛筆で印をするよりも、千枚通しを使って紙に少し穴を開けてサイズの印を付ける。

ディバイダーを用いてサイズを測り、紙やクロスに置き換えることもできる。

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Ⅳ 簡易修復

本の修理は簡単な処置から始めることが多い。本来は簡単な問題なのだが、それが無視されたり、不適当な扱いをされると、複雑な修理が必要になる。本は早期に修理されると、手間も少なく、長期間の閲覧に耐えることができる。

紙をクリーニングする際には、何よりもまず傷をつけないよう本紙への負担の少ない方法から始める。

図書館蔵書のクリーニングとは、時間のかかる作業であることを忘れてはならない。ドライクリーニングを始める前にそれぞれの本を観察する。優先順位を決めてクリーニングすることが有効である。

 

A. 本紙のクリーニング

1. ドライクリーニング

ドライクリーニングとは、いかなる液体クレンザーも水も使わないクリーニングの方法である。正しく行えば、資料を傷めることはない。

刷毛は常に中央から外側へ放射状に動かし、ヒンジ部分の汚れや消しゴムのカスは刷毛を上下に動かして払い落とす。

刷毛は放射状に動かす

刷毛のサイズは特に問わないが、柔らかい天然毛のものを選ぶこと。プラスチックやナイロンの刷毛では、ページを引っ掻いてしまう。ドライクリーニングに利用する刷毛は、水や糊に利用するべきでなく、ドライクリーニング専用に決めるのが良い。

紙のやぶれに注意しておかないと、刷毛が紙に引っ掛かってしまうので、絶対に刷毛を外側から中央へ動かさないこと。刷毛が本紙の端を引っかけ、ちぎれを引き起こすことがある。特に、本紙の端に小さなやぶれがある場合は注意が必要である。

刷毛を使って表面の汚れを払い落としたら、下記のようなOpalineやSkum-Xといった製品で表面のさらに頑固な汚れを取り除く。

OpalineやSkum-Xは共に消しゴム製品である。Opalineは袋に入っており、Skum-Xは振りかけられる容器に入っている。Opalineは、消しゴムの非常に細かい粉が紙を覆うまで、紙の上で揉んで使う。Skum-Xは塩を振りかけるように使う。

OpalineとSkum-X

清潔な指で、円を描くように紙を軽くこする。決してOpalineの袋で紙をこすらないこと。すぐにクズの塊ができ、本紙に汚れがしみ移ってしまう。本紙に指の皮脂が移らないよう、柔らかい布やポリエステルフィルムを介してこすることもできる。

清潔な指で、円を描くように紙を軽くこする。決してOpalineの袋で紙をこすらないこと。すぐにクズの塊ができ、本紙に汚れがしみ移ってしまう。本紙に指の皮脂が移らないよう、柔らかい布やポリエステルフィルムを介してこすることもできる。

指で円を描くように

作業は常にページの中央から外側へ向かって円を描くように行い、本紙の破れに注意すること。

消しゴムかすは、汚れを吸収すると色が変わる。汚れを十分に取り除いたようであれば、刷毛で消しゴムのカスを本紙から払い落とす。

天然毛の刷毛で、本紙の消しゴムのカスを払い落とす。刷毛は本紙の中央から外側に向かって動かし、ヒンジ部分のカスも払い忘れないこと。それでもまだ本紙が汚れているようであれば、これまでの手順を繰り返す。カスの色が変わらなければ、可能なかぎりの汚れは落としたということである。

刷毛で払い落す

図書館員は、よく鉛筆やペンで書いた跡を見つけることがある。ペンの跡は消えないが、鉛筆の跡は消すことができる場合がある。Faber Castell製のMagic-Rub(固形の消しゴム)といった、ビニール製の白い消しゴムは、その他の消しゴムよりも摩擦が少ないので、お薦めである。こうしたビニール製の消しゴムは、様々なサイズで販売されており、ナイフで形を変えることもできる。また、鉛筆形のものもあり、本文の行間や狭い範囲での作業に適している。

消しゴムは一方方向に動かし、本紙の中央から外側に向けて動かすこと。決して消しゴムを行ったり来たりさせたり、本紙の外側から内側へ動かさないこと。

消しゴムのカスを払う際にも、天然毛の刷毛を使用し、本紙の内側の余白(ヒンジ側)のカスを取り除くことを忘れてはいけない。そして刷毛は必ず、内から外へ動かすこと。

 

2. その他のクリーニング方法

ドライクリーニングは表面の汚れだけを落とすものである。さらなるクリーニング方法は、本を解体した本紙の洗浄となる。それは時間とコストのかかる方法である。もし簡易なドライクリーニングで十分でないようであれば、その本のクリーニングは適当でないのかもしれない。本がまだ利用可能であれば、書庫に返すこと。利用不可であれば、代替を検討する。図書館員の時間も貴重であり、多くの本に対して注意を払う必要があるので、図書館利用者に向けて、「本をきれいに保つ」キャンペーンを呼びかけることも考えると良い。

