『館内で本を修理する』 (9)
アルテミス・ボナデア
(伊藤美樹 訳) 2009/03/16
Ⅴ. 中級修理<続き>
B. 外れた本紙のヒンジング・イン
一般にヒンジング・インは本体が糸綴じで本紙が平らに開くもの、またはもともと本紙が本体に貼り込まれている図版の再接着の際に用いられる方法である。糸綴じの本体についての詳細と構造は、前述の「基本情報」を参照のこと。
外れた本紙はその前後の本紙にヒンジング・インされる。状況によって処置方法はそれぞれ異なるが、最も強力な修理としては外れた本紙の裏側からヒンジング・インする方法である。その場合、めくりの支えとして外れた本紙の裏側に和紙を用いることがある。
二つ折りの丁の両方の葉の確認
各括はペラを二つ折りにした丁からなり、丁は両面書写のペラの2葉からできている。1葉が外れている場合、もう片方の葉がまだ本体に残っているか確認すること。そのもう片方の葉はオリジナルの接着剤でまだ本体に残っているかもしれないし、もう外れているかもしれない。
1. 外れた本紙の括の中心を探し、丁のもう片方の葉の接着を確認する。括の中心の綴じ糸を探し付箋を挟んでおく。
2. 外れた本紙が付箋を挟んだ括の中心から何枚目の葉か数え、同じ数だけ括の中心から反対に数えると、それが外れた本紙の丁のもう片方の葉である。
3. 外れた本紙のもう片方の葉がまだしっかり本体に接合していれば、後述の「単独の本紙のヒンジング・イン」の方法を用いる。
4. 外れた本紙のもう片方の葉も外れていたり、外れかけている場合は、両方の葉を接着しなくてはならない。後述の「損傷または外れた葉、丁、括の修理と接合」を参照のこと。
5. 本体の背から修理が可能な場合は、後述の「外れた括の再接合」を参照のこと。
1. 単独の本紙のヒンジング・イン
1cm強の幅で本紙と同寸の天地の長さの和紙の短冊を用意する。和紙は水分を含むと伸びる傾向があるので、本紙よりも少し短く用意しておいてもよい。
ワックスペーパーの上にヒンジングする本紙をのせる。
ヤレ紙の上に用意した和紙の短冊をのせ、短冊の幅の半分をマスキングして糊を塗る。和紙の端まで糊が行き届くよう刷毛をヤレ紙まで進めること。

和紙からそっとヤレ紙を外し、ヒンジングする本紙のノド側の端に貼る。

ヘラで和紙の短冊の真ん中から端に向かって撫で、本紙になじませる。余分な糊は取り除き、糊は和紙と本紙の接着に十分なだけ塗るよう心がけること。

ワックスペーパーと濾紙をのせて乾燥させる。濾紙を10~15分おきに取り替えると、乾燥時間を短縮できる。
和紙の短冊の天地が本紙からはみ出している場合は、和紙の乾燥後に切り落とす。

和紙の短冊を折り返し、ヒンジをつくる。折り返した和紙の下にヤレ紙、その下にワックスペーパーを敷く。

ヤレ紙の上に、先程のワックスペーパーをヤレ紙を挟んだ本紙をのせ、和紙の短冊のもう半分に糊を塗る。和紙の短冊の下や本紙に糊が付かないよう注意する。

挟んでいたヤレ紙とワックスペーパーを外し、本体に接合する。ヘラで本紙と和紙の短冊を撫でてなじませる。

本紙とヒンジ部の接合を再確認する。ヒンジはなじみ、本体とヒンジングした本紙の天地が揃っていること。本紙の表裏が間違っていないこと!
和紙の短冊を貼った本紙にワックスペーパーを挟み、本体に水分が移らないようにする。
本をプレス機にかけ、乾燥させる。完全に乾燥するまでプレスしておくこと。和紙の短冊や本紙がひんやりしている間は、まだ完全に乾燥していない。
ヒンジング・インした本紙のトリミング
ヒンジング・インした本紙は、本体の他の本紙からはみ出す場合がある。その際、カッターと定規で切り落とすことがある。ハサミでは直線が得られないので使用しないこと。
トリミングする本紙の下に薄いハードボードを敷き、本体を保護する。
ステンレス定規をトリミングする本紙とその前の本紙の間に挟む。
前の本紙に定規を合わせると、本体の端が見える。

