『館内で本を修理する』 (7)
アルテミス・ボナデア
(伊藤美樹 訳) 2009/02/18
Ⅳ. 簡易修理<続き>
C. 表紙のコーナーの修理
本のコーナー(角)には大きな負担がかかり、平表紙が良い状態を保っていてもコーナーには損傷を受けていることがある。
市販のプラスチックテープで修理されているものを度々見かけることがある。テープを貼ってもコーナーの修理にはならず、単にテープの層を重ねているにすぎない。テープの接着剤がしみ出してきたり、時間が経つとパリパリに乾燥しきってしまい、プラスティック部分が剥がれてきてしまう。そして、取り除けない粘着物質のみが資料に残ることになる。
注意:表紙クロスが表紙芯材の天や地の端から剥がれている場合、表紙クロスのコーナーを取り替えるのは有効でない。再製本を考慮するほうがよい。
1. 表紙芯材のコーナーの修理
表紙の芯材は、複数の厚紙の層からできている。表紙クロスが傷んでいたり、表紙のコーナーが剥がれて開いているものを見れば、芯材が層になっているのが見える。痛んだコーナーにプラスティックテープが貼られていても、修理にはなっておらず、単にテープを覆い被せているだけである。本のコーナーの修理では、表紙芯材の複数の厚紙の層を一枚ずつ接着し直し、表紙クロスも修理または取り替えるのが良い。
表紙クロスはまだ健全だが、表紙のコーナーだけが傷んでいる場合がある。または、表紙クロスに破れや欠損が起きていることがある。どちらの場合も、表紙芯材の前小口側と天側に切り込みを入れ、傷んだ芯材の奥の健全な芯材のところまでしっかり開く。

芯材の層を開き、マイクロスパチュラやナイフを使ってPVAを芯材の層に塗る。PVAはボードの芯材の各層へ浸みわたるので、層の一枚一枚にPVAを塗る必要はない。接着させる層の数は表紙芯材の状態により異なる。

オリジナルの表紙クロスがコーナーに被るほど残っていれば、表紙クロスの裏側に少量の接着剤を塗り、コーナーになじませ、貼り戻す。表紙クロスを取り替える必要がある場合は、後述の「新しい表紙クロスのコーナーを接着する」の解説を参照のこと。
指やヘラをコーナーの端に向かって動かし、表紙クロスを芯材になでつける。余分な接着剤は布やペーパータオルでふき取る。

どれだけ余分な接着剤があふれたか確認し、使用する接着剤の量の加減の基準とする。ふき取ったのが少量であれば、芯材の層にくまなく接着剤が行き届いていることを示す。多量にふき取るのは、無駄も多く、手間である。
平らですっきりとしたコーナーを得るには、ワックスペーパーなどで表紙のコーナーの両面を覆い、厚紙を両面に当て、ブルドッグクリップ(事務用品店などで販売されている)で挟む。クリップの圧力でつぶれる恐れのある段ボールでなく、硬く密な厚紙を用いること。

平らなコーナーを得るもう一つの方法として、修理したコーナーを作業台に寝かせ、紙で包んだ煉瓦の重しを乗せておく。

コーナーは、本を保護するために、必ずしも鋭角でなければいけないわけでない。特に、4つのコーナーのうちの1~2ヶ所のみを修理する際には、丸みのある「自然な」コーナーの仕上がりが適当な場合もある。丸みのあるコーナーの方が見栄えが良い場合には、接着剤が半乾きの間に角を形作り、重しや圧力をかけずに乾燥させると良い。
2. 修理したコーナーに新しい表紙クロスを貼る
表紙芯材のコーナーの修理のあとに貼る新しい表紙クロスをカットし用意する。表紙クロスの生地の目は、本の背と平行になっていること。
用意した表紙クロスの小片を、表紙の外側に接着する。重しを乗せて乾燥させる。

新しい表紙クロスのコーナーを表紙芯材のコーナーに被せて折り返す。2角が45度の三角形ができる。千枚通しを用いて、表紙クロスが芯材のコーナーに被るポイントに印をつける。この印は、できるだけ表紙のコーナーの端の際につけること。

新しい表紙クロスのコーナーの巻き込みを元のように開き、印をした点を通る折り目に沿って線を引く。この線に沿って表紙クロスをカットする。

新しい表紙クロスに新たな角が2つできた。片方の辺が天もしくは地側、もう一方の辺が前小口側となる。

新しい表紙クロスの天もしくは地側の端に沿ってPVAを塗り、表紙芯材を巻き込む。

ヘラで表紙芯材の厚みが出ないように表紙クロスの上から芯材をなで押さえる。表紙クロスは、表紙芯材のどの面へも完全にぴったりと接着されるのが良い。

新しい表紙クロスはコーナーで、もたつきやすいので、まずヘラの先を用いて表紙芯材の前小口側へ、表紙クロスをなで下ろす。

新しい表紙クロスの前小口側に接着剤を塗り、ヘラで表紙芯材に巻き込む。

ヘラを用いて、クロスを表紙芯材にぴったり接着させ、コーナーはやや丸みをもたせる。

オリジナルのクロスの処置として、ほつれた端のみを切り落とす場合や、ほつれた端を元通りに貼り戻す場合がある。クロスのほつれた糸は、新しい表紙クロスの色合いがオリジナルのように馴染んでいない場合のカモフラージュになることもある。
紙で包んだ煉瓦の重しを乗せるか、ブルドッグクリップで表紙ボードを挟んで、乾燥させる。
古い本の4つのコーナーのうち、ひとつのコーナーのみを修理する際などは特に、コーナーに丸みをもたせた仕上げの方が「自然」なものもある。コーナーに丸みをもたせて仕上げる場合は、接着剤が半乾きの間にコーナーを形作り、重しや圧力をかけずに乾燥させる。