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B. くるみ製本のヒンジの修理

くるみ製本とは、一般に本体と表紙をハードカバーでくるむ方法のことをいう。

くるみ製本の構造において、本体とカバーを接合する最も重要な点は、本体の背に接着し、表紙に貼り付ける、寒冷紗のような織り目の粗いクロスである。通常、本体はくるみ表紙に接着されており、表紙の天地の長さよりも本体の天地の長さは短いので本棚では本体と棚の台の間におよそ3~5㎜の隙間がある。つまり常に重力が本体そのものにかかっている。

ヒンジ部分の接着剤はやがて乾燥しきってしまい、背や見返し紙が健全でも劣化する。接着剤が乾燥しきると、ヒンジ部の開閉によって寒冷紗は表紙とヒンジ部分から剥れ、外れてしまう。見返しがヒンジに沿って破れ、寒冷紗がその下から見えてきているものを見かけることが多い。

ヒンジ部分にプラスチックテープを貼った修理をよく見かけるが、これは表紙に寒冷紗を再接着するには全く役立っておらず、単に本にテープの層を追加したに過ぎない。

 

1. 外れたヒンジを治す

注意:もしも、くるみ直しや背ごしらえ直しといった修理が必要な本の場合は、そうした修理が完了するまでヒンジの修理は行わないこと。ヒンジの修理は通常いちばん最後に行われるものである。

ヒンジ部分が外れ、見返し紙が損傷していなければ、細い編み棒や竹ひごのような棒を使って、ジョイント部分に少量のPVAを塗る。

ジョイント部分にPVAを塗る

本のヒンジ部分の端からPVAをつけた編み棒などを注意深く差し込み、棒を回転させながら奥へ進めていく。

棒を抜き、反対側のヒンジも同様に行う。くれぐれも本体の背には糊をつけてしまわないように注意すること。

両側のヒンジを接着させたら、ワックスペーパーをヒンジ部分に当て、天や地または破れたヒンジ部分にしみ出す余分な糊から保護する。余計なところに糊がつくと、本が開かなくなってしまうので注意すること。

本を閉じ、ヘラのはらの部分で表紙の外側から、表紙クロスのジョイント部分(ミゾ)になじませる。ヘラの丸い先端を使っても表紙クロスを突き破ってしまうことがあるので注意が必要である。

クロスをミゾになじませる

本の中央から天の方へ向かって動かし、そして中央から地の方へ動かす。こうして寒冷紗と見返しと表紙芯材が接着され、またヒンジ部分の余分な接着剤を取り除かれる。

注意:ヘラで背との接合部分をこするうちに、表紙クロスがテカってしまうことがある。この予防として、ヘラでこする際に、ワックスペーパーや薄い紙を表紙クロスに当てると良い。

表紙を開き、ヘラを使って見返しをヒンジの中へやさしく押し込む。この時、ヘラのはらを使っても紙を破ってしまうことがあるので注意すること。

内側から見返しをヒンジになじませる

ヒンジ部分にワックスペーパーを敷き、本を閉じ、もう一度外側からジョイント部分をヘラでこする。

乾燥のため、本をプレス機にかける。プレス機がなければ、ヒンジ部分に編み棒や配架リストの引き出しのレールの棒を添えて、本の上に重しを乗せる。一晩乾燥させてから本棚に戻す。

棒を添えて乾燥させる

2. ヒンジに損傷のあるくるみ製本の修理

ヒンジ部分の見返しが破れている場合のヒンジの修理方法。寒冷紗を観察し、1/4以上が破れていれば、取替えた方が良い。(寒冷紗の取替えは後述のくるみ直しの項を参照)

面相筆やマイクロスパチュラで破れた見返しに接着剤を塗り、元通りに見返しを貼り戻す。

見返しを貼り戻す

余分な接着剤から見返しを保護するため、ワックスペーパーをヒンジ部分に当て、本を閉じる。

表紙の外側からヘラのはらでジョイント部分(ミゾ)に表紙クロスをなじませる。ヘラで表紙クロスを破らないよう注意する。

まず本の中央から天の方へヘラを動かし、そして中央から地の方へ動かす。こうして寒冷紗と見返しとブックボードを接着させる。ヒンジ部分の余分な接着剤を取り除き、次回はより少ない接着剤で試すこと。

ヘラでジョイント部分をなじませたら、注意して表紙を開き、ヒンジの内側から軽くヘラを動かし見返しをなじませる。この時もヘラの先で紙を破ってしまわないように注意する。

ワックスペーパーをあて、本をプレス機に乗せるか、ヒンジに編み棒や長い棒を添えて重しをする。少なくとも1時間乾燥させて、修理箇所を確認する。

修理された見返しがぴったりくっつかないことがある。このすき間が修理の強度に影響することはないが、仕上げに和紙と小麦粉糊で補強することができる。

本体の高さ(天地の方向)とヒンジ部分の見返しの浮きを覆う幅にちぎった和紙を用意する。和紙に糊を塗り、ヒンジ部分に和紙をそっと乗せる。

ヒンジ部分の見返しの補強

ヘラで和紙をヒンジへそっとなじませる。

ワックスペーパーを挟み、本を閉じ、ヘラのはらで表紙クロスをミゾへなじませる。

本をプレス機にかけるか、編み棒や長い棒をヒンジに添えて重しを乗せ、一晩乾燥させてから本棚へ戻す。

 

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