切れ味の良いカッターで、定規の下に覗くはみ出した本紙を切り落とす。

2. 数枚の本紙のヒンジング・イン
うまくヒンジング・インできる本紙の数は、本によってまちまちである。本紙がヒンジング・インされると、和紙と糊により厚みが増すことを忘れてはならない。
本の背の幅からあふれるほどのヒンジング・インは避けること。
数枚の本紙をヒンジング・インするには、いくつかの方法がある。ひとつは、丁の片方に外れた本紙をヒンジングする方法。もうひとつは、1~2枚の本紙をまとめて本体の1ページにヒンジング・インする方法。
3. 図版のヒンジング・イン
図版を本体にヒンジングするには、いくつかの方法がある。
折りたたまれた図版の中には、括の一部として本体に綴じられているものもある。また、接着剤で本体に貼り込まれた、光沢のある、堅い紙の図版もある。オリジナルの接着剤が乾燥しきると、図版は本体から外れ、落ちてしまう。
図版は本体に貼り込みなおすか、新たに和紙でヒンジをこしらえて再接合する方法がある。図版のヒンジングについては、前述の「単独の本紙のヒンジング・イン」を参照のこと。
図版のなかには、本体よりもひとまわり小さく、本体の本紙の中央に貼ることが多いので、予め図版の貼る位置を確認しておくこと。
図版がもともと側面(図版の左側が多い)に貼り込まれている場合、もと通りの側面か天側で再接着するとよい。図版の天側でのヒンジングには強度があるので、重さのある図版でも耐えられる。
C. 損傷や欠損のある本紙の代替
本紙に、過去の修理による損傷があったり、プラスチックテープで修理されているものでも、本を使用可能な状態にしておくため代替の必要のある場合がある。本紙が完全に損失している場合は、代替する他ない。
図書館に、損傷のある本の本紙のコピーが可能なもう一冊があるか確認する。もしなければ、図書館間相互協力に依頼してみる。図書館蔵書の修理のため、代替ページのコピーが必要な場合があることを気に留めておかなければならない。
コピーの代替ページでなく、できるだけ現物の本の入手を要求する。要求した本が入手できなければ縮小でない、実寸のコピーを依頼する。21cm×28cmのコピー用紙であれば本の本紙よりも大きいので、本紙に合わせてトリミングする必要がある。
代替ページは背に厚みを与え、膨らみや裂けを引き起こす場合がある。厚みが足されるのは最小限に抑えたい。通常、3~4枚の代替ページであれば、支障なく挿入できる。どのページも表裏のコピーが必要である。
代替のコピーはどれも、貼り込みやヒンジングのためにノド側の余白を2~2.5cmとるのがよい。地図のような折り込みの代替ページは、いくつかに区切ってコピーし、つなぎ合わせ、本体の天地の長さに合わせてトリミングするとよい。

