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スタッフのチカラ

『館内で本を修理する』(8)

『館内で本を修理する』 (8)

アルテミス・ボナデア
(伊藤美樹 訳)   2009/03/12

Ⅳ. 簡易修理<続き>

D. 紙の破れと欠損

この項では、それぞれの損傷を修理し製本するまでの方法を解説しているが、同様の方法でペラの1枚ものにも対応できる。

紙の破れは透明のプラスチックテープで不適切に修理されていることが多い。透明プラスチックテープは破れを覆い隠すだけで、修理にはなっておらず更なる損傷を引き起こしている。「Ⅱ. 基本情報 C. 紙の修理材料 4. 透明プラスチックテープ」で紹介したように、プラスチックテープは資料として長期に保存するもの以外の資料に対してのみ用いるべきである。

1. 単一の破れと複合的な破れの修理

紙は斜めに破れることが多い。破れが本文や図解にかかっている場合、破れの下端から白い紙の繊維が見えるので、どこが破れの上端か下端かは簡単に判断がつく。破れが本文にかかっていない場合は、破れを接着する前に注意深く観察すること。

紙の目に沿って破れるものもあれば、紙の目に逆らって破れるものもある。紙の目に沿って破れているものは素直に真っ直ぐ破れ、紙の目に逆らって破れているものは破れ口が毛羽立ちがちであり、紙の目に倣おうとするため曲線を描いて破れる。

単一の破れのある本紙は一度の破れで破れの上端と下端が明らかである。破れが本文や図解にかかっている場合、見つけやすい。

複合的な破れは一度でなく複数破れが起きたもの。破れたページが修理されるまでは、再び破れが起き、二つ目の破れにまた別の上端と下端ができる。破れを接着する前に元通りの破れ口の正確な重なりを確かめること。破れ口を正確に貼り合わせないと、修理箇所が盛り上がり本文や図解を妨げてしまう。

紙の破れの修理には3通りの方法がある。
●小麦粉糊を単独で使う
●和紙と小麦粉糊を使う
●ドキュメント・リペア・テープを使う

 

小麦粉糊を単独で使う破れの修理

紙の破れ箇所に紙力があり、破れの断面がはっきりしている場合は、小麦粉糊を破れの断面に塗布して十分接着させることができる。

極細の面相筆やスパチュラまたは針で、破れの断面に小麦粉糊を塗り、貼り合わせる。

 

断面に糊を塗る

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修理箇所をワックスペーパーやホリテックスで挟み、ヘラでなでる。

必ず、本紙の修理箇所から外側に向かってなでること。

断面からはみ出した余分な糊をふき取る。どのくらいの糊が多かったか確認をし、次回は減らしてみる。多すぎず少なすぎず、いつも適量を心がける。

ヘラでなでる

 

修理箇所が乾いたら、その周辺を曲げて断面がしっかり接着しているか確かめる。

まだ浮きがある場合は、再度糊をさし、重しをして乾燥させる。修理箇所にシワができた場合は、上から和紙を貼る方法もある。破れが正確に貼り合わなければ、加湿して糊をゆるめ、もう一度接着させてみる。

 

接着の確認接着の確認

 

和紙の小片と小麦粉糊を使った破れの修理

和紙を貼ることで、修理箇所に強度を与える。破れの断面が少なく補強が必要な場合に和紙を用いる。

破れ箇所や和紙に糊を塗る方法は、前述の修復道具と技術の解説を参照のこと。作業前に最適な方法を選択すること。

和紙に糊を塗り、針やスパチュラまたはピンセットですくい上げる。

 

糊を塗った和紙の小片

 

破れ箇所に和紙をそっとのせる。破れが本紙の端にある場合は、和紙を1cmほど本紙の端から延長して貼り、裏側へ巻き込んで鞍型に貼るか、あるいは乾燥してから切り落とす。

 

和紙を延長して貼る

 

8cm以上の和紙の小片を扱うのは困難な場合があるので、いくつかの短い小片をつないで貼るとよい。細長い和紙の小片一枚で済ませたいところだが、扱いがずっと困難で、仕上がりがきれいになるとは限らない。

 

短い小片をつなげる

 