コピーの本文まわりの余白は均一で、左右のページの本文の配置が均等であること。
片方のページのコピーは、右上の角にあわせて配置する。

全ての本が21cm×28cmに収まらないので、各ページごとにコピーをとり、表と裏のコピーを外おもてに重ね、4方の余白をとってカットし、貼り合わせて1枚の紙に仕立てる。その貼り合わせたコピーをさらに1枚の用紙の表と裏にコピーし、小口の余白をサイズに合わせてトリミングする。
ライトテーブルを利用するか、日の当たる窓にかざすと、重ね合わせた2枚のコピーの本文や余白位置を確認しやすい。
貼り合わせたコピーが資料からの1回目のコピーであれば、仕上がりの代替ページは2代目のコピーとなる。コピーのコピーを繰り返すと、当然、印刷は鮮明でなくなってくる。
可能であれば、代替ページ用のコピーには無酸紙を使用すると良い。通常の用紙は酸性で、将来的に本に影響を及ぼすことがある。無酸紙は通常の用紙よりも費用がかかるが、無酸紙1袋があれば代替ページのコピーにのみ使用する限り、それほどすぐに消化しない。無酸紙にも、28cm×35cmと28cm×43cmのサイズ展開がある。このような大判の用紙は、地図などの見返し紙の代替コピーに便利である。
両面印刷機能のあるコピー機もあるが、どんな場合も有効であるわけでない。2つの別々の用紙トレイを持つ両面印刷機能のコピー機の場合、表と裏の印刷過程で、用紙を一度外に送り出し、また内へ取り込むことがある。2つの別々の用紙トレイがあるものは、表と裏の本文の配置が必ずしも正確でないことが多い。
コピー機の機能はそれぞれ異なるので、試して特徴をつかむとよい。
両面印刷機能のないコピー機や、精度の高い正確な両面印刷ができないコピー機でも、手作業で両面コピーをすればよい。正確な配置を得るためには、どのコピーの過程でも用紙の同じ端を基準にすることが重要である。それでも誤差がでるかもしれないが、毎回基準にならい、貼り合わせのコピーの際の微調整で補正することができる。例えば、2度目のコピーは1度目よりも1cmずらしたコピーが必要な場合もある。
ページ1とページ2の厳密な違いを見つけるには、いくつかの方法がある。
コピーし終えた用紙を正確な天地のサイズにトリミングし、ティッピング・インやヒンジング・インを行う。正確な幅の前小口側のトリミングについては、この項の前述の解説を参照のこと。
D. くるみ製本のコーナー(角)の欠損の代替
ハードカバー表紙のコーナー以外がまだ健全な状態を保っていても、コーナーに損傷が起きていることがある。こういったコーナーは、代替してから書庫に戻すとよい。前述の「Ⅳ. 簡易修理」の「C. 表紙のコーナーの修理」も参照のこと。
表紙芯材の天と前小口側に沿って、損傷していない所から損傷しているところまで表紙クロスを切る。十分な切り込みをいれておかないと、脆弱な表紙芯材の端をしっかり開くことができない。

表紙クロスをめくり、損傷したコーナーの脆弱な部分を切り落とすため、ななめにカットする。表紙芯材は必要な分だけ、落とす。

1本目のカットよりも約1~1.5cm内側のところに、2本目のカットをする。この2本目のカットは、表紙芯材の半分の厚みまで刃を入れる。ナイフやスパチュラで芯材の半分の厚み分を取り除き、芯材に段差をつける。

厚手のハードボードで代替のコーナーを作る。この代替のコーナーは、オリジナルの芯材と同じ厚みにし、表紙の段差とかみ合うよう形つくる。

厚手のハードボードを何層か重ねて貼り合わせて厚みを得る。除籍資料の芯材を貯めておいて利用するのもよい。まだ損傷していないコーナーが利用されている過程で丸みを帯びてきているようであれば、代替のコーナーにも丸みを帯びさせて他のコーナーとつりあうようにする方がよい。
代替のコーナーを表紙芯材にあて、かみ合わせ具合を確認する。
芯材の段差と代替のコーナーに接着剤を塗り、貼り付ける。
重しをのせて乾燥させる。ブルドック・クリップを利用するのもよい。
コーナーの修理に適当な新しい表紙クロスを用意する。コーナーに使用するクロスの布の目は本の背と平行に通っていること。
コーナーの修理箇所に表紙クロスの小片を貼る方法や仕上げ方については、前述の「Ⅳ. 簡易修理」の「C. 表紙のコーナーの修理」の解説を参照のこと。

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