破れ箇所に和紙をのせたらすぐに、ワックスペーパーを当て、ヘラでそっとなでる。くれぐれも修理箇所から本紙の外側に向かってなでること。

ヘラでなでる

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破れの断面からはみ出した余分な糊をふき取る。たくさんはみ出した場合は、次回調整すること。

全ての破れの修理が完了したら、ワックスペーパーと濾紙で挟み、重しをのせて乾燥させる。重しをのせずに乾燥させると、反りやゆがみができてしまう。

乾燥したら、修理箇所を曲げてみて、破れがしっかり接着しているか確認する。浮きがある場合は、再度糊をさし、重しをのせて乾燥させる。修理箇所に、またシワができた場合、1回目の修理の裏側からも和紙を貼ってよい。

ドキュメント・リペア・テープでの破れの修理

一般にこの市販の「修理用」テープは貴重書や永久保存する資料ではないものにのみ、利用するべきである。

破れの断面の重なりをしっかり確認し、テープを貼る。長い破れに対し、一枚の長いテープで修理しようと思わないこと。必要であれば、紙の両面からテープを貼る方法もあるが、本紙に2枚ものテープの層を重ねていることを忘れてはいけない。

アーカイバル・テープは、おおかた1.5~2.5cm幅である。修理に使うテープの量を少しでも少なくするため、テープの幅を半分や1/3にカットして使用することがある。節約のためにも、本のためにも少ない方が好ましい。テープを本紙の両側から貼る際には、2枚目のテープを1枚目よりも少し幅広にし、テープの厚みを目立たなくさせる。

2. 切断された紙の修理

紙は切断すると繊維を完全に断ち切ってしまい、毛羽立った断面が全く無い。このような場合は、和紙やドキュメント・リペア・テープで修理する。切断面は重なりがないので、和紙を両面から貼るか、鞍型に貼るか、あるいは補強のためにドキュメント・リペア・テープを裏側から貼る。

3. 紙の欠損部分の修理

本紙の真ん中に欠損の穴が開いていることはあまりないが、ありえなくはない。印刷部分を復元することはできないが、本紙をさらなる損傷から保護する修補はできる。

和紙を2枚重ねにすると、修補箇所の厚みに近づけることはできる。

前述の「Ⅲ. 修復道具と技術」の「B. 本の修復技術」で取り上げた欠損部分に貼る和紙の小片をちぎる方法を用いて、欠損の穴に補填する和紙を用意する。

損傷したページの裏側表側ともにワックスペーパーを本紙にあて、保護する。

1枚目の和紙の小片に糊を塗り、欠損部分にのせ、なじませる。2枚目の和紙にも糊を塗り、欠損部分にのせて、同じくヘラでなじませる。

ワックスペーパーと濾紙で挟み、重しをのせて乾燥させる。

乾燥したら、修復箇所を曲げてみて隅々まで接着したか、確かめる。端にまだ浮きがあれば、再度糊さしをし、重しをして乾燥させ、もう一度曲げて確かめる。

4. ページの角の欠損の修理

和紙を2枚重ねにすると、修補箇所の厚みに近づけることはできる。

修補箇所の裏側にワックスペーパーをあてて本紙を保護する。黒いマットボードを用いると修補箇所の端まで強調されて見やすい。

和紙の小片を半分に折り、角の欠損部分を覆うようにあてる。和紙は本紙の端よりもひとまわり大きくとること。

 

角に二つ折りの和紙をあてる

2つ折りの和紙を針でちぎるか、水をひいてちぎる。和紙の小片は欠損よりも1~2mm大きくとること。

 

和紙を欠損部に合わせてちぎる

 

 

和紙の小片に糊を塗り、角の欠損のまず片面を貼り付ける。

小片のもう片面もかぶせ、なじませて貼る。

重しをして乾燥させ、本紙からはみ出す和紙をトリミングする。

乾燥したら、修補箇所を曲げ、端まで接着できているか確かめる。浮きがあれば、再度糊をさし、重しをして乾燥させ、もう一度曲げて確かめる。

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Ⅴ. 中級修理

 

中級修理は図書館内でもでき、閲覧資料や貸し出し資料の修理の有効である。作業開始前に解説に目を通し、必要な道具を全て手元に揃えること。

A. 外れた本紙のティッピング・イン

ティッピング・インとは、外れた本紙や正誤表または代替ページを貼りこむ方法の一つである。本体全体の接着には用いない。何枚もの本紙が綴じから外れている場合は、綴じ直すか、製本家に任せるか、代替を考えること。‘何枚もの本紙’とは、本によって様々であるが、一般的には3~5枚のことを言う。

ティッピング・インは背をしっかり接着剤で接着された本体の本(接着剤製本または無線綴じ)に対して用いられる方法である。接着がしっかりした背であれば、本の開きも安全で、ティッピング・インした本紙も安定する。接着剤製本の本体とその構造については前述の「Ⅱ. 基本情報」を参照のこと。

一般に紙の修理には糊が用いられるが、ティッピング・インには接着剤を用いる。糊の方が紙の接着には適しているが、接着剤ほどの柔軟性がない。ティッピング・インをする本紙には柔軟性が必要であるので、柔軟性のある接着剤を選ぶことが重要である。

1. 本紙1枚のティッピング・イン

どの本もそれぞれ異なる方法で修理や代替が行われる。ヒンジに素直に収まる本紙もあれば、本体の天地方向に滑り込ませなくてはいけないものもある。接着剤を塗る前に、本紙がうまく収まる道を確かめておくこと。

修理した本紙が必ずしも元通りの位置に収まるとは限らない。修理した本紙や代替の本紙が本体からはみ出していると、本紙に破れなどが起き、再び修理が必要になる。

本紙がうまく本体に収まらない場合、代替の本紙であれば、本紙の高さ(天地)をトリミングし、天地の小口を本紙に揃える。ハサミで直線を得るのは難しいので、カッターを用いてはみ出したところを切り落とす。

本紙の前小口側のはみ出しについては、ティッピング・インの後で正確なサイズにトリミングすればよい。

ティッピング・インするページに接着剤を塗る

本紙に接着剤を塗る方法はいくつかあるので、それぞれの方法を試し、有効な方法を選ぶ。状況に合わせて方法を選ぶ。

1.)極細の面相筆を用いて本紙の端に接着剤を塗る。少量の接着剤を塗るのに大きな筆を使おうとしないこと。小さい範囲に大きな筆を用いるのは不便で余計なところまで接着剤をつけてしまう。

 

極細の筆で接着剤を塗る

 

2.)本紙のノド側の端にヤレ紙をあててマスキングする。本紙の端、1~2mmのぞかせる。本紙の端に接着剤をヤレ紙の上から塗っていく。ヤレ紙を外し、本紙を本体に貼る。

 

マスキングをして接着剤を塗る

 

3.)除籍棚のカードリストや堅いカードボードに接着剤でおよそ3mm幅の線を引く。本紙のノド側に端に薄く均一に接着剤が付くよう、接着剤の線をなぞる。接着剤が足りない場合は、もう一度接着剤の線をなぞる。まんべんなく接着剤がついていない場合は接着剤のついていないカードボードの上をなぞり、接着剤のムラをなくす。

 

接着剤の線をなぞる

 

本紙に接着剤を塗ったらすばやく、本紙を本体に戻す。本紙を本体に戻すのに最適な方法をとること。

ティッピング・インする本紙の裏側と表側にワックスペーパーをあてる。水分が本体へ移ってしまうことを防ぐことに加えて、余分な接着剤が前後の本紙までも接着させてしまわないようするため。

本に重しをのせ、一晩乾燥させる。乾燥したら、注意しながらワックスペーパーを外し、ティッピング・インした本紙がしっかり接着したか確かめる。

2. プレート(図版)のティッピング・イン

プレートとは、本体の印刷とは別に印刷された図版のことをいう。

プレートは本体の本紙よりも小さい場合が多く、1辺を本体にティッピング・インで貼りこまれている。プレートは本体に使用される紙よりも重いコート紙(塗工紙)に印刷されていることが多いので、糸綴じの本でも同様である。オリジナルの接着剤が乾燥しきると、プレートは本体から外れ、落ちてしまう。

本体にプレートを貼り戻すのに最適の方法は、前述のマスキングを用いた方法である。

後述の「プレートのヒンジング・イン」の方法が適している場合もある。

 

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